表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/583

77話 ゲーム少女は一休みする

 新市庁舎前。今は荒れ果てていた絶望のビルだったのも過去の話、玄関前はフリーマーケットのように人々が集まり商売をしている。


 まだまだ少ないが人々が露店を開き通貨を使い買い物をしている様子が見える。この真夏の暑い中で日差しもきついのに、ワイワイと活気が出始めているのだろう人々の喧騒がそこにはあった。


 その中で複数のトラックを路駐して商売をしている少女たちの姿が見える。


 新たな商売も始めたのである。新たな商売とは買い取りまで始めた遥たちだ。くず鉄やつかえない電化製品その他諸々を昔の闇市の如く買い取りすることに決めたのだ。人々は集めた物を買い取り部門のツヴァイたちに買い取ってもらいに行列をなしている。


 どうせ、買い取った物を数十倍の値段でこの人々に売り払うのだ。ぼったくりであるが、技術料ということにしてほしい遥。基地の工廠は維持費ゼロなので機材を使い放題でツヴァイは大量に様々な物を作成している。


 これが、拠点聖域化が無ければ、発電施設やら汚染浄化施設やらを作らないといけないところだが、チートなDLCスキルは全てを必要としなかった。光熱費代ゼロ、汚染なんか発生がそもそもしないのである。不思議パワー全開である。そのため、作成時間と輸送費のみという恐ろしい商売システムと化していた。


 そして、露店が出来始めた最大の理由は物資が足りなくなったのだ。人が多くなったために以前みたいに様々な物資を持ち込むことが不可能になった。食料以外は生産が間に合わない。工廠の力をもってしても様々な物を個別に作成などやってられない。一度に大量に作り、それを日によって持ち込むことにしている。


 食料は毎日運んでいる。すでに警察署や消防署に廻るのも大変となったので、新市庁舎のみとしている遥たちである。生存者たちもそれに合わせて、警察署や消防署は最低限の防衛兵を置いたのみで、後は新市庁舎付近に引っ越してきた。南部は輸送用トラックを貸し出して、自分たちの力で新市庁舎から運んでいる。


 そのような様相となったので、たまにしか手に入らない嗜好品や大量に買い込んだ食料を利用して露店を始めた人が出始めたのである。どんな環境であっても逞しい人類であった。


 露店の人々の販売をぼんやりとレキの可愛い眠そうな目で見ながら、まぁ、潤沢に物資を販売しようと思えば本当はできるんだけどね、と遥は思う。頑張ればできるのだ。頑張ることが嫌いであるし、ツヴァイたちにブラックな企業だと思われたくないのでやる気はないが。


 それに、今更そんなことをしたら、露店の人々はネットゲームのバージョンアップで必須アイテムからごみに変わったがごとく、在庫を抱えて破産するだろうと内心苦笑する遥。


 そして、人が多くなったことに対して潤沢な物資を補充することは自立を促せないし、危険でもあると思っている。フランスの革命は物資が潤沢で暇を持て余したインテリが喫茶店で陰謀を作ったとか言われていたような気がするしローマ帝国の滅亡はサーカスが原因らしい。なんでサーカスが原因なのかはしらないおっさん。たぶん動物たちが反乱でも起こしたのではないかと思っている。とにかく、潤沢な物資はろくでもないことになりかねないと考えている遥。


 彼らには少しばかりきつい生活をしてもらうことが必要なのだと、今日の商売が終わったらゆっくりとジャグジーバスに入って、美味しいご飯をナインに作ってもらう気満々な自立心が欠片もないゲーム少女は思っていた。


 ちらりとアインたちを見る。複数のトラックが駐車してあり、そこでアインやツヴァイが販売を行っていた。体術LV6、銃術lV6、人形作成lv5、機械操作lv4、まで、スキルコアも全て使用しレベルを上げた遥。そして、交渉lv2も新たに取得したのだ。ステータスもいつも通りに10ずつ振った。これで残りステータスポイント15、スキルポイント1である。


 獅子との戦いでかなりの危険を感じたゲーム少女。危うくやられていたところである。そのため、メインの戦闘スキルを上げたのだ。超能力がステータス100に達したのに、全く超能力を上げないステータスの割り振りに失敗しているおっさんでもある。今のステータスはこんな感じになっている。


朝倉 レキ

LV20 残りステータスポイント15、スキルポイント1 スキルコア0個

筋力:70

体力:70

器用度:100

超能力:100

精神力:70


スキル:体術LV6、銃術lV6、気配感知LV3、念動LV1、氷念動lv2、地図作成lv1、空間把握lv1、物理看破lv1、超術看破lv1、料理LV1、装備作成LV4、調合LV1、状態異常無効、自動蘇生、棒術LV1、短剣術LV1、鍵解除LV1、罠解除LV1、電子操作LV2、治癒術LV2、常在戦場LV3、危機感知LV3、機械操作lv4、人形作成lv5、農業lv2、泳術lv2、投擲lv1、建設lv4、ファストトラベル、交渉lv2


 一部完全に死にスキルとなってしまった戦闘スキルがあるが、まぁ、攻略サイトを見ないでやればこんなこともあるだろうと、遥は楽観的である。もっとゲームでは酷い器用貧乏になっていたこともあるのだ。その結果レベルが上がれば上がるほど、敵に苦戦するという訳の分からない状態になったことがあるのだ。


 おっさんぼでぃは全くステータスが変わっていないので表記の必要はない。少しは鍛えた方がいいと思われる貧弱ぼでぃである。


 でも、超能力は次とかに上げるからと心の中で弁解して、次にレベルを上げたのは人形作成と機械操作である。支援にこれまでの受動的なAIしかもたないアインたちではきついと感じて、一気に上げたのである。機械操作も上げたのは勿論機動兵器での援護を機械操作で補うためである。


 最後に交渉を上げたのは、自分のためではない。これからの商売をツヴァイたちに任せて、自分は気の向いたときだけ商売をすることに決めたのだ。そして自分では交渉スキルの効果を全く感じない。これ本当に機能しているの? と珍しくスキル効果を疑っている遥。たぶんおっさん脳がマイナスしている可能性もある。


 気が向いたときにしか働かないとは、もはやダメなおっさんとしか言いようがない。ゲームでも中盤からは全委任をするおっさんなのだ。能力値が高いNPCの方が自分より活躍してくれるのだ。何しろ自分が一度も使ったことが無い施設とかを使ってくれるので、そんな施設なんてあったの! と驚くおっさんである。


 そしてアインたちをバージョンアップ改修したのである。こんなになった。装備に変更はない。


アイン

筋力:40

装甲:40

器用度:20

超能力:0

精神力:40


スキル:体術LV3、銃術lV3、気配感知LV1、機械操作lv2、電子操作LV1、交渉lv1、


ツヴァイ

筋力:20

装甲:20

器用度:20

超能力:0

精神力:20


スキル:体術LV3、銃術lV3、気配感知LV1、機械操作lv2、装備作成LV2、(交渉lv1もしくは農業lv1)


 さすがはレベル5の人形作成である。強力なマシンドロイドに改修できたといえよう。そしてツヴァイの髪の色を赤から青に変えた。赤毛のアインとわかりやすくするためである。後は骨のボディにメタリックな色をする皮膚がつき、ようやくロボの駆動音が無くなったのである。これで、人間ですと言ってもおかしくないかもしれない。


「ボス、こっちの食料の引き渡しは終わったよ!」


 元気な声でアインがニカリと活発そうな笑顔を見せて、親指をたてて声をかけてくる。その姿はどこから見ても元気な少女だ。人形作成lv5である程度の自立AIとなったのだ。基地の戦略支援指令センターと情報をやりとりもしている。ツヴァイも同様である。


「司令官、こちらも買い取りが終わりました。問題は発生しませんでした」


 量産機なのに、アインと違って物静かなツヴァイである。静かに微笑みをたたえてゲーム少女に伝えてくる。


 この会話は勿論周りに聞こえないように注意をしている。レキが司令と呼ばれていたらおかしいので。マシンドロイドなら周囲の状況を確認しながら行える簡単な行動である。


「ほい、それじゃ休んでいてよ。こちらはこれから始めるから」


 マシンドロイドの好感度下降による反乱を恐れる小心者のおっさんはアインたちに好待遇である。ご飯が食べられるなら、豪華な食事でもおごったのかもしれない。いや、人形作成レベルをもっと上げれば、それすらも可能になるだろうと予感がする。多分当たっているだろう。その場合は美味しいステーキを奢ろうと、贅沢といえばステーキなおっさんである。


 こくんと頷いて、テクテクと遥の後ろに来ると体育座りをするアインたち。なぜだか、じーっと見つめてくる。その行動になんだなんだと動揺する遥。休憩していてと言っていたのにと戸惑う。


「お休みしていいですよ? アインさんたちや?」


 アインとツヴァイたちの顔色を窺うように聞いてみる遥。


「あぁ、私たちの癒しはボスの顔を見ていることなんだ。気にしないでくれ!」


 アインが快活に答えてきて、ツヴァイもこくんと頷き、その通りですと同意する。


 それを見て、居心地が悪い思いがするが、すでに変態銀髪メイドにならされているゲーム少女である。

まぁ、いいかと気にしないでいることに決めた。


 何しろ見た目は可愛い女の子たちなのである。おっさんが見つめられたら、ヤバイ何か変な服装か?穴でも空いているのかな?と不安に思うが、今は絶賛美少女ボディだ。問題はない。帰ったらボディを洗車してあげようと思いながら商売を始めることにする。


 さて、始めるかと声をかけ始める。


「氷~、かき氷はいりませんか~? 100円ですよ~」


 一度かき氷屋をやってみたかった遥である。真夏だし売れるでしょうとレキでうきうきとした表情でわくわくしながら、掛け声を上げる。


 中の人がいることを知らない人々であれば、ちっこい愛らしい少女が背伸びをして頑張って売り子をしているように見えるほんわかした空間である。勿論カメラドローンは撮影中だ。


「真夏の暑いこの時期ではぴったりですよ~」


 可愛く微笑みながら、周りの人々を見て声をかける。


 周りの人々はすでにレキが珍しく何をやるのか注目していたので、集まってくる。わいわいと暑い中のかき氷を食べようと遥に何があるか声をかけてくる。


「はい、イチゴにレモン、メロン、ブルーハワイ、コーヒー、グレープがありますよ」


 微笑んで、返答する遥。何か最近のトリビアでシロップの味は全て同じだと言われているが、食べた感じ、みんな違う味がするじゃんと思うゲーム少女。自分が味が違うと思うのならば問題は無いと思うのだ。なので、様々なシロップを用意した。ドデンとでっかいクーラーボックスにはでかい氷がいくつも入っている。


 発電機の使用も難しいご時世である。氷は貴重であり、みんなが笑顔で買い求めてくる。


 シャリシャリと手動のかき氷機を削ってふんわりとしたかき氷を作り、手渡していく遥。はい、出来上がりですと笑顔で渡していく。


 だが、人々が思った以上に多い。100円という安さも拍車をかけているのだろう。多くの人々が集まる。

 

 これはまわしきれないとわたわたとしてしまう遥。おろおろレキも可愛い。


「アインたちも手伝うぜっ」


「勿論お手伝いをいたします」


 アインとツヴァイも声をかけてくれて手伝いを始める。ありがたや~と軽く手を合わせて拝むゲーム少女。一生懸命にお客をさばいていくのだった。


 暫くして、周りにはかき氷を食べる人々で埋まる。わいわいと美味しいねと言いながら暑さを減じるかき氷に舌鼓だ。


 それをみて、氷も販売するかなぁと思う遥。氷など簡単に作成できる。でも、持ってくるのが問題だから難しいかと解決策を考える。ちょろっと持ってくるなら構わないかな? とトラックの積載量でどれぐらい積み込めるか考えると新たなお客がきた。


「レキさん、わたくしにもかき氷をくださいませ。イチゴでお願いします」


「僕にはグレープでお願いねっ。レキちゃん」


 静かな声と元気な声という対照的な二人がきた。久しぶりにあう水無月穂香と晶の姉妹である。


「はい、ありがとうございます。久しぶりですね。穂香さん、晶さん」


 遥も微笑んで、歓迎の表情を浮かべてかき氷を作り始める。


 シャリシャリと氷が削られていく音を聞きながら、穂香が返答する。


「はい、お久しぶりです。最近は農業を行うために南部は拠点の拡張とゾンビの駆除、畑の開墾と大忙しなので」


 手を頬に添えて、変わらず大和撫子な感じで穂香が状況を伝えてくる。


「そんでさ、今日はレキちゃんの組織、大樹にお願いがあったんだよね」


 顔を迫らせて聞いてくる晶。


 なんですか? という顔になる遥をみて、穂香が続けてくる。


「トラクターやコンバインを作成していただけないかと思いまして、人の手が少なすぎて機械の力を借りないとどうにもなりませんので」


 きりっと真面目な表情で、レキをまっすぐに見ながら伝えてくる。


 なるほどねぇと納得する遥。確かに人の手では無理であろう。ちょこっと作成すればいいだけである。


「わかりました。何台必要かわかりませんが、とりあえずは数台はレンタルできるように上司に伝えておきますね」


 どうせ、支援用車両を追加で作成しているのだ。ついでに作成するのも問題はない。


 安心させるように微笑み穂香に答える遥。


「ですが、交渉は後程ツヴァイが行うでしょうから。細かいところはそこで決めてくださいね」


 それを聞いて安心した表情になる穂香と晶、かなりこの要求は厳しいと思っていたのだろう。そして面倒な交渉はツヴァイにまかせるゲーム少女。


 できたかき氷にたっぷりとシロップかけて、ほいっと渡す遥。


 かき氷を受け取って、嬉しそうにパクパクと食べはじめる姉妹。この暑さの中である。美味しそうな表情になる。


 くぅ~と、一気に食べたからなのだろう、頭がキーンとした様子の晶。


「かき氷はこうじゃなくっちゃね!」


 アハハと笑いながら、すぐにかき氷を食べることを再開する晶。僕っ子にふさわしいおちゃらけである。その演技の完成度に芸が細かいと感心してしまう遥である。


 そんなことを遥に思われているとは、露も思わず二人は笑顔でかき氷を食べ続ける。


「ところで、レキさんは何故かき氷屋を?」


 最終決戦少女なレキである。穂香は何故かき氷屋をやっているのか不思議に思ったのであろう。


「あぁ、今日はお休みなのです。ちょっと都内は厳しかったのでリフレッシュですね」


 遥は何でもないように伝える。


「うへぇ、レキちゃんが厳しいと言うことはかなり危険なんだねぇ」


 少し怯えた表情になり晶が聞いてくる。


「そうですね。弱体化にはしばらくかかります。恐らくは9月に入らなければ小拠点も作成できないでしょう」


 あそこは敵が多すぎる。倒しても倒しても湧いて出てくるのだ。


 ならば、それに対抗できる火力を用意するだけだと上野戦で大量のマテリアルを手に入れたゲーム少女はリベンジに心静かに闘志を燃やすのであった。


 その後、ナナと椎菜も買いに来て、わいわいと雑談をして帰宅したゲーム少女である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最初期の生存者なら、アインがロボから進化してるのに気がつく人も居るんかな。
[一言] かき氷も昔の香りで誤魔化す安物シロップと違って最近は色々素材に拘ったのが登場してきて大分シロップ事情も変わってきてますものね、氷の削り方もふんわりだったりとか色々種類が出てきましたし時代の流…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ