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8話 おっさんはクラフトをする

 遥はクラフトをしていた。既に夜である。ゾンビを倒しまくって帰宅したのだ。体はおっさんぼでぃに変えている。


「インスタントラーメン塩味合成!」


 とマテリアルを持ちながら精神を集中している。


 こんなに集中したのは、会議中眠くて寝ないように頑張って以来である。その会議は部長が目の前で寝てしまって雰囲気最悪で終わったのだが。


 ごごご~と光り輝き始めるマテリアル。


 現実準拠でいまいち使えないおっさんぼでぃに唯一宿っていた料理スキルを使用していた。


 ピカーンと光り輝き目の前にポップアップが出力される。


『成功:インスタントラーメン塩味(N)』


 と出た。


「ふぅ~。成功だ」


 と遥は緊張を解く。背後からサクヤがぴったりと背中に張り付いてきて祝いの言葉を言う。


「おめでとうございます。ご主人様。これで料理スキルが使えることがわかりましたね」


 ニコニコ笑顔である。美人さんだ。あててんのよ! を背中に感じることで、嬉しい。


 だが、その言葉には残酷な続きがあった。


「もう遥様の体でも料理スキルが使用可能であることがわかりましたし、レキ様に戻られて料理スキルを使用されたほうがよろしいのでは? 器用度もレキ様のほうが遥かに高いですし」


 俺の名前と掛けてるのか。うまいぞ、座布団一枚サクヤにあげて~と心の中で思う。どうやらやはりおっさんぼでぃに用はないみたいである。


「ダメダメ、今日は全て遥の体で料理スキルを使用していくから」


 と、断る。今日はもうレキに代わる予定はない。


「なぜですか?」


 きょとんとした顔をしながら聞いてくるサクヤだが、遥はその解答をサクヤが知っていると推測していた。


「当然だろう? レキはレベルを上げれば、スキルのレベルも上げられるんだ。対して遥ぼでぃは経験を積まないとスキルレベルもステータスも上げられない」


「では、レキ様でずっといればよろしいのでは? レキ様がやられた場合のみ、蘇生待ちの24時間、家に遥様の体で引きこもっていればいいのです!」


 完璧だ、完璧すぎるでしょ? この解答とばかりにサクヤは言ってくる。おっさんぼでぃに用はないみたいである。だが、色仕掛けをしている分、まぁ嫌われてはいないのだろう。


 中身は一緒のおっさんであるし。


「姉さん、無理を言ってはいけません。遥様の強化も必須だと思われます」


 ナインがあぐらをかいた遥の足の上に寝そべって頭を乗せてくる。


 くっ! おっさんに効果はばつぐんだ!


 ごろごろとしているナインを見てデレる遥。それを見たサクヤも背中にぐいぐい当ててるのよ! をやってくる。なんだこれは? サービスか? いくら払わないといけないのだ? とその幸福を味わう前に裏を考えて恐怖する。


 若者ならデレデレでも、おっさんとなるとその行動により何を求めてくるのか考えるのが先になってしまうのだ。遥みたいなおっさんはモテないし?


「いえいえ、お疲れではないでしょうか? もうそろそろお休みになられたほうが良いのでは? 待機状態になれば完全に疲労回復、浄化も行われるので、遥様のぼでぃも嬉しいと思いますよ?」


 言葉は変えているが、レキに変えろと言うのは同じなナインの言葉に心で泣く。どうやら味方はいないみたいである。でも、この状態を味わっただけでも良いかな。と思ったが、強いかもしれない意思ですぐに切り替える。


「ダメダメ! 今日手に入れたノーマルのマテリアルを食べ物に変えるまでは、遥ぼでぃのままでいるからね!」


 強気に言っていく。そうでもしないと押し切られそうな予感もしているのだ。


 ぷくぅ~と頬を膨らませ頭を遥の足の上でごろごろするナインと、私不満ですとアピールだろうか、遥の耳をかぷかぷ甘噛みしはじめるサクヤ。


 くっ! 殺すなら殺せ! と呟く社会的立場が殺されそうな遥であった。そしておっさんのくっころは誰にも需要はないのである。


 どさりと最後の食べ物が生み出されるのを見ながら、ステータスを見る。


 変わらずに料理はLV1だ。1日で上がるほどイージーではないらしい。洋ゲーぽいことを考えると、1日どころか月単位もかかりそうな予感にうんざりする。


 ちなみに成功7割で全てノーマルであった。失敗するとマテリアルは消えてしまうこともわかって遥は検証の価値があったな! と自分自身に教え込んでいる。非効率な作業を成功作業と思うのは、おっさんの得意技である。


 遥は気持ちを切り替えて他のことをナインに尋ねることにした。


「なぁなぁ、拠点の改造はどうやってやるの?」


 まだ、遥のあぐらに頭を乗せてごろごろしていたナインに聞いてみる。もちろん、そこからどいてなどとは言わない。小さな幸せを味わっていたいのであった。ちなみにサクヤは飽きたのか、遥から離れて置いてあった漫画を読んでいる。


「拠点の改造はマテリアル(中)以上を使用して改造のアンロックを行います。中以上のマテリアルを落とすミュータントを探して倒してくださいね、マスター」


 あぐらに頭を乗せて遥の下からのぞき込むように言うナイン。すごい可愛い。


「ほぉ~。中か、探すの大変そうだな」


 今日はみんな小のマテリアルしかゾンビは落とさなかったと思い出す遥。しかしもっと重要な事も思い出したおっさん。


「おぉぉーい! DLCのスタート補助アイテムに大があったとか言ってなかったっけ?」


 ナインを見つめながら問いただす。さすがに拠点改造用のマテリアルが最初からあったら、苦労はしないので、ちょっときつめに聞く。ちょっときつめ以上は可愛いメイドさんに言えない遥である。


 後悔しそうなスタイルであったが美少女相手なのでしょうがないのであった。


「そうですね。エロ可愛い黒下着に換わりました。今の時点での最高傑作と思います。何か問題がありましたでしょうか?」


 ふんすと鼻を鳴らしてどや顔を見せながら言うナイン。ものすごい可愛い。


「むぅ……」


 たしかにあの下着は良い! 鏡で着ているレキの姿を見て人類の夢はここにあったのだと感動したほどだ。


「仕方ない。ゆっくりと探すかぁ」


 諦めて、明日から探そうと考える。と、不思議に思ったことがあった。


「なぁ、気配感知ってどう働くの?」


 今日の探索で気配を感じたことがなかった。いや、多少はあったかもしれないが、それはレキのステータスの高さによる感じでもあったのだ。


 漫画を見ていたサクヤが振り向いて言う。


「気配感知はアクティブスキルです。ご主人様が使用をイメージしない限り機能しません」


 あっさりと重要なことを暴露するメイドである。


「アクティブスキル? アクティブ!」


 おっさんは混乱している。


「はい、気配感知の範囲は広大です。LV3だと大体半径300メートルぐらいのあらゆる生命体の気配を感知します。そのため、パッシブのままにしておくと脳の疲労が増大するためアクティブとなっております」


 当然でしょ? という顔の銀髪メイド。その顔もまた可愛い! そんなことを考えて現実逃避したが、すぐに戻ってくる。


「アクティブかぁ、え? その使用タイミングを俺が自分で決めないといけないの?」


 おっさんには難しい問題だ。使用どころがわからずに死ぬまで使わないかもしれない。何しろ知力の項目はステータスに無いのである。


「使用時に使いこなせる形となりますが、そうですね。ご主人様には難しいかもしれません」


 なにせ、精神はおっさんですしね。レキ様の優秀な体でも。と副音声がサクヤから聞こえてくる。


「で、あるならば良いスキルがあります」


 自信のある顔で新スキルを勧めてくるサクヤ。


「アクティブスキルを効果的に使う判断ができるスキルか?」


 おっさん的楽な作業にしたい思考回路を起動させた遥。使用タイミングまでスキル任せにしようとしている。そのどうしようもない思考を感じたのだろう、サクヤは次のスキルを勧めてきた。


「常在戦場スキルです。常に戦場にいる気分であるという触れ込みで、必要な時に必要なアクティブスキルを使用します。但し常在戦場スキルのレベル以上のアクティブスキルには適用されません。また、触れ込みは常に戦場にいる気分と書いてありますが、実際はそのようなことはありません。危機感知より弱い感じで判断を行うスキルですね。危機感知の場合は命の危険のみに反応してアクティブスキルを使用しますが、常在戦場スキルは適用範囲が汎用です」


「ブラボー! すばらしい! とれびあーん!」


 と知っているだけの褒め言葉を言う。トレビアンは違うと思うのだが。そして判断までもスキルに任せて楽をしようとする遥であった。


「早速取りましょう。取りましょう。現在のレベルは6。ステータスポイントは75。スキルポイントは15であるからして」


 一覧を見ながら常在戦場スキルを探す遥。


 レベル6なのはミッションのミュータントを10体倒せシリーズとクラフトを10個作成せよで上がった成果だ。倒せとクラフトシリーズはクリアすると次は20体倒せ。20個作れと報酬の経験値は同じで10ずつ増えていく常時ミッションであった。それを30ずつまでクリアしたのである。


「ステータスは10ずつふってと、さらに器用度、超能力に10ぷらす。常在戦場スキルと危機感知スキルはLV3ずつとって余りは保留だな」


 しっかりと危機感知についても聞き逃さなかった遥は、ふふふと笑いながら両方取るのであった。命の判断もスキルに任せるスタイルであった。まぁ、おっさんの判断よりも優秀なのは間違いない。


 さて今日のやることは終わりだと寝る準備をする。充電したまま鳴りもしないスマフォを寝る前に見る。


「あぁ~、会社からも全く連絡がない。これまで働いていた俺の苦労は」


 さすがに少し落ち込みながら、画面を見る。


 そして画面を見た遥は異変に気付いた。


「な、なんじゃこりゃ~!」


 画面にでていた月日は連休の日付どころか、その24日後を表示していたのであった。

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