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74話 都会の洗礼をうけるゲーム少女

 多数の高層ビルが立ち並ぶ都内。国道も大通りも平時なら忙しそうな人々が歩きまわりその足音だけで騒々しい。車は渋滞するほど多数が存在しており、上京する人間が人の多さと騒々しさに驚愕することがある場所。それが都会である。


 仕事場も都内であり、上京したばかりのおのぼりさんというわけではない遥は、今その都会の洗礼を受けていた。


 大通りにはグールが満ち溢れており、車をその怪力でどかしながら、ずんずん移動するオスクネーが多数いる。何万匹いるかわからないレベルである。


 地上は店からビルから様々な場所にいたミュータントが集まりひしめき合っていた。まるで何かデモのようでもある。人間なら、暴徒を鎮圧する警察がきたかもしれない。しかしここには警察も自衛隊も来られないのだ。倒す人間はレキのみである。


「ご主人様! 南方から新たにグールが1000体以上接近中です!」


 サクヤが焦りながら忠告してくるが、今も目の前の敵を掃討できていないのだ。いや、こちらが押しつぶされるだろう。


 都内に入り、最初は結構グールが多いなというイメージだったのだ。それでもグールなぞ敵ではないレキである。危なげなく殲滅していった。だが、倒しても倒してもグールは現れた。時折オスクネーも現れる。


 段々苦戦をし始めて、その数の多さに殲滅しきれなくなり、遂に日暮里付近で足がとまり、上野に到着したと思ったときには敵の集合を許してしまった。足が止まったらあっという間に敵が集まってきたのだ。


「敵が強くなるのは想定していたけど、この量は想定外でした!」


 叫び、リキッドスナイパーを連射する。体に満ち溢れている超常の力を利用し超技を放つ。


『超技レインスナイプ』


 放つ流体弾丸は、数百の細い糸へと分裂してきらきらと日差しの光を跳ね返しクラスター爆弾のように敵を狙い飛翔していく。分裂した糸状の弾丸たちは雨のように数百の敵を吹き飛ばしていく。


 今までの敵なら、これで終了である。しかし目の前の敵は倒された味方のことなど気にしないで突撃してくる。


 強化された敵ではなく、都内の人々の多さがそのまま敵の数となり押し寄せてくる。ゲームではこんなに敵はでてこないよ。出るとしたら無双系だけど、それにしても多すぎると愚痴を言いながらリキッドスナイパーの連射を続ける。


 目の前に敵が来ても冷静に脅威度を測り、順番に倒していく。超技を撃ちまくり、アイスレインを放ち、敵を殲滅していくが、全然倒す速度が間に合わない。


「ついにSPもESPも切れましたか」


 初めてエネルギーが空になるレキ。銃弾もちょうど尽きた。


「では、ここからは私の体術でお相手ですね」


 全くひるまずにリキッドスナイパーをしまい、スッと右腕を上げて体を半身にして構えをとる。残りは体術で倒すつもりだ。だが、敵はまだ地面を埋め尽くしている。


 ひるんでどうしようと混乱中の遥を放置して、冷静沈着なゲーム少女は近寄ってきた敵を拳を繰り出し殴り殺す。


 殴り殺したグールの後ろからグールがやってくるが、体を浮かしてグールの頭上に移動して、そのまま蹴り殺す。瞬時に周りの敵も飛びながら、その頭を踏みつぶし蹴り殺しながら移動する。敵が集まるのを防ぎ、移動しながら戦うつもりだ。


「ぐぉぉ」


 叫び声と共にオスクネーの一体が放置されていた車を投げつけてくる。


 勢いよく飛んでくる車を、ていやっと可愛い声で蹴りでオスクネーに弾き返す。体術レベル4の車の弾き返しはオスクネーの体を吹き飛ばす。


 一体程度倒しても焼け石に水と、敵が次から次へ屍を乗り越えてやってくるのを拳を繰り出し吹き飛ばし、組み付かれそうになれば蹴り殺し、残像ができそうな速度で敵の頭上を移動しながら倒し続ける。もう修羅少女であった。無双ゲームなら、貴様こそ一騎当千の名にふさわしいとか褒められているだろう。


 だが、千匹などとっくに倒している。宿るスキルが自動反応し体が自然に動き、敵を殲滅していく。


「敵の殲滅要請! 戦闘ヘリ出撃!」


 このような時にアンロックしていた支援コマンドを音声で使用するため叫ぶ。


「ツヴァイ41了解いたしました。支援いたします」


 初めてツヴァイが画面隅にウィンドウを開き答えてくる。ゲームらしい仕様である。


 数分後、距離を無視して戦闘ヘリが現れる。その凶悪な機銃をドドドドドドドドドと撃ちまくる戦闘ヘリ。


「うぉぉ、続けて支援要請! 戦闘ヘリ追加で出撃!」


 2機目の戦闘ヘリを呼ぶ。


「ツヴァイ42了解しました。支援いたします」


 先程と同様の返答がウィンドウに映る別のツヴァイから聞こえる。そして同じように戦闘ヘリが機銃を掃射していき、オスクネーにはポッドからミサイルを連射して倒していく。


 それでも敵の数は凶悪である。まだまだ減る様子は見えない。


 うぉぉと唸りながら、グールがまだまだレキを食い殺さんと近づいてくる。回避して敵の頭上を移動しながら疲れを見せずに体を捌き、敵を倒していく。


 しかし、さすがのレキも高速の連続戦闘は体に堪えるみたいであり、通常はかかないはずの汗をかき始める。その汗が飛び散り輝いて健康な肢体を見せつける。


 それでも繰り出す攻撃にてグールたちを倒しまくっていく。だが、それにまったく比例せず減らないグールたちの群れ。


「ダメだぁ、撤退だ! これ以上は進めない! まずは移動だ。敵が集中してこられない場所に移動するぞ」


 状況は絶望的と判断して、撤退を行う。レキはそれに合わせて、周辺を確認してもっとも敵が集まりにくい場所を選択する。そして戦闘ヘリは撤退命令により帰還していく。


 すぐに移動場所を選択して敵を踏みつけながら移動を開始する。


「デコイ使用」


 ぼそっと呟き、グールの頭を強く踏みつけこれまで以上に飛び上がる。服がきらめき、自分と全く同じ姿が複製されていく。デコイの射出を行って囮にしている間に移動するつもりなのだ。


 一気に敵を引き離すためにビルの壁を蹴り上げつつ、屋上に到着する。すぐさまデコイを敵が追いかけてくる方向に放つ。そして光学迷彩を使用する。空間が歪みレキの姿は消えていく。


 そして敵はデコイの姿を追いかけていた少女と思い、集まり食い殺さんと落ちた地点に群がっていく。


 その姿を見ながら、レキは逃げる目標地点へとそっと静かに移動する。グールレベルだと光学迷彩をしていても騒音をたてれば気づかれてしまうことがわかっている。ゾンビとは違うのだ。


 離れた場所にある地下鉄の入り口をくぐり、音を立てないように静かに地下鉄へと潜っていくレキであった。


 地下街である。外とつながっており、電気が消えており細長い通路が通っている。上野目前まで進出していたので、上野の地下街まで移動できた。


 ここまでくれば不忍池まではもうすぐだ。地下通路を通れば簡単だ。


 がらーんとしており、恐らくは先ほどの戦いに集まったのであろうミュータントの姿は見えなかった。


「地下街に住んでる人はいないのかな? 悪魔を使役するハンターとかいないのかなぁ?」


 真っ暗であり、その可能性はゼロであろう。生者の気配はまったくしない。


「参ったな。こりゃ。弾丸0にSPもESPも0なんて初めてだなぁ」


 今まではイージーモードで戦っていたのだ。かなり楽々なのでエネルギーが切れることなどなかった。


 そして、今レキは息をきっており汗をかいていた。疲れも見られる。通常では見られない姿である。それだけやばかったのだ。


 ファストトラベルを使用しようしたところ、敵の範囲内ですと通告されて使用不可であった。


 そりゃ、あんだけ敵がいるからなぁと困る。ちょっと都内を甘く見ていたのだ。強い敵ならなんとかしてレキが倒してくれるでしょうと、他人任せであったが数の暴力でこられるとは思っていなかったのだ。


 だが、普通に考えてみれば当たり前だ。どれぐらいの人数が都内に住んでいるんだという話である。


 自分の拠点周りでもかなりの数がいたのだ。都内ならば、その比ではない。


「ご主人様、ご無事でよかったです。そして常時ミッションの連続クリアでレベルが上がっています」


 ホッとした溜息を吐き、心配していたサクヤが柔らかな表情で伝えてくる。サクヤが真面目にならないとヤバイレベルだったのだ。


 見るとレベルが16になっている。すぐにステータスポイントを10ずつ振る。そして体術LV5に上げる。出し惜しみしている状況ではないのだ。さすがに遥も危機感を持っている。残りステータスポイント5、スキルポイント4となったのを確認する。


 体術lv5とステータスアップでまた人外の力が大幅に上がったことを感じる遥。それでも敵を殲滅するには足りるまいと、レキの可愛いお口で歯嚙みをする。


 撤退するのは簡単だ。敵に見つからないようにこっそりと移動すれば拠点に戻れるだろう。しかしそれでは意味がないのだ。敵を倒す方法を考えないとと地下街の暗い店内に入り、椅子に座り肘を机について考え込む。


 まさかレキで対処できない状況があるとはかけらも思っていなかったのだ。


 そして悪いことは重なるものである。


「ご主人様、不忍の池エリアを解放せよ。exp10000報酬スキルコアが発生しました」


 はぁ~と溜息をつく。中央地下街をとおり地下通路を通ればすぐに不忍の池に到着する。世界を救う悪魔使いのゲームで何度も通った道である。


 いつもならば喜ぶ内容であるが、今はきつい。しかも10000の報酬とはスカイ潜水艦と同レベルの敵であろう。


 悩む遥はこれからの行動を決めかねるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初期のゲーム方式に戦闘支援を要請して戦えてる貴重なシーンですね。
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