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7話 ゲーム少女は戦う

 「うぉぉ~」


 うめき声をあげながら近づいてくる3体のゾンビを遥は冷静に見ている。小走りのため、結構離れていたにもかかわらず近づいてくるのが速い。


「ふむ」


 意味なくなんとなくうなずくゲーム少女。ゲームキャラだからこの少女のぼでぃの時はゲーム少女でよいだろうと遥は考えることとした。


 周りを見て生存者がいないことを確認する。もしかしての通報もないだろうと、小心者のゲーム少女は思ったのだ。


 軽く息を吐き、こちらも走り始め先頭のゾンビに接敵する。あと数メートルといったところで、敵に向かいジャンプをする。オリンピック選手でもでないだろうジャンプ力で、先頭のゾンビの頭の真横を掠めるように体を移動させながら、蹴りをぶちかました。


 ドゴッという音とともにサッカーボールのように頭だけが塀に飛んでいく。続けて浮いている体をそのまま前方に回転させ、次のゾンビにも蹴りを入れる。同じような音と共にゾンビの頭が吹き飛ぶ。


 蹴った反動で、最後のゾンビの真上にふわりと移動し、蹴りを同じように放った。最後のゾンビも同じように頭が吹き飛ぶのを確認して地上に降りる。


「うへぇ。体術はいいスキルだな」


 と感心する。今までの小説等を読んできた経験から、スキルが2種類のパターンに分かれていることを知っていた。


 即ちスキルを手に入れたら、そのスキルが使える状態になったという、単に記憶だけありますよパターン。


 この場合は低いレベルでもそのスキルを使いこなす敵に負けちゃったりするパターンが多い。負けて死ぬのは大体脇役の調子にのった転生者とかが多いパターンであり、主人公の場合、その敗戦を糧に使いこなすように修業して強くなるパターンがある。


 遥は自分が主人公とはちっとも思っていない。だっていい歳したおっさんなのだ。


 今は可愛い少女ではあるが。


 調子にのったあげくヒデブッとか言って死にたくないのである。


 次のパターンはスキル入手時にそのスキルを使いこなせるようになる場合である。このパターンであることを祈っていた。


 そして今、ゾンビを倒して確信した。


 後者の最初から使いこなせるパターンであると!


 戦闘時にすぐに使いこなせることがわかった。


 ゾンビの位置から、効果的に敵を倒せる方法まで頭に浮かびあがり、体も精密機械のように動かせたのである。それが3体のゾンビを空中殺法と叫んでも良いレベルで空中からの飛び蹴り3発で倒し切れた理由であった。


 次回のゲームはFPSを買ってこの体でPVPでぶいぶい言わせようとほくそ笑むせこいゲーム少女の姿がそこにはあった。


 まぁ、ゲームができる生活に戻れるかは別問題ではあるが。


 だが、遥の予想外が二つあった。


「頭吹き飛ばしただけでゾンビって死ぬの?」


 サクヤの通信ウィンドウは開いたため、聞いてみる。


「ご主人様は、頭を吹き飛ばしただけではありません。蹴りつけた際に敵の体内にライトマテリアルの浄化エネルギーを飽和させております。そのため、敵は死亡したということになります」


 サクヤがうちの娘ってすごいでしょう! というような顔で言ってくる。草臥れたおっさんとは違うでしょうと副音声も聞こえる。


 すごいですねと相槌をうったら、延々自慢話を聞かされそうなパターンである。


 さすがにそういうのには慣れているので、へーそうなんだねーと、適当に相槌をうって聞き流したのだった。


「もう一つあるんだよ。攻撃強すぎない? 脆そうなゾンビといえど、一撃で倒せるもんなの?」


 体重が軽そうな少女の体である。飛び蹴り一発で敵の頭が吹き飛ぶとは理性ではスキルを使いこなしていることによりわかっていたが、感情では納得がいかなかった。


「それは、マスターの筋力と私の愛の下着のおかげですね」


 と左側にウィンドウが開きナインの顔が表示される。


「愛の下着?」


「先ほど拠点にて渡しました黒いエロ可愛い下着のことです。あれは拠点にありましたスタートダッシュ用大型マテリアルを贅沢に使いました下着となっています。効果は防御5、見せることによる魅了、装備している間敵への攻撃ダメージ20%アップがついています」


 と得意げに話すナイン。


遥も風呂の後にレキに着せられた下着を思い出す。


「あぁ~、あれかぁ」


 透けていて覆う部分も少ない黒下着であった。装備をする際はゲームキャラのイメージが強く特に羞恥心は感じなかった。それが大型マテリアルを使用したことにより作られたと思うと泣けてくる。


 それに可愛い少女がエロ可愛い黒い下着なんて見せたら、大体の男は魅了されるだろと心の中で突っ込みをいれた。


 ただ、おっさんは可愛い少女に注意はできないのであった。ナインは得意げな顔をして褒めてくださいアピールしているし。可愛いぞ、このツインテール娘! ちきしょう。


 愛のためというからには、レキを完全にロックオンしているのだろう。でも愛とか言ってるので許してしまう。おっさんぼでぃには何のプレゼントもないみたいだけど。


「次からはマテリアルの使用は俺の許可がでてから使ってね」


 半ば諦め顔でナインに一言いっておくのだった。


「それをいれたとしても攻撃力高いな。ステータスの勘違いをしていたか」


 筋力20をみて、総重量200Kgとなったので大いなる勘違いをしていたことに気づいたのだ。


 どのような勘違いかというと、200Kgならマッチョな筋肉だるま男と同じぐらいだねと最初は思ったのだ。


 だが、実際は違った。


 200kgを持てるだけではないのだ。常に行動に支障なく持ち続けることができるのが筋力:20ということなのだ。いうなれば、200kgのバーベルを持って、飛んだり跳ねたり走ったりと自由に行動できるということである。


 瞬間的な積載量なら何kg持てるのだろうか。1トン超えるかもしれない。そのパワーで頭にキックを食らったのである。まぁ、頭は吹き飛ぶだろう。


「器用度上げといてよかった」


 ちょっと冷や汗をかく遥。器用度も使いこなしているため、どんなに筋力が高くても器用度以下なら自由に力を引き出せ、全力から手加減まで自由自在であることが感覚としてわかっている。器用度が高くない場合の結果は考えたくない。実際にそうなっていたら、クラッシャーなゲーム少女になっていただろう。


 「さて、たおした戦果ですよっと」


 と遥は画面の右下に光っていたItemdropnowとでているアイコンを押下するイメージを送る。


『マテリアル(小)6個』

『ブラッドマテリアル(小)3個(R)』


 と書いてあった。


 ドロップアイテム3倍とレアアイテムドロップ率3倍が効いているのだろう。レアなブラッドマテリアル(小)はあとで使い道を探すこととした。経験値を確認するとnextが491になっている。


ゾンビ1体で1だったのだろう。取得経験値3倍で合計9になったわけだ。


 ──少なすぎます。


「ミッションでの経験値報酬から、こうじゃないかと恐れていたが、やはりそうだったか」


 なんとなく予想はしていたが、予想通りだったため溜息をつく。洋ゲーではミッションのみで高経験値報酬を設定していて、敵の撃破による経験値はカスなことがあるのだ。たぶんレベル補正もあるのであんまり自分よりレベルが低い敵からだと経験値すら入らない可能性もある。


 スライムを倒しまくってレベルカンストにいかないパターンである。


 先ほどと同じようにそっと角から覗くとゾンビが5体ほどいた。


「うーん……死体があんまり無い」


 血だらけのゾンビはうようよいるが、死体がないのだ。全員ゾンビになったのであろうか? それにしてはゾンビの数が少なすぎる感じがするのである。


「まぁ、気を取り直してやりますか」


 今度は念動を使うこととする。


 LV1では、サイキックブリッツとエンチャントサイキックが使えるのが感覚でわかる。


 サイキックブリッツは敵に無色の念動でできた弾丸をぶち当てる技。エンチャントサイキックは体にサイキックエネルギーを纏い、攻撃アップ防御アップと少ないながら全体強化ができる。


 あと、エンチャントサイキックを行わないと体術や武器を使った技。超技といったものが使えないと感覚が言っている。どうやらスタートパックは、基本スキルを漏れなくつけるといった良い仕事をしてくれたみたいである。


 これがよくある小説のパターンみたいにイメージで自由自在にという感じだと、イメージ貧困なので困ったところだ。ちゃんと決まっている技のほうがいいのである。


 早速一番近いゾンビにサイキックブリッツを飛ばす。特に詠唱とか発声しての発動は必要なく思うだけで飛ばせるので助かった。詠唱どころか、発声での発動すらもおっさんの心には厳しいので。


 きっとオバサン連中とかに後ろ指をさされること間違いなしである。救った生存者がいた場合にもあとでひそひそ危ない人扱いされそうだと、社会的立場が大事な遥は思うのだった。


 なにはともあれ、思うだけで発動したサイキックブリッツは結構な速度で飛んでいった。


 速度がどれぐらいかはわからない。


 時速何キロだ! なんて小説の中の主人公たちはどうやって計っているのだろう。魔法の炎の温度とかもそうである。


 1億度だ!とか言ってるが、どうやって計るのか。速度はスピードガンかな? 温度は特注の温度計? とかくだらないことを考えてしまう。まぁ、でも今見た感じだとたぶん原付の最大速度より速い。と、いまいち速度がわからない形で飛んでいくサイキックブリッツ。


 無色なところがいいのであろう。ゾンビは全く気付いていない。ドンという音と共に体に当たったゾンビは爆散した。


「えぇぇ」


 撃った方が驚く。


 たぶん倒せると感覚ではわかっていた。が、感覚でわかっていても実際に見るとびっくりだ。ゾンビの体が爆散したのである。たぶんホローポイント使用のサイキックブリッツだったに違いない。違法弾丸である。


 他のゾンビが気づいて近づいてくるのを見て、再びサイキックブリッツを撃ちまくる。


 ちらりとESP量を見るが、1発で1%も減っていない感じがする。たぶん超能力:50が威力やESPの量を大幅に引き上げているのだろう。LV1程度の念動ではいくら撃っても全然減らない感じだ。


 ゾンビは弾丸の嵐の前にあっさりと全滅した。


 ちなみにやはり恥ずかしいので掌を相手に向けていたりはしない。自分より数十センチ離れたところにサイキックブリッツは出現するので思うだけでジャンジャン撃っていた。


「さてさて体術と念動の検証は終わったのであとは依頼一覧を片付けますか」


 レキぼでぃのスペックの高さが確認できたので、一気に気が楽になりゾンビを見つける端から倒しまくるのであった。

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