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6話 ゲーム少女は外に出る

 日差しも明るくなり、カーテン越しに光が入ってくる。


「ふわぁ~」


 目が覚めた遥は時計を見る。もう7時になっていた。今日は連休3日目である。目覚ましをかけていないので清々しい朝である。


 と、いうかこの連休は永休になりそうな感じだ。


 拠点聖域化は外からの防音機能もあるのではなかろうか? 夜も特にうめき声などは聞こえなかった。

まぁ、それは助けを求める声も聞こえない可能性もあるのではあるが。


 ステータスボードを開くと、蘇生が終わったので『遥の体にキャラチェンジ可能。現在待機状態』と記されていた。


 早速、遥の体にキャラチェンジを行う。選んだ途端に自分が寝ている状態に変わったことを感じた。


 ベッドに寝ているようである。起きて鏡を見て見慣れた自分の体になっていることを確認してホッとする。蘇生中とはあったが不安であったのだ。特に異常は見られないので、よっこらせと移動しようとしたところ、体がかなり重いことに気づく。


 朝起きたときは羽毛のような軽さだった感じがしたのにと思ったが、これがステータスの格差かと納得する。ステータスではなく可愛い少女の体だったからかもしれないが。


「蘇生おめでとうございます。ご主人様」


 といつの間にか傍にいたサクヤが祝いの言葉をかけてくる。


「キャラチェンジは拠点のみとなっています。また、キャラチェンジ中は使用していない方は待機状態とウィンドウに表示され、拠点に待機状態という設定となっております。まぁ、実際はマテリアル化して使用しているキャラの体内にいる形と思われますが」


 やはりいつの間にか傍にいたナインが声をかけてくる。


「なるほど。待機状態のキャラが知らない間に攻撃されたりはしないわけ?」


 遥が問いかけるとナインがそうですと返答する。


 かなり助かる仕様だ。いつの間にか待機側がやられていて、ゲームオーバーとか洒落にならない。


「では、確認も終えたところでレキ様の体にお戻りになられたらどうでしょうか?」


 問いかけというか、早く戻れという冷たい感じでサクヤが言ってくる。


「いやいや蘇生したんだし、しばらくは自分の体で」


 と言いかけたところで、ナインが口を挟む。


「遥様の体はずっと使用しており慣れていると思われます。ですので、戦闘中心になるであろうレキ様の体になるべくなっていて、感覚を慣らした方がよろしいのではないでしょうか?」


 ちょっと口をとがらせて言ってくる。おっさんはどうやら彼女たち的にダメらしい。


「それにお風呂に入ってお体を綺麗にしなくては」


 はぁはぁと、声を荒らげて説得力0でサクヤが言ってくる。クール系メイドは、こんなんばっかりかと漫画や小説でも似たようなメイドがいたと思いながら抵抗を試みてみる。


「この体も綺麗にしないとだろう? とりあえずこの体で入るよ」


「いえ、待機状態の体は常に健康及び浄化により清潔な状態となっています。お風呂に入る必要はありません」


 とナインが言ってくる。


「じゃぁ、レキも入る必要は――」


 遥が言いかけたところ、


「いえ、男性と違いレキ様は可愛い女の子です! 女の子の体は綺麗にするだけではダメなんです! 磨き上げないと!」


 叫ぶようにサクヤが言ってくる。ちょっと説得力あるなと思ったが、サクヤの目が多少血走っているのを見て前言撤回とする。


「しかし磨き上げるにも、家にはリンスも化粧品の類もないぞ?」


 遥は歯磨き粉やシャンプーは高級品を使っていたが、リンスとかには興味がなかった。化粧品の類にいたっては、もてたい気持ちもなかったので、まったく興味が湧かなかった。


「大丈夫です。スタートセットのマテリアルでリンス、化粧品、下着や服などを作っておきました!」


 ナインがそう答えるのを聞いて、何勝手に使ってるの、このサポートキャラ!と驚く。ゲームでサポートキャラがこのような勝手なことをしたら、運営にクレームもんである。


 というか、まともっぽいナインもサクヤと同類っぽかった。


「ダメですか?」


 と右腕にしな垂れかかるサクヤ。胸がぽやんとあたり気持ち良い。


「だめなのですか?」


 同じようにナインも左腕にしな垂れかかる。貧乳もステータスなんやぁと感動する。


 この二人完全な連携でこちらを仕留めに来ている!


「わかった。わかった。レキになればいいんだろう」


 おっさんのままでこれ以上ごねると嫌われそうな予感がした遥は、変わったばかりのレキの体に戻ることにしたのであった。またな、おっさんぼでぃ。


 二人のメイドに綺麗にされたレキがそこにいた。ぴかぴかである。何しろこの二人、肌を傷つけるからと素手でこちらの体を全て洗ってきたのだ。ぬるぬるの感じと、少女の体であることを考えてかなり恥ずかしかった。禁断の扉を開きかけているのかもしれない。


 ぴかぴかになったところで、遥はレキの体の時は、自分はレキであると思い込むことにした。

なぜなら、知り合いにおーい遥さんと声をかけられて、なんだ~?と振り向いて、中身がおっさんの少女!事案!事案!発生!とかなるのは絶対に嫌だからである。


 なので、レキの体の時は、遥と呼ばれても振り向かないようにレキという名前であると信じこもうとした。まぁ、おっさんにどこまでそんなことができるかは不明だが。何しろステータス項目に知力はなかったのであるからして。


 おっさん脳ではすぐ忘れそうである。


 タッチパネル押下、アイテムポーチオープンと考えると、アイテムパネルが目の前に出現する。その中から救急セットを出してみる。


 中身を見ると包帯、ワセリン、縫合用針、縫合用糸、消毒液、救急スプレーが入っていた。


「救急スプレー?」


 手に取ってみると、アイテムの性能が表示される。ある程度の傷を即座に治すアイテムとある。


「バイオ的回復アイテムかよ!」


 呆れる遥であるが、無いよりマシだ。どうやら他のアイテムも超常の力を発揮しそうである。


「アイテムポーチ内のアイテムは劣化しません。また、1種のアイテムにつき999個まで入れることができます。99種までポーチには入れることができますが、生命体は植物や決まったある種の物以外は入りません」


とナインが説明してくる。


「ふむふむ。生き物は全部入らないってわけじゃないのか」


 たしかに拠点設計が必要なので、作物などの種とかが入れられないと困るなと遥は思った。


 救急セットをアイテムポーチに戻して、出し入れする面倒な操作を考える。タッチパネル押下、アイテムポーチオープン、アイテム選択と工程があるので、装備アイテムを切り替えて攻撃の一手を縮める!みたいなどこかの小説であった方法がとれそうもない。


 まぁ、その小説もあらすじを誰かに聞いただけで、読んだこともないのだが。


 たとえできたとしても、おっさんである。ごちゃごちゃ装備の入れ替えをして最終的に素手になっていた。とかありそうなプレイヤースキルであるので無理な操作であろう。


「さて、行きますか」


 操作の確認を終えた遥は遂に外に出ることに決めたのであった。


           ◇


 外にでたところ、そこら中からうめき声が聞こえ始めたのでちょっとビビる。見えないところから声が聞こえるのは苦手だ。せめて目の前にいたらあんまり怖くないのに。と思う。見えない街角とかにロケットランチャーをぶちかましながら進みたいとひどく思う遥であった。


 バイオ的なゲームでは無限なランチャーを手に入れた途端にその方式で、最終的に無人の館にしてしまい、シーンとしたところを寂しく移動する新米おっさん警察官の姿があったのだ。


「無限弾ほしい~」


 と思いながら、あれ?と疑問に思った。


 ものすごい怖いと思っていたのだ。だが、実際は少し怖い程度でしかない。行動に支障はでないだろう。


 なんでかなと思い、レキの可愛い手をグーパーしながら考える。答えはすぐにでた。多分レキの精神力の値のおかげだろう。


 高い精神力のおかげで、あんまり恐怖を感じないのだ。たぶんそう。なにかの小説でも主人公が動揺しない自分に対してそんなことを思っていたので、多分そう。おっさんは昔みた小説を参考にして行動を始めるのであった。


 レキとして外に出たのにはもちろん理由がある。生存者の確認ではなくレベル上げであった。いかにDLCでステータスが底上げされているとはいえ、ボーナスポイントがない場合の上昇率を考えると20レベル相当かスキルを入れると10レベルちょいしかないのである。


 ちょっと強いレアモンスターとかに出会ったら死にそうである。てか、プレイヤースキルの乏しいおっさんでは確実に死ぬのではないだろうか。なので、レベル上げを行い力押しでいけるようにしたい。


 生存者? 大丈夫大丈夫、きっとどっかのショッピングモールとか小学校に集まっていて、和気あいあいとしているさ、と心の中ではかけらもそんなことはないと思いながらレベル上げを始めた遥であった。


 角待ちゾンビが一番怖いので、恐る恐る道の真ん中を歩く。小柄なレキの体は物音ひとつたてない。なぜ真ん中であるかというと、一番自由に対処しやすいからである。


「念動ぐらい試してからくれば良かったか」


 今更自分のうかつさを思い出す遥。なにしろステータスに知力は無いのだ! 迂闊さは標準装備である。


 そ~っと角に敵がいないことを確認しながら移動していると、前方にゾンビが3体うろついているのが見えた。うおぉ~とうめき声を上げながら移動している。


 どうやら通常は小走りモードではないらしい。ホッとする。さてどうやってやるかと今更になって考えはじめた計画性のないゲーム少女の右前に小さなウィンドウが開いた。


 よく近未来ゲームとかで見る通信時のモニターの感じだ。映っているのはサクヤである。


「ゾンビが見えましたね。では弱攻撃から強攻撃にうまく繋げて戦いましょう」


 と言ってくる。どこかで聞いた話であった。


 というかチュートリアルと同じ言い方である。


「今更チュートリアル? てか、この通信はいったいなんなの?」


「これはサポートキャラに備わっている通信方法です。ちなみにご主人様からの呼び出しは行えないのでご了承ください」


 丁寧におじぎをして微笑む美人さんなメイドである。内容はまったく優しくないが。


「あと、これが現在発注のミッションとなります。詳細はステータスボードの依頼一覧を見てください」


 そう言って通信を切るサクヤ。


「依頼一覧?」


 最初に見たときにそんなのはなかったはずだと一応ステータスボードを全部見た遥は再度見直す。そうしたところ、新たに依頼一覧(NEW)と項目が増えていた。


「なんぞこれ?」


 アンロックされたのであろう。依頼一覧というものがでてきた。


 こんな感じである。


『近接攻撃で10体ミュータントを倒す:500EXP』

『超能力で10体ミュータントを倒す:500EXP』

『クラフトで10個何かを作成する。:500EXP』

『生存者と出会う:500EXP』


「あぁ~。洋ゲーぽい」


 遥は嫌な予感がした。依頼でこのような経験値での報酬があることを考えると、敵の経験値は──。


「まぁ、やってみるか!」


 気を取り直して遥はゾンビに向かうのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読んだけど面白さを感じなかったので打切ります
[一言] サクヤとナイン鬱陶しいね。できたらチェンジですね。
[一言] この章をありがとう
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