表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
4章 女武器商人と遊ぼう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/583

51話 ゲーム少女の反省会

 新市庁舎に帰ってきた遥たちは、先ほどの戦闘の反省会を行っていた。装備を仕舞いお風呂に入りさっぱりした後にぴかぴかなゲーム少女になった後に、大会議室に集合である。


 そこで集まっていた精鋭部隊のゴリラ軍団に、浄水場エリアの特徴を遥は説明していたのである。


 なぜか甘い香りが部屋いっぱいに広がりながらの反省会である。シリアスさはかけらもない。


「はい、レキちゃんはこれ。チョコレートクリームでいいんだよね?」


 ナナがジュワッと焼いたクレープ生地にささっとチョコレートと生クリームをのせて、ぱたぱたっと畳んで遥に渡してきた。なかなか手慣れている。


「ありがとうございます。私の好物です」


 ニコッと微笑むゲーム少女は可愛いことこの上ない。あちちと出来立てのクレープをほおばって、チョコレートは美味しいですねとほくほく笑顔だ。


「俺はシーチキンとソーセージのクレープだ!」


 豪族がナナに注文する。は~いとナナは新しいクレープを作っていく。周りのゴリラもそれぞれ注文をしていく。意外と甘いもの系の注文が多いようだ。


 ちまちまと啄むようにゲーム少女は食べる。小さい口なので仕方ないのである。そして啄む姿はリスみたいであり、見る人をホンワカさせる。


「久しぶりのクレープは美味しいねっ」


 この人は懐いた犬だろうか? しっぽが見える感じの喜びの笑顔をして自分のクレープを食べながらゲーム少女にナナは話しかける。


 先ほど生存者の女子に遥が何か食べたいものはないかな? と聞いたところ、クレープ! と意外な注文がきたので、まぁ、今日は私のおごりですよとクレープの材料を用意した遥であった。


 まぁ、ゲーム少女も食べたかったのもある。一人で食べるにはハードルが高いのだ。メイドたちにクレープ食べたいとは言いにくい年頃なのだ。なので、これ幸いとクレープを大量に作ったのである。生存者のためだものしょうがないなぁと大人な対応をするふりをして体裁を保とうとする遥である。崩壊前の世界での対応とあまり変わりがない考え方であった。


「姫様は、あの場所が超常的な力で支配されていたというのか?」


 豪族がむしゃむしゃとクレープを食べている。なんかライオンがぐわっと食べる感じであっという間になくなって、おかわりとかナナに言っている。


「そうなんです。研究の結果、超常の力を使うミュータントがいるとその範囲は何かしらの異常がみられるとわかっています。オペレーターも戦闘中に計算結果を報告しています」


 優秀なうちの科学者が調べました。なんかゾーンみたいなものがビビッと広がっている感じみたいだそうです。という頭の悪い感じを出しながら、口元にクリームをつけて話すゲーム少女。いつかその設定を忘れそうで心配だ。

 

 ナナがそれを見て、しょうがないなぁと嬉しそうにレキの口元を拭いてくる。


「なるほど、その主を倒せば周りは力の供給源を失い弱体化するというわけか」


 腕を組んで、ふむと頷く豪族。座っている椅子がぎしぎしと鳴っている。


「その通りです。検証したところ、主を倒した場合、1週間ほどで供給は完全に止まると計算されております。弱体化したミュータントは通常のゾンビレベルまで落ちる可能性があります」


 えっへんとばかりに小さな胸をはり説明する。調べたも何もサクヤが教えてくれた内容そのままだが。


「オペレーターか、やはり通信ができる機器を持っていたのだな?」


 睨んで体を遥の方に乗り出して聞いてくる豪族。やばい余計な設定を格好つけて言っちゃったと焦る遥。余計な設定を作るといつも自爆するゲーム少女である。


「儂らにその機器を提供もしくはレンタルすることは可能か?」


「無理ですね。試作機でありトランシーバーのように相互通信のみなのです。貴重なのでレンタルも不可能です」


 うちの子はあげませんよ。たとえ変態でも大事なメイドなのだと心の中で強く思う。非売品、非売品なのだ。譲渡不可で常に一緒なのである。遥の言葉にサクヤもナインもウィンドウ越しに提供もレンタルも不可ですねと、嬉しそうにうんうんと頷いている。


 はぁ~と溜息をつく豪族。まぁ、通信機があれば大分行動範囲も変わるので残念がるのは当然であろう。


「なので、弱体化されたと思われるエリアを中心に探索を行ってほしいのです。私たちは物資調達及び生存者の探索を行う予定はありませんので」


 冷たいようだけど、物資調達は必要でしょ? お金とかお金とか貴金属とか貴金属とか。


 遠回しの表現に苦々しい顔をして豪族がパイプ椅子にもたれかかり、ぎしっと軋み音を立てる。


「わかった。そちらの指定する危険度が低いところを優先的に探索しよう」


 そうして暫く考えこむが諦めたのか、ふぅ~と疲れた感じを見せて譲歩してきた。良かった、これで全滅は免れたねと胸を撫でおろす。昨日のサメやサハギンは大分危機感をゴリラ軍団に与えたらしい。作戦成功である。


「で、こちらのコミュニティと交流もしくは人をよこす予定はないんだな?」


「予定はないですね。今のところ部隊は守備にまわっています」


 安心した遥をじろりと睨んでくるので、飄々とした表情で答える。何しろ我が基地の人材は3人だけです。守備、探索、メイドといちゃいちゃを全部遥ひとりで賄っているのだ。まさかこのゴリラ軍団も少数すぎる人材で基地をまわしているとは思わないだろう。


「そうか、ならそちらのコミュニティの頭の良いエリートさんに伝えておけ! 少女ばかりに前線に立たせずに自分も安全な場所にぬくぬくと籠っていないで、たまには前線に出張ってこいとな!」


 豪族がドンとテーブルを叩き、怒鳴って反省会は終わったのである。


 そして我が基地には頭の良いエリートはいない。変態なメイドと可愛いメイドと平凡なおっさんとチートな美少女がいるのみです。ごめんなさい。勿論言わないけどとゲーム少女は困ったのであった。


             ◇


 新市庁舎の中層を周りの人が挨拶をしてくるのを適当に返しながら、ぶらぶらと帰宅しようとしたところ、部屋から誰かが飛び出してきた。


「あの助けていただいてありがとうごじゃいまう!」


 噛んでいる。なかなか噛んでいる。良い子だ、この子と目の前に現れた女の子を、遥はほんわかした視線で見つめる。


 セミロングのサイドテールで結わえた髪がプラプラ揺れている。パッチリした目をしているなんだかおとなしそうな女の子である。背丈は150ぐらいか。噛んだこともあり、遥的には高評価である。先ほど助けた生存者の一人なんだろうと推測した。


「あのっ、ありがとうございます! 私、織田椎菜って言います!」


 言いなおして赤面しながらペコリと頭を下げる女子。わたわたしていて可愛い。


「いえ、助けるつもりであそこに行ったわけではないので、気にしないでください。あなたは強運だったのです。高校生ですか?」


 うっすらと微笑んで、ぶっちゃけて答える。だって助ける気は本当になかったのだ。そのことで恩を感じる必要はない。


 こくりと頷く女の子。何と高校生なのだ。一番近づきたくない存在である。近づいただけで通報されるかもと被害妄想の高い残念なおっさんは少し体を引いて警戒する。


「そう。それじゃまたね」


 というわけで、あっという間に会話終了。話を終えて立ち去ろうとするが、え~という表情で、椎菜はなんとか会話を延ばそうと裾を掴んできた。なにか聞きたいことでもあるのかな?


「あの、お名前を教えていただけませんか?」


 ちょっと頬を赤く染めて上目遣いで聞いてくる。椎菜の方が背が高いので、腰を落として目線を合わせているのがグラビアアイドルのポーズとかを思い出して可愛らしい。


「ご主人様! たぶん危ない人です! 織田椎菜と名付けました!」


 遥が考えたことを読んだのか、ライバルとでも思ったのか、ぐぬぬと唸りながら、サクヤが叫んでくる。てか、名付けるなと呆れて半眼となってしまう。なんでいつもいつも残念なところを見せるんだろう、このメイドは。


 嘆息しつつも、椎名へと頭を下げる。


「はい、私の名前は朝倉レキと申します。よろしくお願いいたしますね」


 この年代には合わない丁寧なあいさつを返すゲーム少女である。違和感バリバリである。レキと同じ年代だろうが、話が合うことはあるまい。遥と話を合わすには漫画ではない現実のドリフターズが組んでいた時代ではないと無理である。


「どうしてレキちゃんは、兵隊さんと一緒に戦っているんですか?」


 思わし気な表情をして聞きにくいことをずばっと聞いてきたので、見た目より押しが強そうな女子である。サクヤが警戒するだけはあるかもしれない。そしてレキちゃん呼びとグイグイと迫ってきている。


「私は戦うように命令されているのです。問題ありませんよ? 強いので」


 椎菜の質問に何かのアニメの強化人間のように答えながら、謎の超人とサイボーグのどちらの設定にしようかなぁと呑気に考える。ここで適当に設定をすると絶対に後悔すると思われるが、遥は適当なのだ。


「レキちゃんは戦うように命令されているの?」


 その返答に驚いて聞いてくる。確かに見た目は小柄な美少女であり不自然極まりない。


 おいおい子供は凄いね、大人が聞いてこないことをずばずば聞いてくるねと、設定はどうしようと迷うがすぐに答えられない。そうこうしているうちに横から話に加わる人が来た。


「そうだ! 君は何者なんだ? その武器はどこで手に入れたんだ? 僕にも使えるのか?」


 学校にいた生徒会長ぽい男子である。口を挟んできて、泡を飛ばす勢いで迫ってきて質問してくる。


 なんで、君が使えることが前提なんだろう。主人公になりたいのだなと若いな坊やだなと、苦笑いしてしまう。

 

 そんな生徒会長ぽい人に突如蹴りを入れる椎菜。腹を蹴られた生徒会長ぽい人はリノリウムの床をズサササッと滑りながら進んでいった。


 え? 何この人、意外とバイオレンスなのねと椎名の行動に驚いてしまうが、椎名はまるで気にしていないようだった。


「あの馬鹿はいないものだと思ってください。ご迷惑をおかけしました」


 ふかぶかとお辞儀をしてくるので、いえいえ、私も気にしていませんよともう一度お辞儀をする。


「えと、レキちゃんは大丈夫なの?」


 心配気に聞いてくる椎菜。心配しないといけないのは凄い勢いで床を滑っていった男子ではないかと思う。


 そして、え? 何か心配されているよ? とおろおろして、何か心配する内容があるのだろうかと慌てる。


 普通は子供と思わしき少女が戦っているのなら、心配は当たり前である。しかし中身は普通ではないゲーム少女である。だが、遥はそのことに気づかなかった。だって戦わないとレベルも上がらないし、アイテムも取れないじゃんと完全にゲーム脳である。


 そっかと、謎の哀れみを含ませた表情をして椎菜が頭を撫でてきた。さわさわと優しい手つきだ。女子高生に撫でられるなんて今日は良い日だね。


「ご主人様! 大変です。マイベースがピンチです! 具体的に言うとメイドの心が危機です!」


 それを見てギャーギャーと叫ぶサクヤ。どうもこの女子に危機感を持ちすぎである。なぜなのだろうか? 左のウィンドウに映るナインは反対に余裕そうである。私の居場所は譲りませんし取られませんよと絶対の自信をもってニコニコ笑顔だ。


「すみません。椎菜さん、新たなミッションを指示されたので基地に帰還します。また今度話しましょう」


 サクヤがうるさいので帰るかなと苦笑交じりに頭を撫でてくる椎名からそっと離れる。今度があるかわからないが、社会人の別れのお決まりの挨拶をする。そして何故か新たなミッション発生である。なんか別れの言葉に使うと何となくかっこいいからという、いつもながらのくだらない理由である。


 それを聞いて心配気な椎菜がまたね。頑張ってねと手を小さく振ってくる。


 ばいばいと手を振って、サクヤにサービスでもするかと、ゲーム少女は帰るのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何気に名付けくらってる人間ってレアでは。
[良い点] やっぱりコンハザはおもしろい! [気になる点] 「噛んでいる。なかなか噛んでいる。良い子だ、この子と遥は目の前に現れた女の子をほんわかした視線で見つめる。」 とありますが、この子良い子…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ