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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
32章 昔の話を聞こう

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497話 白い敵とゲーム少女

 壁から出てきた白いトレンチコートの男はワイドマンを手から伸びる触手で捕らえて、もう片方の腕で壁の破片を退けながらやってくる。


 その頭はイカであり、ギラギラと輝く目だけが異様に目立っていた。


「いかん! ワイドマンを守れっ!」


 ジタバタと頭を触手に覆われて暴れていたワイドマンを助けるべく光学兵器が周囲を照らす程の威力で発射される。その光線は正確に白い男に当たるが


「なんだこいつ! ビクともしていないぞ!」


 その白いトレンチコートは焼け焦げ一つなく、綺麗なままであった。どんな敵も倒せるはずの光学兵器が通用しないことに、驚き後退る護衛たち。


 どのような攻撃が効くのか戸惑う味方だったが、その時間が致命的となった。ワイドマンを覆っていた触手が膨らんだと思った次の瞬間、爆発を起こしワイドマンの頭から離れた。


 ワイドマンの頭も吹き飛んだのかと、周りが哀れむがそれ以上となっていた。なんと頭がイカになっていたのだ。


「げげ、寄生タイプの触手?」


 私は寄生タイプは苦手なんですよと、遥が思う中でイカ頭になったワイドマンがフラフラとこちらへとゾンビのように近づいてきた。


 イカの頭からは新たな触手というか、脚が生み出されており、鞭のようにしなっているので、あの触手で攻撃してくるんだろうなぁと、皆は怖気づく。  


「うァァ、身体を乗っ取られたぁ〜」


 悲しげな声がワイドマンから聞こえてきて、その胴体が開くと中から少女が泣きながら飛び出て来てこちらへと避難するので、皆は驚きで目が点になる。


 少女は悔しそうな顔で、胴体がパカリと開いて中の機械が見えているワイドマンを指差す。


「ワイドマン人形が乗っ取られた! 私たちの代々の秘宝がー!」


 悲しむ少女。そしてそんな人形に思い当たるので、モニター越しにサクヤを見る遥。


「ご主人様! 捨てた人形なんて忘れましたよ! なのでノーカン! ノーカン!」


 バツを手で描いてすっとぼけるサクヤ。しょうがないメイドだな、でもいまさらかと思う遥だが、少女は叫び続けていた。


「私の名前はキリヨ! 代々ワイドマンを操る少女の家系の者だ! とりあえずそこの人形と化物を倒せ!」


 少女はキリヨというらしい。なんと驚くことに銀髪でセミロングの髪型の可愛らしい系の少女である。


「違いますよ、ご主人様! あれは私の子孫ではなくて機械系の属性を持つ証明なんです私の初めては、ご主人様に」


「それはおいておいて、バトルに入るからまたね」


 サクヤの話は放置して、敵へはブレイバーが突撃していた。生身でもさすがは超能力者。一般人とは違う加速でワイドマン人形へと手を向けて叫ぶ。


「生身でも使えるんだよ、こういうふうにね! ベギラ斬り!」


 手から高熱の炎の剣が生み出されて、イカの頭を一瞬で焼き尽くす。そうして、焼け焦げたワイドマン人形が床に倒れる前に、白い男にも連続で斬りかかる。さすがは戦い慣れている男だと思わせる動きであった。


「なにっ!」


 だが、ブレイバーは驚愕の表情となった。べギラ斬りが白い男に当たると同時に消えてしまったのだ。


 動揺で動きを止めてしまったブレイバーへと、白い男はその丸太のように大きな腕で殴りかかる。


 腕をクロスして防ごうとしたブレイバーであったが、あっさりとその怪力に体ごと持っていかれて、壁に叩きつけられてしまう。


「これは少しまずいですね」


 遥は敵の力を見て、ここにいる人間ではシスも含めて敵わないと解析した。たぶんスキルレベル4はある敵だ。


 仕方ないので、お遊びはここまでと眠たそうな目を敵に向けて床を蹴る。


 瞬時に白い男の懐に入ったゲーム少女はワンパンだねとパンチを繰り出し、敵の胴体へとぶち当てるが


「うにゅ?」


 ちっこいおててから繰り出されても、その破壊力は圧倒的であったはずなのに、ぽすんとか弱い音をたてて、白い男を吹き飛ばすどころか、その身体を揺らすこともなかった。


 いつもと反対の立場である。トレンチコートは破れるどころか、シワもできないので、驚きに眠たそうな目を僅かに見開いちゃう。


 白い男は暴風を巻き起こすが如く、凶悪な勢いで小柄な少女へとその拳を叩き込まんと繰り出してきた。


 驚いてはいたが冷静な少女は前のめりに殴りかかってきた拳をちっこいおててでそっと触るように受け流して、そのまま身体を僅かにずらすと、タンっと自分のおててを相手の腕につけて、逆立ちして、そのまま相手の脳天へとムーンサルトキックを決める。


 クルンと回転して、相手の頭を両手で持って膝蹴りを入れたと思ったら、その反動を利用して捻るように蹴りを顔へと打ち込み、ふわりと浮くように離れて着地をした。


「まったく効いていない?」


 舞うように軽やかに連続打を決めたが、小柄な体格ではあるものの騙されてはいけない。レキの攻撃は一つ一つが必殺だ。オールドロットでも、今の一撃のどれかが決まれば、大破確実の攻撃であったにもかかわらず、頭を僅かに傾げただけで白い男はビクともしていなかった。


「かみぃぃぃぃぃ!」


 白い男はポージングをとると、雄叫びをあげる。その雄叫びだけで周囲の人間が崩れ落ちるのがレキの目に入った。無事なのはシスとレキぐらいである。


「無効系の力は持っていなさそうなのに、攻撃が効かないのは妙だな、レキ一旦下がるんだ、足手まといもいるしね」


 強敵だと見るや、光速のビビリを見せてレキへと入れ替わっていた遥が指示を出す。


 深い光りを目の奥で光らせて、レキは素直に頷く。


「シスさん、テレポートで……テレポートも妨害されている? ならば人力で撤退しますので、この段ボール箱に皆を詰めてください」


 とやっと、大きい段ボール箱を取り出すとシスへと周りの面々は任せてレキは白い男に向き直る。  


「申し訳ありませんが、少し時間をくださいな。念動障壁」


 遥は時間稼ぎのために、空中から蒼い半透明の水晶のような壁を作り出し白い男をその壁で封印しちゃう。最高の防御壁なので敵を動けなくするのも簡単なのだ。


 時間稼ぎはこれでOKだと振り返り、シスを手伝おうとしたところで


「かみぃぃぃぃぃ!」


 念動障壁をなんら障害とせずに、ガラスでも割るようにあっさりと掻き消しながら男は歩いてくる。


「マジですか! あの障壁を消しちゃう訳? 最強のシールドなんだけど」


 驚く遥を見ながら、白い男は手から白い霧を吹き出す。まるで霧のように見えたが、その威力を遥は正確に読んでいた。


「レキ! 超低温攻撃だよ。私たちは大丈夫だけどシスさんたちは無理気味だから一気に運んじゃって!」


「了解です、旦那様。人形糸、段ボール箱仕舞」


 やっぱりネーミングセンスのない夫婦であったが、手に出した糸により人々は絡め取られて段ボール箱に仕舞われる。


「その段ボール箱は自走式ですので、シスさんエレベーターまで急いでください」


 自走式の段ボール箱って、なんじゃらほいとシスは思ったが、たしかに段ボールの外側にはバスの絵が描いてあり、中にアクセルとブレーキにハンドルがあったので、ツッコミはやめておく。だって段ボール箱大好きな少女なので仕方ない。アホの娘なので仕方ないのだ。


 という訳で、ブッブーとシスはいい歳をしてバスごっこをして退却するのであった。意外に速度がでるので、なんとなく納得のできない表情であったが。


 それを見逃す訳もなく、冷凍ガスを差し向ける白い男。霧のようなガスが命中したところがあっという間にキラキラと霜が降りて凍りついていくのが恐ろしい。


 あっという間に氷の世界へと変わっていく中で、レキは怯まずに辺りを見渡す。管理者ルームはたんに機器のある部屋でしかない。特に障害物などもない。


 どんどん霧が部屋に充満する中で、光速の拳を白い男に叩き込む。光の軌道が白い男の頭、胴体、腕と命中するが、まったくその身体は揺るがない。さっきよりも揺るがないみたい。


「このイカさんは光速封じを持っているのでしょうか?」


 レキは先程よりもダメージの入らない様子に、コテンと首を傾げて不思議がる。


「光速攻撃は技の概念をのせないと、力があんまり伴わないのか………。光の速さにて、力を減じるというふざけた概念なんだ。残念ながら、力の減じない速度で戦うしかないぞ」


「大丈夫です、旦那様。音速ラインが私の一番戦いやすい速度なので」


 レキは拳をつきだし身構えて、自信満々に答える。このままイカを捌きますといった強気である。


 ちっこい右手を突き出して


『獅子神の手甲』


 カチャカチャと神秘的な白金の手甲が右手を覆い、そのまま力を入れ込める。瞬くような美しい星の光の如し粒子が右手に集まり、膨大な力を発する。


『超技 獅子神の牙』


 繰り出された拳から、黄金の矢が生み出されて敵を貫かんと空間に孔を空けて白い男に命中するが


「ぽふん」


 なんと常に敵を貫き倒す技を受けても、可愛らしい音がするだけで、技は掻き消えてしまった。


「むむむ? 吸収? 無効? どちらの力も感じなかったんだけどなぁ」


 遥はその様子に不思議がる。ありがちなエネルギー吸収タイプかな? その場合は弱いタイプの人造人間だから雑魚だねと思っていたのに、そんな力の流れは見えなかった。


 悩んでいる間にも、部屋は白く凍りついて


「へっくち」


 寒さでくしゃみをしてしまう。はて、くしゃみ?


 身体を見ると小柄な身体が、少しだけ凍りつきはじめていたので驚く。


「まずい! こいつ貫通攻撃をしてきて……貫通攻撃?」


 凍りついているのだから、レキの耐性を貫く攻撃だ。敵の様子を見るにレキのステータスを上回る攻撃というよりかは、防御無視の貫通攻撃をしてきているのではないかと考えたのだが……違和感を感じる。


「旦那様?」


 こんなパターンが私の膨大な体験の中にあったっけ? と考えるアニメや小説を思い出す遥に、珍しく旦那様が戸惑っていると、レキが気遣う。


「とりあえず私のカンストした知力が答えを出すまで、逃げ回ろう。透過属性を最後にぶちかましてから」


 最強の技だけど、なんだか効かない予感がするぜと、前回の敵を倒した最強技は次の強敵にあっさりと打ち破られるの法則を考えながらレキへという。


「了解です、旦那様。ていっ!」


 技は繰り出さずに、確認の攻撃を繰り出すレキ。風が巻き起こったようにしか見えない速さの拳撃であったが、やはり通用している様子はない。


「かみぃぃぃぃぃ!」


 同じ言葉しか言わない敵は冷凍ガスを吹き出しながら近付こうとしてきた。


「一応ウニでも攻撃しておこう」


 ていていっと、一応ウニでも攻撃したが意味はなかった模様。


 仕方ないですねと、レキは部屋の外へと移動して、防火シャッターを押下する。


 ゲームとは違い、一気にシャッターが降りてきて、敵から間合いをとったのでシスを追いかけていると、バニーガールが段ボールバスでドリフトしながら、外にいたミニチュアガーディアンの攻撃を躱していた。


「隊長殿! このロボットはイカに寄生されていました! あと、この人たちが起きそうなので、ウルフパンチで気絶して貰いました!」


 この人たちが起きれば、少しは楽になるはずなのに、バニーガール姿を見られるのを嫌がった模様。というか、ピンチなので変身したみたい。  


 レキは頭がイカになっているガーディアンへと光速拳を打ち込む。金属の塊であり、強力なフィールドを持っているのに、瞬時にプリンのように砕け散るガーディアン。


「とりあえず上に逃げましょう。このガーディアンを有効活用してから」


 そういって、バラバラになったガーディアンへとちっこいおててを掲げる。


 しばらくしてエレベーターで上階へと逃げる一行。そしてエンジンを利用して爆弾となったガーディアンが最下層で爆発を起こすのであった。

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― 新着の感想 ―
最初イカだっけ? キリカも記憶にない。 うーむw
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