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5話 ゲーム少女は説明書を読み始める

「で、どうなってるのこれ? ゲームの中に入ったの俺?」


 サクヤに問いかける。わからないことは調べる前に、知っていそうな人間に聞く。わかっていることでも責任が発生する作業の場合は他人に聞く。をモットーとしている小心者のおっさんである。


「ゲームの世界ではありません。あのゲームはライトマテリアルの結晶だったのです。ライトマテリアルがゲームという概念で地表に現れていたのです」


 サクヤがにこやかに答える。惚れそうな感じのいい笑顔である。


「あのOPの設定がそのまんま現実世界に持ち込まれたってこと? ライトマテリアルって何? DLCにつぎ込まれた金はどこにいったの?」


 と金のほうに話の重点を置きながら聞き返す遥。


「ライトマテリアルとは浄化の力です。結晶化して地表にでてくるのは千年に一度レベルですね。後、お金は知りません」


 サクヤの返答にお金は重要だよ、と思いながら続けて尋ねる。


「これ以外にライトマテリアルはあったりするの? …なんかこれ恥ずかしい響きなんだけど? 他人に聞かれたらいい歳して厨二病ねぇ? とか思われそうなんだけど?」


 と後者に重点を置きながら聞き返した。おっさん的にライトマテリアルとかいう語句はなるべく口に出したくない。恥ずかしいので、そういうのは若い子にまかせておきたいのである。


「残念ながら、今回のライトマテリアルはこれだけです。しかも概念はオフラインゲームでした。オンラインゲームの概念であれば、他の方も同じ力を得たのでしょうが」


 まじか、オフラインゲームとか関係するのかよ。ネットワーク必須のゲームだろ、最近の流行りは! と、ゲームを買う前にネットワーク必須を嫌っていたことを棚に上げて思う。


「ライトマテリアルを見つけるのは、宝くじ1等に10回連続で当たるくらいの運が必要です。おめでとうございます。ご主人様」


 ぱちぱちと可愛く拍手をするサクヤ。横でナインもぱちぱちと可愛く拍手をしている。


 二人とも可愛い。つられてぱちぱちと拍手をする。


 今はレキの体なので、3人の女の子がぱちぱちと拍手する可愛い風景がそこにはあった。一人は中身がおっさんだが。


 気を取り直して考える。


「拠点聖域化って、キャラのスキルにはついてなかったと思うんだけど?」


 一応スキルを覚えていた。買ったスキルが表示されていなかったので、気にはなっていたのである。

あと、覚えていたスキル少なかったし。これが、大量にあった場合はおっさん脳は覚えることを拒否していただろう。


 難しいことは仕事のことだけを覚えるようにしているのだ。他にリソースを割ける容量も脳には無い。

後、すぐに覚えた内容もデリートされることもあるのだ。


「拠点聖域化はマスターが拠点とした場所及び物につくスキルです。そのため、キャラにはついていません」


 ナインがパムと手を打ちニコニコと答える。


「なるほど。それじゃ、他のことを調べてみるか」


 外はゾンビだらけなので、家が攻撃されないとはいえ、自分の状況を確認する必要がある。遥は最近の小説で流行っている言葉を発した。


「ステータスオープン」


 超小声で。


 おっさんには耐えられない恥ずかしさであるので。


 しかし何も起きなかった。目の間にステータスボードが出てくることも、脳内にステータスが表示されることもない。


「ステータス見れない系? これ?」


 と不思議に思ったところサクヤが教えてくれる。


「脳内でよいので、タッチパネルを意識してボタンを押下するようにして考えてください」


 言われた言葉を反芻する遥。


「ステータス見るのゲーム準拠!?」


 ちょっとそりゃないよ。ゲームやってるんじゃないんだからさと思ったが、俺は今ゲームキャラになってるんだっけと思いなおす。


 脳内でタッチパネル押下とイメージすると目の前にステータスボードが出てきた。


「おぉ~。なんかいいね」


 少しわくわくしながら中身を見る。


 キャラのステータスを見るとこうなっていた。


朝倉 レキ(15歳)

LV1 next500EP

HP:100%

SP:100%

ESP:100%

状態:健康

筋力:20

体力:20

器用度:50

超能力:50

精神力:20

スキル:体術LV3、気配感知LV3、念動LV1、

料理LV1、装備作成LV1、調合LV1、状態異常

無効、自動蘇生、棒術LV1、短剣術LV1、

鍵解除LV1、罠解除LV1、電子操作LV2、治癒術LV2


朝倉 遥(年齢不詳※本人の希望による)

LV- next-EP

HP:100%

SP:100%

ESP:100%

状態:蘇生中(蘇生まで18時間40分)

筋力:8

体力:3

器用度:5

超能力:0

精神力:12

スキル:レベル上昇無効、経験スキル取得、

経験ステータス取得、状態異常無効、自動蘇生、料理LV1


「あぁ、俺蘇生中なのか」


 ホッとする遥。


 やはり自分が死んでもう男に戻れないのは嫌なのである。たとえその体がおっさんでも。


 次に拠点を見るとこうなっていた。


拠点:マイホーム

維持コスト:0

防衛力:1

防衛兵:なし

スキル:拠点聖域化


「防衛力1って、子供でも撃破できそうだな。シミュレーションなら、真っ先に狙われる拠点だな」


 再度DLCを買っておいて良かったと思う遥であった。


 次にサクヤたちのステータスを見ようとするが、キャラ一覧に出てこない。多分サポートキャラはステータスがマスキングされているのだろう。


「では、次はスキルの内容だな」


 スキルを選択すると詳細を見るというアイコンが出てきたので、見てみることにする。


 拠点聖域化から見ると、敵の潜入及び攻撃不可。維持コスト0にするとあった。本当はこのスキルがないと防衛戦があるのだろう。イージーモードのゲームでよくある面倒くさい部分は行わないといった感じのスキルだろうか。


「防衛が必要ないのはありがたいけど、これ人間にも適用されるの?」


 崩壊した世界ではヒャッハー盗賊系が怖いおっさんである。ナインに聞いたところ、全ての敵に適用されるとのことであった。


「防衛力は必要ありませんが、住みやすい家を作るために、様々な資材が必要です。高性能のクラフトツールの設置も拠点内にしかできません」


 クラフト系サポートキャラであるナインには絶対に必要なことなのだろう。顔を近づけてきてちょっと食い気味に言ってくる。


「なるほど。了解、了解」


 顔が近いので照れながら、次に見たのは自分のスキルである。


「レベル上昇無効はそのままレベルが上がらない! 経験スキル取得、経験ステータス取得は自分の行った行動でしかスキルもステータスも取得できないだと!」


 要はスキルを取得したかったら努力して覚えましょう。ステータスを上げたかったら体を鍛えましょうということである。


 おっさんが一番嫌う言葉であった。


「まじか。俺は現実準拠ってわけか」


 レキはゲームキャラである。そのため、経験値という見えない力でどんどこレベルを上げて、スキルを取得しステータスを上げられるということだ。


 チートである。即ちゲーム少女ということであろう。


 ゲームキャラに対して嫉妬をする遥。少し自分の体で無双とかしてみたかった感じもしたのである。


「レベル上昇時のポイントはいくつ?」


 サクヤに問いかけると


「レベル上昇時のステータスポイントは5です。スキルポイントは10レベルまでは、1です。11から20になると2。以降21から3と10レベル毎に1上がる形となります。ご主人様は3倍取得スキルがあるので、全て3倍ですね」


 と答える。


「なるほど。なるほど」


 DLCを買うときにあぶく銭があって良かったと思うのであった。


「しかしこのステータスの割り振りには問題があるな」


 そう呟いて悩む遥に不思議に思いサクヤが尋ねる。


「平均して20ありますし、スタートではかなり強いと思われますが?」


 サクヤを見ながら困ったように言う遥。


「いや、このステータス知力の項目がないじゃん! 俺、かなり適当にしか行動できないよ! 考えて行動なんて、仕事以外では無理だから!」


 あぁ、と納得するメイド2人。今までの言動から考察するに確かに知力の項目は必要だったかもしれないと思う二人であった。


「HPとか消耗するゲージは100%表記か」


 消耗するゲージは全て%で表記されているのを見る。恐らくはHPが53万でも、10しかなくても100%という表示なのだろう。


「だとすると戦闘時に怖いな」


 自分がどれぐらいの数値かわからないのである。敵からどれぐらいのダメージを負うかもわからない。なぜならレベルが上がったら、HP等も上がっている可能性があるので検証が難しいのである。そして検証などは痛そうだし、やる気も起きないのである。


「とりあえず、俺の体が蘇生するまでは家に引きこもるか」


 安全策を取ることにする。


 ゲーム時に使用キャラが全員死んだ場合はゲームオーバー的なことが書いてあった気がする。その場合は確実に片方が死んでも片方が生きている状態にしておきたい。幸か不幸かわからないが、外の状況もわからない。


 窓から見ているが、生きている人間がみえないのである。ちなみにゾンビたちは遥の家の前にたむろするという、よくゾンビ映画とかであるショッピングモール前にゾンビがうじゃうじゃと集まるといったことはない。恐らく拠点聖域化は相手に拠点の場所を意識させないような能力もあるのだろう。


 たしかに攻撃されないだけで、周りにゾンビが集まっていたら、外にでれないので拠点聖域化があまり意味のないスキルになると思われるので納得である。


 テレビをつけて、ニュースを見てみる。何かしらの報道があるのではないか? また、自衛隊が救助活動をしているとか避難場所の説明とか、アナウンサーがしているのでないか? と思ったからである。


 災害時には避難場所のお知らせを絶対にニュースでしているはずである。


 だが、テレビに映っているのは予想外の映像であった。ピーという音と最近深夜にテレビつけることがなかったので見なかった放映中止中の縞々画面が映っていたのである。全局そうなっていた。


 慌ててPCを立ち上げて、掲示板を見ようとしたところ、なんとネットワークに繋がらない。スマフォから見ようとしたが、圏外と表示されており、ネットワークどころか、通話さえできない状態であった。


「なんでこんなことに? インフラ系は最重要防衛施設だろ?」


 想定外の事が起きて困惑する。少なくてもネットには接続できると思ったのである。


「恐らくダークマテリアルによる変異した生命体の仕業かと」


 サクヤが推測した内容を話してくる。


「どんな攻撃? 怪獣? 放射能ブレスでも吐いて電子部品全滅?」


 聞き直す遥に対してサクヤは笑顔で答える。


「いえ、恐らくネットワークなどの通信機器は大量の負の発生原因であった可能性があります。通信機器を恨んで破壊行動を行うダークマテリアル変異体がいた可能性があります」


「なるほどねぇ。たしかに通信機器は負の発生原因ではあるかも。通信衛星やらなんやらを破壊できるやつがいるってのはかなり怖いけど」


 テレビはもちろん、インターネットだって様々な内容が流れている。通信機器に対する負のイメージがある可能性は否定できない。


 おっさんも今日は休みだからということで酒を飲んで寝ていたら、社用携帯電話を支給された上司が社用携帯を使いたがって無駄に呼び出しをメールやら電話やらでうけて、なぜ携帯電話など作られたんだ~!と思ったことがある。その後、偶然カバンに入れっぱなしで気づきませんでした。という言い訳が会社では流行ったわけではあったのだが。


「電気や水は必須だから大丈夫というわけか」


 先ほど作ってくれた食事に対して遥は思う。電気や水に負のイメージを持つ人間は少ないだろうと思い聞いてみると──


「いえ、拠点聖域化の力です。維持コスト0なので電気、水、インフラ関係はスキルの力で生み出されて使い放題です」


 と、ナインが平然とした表情で普通では有り得ない答えをしてくれた。


 拠点聖域化が一番チートではないかと思う遥であった。

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― 新着の感想 ―
ネットとスキルによる冷蔵庫の中身もあれば一生生きていけそうなおっさんである
[一言] この章をありがとう
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