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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
31章 主人公がいないとどうなるか見よう

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492話 地下戦線

 ガシャガシャとアサルトライフルを担いで、婆ちゃんズは地下通路を走っていた。錆びた金属製の通路は走る音がよく響き、敵へここにいますといっているようである。


 もちろん敵も同じ条件であり、こちらを包囲するためにガシャガシャと武器の音をたてているので、すぐに倒せるわけだが。


「それにしても敵だらけですね?」


 軍ヲタが息を切らすこともなく、会敵した敵をアサルトライフルで打ち倒しながら言う。


「たしかに敵は多い。即ち防衛拠点が近いということだな」


 ぞろぞろと現れたミイラ兵士へと銃撃戦を行いながら、土の爺が子供が見たら泣きそうな笑みを浮かべる。爺たちも攻撃に加わりあっという間に戦いは終了だ。


「敵の作戦会議室、何個あるかは知らないが、重要書類があるはずさね。今まで襲った作戦会議室も同じような書類があったしね」


 敵を駆逐して到達した部屋。そこには徳島196作戦会議室と書かれていた。この数日、コマンドー婆ちゃんたちは作戦会議室を中心に戦っていたのであった。


「今度こそ当たりだと良いんだけどね」


 ギィと錆びた音をさせて重い金属製の扉を開けつつ、中の様子を警戒しながら敵の重要書類がありますようにと念じる。


          ◇


 埃臭く錆びた色の部屋へと風と水の爺を外に残してアサルトライフルを構えながら早足で入っていく。が、すぐに異常に気づく。ミイラたちが眉間を撃たれてことごとく倒されているのだ。


 ミイラが倒れ伏す中で、奥の椅子に何者かが座っているようだが背もたれに隠れて見えない。ただ見えない相手の紙を捲る音だけが妙に耳に残る。


「まったく、足が遅いミイラでも書類を片付けることはできるのよ? もう少し静かに行動できないのかしら。私みたいに」


 からかうような、どこか妖しい色気を感じさせる声音には聞き覚えがある。だからこそ、フンッと鼻を鳴らして構えを解きながら言ってやる。


「すまないね。こちとらガリガリの武闘派なんでね、あんたとは違うのさ性悪娘」


「仕方ないわね、飯田さんには報酬をたっぷりと貰わないといけないみたいね」


 くるりと椅子を回転させて、その姿を見せたのは赤い服装の上に灰色のコートを着込んで妖しく笑う女武器商人五野静香であった。その手元には丸秘と書かれた紙切れを持っていた。


「報酬は昼行灯が出すんだ。私は知らないね、それよりもあんたが来たのかい?」


「えぇ、こ〜んな書類仕事をする敵だから情報部へと救援を要請したみたいだけど、本部は事実関係を確認してからとか時間稼ぎをして出さないみたいなの。だから私だけが動いているみたいね」


 チッとその話に舌打ちしちまう。今回は本部抜きの戦場の予定だった。それがご不満でエリート野郎が横から妨害しているに違いない。


 だが、その代わりに来たこの女は優秀だ。信用はできないが、スパイなんてそんなものだろう。女武器商人? 冗談にしても面白くはないね。


「で? なにがわかったんだい?」


 じろりと睨むが、大人でも怖がるアタシの視線をどこ吹く風と受け流して、平然とした様子で紙切れを差し出してきた。


「見なさい、これを。徳島県の生き残ってきたコミュニティを潰しにかかっているわ。どうやら飯田さんの地下攻勢を受けて、もはや必要ないと考えたのでしょうね」


 紙切れには赤い丸がいくつも書かれており、進行度も示されていたので


「チッ、もう必要ないと考えたんだね! 判断の早い指揮官だね、まったく! 優秀過ぎて嫌になるぐらいだ」


 紙切れを叩きつけて、避難民たちの無事を祈る。この場合は手遅れになるかもしれない。この余裕綽々な娘がなにもしていない場合だが。


「当然、対抗策は打ってあるわ、それも依頼の範疇だしね。今頃は私のお人形たちに格納庫をやられてそれどころではないはずね」


 クスリと妖しく笑う性悪娘。しっかりと仕事はしているようさね。


「あんたの連れている二体のお人形かい。それなら時間稼ぎができる訳だ」


「私はか弱い乙女だから、可愛い人形が常に戦ってくれるの。貴女たちも私を保護してくれても良いのよ?」


「抜かせ! アンタがか弱い乙女なら、アタシもか弱い乙女になっちまうね」


 さっさとここを離れるよと怒鳴って、全員で安全な場所まで移動するのであった。


           ◇


 離れた場所に隠れ潜み、性悪娘の手にした書類を皆で見ていく。それぞれ紙切れを見て、先程の物より重要な書類がないか探すが、特になにもないようだ。


「そうね、丸秘なんて書かれた分かりやすい物も貴女たちは見つけることができなかったんでしょう?」


 からかうように薄い笑みで性悪娘は言ってくるが、たしかにグウの音も出ない。あたしらはこういったエージェントがやるような仕事は苦手なんだ。


「でもこれ以上の情報はないようだし、次の場所へと行こうかしら? 陽動をお願いできる?」


「あぁ、良いだろう。では次の場所は……」


「ま、待ってください!」


 陽動はこちとらの得意分野だと話し合おうとした時であった。軍ヲタが数枚の書類を勢いよく捲りながら、こちらへと口を挟んできた。


「これ、平文のなんでもない書類に見えますが、暗号文ですよ! 巧妙に作成されているのでわかりにくいですが、第二次世界大戦時の大日本帝国の暗号文です!」


「ほぉ〜。暗号文ねぇ……とすると丸秘も陽動のための欺瞞かい?」


 ニヤニヤと口元をにやけさせながら、性悪娘へと視線を向けると、ピクリと頬を引き攣らせながら尋ねてきた。


「ちょっとちょっと第二次世界大戦の暗号文をなんで解読できるの? 貴方、どうなっているわけ?」


「はっ! 自分はこういった軍関係が好きでして……」


「軍ヲタって訳だね。で、そこにはなにが書いてあるんだい?」


 アタシたちはニヤニヤと、性悪娘は不満そうに軍ヲタを眺める。軍ヲタはしばらく見ていたが顔色を興奮で変えて伝えてくる。


「これは空母のエンジンのことについて書かれています! 欠陥部分を改修できないか……。場所も書いてありますね。どうやらなにかを素に88箇所からエネルギーを吸い上げているみたいです! だが、この改修部分は……」


「改修部分なんてどうでも良いだろう? その場所を教えな!」


「あ、えぇと、ここから近いですよ、どうやらこの空母の後部が徳島県辺りだったようですね」


「良いだろう、出発だ!」


 軍ヲタを先頭にどうやら敵の先制をようやく取れたみたいだとコマンドー婆ちゃんは笑うのであった。


           ◇


 エンジンルームへの道は二車両が通れる程の大きさであり、一見小さな格納庫にしか見えない。だがよくよく見ると戦車は10式でミイラ兵士はアサルトライフルを持っており、ここがかなりの重要拠点だと伝えてきていた。


「このような通路はこの先何個もありますよ。どうしますか?」


 軍ヲタがその様子を通路の影から覗いて、ゴクリと息を呑む。数で押されたらこちらはやられるだろう多さだ。


「天井が高いのが敵の弱点ね。ちょっとお姉さんに任せなさい」


 静香はウィンクすると、鉄骨が梁となっている天井へとワイヤーガンを撃ち出す。ワイヤーが弛む音がして梁に突き刺さるとワイヤーを引き戻してフワリと梁までコートを翻しながら飛んでいく。


 トンと軽やかに梁の上に立つと、周りを見てフフッと妖しく笑って懐から新しい銃を取り出す。


「秘密道具の出番ね」


 梁にぶら下がっているクレーンへとその銃を向けると、ギューンと音がして、クレーンが火花を散らして下へと落ちる。もちろんその真下にあった戦車を巻き込んで。


 警備していた自衛隊ミイラ兵士たちは集まって、クレーンが落ちた影響かと確認して


「事故か?」

「古い物だからな」

「兵器だけでなく製造所も力を入れればよいのになぁ」


 自衛隊ミイラたちはお互いによくあることだと話し合いながら警備に戻る。


 天井には静香がいたが、気づかれることはなかった。


「それじゃ次の場所へと移動しましょう」


 コマンドー婆ちゃんたちも警備が崩れた瞬間を狙って移動を終えたのを確認して、スルリと影のように通風口を使って移動するのであった。


          ◇

 

 数度同じことを繰り返すと、通風口の先に違和感を感じた。なにかがいるとなんとなく気配で感じられるのだ。


「まぁ、エンジンルームに近づく形でクレーンが落ち続けたら、誰でもわかるわね」


 恐らくは自衛隊ミイラが数人待ち受けている。だが、たったそれだけで待ち伏せとは笑わせてくれる。


「次の秘密道具の出番ね」


 機械式クロスボウを取り出して、鼻歌交じりに爆弾のついた矢、即ちマインスロアーをつけて、酷薄な笑みを浮かべて地形を確認しておく。


「ここと、そこ、それにそこね」


 角や下に落ちやすい場所へと取り付けるとピピッと音がして仕掛けられた。青い光が輝いているが敵にはもちろん見えない。静香特製のゲーム仕様武器だ。


「それじゃ、行きますか」


 なんの躊躇いもなく通風口を進むと、ガロンゴロンと音が響くので敵が気づいて、銃を構えて飛び出してきて


 どかんと爆発して、その肉片やらが飛び散る。


 他に隠れていたミイラ兵士たちも同様にドカンドカンと的確な場所に設置されたマインスロアーに引っかかり吹き飛んでいくのであった。


「ごめんなさい、私は罠系ゲームも得意なのよ」


 薄っすらと笑みを浮かべつつ通風口を抜けると、エンジン前の格納庫に辿り着く。位置的にもここが最後だろう。


「美女を歓迎するパーティーなら、残念ね。あっちは老人ばかりよ」


 面倒くさいと嘆息して見る先には、梁に数人のミイラ兵士が待ち受けており、ロケットランチャーをコマンドー婆ちゃんたちが来るだろう入口へと向けていた。


「貸し一つかしらね」


 ワイヤーガンを一番近いミイラ兵の頭上の天井へと撃つ。シュルルと音がして、天井へと貼り付きすぐにそれを引き戻す。体重がないかのようにフワリと静香の身体が浮いて、天井へと近づくとワイヤーを途中で切って、慣性の力のままにミイラ兵士へと飛んでいく。


 ミイラ兵士はその姿を見て周りの味方に警告の言葉を発しようとするが、既に遅かった。コートを翼のように広げ、猛禽のように襲いかかる静香は特製デリンジャーを構えており、あっさりとその眉間を撃ち抜くのであった。


 放り出されたロケットランチャーを手にして、静香は他のミイラへと向ける。


「四発入りとは景気が良いわね」


 呟きながら容赦なくロケットランチャーの引き金を三回弾く。シュバッと噴煙が飛び出して、ロケット弾の群れがミイラたちに命中して待ち伏せ部隊は全滅するのだった。


「続いて敵の戦車たちね」


 最後の一発をコマンドー婆ちゃんたちが入ってくる一番近くの戦車へとぶち当てると最新式にもかかわらずブリキの玩具のようにバラバラとなって、辺りにいた兵士たちへと散弾と化して打ち倒していく。


 その行動を見てとったコマンドー婆ちゃんたちは、連携もとっていないのにタイミングよく突入して残りを撃破する。


 静香はスタンと飛び降りて、近寄ると妖しく微笑み腕を組む。その立ち姿は絵になっており、某子供な美少女では無理であろう。


「結構早いのね? もう少しかかると思ったわ」


「こっちこそアンタがやられるんじゃないかとヒヤヒヤしていたよ」


 コマンドー婆ちゃんも静香の皮肉に平然と答えながら周囲を見渡す。


「あれがエンジンルームに続く道かい?」


「そうみたいね」


 映画に出る様な大きな金庫のような扉。いかにもと言ったところだ。


「あんなかにエンジンがあると思うかい?」


「良いとこその前と言ったところね、怪しいことこの上ないわ」


 鍵はかかっていないようで、ゴゴゴと音をたてて扉はずれて開いていくのだった。


           ◇


 扉が開ききった瞬間に豪雨のような銃弾が降り注いできた。


「襲撃成功したり!」


 機嫌良くミイラが叫ぶが、その言葉を口にしたまま頭が吹き飛ぶ。


 なぜか扉の方から。


「歓迎ありがとうよ。そしてサヨナラだ」


 コマンドー婆ちゃんたちは鹵獲した戦車を盾にしながら、楽しそうに笑った。そうして銃を撃ち出す。


「ウヌッ! 対抗せよ!」


 敵も幾人か倒れるが、めげずに反撃をしてきて、あっという間に辺りはバラバラと銃撃音が鳴り響く戦場へと変わっていったのだった。

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― 新着の感想 ―
BBAはか弱くてもBBAでしょ。乙女はないわー いや、おばあちゃんですね!
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