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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
31章 主人公がいないとどうなるか見よう

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489話 コマンドー婆ちゃん苛立つ

 四国に大樹軍は続々と上陸をしていた。青い海が後ろには広がりその浜辺にはゴミも浮いておらず、綺麗なものであった。


 崩壊前にもこのような綺麗な海であったのだろうかと思う中で、揚陸艇から上陸を始める戦車が横を通り過ぎて行く。


 その様子を見ながらコマンドー婆ちゃんはイライラとビーフジャーキーを口に入れて噛んでいた。


 ブチリと噛みちぎり、咀嚼していると鋭い眼差しの体格の良い老人たちが砂浜をザクザクと踏みしめながら近づいてきた。


「ずいぶんと不機嫌じゃないか? ええ?」


「あん? 別に不機嫌じゃないよ、いい加減なことを言うとはたくからね」


 自分でも説得力がないと思いながらも否定をするコマンドー婆ちゃんに肩をすくめるにとどめる老人たち。常にコマンドー婆ちゃんと一緒に行動している三人だ。もう一人いるのだが、アホ娘のお願いでひ弱な超能力者を鍛えに行っている。


「お前がそう言うなら、そういうことにしておいてやる。それよりも嬢ちゃんの行方はわかったのか?」


 特に追求してこないその態度は長年付き合ってきたからこそだ。


「本部からの連絡だと概念から成る地形を破壊できる兵器を試して貰ったとのことだよ。その力で空間の狭間に入ってしまったんだろうと言っていたよ。四国の概念地形が無くならない限り脱出は時間がかかるとも言っていたね」


 白衣を着た科学者たちが平然とそのことを伝えてきた時には、ぶん殴ってやろうかと思った程だ。なにしろ試験も行わずに理論だけで制作した兵器らしい。


 概念地形は作成不可能な物なので、試験はできなかったと飄々とした顔で言ってきたので、次に製作した兵器はあんたらが最初に使用しなと怒鳴ってやったら、たじろぎ怯んでいたが、ざまあみろだ。


「では少しでも早くこの四国を攻略しないといけないですねぇ」


 もう一人、のんびりとした口調でやってきたのは昼行灯こと飯田中佐だ。ポケットに手を突っ込みながら浜辺を歩いてきていた。


「本部のやり方は相変わらず非人道的ではありますが、それでもお嬢ちゃんを心配している人たちも存在します。それに今回は水戸さんも行方不明になっていますしね。早く救助に向かわないといけないでしょう」


「やることはわかっているんだ。水戸の小娘もアホ娘も助けてぶん殴ってやらないとね」


「そうですねぇ。………今回は本部は四国攻略に加わっていません。そこらへんもなにかわからない妨害が入ったと思いますよ」


 攻略作戦を本部抜きで行動することに反対派がいることは間違いないだろう。その派閥がお嬢ちゃんたちを行方不明にして時間稼ぎをしている可能性もあるはずだ。


 飯田は常にちゃらんぽらんの様子を周りに見せながらも、頭では様々な可能性を考えていた。

 

 まさかエネルギー解放アタックをしたかっただけのアホな少女がいるとは思いもしなかった。ツヴァイたちの辻褄合わせが大変だったので、おっさんはツヴァイたちを帰還したら労らないといけない。


「どちらにしても、四国攻略は必須です。まずは徳島県、香川県高知県に愛媛県と順々に攻略をしていきましょう」


「戦国時代よろしく攻略していかなくてはいけない訳だ」


 土の爺さんは面倒そうに言うがそのとおりかもしれない。コマンドー婆ちゃんは一足飛びに攻略を進めたいと考えてはいたが、戦争でそれをやるのはかなりの危険を伴うとも知っているので、苛立つだけに押し止める。


「瀬戸大橋もなくなったみたいですし、船で輸送しないといけないのが四国攻略のネックとなりますが……。うん? どうかしましたか?」


 戦車のそばにいた整備兵が慌てた様子なので、飯田が尋ねると整備兵は中佐と理解して、直立不動で答える。


「ハッ! ハリネズミが自動起動を始めまして、なにか変な操作をしたかをパイロットに尋ねようとしております」


「ハリネズミが自動起動?」


 たしかに戦車はよく見ると、ミサイル迎撃用ビームバルカン搭載の戦車であった。名称はハリネズミである。その12門のビームバルカンが独自に動いており、各砲が空を向いて動いていた。


「まさかっ?」


 その意味に飯田はすぐに気づき、目を見張る。


 コマンドー婆ちゃんも熟練の傭兵であり、ハリネズミがどうして起動したのかを理解して周りへと怒鳴る。


「敵襲だっ! 皆、注意しなっ!」


 すぐに肩にかけた小銃を手にして砂浜を蹴り、戦車の影へと隠れる。同じように爺たちも状況を理解してすぐに駆け出して装甲車の影に隠れる。その様子を周りの兵士たちはキョトンとした表情で見ていて


「敵弾確認。自動迎撃開始します」


 輸送されていたハリネズミ戦車が一斉に空へとビームバルカンを放つ。エネルギーが放たれる音がして、無数のビームの弾丸が空へと飛んでいき、空中で突如として爆発する。


 爆発して炎を周りに撒き散らす様子を兵士たちはポカンと見て、すぐにその意味を悟り血相を変えて叫ぶ。


「て、敵襲〜っ! 敵襲〜!」


 その言葉を合図にしたのかは不明だが、浜辺奥の森林から銃撃音が響き、砂浜に弾痕による穴が無数に空く。同じように兵士たちにも命中していきフィールドワッペンが働き弾いていくが、嵐のような銃撃にフィールドが消えてしまう者も発生してしまう。


「チッ! 昼行灯、さっさと艦に戻って指示を出しなっ! ここはあたしらが抑えておくよ!」


 コマンドー婆ちゃんはすぐに戦車の影から小銃を構えて、銃撃音のする方向へと撃つ。とりあえず反撃をして軍が崩れることは防がないといけない。


「すいません、ここはお任せします!」


 飯田は真剣な表情になり、浜辺を空中輸送艇まで駆けていく。普段はのんびりとした様子を見せても、すぐに状況を判断できる有能な男だ。


 その様子を見送って、周りへと指示を出す。


「戦車隊! さっさと砲撃を開始しなっ! 装甲車は兵士の前に横付けして盾になるんだよ! お互いにフォローして歩兵は反撃だ!」


「りょ、了解! 戦車隊砲撃開始せよ!」


 戦車隊の隊長らしき兵士が慌てた様子で指示を出すと荷電式戦車は反撃を開始する。


「森林内に炸裂弾発射!」


 戦車砲に電磁の光が輝き、レールカノンが炸裂弾を発射、森林へと攻撃をし始めて、木々を吹き飛ばす。


 戦車隊の攻撃であっという間に轟音が周りに響く。


「ババア! 敵はなんだと思う?」


 自動小銃の引き金を引いて風の爺が聞いてくるが、敵の姿は森林に隠れており、忌々しいことによくわからない。だが、軍服を着ているような感じもするので、敵も組織だっているのかもしれない。


「空中に敵あり!」


 どこかの兵士の言葉に空を見ると、プロペラ機が数十機もこちらへと向かってきていた。


「あれは零戦か?」


「プロペラ機だからと零戦とは限らないが……古い亡霊のようだな!」


 爺たちが目を細めて空を見据えるが、正直機種などどうでも良い。肝心なのは爆弾を積んでこちらへと向かって来ていることだ。


「迎撃機は出ているのかい?」


「今まで空中の敵はあまりいなかったからな! 警戒する必要はなかったから無いだろう!」


 わかってはいたが舌打ちする。傭兵を数十年やってきたというのに、最近の戦いに毒されていたようだ、こんな間抜けな姿を見せてしまうとはね。


「ハリネズミは回せるのかい?」


「期待できないな! 敵の迫撃砲かなにかの攻撃が激しすぎる!」


 話している間に日の丸をつけたプロペラ機が迫ってきて、そのまま急降下してくる。


「昔のお家芸とかいうやつをやってくるぞ!」


「チッ! ハリネズミが狙いか!」


 今や空中にはビームバルカンの迎撃により爆音と爆炎が広がり激しい防衛が行われていたが、それを敵は理解しているのだろう。ハリネズミへと急降下爆撃を仕掛けてきていた。


 ハリネズミの真上で小型の爆弾が投下されて、近すぎて迎撃できないために爆発が起こる。


 爆煙が戦車を覆うが、ハリネズミはさすがの防御フィールドを持っており傷一つ負っていなかった。しかしそれを予想していたのか数機が同じように爆撃してきて、ハリネズミのフィールドをガリガリと削っていく。


「これじゃ好き放題に攻撃されちまう! あのプロペラ機をなんとかしないとまずいぞ!」


「ハリネズミはこちらのデッドラインだ。あれがやられたら崩壊しちまうな!」


 爺たちが口々に言うので、考え込む。あれを倒せはしないまでも混乱させないと全滅しちまう。それにあれが全部だとは限らない。


「仕方ないね! 直したばかりだってのに整備兵には嫌な顔をされるだろうが、ブラックタイガーを使うよ!」


 バングルでブラックタイガーを呼び出す。命令を受領しましたと表示されたのですぐに来るだろう。


「やれやれバイクで戦闘機と戦うのか?」


「はっ、コチラのバイクは最新型さね。プロペラ機なぞに劣るもんかよ」 

 

 そう怒鳴ると、ニヤリと口元を曲げて爺たちは面白そうな表情を浮かべる。


「たしかにそのとおりだ。バイクで空の旅を楽しもうじゃないか」


「では各々方。無謀なる旅へと向かうとするか」


「即ちいつものことと言うわけだな」


 ブラックタイガーが空中を駆けて、こちらへと向かってくるのを見てそれぞれ悪そうに笑うのであった。


          ◇


 ブラックタイガーに跨り、空へと飛行すると戦闘機の様子がわかる。連携してハリネズミへと攻撃を仕掛けてきており、周りの兵士たちはガン無視している。爆弾を撃ち込んだ戦闘機は帰還を始めており、もはや数機程しかいないが


「お婆さん、どうやら新たに敵戦闘機群が接近中です。ハリネズミのフィールドもこれ以上の攻撃をうけたらまずいので、申し訳ありませんが迎撃をお願いします」

  

 昼行灯がブラックタイガーのモニターに映り、申し訳ないと言いながらヘラヘラと笑って指示を出してきた。その声音には真剣さが混じっているけどね。この攻撃が続いたらまずいと理解しているのだ。


「他の空騎隊も迎撃に向かいますので、どうかよろしく」


「レーダーは何をしていたんだい? これだけの敵の攻勢に気づかなかったぐらい馬鹿なのかい?」


「いえ、どうやら欺瞞攻撃がされていたようで、レーダーは一貫して敵を映し出していませんでした。現在ようやく敵の機影を確認できた程でして」


 チッ、と舌打ちする。今回の敵は厄介らしい。軍隊として行動してやがるね。そうだとするとかなり危険な相手だ。化物よりも軍隊の方が余程危険なことを経験で知っている。それが化物であり軍隊であるとしたら、厄介さも乗数的に上がるに違いない。


「敵確認、数36機。敵性能の解析を始めます」


 AIのプラーが常に冷静な言葉を告げてくるので、前方を見るとバラバラと虫の羽音のような音を響かせてプロペラ機の編隊が接近してきていた。


「性能を見るほどじゃないと思うけどねっ! こっちも迎撃を始めるよっ!」


 先制して荷電粒子砲を展開させて放つ。プラズマが空気を焼き、高熱を伴うビームがプロペラ機へと薙ぎ払うべく向かうが、プロペラ機は驚いたことに木の葉が風に煽られて飛ぶようにひらりと旋回して躱していく。


「なんだいありゃ!」


「あれが第二次世界大戦の日本軍の戦闘機というやつか」


「どうやら戦闘機の旋回性能は恐ろしいようだな」

  

 たしかに旋回性能だけは高いとは聞いていたが、タメが長いとはいえ荷電粒子砲を回避できるとは凄まじい戦闘機だね。厄介極まる敵だ。


「このバイクのデメリットが出ちまったか。バルカン系は搭載していないぞババア」


「仕方あるまい。こちらの思い通りに倒される敵はいないと言うことだな」


「あんたら、接近してビームライフルで片をつけるよ!」


「なんというか、原始的だな。最新式に乗っている割には」


 全員が好き放題言って、ブラックタイガーに搭載されていたビームライフルを取り出して構えながら、ブラックタイガーを加速させる。戦闘機群はこちらと会敵するが無視をしてハリネズミへと向かおうとするのでそうはさせない。


 チャキリとビームライフルを構え、一番近い敵へとビームを放つ。白い光が放たれて、戦闘機の羽根をあっさりとチーズでも切るように溶かしていき、即座に炎に包まれて戦闘機はきりもみをしながら落下していく。


「はっ! 装甲は紙だね。それも第二次世界大戦と同じということかい!」


 くるりとバイクを旋回させて、通り過ぎようとする戦闘機へと連射をする。薙ぎ払うのではなく敵の羽根を貫通させて穴を空けていくのだ。それだけで敵の戦闘機は滞空できずに墜ちていく。


 だが、ビームライフルの射程はそれほどでもない。かなりの高速で飛行している空中戦では命懸けになるだろう。


「いつものことだね! それより敵兵の姿を見たかい?」


 通信モニターに映る爺連中は頷き


「見たぞ。なんというか、ミイラみたいな奴らだな」


「戦時の兵士たちがミイラ化して化けて出てきたようだぞ」


 自分も戦闘機へと最接近して、すれ違う際に見ていた。肉はなく骨と皮だけになったような化物たち。ゾンビとは違い、たしかにミイラ化したような蝋化しているような奴らであった。


 こちらがすれ違う際に、暗闇しかない眼をこちらにはっきりと向けていた。殺意を感じたので多少の意識はあるのだろう。


「彷徨い歩く亡霊たちか」


 水の爺が通信しながら、バイクを切り返してビームを放つと戦闘機がまた一機墜ちていく。


「空を飛んでいるがな」


 冗談を言いながら、土の爺がビームラムをブラックタイガー前面に発生させて、敵の戦闘機の羽根をもぎ取っていく。


「しかし……。とすると地上の敵も想像がつくな。亡霊たちが攻撃してきているか」


 風の爺が考え込みながらも、敵の旋回に合わせて未来予測射撃で正確な攻撃をして戦闘機を撃墜する。


「考えるのはあとだ! 戦闘機の奴ら、こっちを敵とみて目標を諦めたぞ!」


「ちょうど良いさね。全滅といこうか、文字通りにね」


 軍隊用語ではなく、文字通り全滅させるべく迫りくる戦闘機へと対峙する。機銃から轟音が響き、こちらへと銃弾が迫るが


「性能が違うんだよ! スクラップはもう一度眠っちまいな!」


 ブラックタイガーのフィールドにより、その攻撃は防がれてカウンターで撃ち返すビームは確実に敵を撃墜していく。


 4機のバイクは旋回では負けるが、人が攻撃の要、ビームライフルを持っているので、その攻撃は全周囲だ。


 すれ違いざまに後ろへと向けて撃ち放ち、あるいは木の葉のような舞を見せる芸術的な回避に対して、ビームライフルで強引に叩き壊す。


 ドッグファイトは確実に敵を倒していき、少ししたら戦闘機編隊は全滅するのであった。


「フィールド残り37パーセント。残りフィールドを考慮すると本機は撃墜される可能性あり、帰還を推奨します」


 プラーが安全策を提示してくるので、鼻で笑ってやる。


「未だに地上は迫撃砲の雨を貰っているだろ? そっちも片付けないといけないからね。援護に行くよっ!」


 そう怒鳴ってアクセルを全開にする。ハリネズミはビームバルカンでなんとか防衛しているが、薄氷を踏むような防衛で何個か砲弾を通しちまっている。


 兵士が何人かその攻撃で吹き飛んでいるのが見えている。幸いフィールドワッペンが発動して致命傷は負ってはいないようだが、ワッペンが壊れて怪我をしている兵士たちはいて、衛生兵が走り回って回収していた。


「制空権を取られるってことが、どういう意味かを奴らに教えてやるとするかね」


 コマンドー婆ちゃんは、凶悪な笑みを浮かべて爺さんズと共に地上へと向かうのであった。

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