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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
28章 慰霊祭をしよう

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462話 大樹の長いかもしれない一日

 空に浮かぶ空中都市、大樹本部。その中心部である統合ビルでは激しい戦闘が行われていた。


 タタタと乾いた銃声音が響き、爆発音がそこに混じる。高級ホテルの内装のような美しいお金のかかったと思われる壁や床には赤い色が広がっていた。


 柱の影には人影があり、素早く身体を覗かせると銃の引き金を弾く。トタタタと連続した銃声と、それに合わせて撃たれた相手が倒れ伏す。


 それを見て、撃った相手は柱の影から飛び出す。


 ぴょこんと現れたのは幼女であった。ブンブンとちっこいお指を振りかざして相手へと少し怒って言う。


「え〜、今のんたんも当たったでつ!」


「当たってないでつ。ほら、床に当たったおみじゅが跳ね返って服についたんでつ」


 ほらほらと相手のこれまた幼女が服を見せると赤い色の水がちょこっとついていた。よくよく見ると床のも赤い色の水である。というか、周りの皆、幼女であった。


 銃の弾丸も特殊弾であり、ぶっちゃけ小さな水風船であった。当たると水が飛び散るシステムだ。ペイント弾ではないのは、あとでこの遊びが終わったあとに、おそうじが大変だからであったりする。ドライたちはしっかり者なのだ。


 銃声や爆発音も大樹の超技術により、水鉄砲から音がなっていた。水鉄砲といっても見かけは本物そっくりであり、弾丸が当たった箇所には短時間ホログラムが発生して銃痕が残るようにもなっていた。実に資源と技術の無駄遣いである。


「ねーねー、小梅たん、あたちもっとあしょびたい」


 倒されて一見血まみれの幼女がコロンと仰向けに転がって、口を尖らせて文句を言う。最初にやられたので、以降はずっと死体役であったので、退屈になっちゃった幼女だった。


「しょーがないでつね。それじゃ、ゾンビは2回までOKにしまつか」


「わ〜い、それじゃあ、あたち復活!」


 きゃあきゃあと笑顔になって喜んで立ち上がるドライ。周りのドライたちも、もっとたくさん遊べるねと笑顔でいたが


「まじゅいでつ! パンピーせっきんちぅ!」


 一人のドライが近づいている一般人に気づいて警戒を促す。すると、他のドライたちはガタイの良い軍人やら、強そうな強面のガードマンに変身する。


「やめろ! こんなことをして何になるんだ!」


「那由多代表は甘すぎるのだ! 我々は特権階級となるべきなのだ」


 怒鳴り合い、銃を激しく撃ち合う血煙漂う世界へとあっという間に変貌する。学芸会を楽しむ気満々な幼女たちであった。


         ◇


 その少し前に、市井松詩音は慰霊祭後のパーティーに出席するべく、大樹本部の控室でのんびりと待っていた。控室といってもパーティー会場より多少狭いだけで、ウェイターもいてトレイに飲み物を持ってお客に配っており、軽食もビッフェスタイルでテーブルに並んでいるので、大勢の人々が寛いで待てる過ごしやすい部屋である。


 人脈を作るべく可憐で、か弱い少女の演技をしつつ周りへと話をしていたら、部屋に銃を持った兵士がどやどやと雪崩込んできた。その数は10人程。全員小銃を持った物騒な者たちである。


 しかめっ面で周りの客へと小銃を向けて、兵士は怒鳴るように叫ぶ。


「静かにしろ! 我々は大樹革命軍の者だ! 大人しくしていればなにもしない!」


 そのセリフを聞いた客たちは一瞬瞠目して驚きを示しただけで、慌てる様子も恐怖する様子も見せない。逆に冷静にしている客を見て兵士たちの方が戸惑って顔を見合わせていた。想定では騒然として恐怖に泣きわめく者や命乞いをしてくる者がいると考えていたのだろう。


 詩音も冷静にウェイターから受け取ったグラスに口をつけた。飲み干すのに時間をかけて精神を落ち着かせる。周りの人々は動じていない。予想をしていたのか、このようなパターンでも驚くに値しないとかだろうか。


 ここがまさに世界の中心部であり、選ばれた者たちだけが住める場所なのだとその様子だけでわかる。反対に泣き喚く者がいたら、がっかりとしただろうと詩音は思った。


 ならばこそ、ここで恐怖の表情を見せるのは逆効果であると推測した。こんなことで自分の評価が一段下げられるのはたまったものではない。なので、内心では驚き恐怖していたが、表情には出さすに隣で護衛していたセバスたちへと冷静に顔を向ける。


「ねぇ、セバス、これはどういうことなのかしら?」


「さて……本部でこのようなことを許すとは、話に聞く限り那由多代表らしくはないと思いますが、ウェス殿?」


 セバスは顎に手をあてて、横で寛いでいた同僚へと問いかけた。


 ウェスは護衛であるにもかかわらず、ワイングラスを片手に持って、のんびりとワインを飲む。


「さて、な。どうやら装備や服装などを見る限り、上級官ではない下っ端だ。すぐに鎮圧されるはずだろうし、罠にかけられたのだろう、愚かな者たちだ」


「なるほど……お祭りにかこつけて、不穏分子を消しておこうという予定なんでしょうか?」


 詩音は問いかけつつも、確信したとばかりにクスリと笑ってしまう。客まで招待していて酷い人間もいるものだと。まぁ、そういう権謀術数に長けた者たちがいるのが、この本部という名の伏魔殿であると考えているし、自分もそのような場所は嫌いではない。


「きっとそうだろうな。それよりも、そろそろパーティー会場に移動する時間だ」


 まったくペースを乱さないウェスに詩音は苦笑をしてしまう。この男は目の前のテロリストたちが目に入っていないのだ。


 その時、控室の中空に大きなモニターが現れて、那由多代表が決然とした意志の強い瞳を見せて映っていた。


「諸君、今現在革命軍などという軍に入っている諸君。聞いているだろうか?」


 モニターは本部の都市全体にいくつも映りだしていて、周りの人々は驚いて注視をする。


 本部に商品を仕入れに来るように特別に呼ばれた商人、慰霊祭の後のパーティーに呼ばれた要人、もう疲れたのでおやつにしましょうとお菓子をパクつく幼女、ここぞとばかりに四季たちを襲い立場を奪おうとするアインとツヴァイたち影の薄い連合軍。それぞれがモニターを注視した。


「君たちは苦労をして、この世界を復興させようと尽力しているのは知っている。そして、手にしている報酬がそれに見合わないと思い、このような愚劣極まる行動に出たということも」


 革命軍の兵士たちは小銃を握りしめて、那由多代表の言葉に頷き叫ぶ。


「そうだ! 俺たちは本部で崩壊前から頑張っていたんだ! だが、それに報酬が釣り合わない! 俺たちは特権階級となるべきなんだ!」


 そうだ、そうだと周りの兵士たちも同調して、声を張り上げるが、那由多代表はその叫びを聞こえていないにもかかわらず、兵士たちの意見を聞いたかのように、返答した。


 冷笑をもって。


「くだらないな! 君たちは私の理念に、そして戯言だと思われていた崩壊する世界の話に同調して、復興のために影で行動をしていたのではないか?」


 厳しい声で一括して


「君たちは優秀だ。私はそれを知っている、そしてその能力を崩壊前に一般企業で奮えば出世も金も思いのままであったことも! だが、君たちは私の話を信じて、正気の沙汰ではない崩壊する世界へと備えて頑張ったのではないか?」


 さらに声を大きくして怒鳴るように告げる。


「それを報酬が合わないなどと、今更自身の人生に泥を塗るのか! 周りから蔑みを受けても崩壊前から準備をしていたのではないか? 人生を賭けて行っている仕事を、自分自身の行動で駄目にしてしまうのか!」


 那由多代表の強い言葉に、兵士たちは顔を見合わせて怯む。


「今ならまだ間に合う。今日のこの行動はなかったことにしよう。銃を捨て投降せよ! 私の名前にかけて、今日の出来事はなかったことにする! 復興のために尽力していた自分自身の輝かしい栄光を駄目にするな! 以上だ」


 最後の言葉を告げて、那由多代表の映るモニターは消えて、束の間の静寂が生まれて


「そうだよな……俺は勘違いしていた。報酬が目的だったら、俺はこの場にいない。きっと一般企業で働いていてゾンビに食われていただろうさ」


 一人の兵士が呟きと、初心を思い出したのだろう苦笑を浮かべて銃を投げ捨てる。


「あぁ、危うく自分自身の人生を駄目にするところだった。報酬は充分貰っているんだ……復興した世界を見ると言う報酬がな」


 さらにもう一人の兵士が頷きながら銃を捨てて、それを見た他の兵士たちも手に持つ銃を捨てて投降するのであった。いや、拘束をしないので、投降するという表現は間違いかもしれない。


 だが、一人だけ銃を捨てない兵士もいた。必死な表情で投降した仲間へと怒鳴り散らす。


「馬鹿なのか? あんなのは詭弁だ! 俺たちは特権階級となる権利がある! 周りの人間を支配する権利があるんだ!」


 喚き散らすその兵士を見て、詩音は呆れてため息を吐いた。


「詭弁なのがわかっているなら、投降すれば良いのに。なかったことにするなら、失敗確実なこの革命をやめるのは目端の利く人間なら当たり前よね」


 兵士たちの中には、那由多代表の言葉に感動して銃を捨て始めた者たちを見て、舌打ちをして形勢不利を悟り合わせるように投降した人間もいた。詩音はその様子をしっかりと一挙手一投足注視していたのだから間違いない。


「お嬢様、これで無能な働き者は淘汰できるということでしょうな」


 セバスが酷薄な笑みを浮かべて、喚き散らす兵士を眺めて


「遅刻はマナー違反だ、そろそろ片付ける」


 ウェスがサングラスをつけて、銃を捨てない兵士へと歩み寄る。すぐにウェスに気づき銃を構えて警戒してきたので、練度はかなり高いのだろう。だが、頭が悪い。


「動くなっ! まだまだ同志たちはいる、きっとこの革命は成功して」


「企業国家から王政になどならんよ」


 冷たい声音でウェスは兵士へと告げると、強く右足を踏み込んだ。


「なにっ!」


 兵士はウェスの動きを見て驚愕する。踏み込んだと思ったらスローモーションでの残像が残るように、ウェスが高速で移動してきたからだ。


「くっ!」


 兵士はウェスを狙い撃つが、高速移動をしているウェスは瞬く間に鋭角にその軌道を変えて回避してしまう。


 元は優秀な兵士なのだろう、セミオートで移動するウェスを素早く移動する位置を予測して狙い、連続射撃を行ってきたがウェスは軽々とその予測の上を行き、ぎりぎりで銃弾を回避して、兵士の懐に入り込む。


「悪いが君では私は倒せない」


 そういうと、兵士の胸へと手をそえて、強く右足を捻じるように踏み込み、その捻りは身体全体の捻りとなり、発勁としてそえた手からぶち当てる。そうして相手の身体がバラバラになるような衝撃を与えるのであった。


「シールドが……働かないなんて……」


 兵士は呻くように床へと倒れ伏して、ウェスはその様子を肩をすくめながら、かぶりを振る。


「シールドを過信しすぎだ。発勁にシールドは反応しない。関節技と発勁には気をつけるように訓練で言われなかったか? シールドは万能ではないと」


「お見事です、ウェス殿。しかしながら発勁はなかなか使い手はいないのでは? それと今の動きはいったい?」


 セバスがパチパチと感心して拍手をしながら近づく。詩音も可憐な笑みを浮かべて称賛をする。もちろん周りには無邪気に護衛が強いところを見て感動しましたという表情をしながら。


「たいしたことではない。これは一瞬だけ身体能力を跳ね上げるGシステムを使っただけだ。あぁ、言っておくがお嬢さん、これは非売品だ」


 ウェスはちらりとつけているバングルを詩音とセバスへと見せて教える。なるほどと詩音は非売品と聞いて残念そうな表情へと変わるが、特にこだわるつもりもなく話を変える。


「ではパーティー会場へと行きましょう。遅刻はまずいでしょうし」


 周りの人々も動じずに部屋を出ていっていた。今回のことで騒ぎ立てる人間はいないらしい。驚くに値することだが。


 詩音ももちろん遅刻をしては大変だわ、と薄っすらと笑みを浮かべて控室を出るのであった。


 いつの間にか統合ビルに鳴り響いていた銃声は消えていた。


          ◇


 霊園では、クーヤ博士が混乱していた。周りの同志たちが次々と銃を捨てていくのだから当たり前だ。


 まだ銃を捨てていない兵士も動揺を見せており


「オラァッ!」


「むん!」


 百地と蝶野がタックルを仕掛けて押し倒し、押さえ込む。周りの兵士たちも未だに抵抗をしている兵士を抑えにかかっていた。


「那由多代表の言うとおりだぜ、お前らは自分自身の行動で、これまでの頑張りを無にしちまっている!」


「ぐぅっ! くそっ、お、俺は……」


「馬鹿なことはやめるんだ、抵抗をするな!」


 仙崎が兵士の腕を極めて動けないようにしている。元警察官として犯人を抑える動きは覚えているのであった。


 次々と投降して、もしくは取り押さえられていく同志を見てとり、クーヤ博士は那由多代表の額へと銃口を押し付ける。


「やめさせろ! 那由多、やめさせないと貴様が死ぬぞ! あの忌々しい小娘を止めて、抵抗をやめさせるんだ!」


 空ではクーヤ博士の自信の源であった第三世代量産型超能力者たちがレキによりあっさりと倒されていた。その動きはもはや視認できずに、少女たちは瞬時に目の前に現れて打ち込まれる拳の衝撃を受け続けるのみで抵抗らしい抵抗もできずに次々と意識を失い落ちてゆく。


 レキを相手に銀の少女たちではまったく相手にならないことをクーヤ博士にとっては最悪なことに如実に示してしまっていた。


 クーヤ博士から銃口を押し付けられているにもかかわらず、那由多代表は怯む様子もなく


「撃つなら撃て! 既に大樹はここにあるのだ! クーヤ博士、いや、クーヤよ。貴様では私の理念には勝てん! 私が死んでも継ぐ者たちがいるのだ!」


 と、獅子のような威圧感が物理的な力を持っているのではないかと勘違いする程の強さでクーヤ博士へと告げる。


 その言葉によろけるクーヤ博士。表情がこんなはずではなかったと語っており、目が動揺で忙しなく動く。


「てやっ!」


 そこへ十文字槍が飛んできて、クーヤ博士の銃を跳ね飛ばす。驚き、たたらを踏んで狂気の博士は手を抑えて後ろに下がると、槍が飛んできた方向へと睨みつけて、嗄れた声で誰何する。


「槍を投げるとは……何者じゃ!」


 綺麗な投擲のフォームにて投げ槍をしたのは荒須ナナであった。キッと真剣な表情でクーヤ博士を睨み返しながら、指を突きつけて宣言した。


「クーヤ博士! 貴方の野望にこれ以上誰も付き合わせないわ、逮捕します!」


 ビシッ、とクーヤ博士に指を突きつけているナナの姿は格好良く決まっていた。その言葉に憎々しげにクーヤ博士は憤懣遣る方無いと返答するべく口を開く。


「逮捕じゃと? もはやそのレベルではない、これは現政権と革命軍の戦争なのじゃ! それすらもわからないどこの馬の骨ともわからん小娘はひっこんでおれ!」


「戦争? 違うわ、これは貴方の自己満足の為のテロよ! 今の那由多代表の言葉を聞いて、何も思わなかった貴方に大樹を率いる資格なんてないわ!」


「ぐぬぬ……減らず口を……」


 ナナの言葉に歯を食いしばり周りを見渡すクーヤ博士だが、既に同志としていた駒はほとんど捕まり意味を成していなかった。もはやこの革命は失敗だと悟り、口惜しい中で小さく呟く。


「プランB荒須ナナ主人公ルートで行動します」


 その言葉に小さく頷く那由多代表。意味はわからないが、きっとクーヤ博士の苦し紛れのセリフなのだろう。そういうことにしておこう。


「ここまでか……仕方あるまい、退却じゃ!」


 そう叫び、クーヤ博士は腕につけているバングルを掲げると、光の粒子が狂気の老人を包み込むのであった。

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こんだけ登場人物と発言回数があって、言うことが「我々は特権階級となるべきなのだ!」の繰り返しなの茶番じみててホント草
[一言] すぐ主役乗っ取るからー
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