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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
22章 冒険少女になろう

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366話 収穫祈願祭での人々

 若木シティ、その中でも大きな建物がある。校舎よりも大きく広いグラウンドに、アスレチックのような様々なギミックが用意されているロード。マンションにしては武骨な作りの五階建ての建物。よくよく見れば、奥にはコンクリートで覆われた体育館のような物が建てられており、中に入れば大勢の人々が的へと銃を構えて狙い撃っているのがわかるだろう。


 ここは若木シティ防衛軍の兵舎の一つ。人類の守護者たる防衛軍の建物だ。その中でも食堂にて筋肉がはちきれんばかりの体格の立派な兵士が椅子に座っていた。


 その存在は周囲を暗くして、空気を重くしているのだった。


 誰が座っているのかと確認をすれば、仙崎大佐、若木シティを守り、今まで数多くのミュータント戦で戦功をあげている優れた兵士だ。


 いつもと違うその光景に周りの人々は苦笑いをして困っていた。


           ◇


 はぁ〜、とふかぁくため息を俺は吐く。目の前にはカツカレーが手を付けられずに残っており、先程までの温かさはなかった。まるで俺の心のようだ。


「世界は滅亡したのか……」


 とっくに滅亡して、今は復興中であるのだが。そしてカツカレーは世界ではない。


 疲れたように肩を落として背を丸くして項垂れている俺を見かねたのか、部下が声をかけてくる。


「仙崎隊長、あんまり落ち込まないでくださいよ。周りの空気が重くて仕方ないですよ」


「あぁ、すまんな……しかし、どうしたものかと思ってな……」


 項垂れる俺。常日頃の仙崎隊長と呼ばれる強き姿はその様子を見た人は信じることができないだろう。


「今日は収穫祈願祭ですし、イーシャさんと仲直りをしたらどうですか? 頬を叩いちゃってから気まずくて会ってないんでしょう?」


 うぐぐとその言葉に胸をつかれる。部下の言うとおり……俺は蟻との戦いで、あろうことか愛しのイーシャさんの頬を叩いた。叩いてしまったのだ。それ以降は気まずくて会っていない。


「男の方から謝っちゃいましょうよ、隊長。そうしないといつまでたっても仲直りはできないですよ」

「そうそう、うちのカーチャンには勝てたことないしな」

「給料は封筒での手渡しにしてくれないと、夫の威厳がないよなぁ」


 ワイワイと俺の気持ちをそっちのけで話す部下たち。まぁ、戦場では気を取り直して戦っているので、たんにからかわれているだけなのだろう。


「それは仙崎自身の考えによるな」


 そんな騒がしい食堂へと入ってきた男性が穏やかな声音でこちらへと声をかけてくる。


 視線を向けると蝶野さんであった。


「蝶野さん、お疲れ様です。そちらも食事ですか?」


「あぁ、訓練も終わったし軽食だけでもと思ってな。これから家族サービスの時間だ」


 フッと笑みを見せて、幸せそうな表情となる蝶野さんはさすがに家庭持ちなだけはある。これから収穫祈願祭に妻と娘を連れて行くつもりだ。


「俺の気持ち次第ってどういうことですか、蝶野さん?」


 蝶野さんの言葉に疑問を覚えた俺が尋ねると真面目な表情でこちらへと視線を向ける。


「謝る内容にもよるということだ。これが普通の痴話喧嘩なら放置していたんだがな。理由は俺も知っている。だから仙崎自身の思いに従えば良いと言ったんだ」


 蝶野さんの諭すようなその言い分に思わず言葉を失う。


「俺の思い………か」

  

 今までのことを思い浮かべて決心して椅子から立ち上がる。


「ありがとうございました、蝶野さん。少しだけ俺も先に進めるかもしれません。ちょっと収穫祈願祭に行ってきます! 手を付けていないので良かったらカツカレーをどうぞ!」


 そう答えて返事を待たずに俺は外へと走っていくのであった。


          ◇


 若木シティの通りには多くの屋台が軒を並べて、浴衣姿の人々が笑顔で歩いているのが見えた。


 家族連れや恋人たち、友人たちでバカ話をしながら話している集団もある。


 崩壊後にはもはやこんな光景は見ることはないだろうと思っていた光景だ。皆は祭りを楽しむべくのんびりと屋台を見て回る人もいるし、ビール片手に乾杯を繰り返しているのもいる。


 あれは岐阜の人たちだろうか、誰か亡くした人がいたのだろう。黙祷を少ししてから、この平和な光景にあてられたのか、泣きながら食べ物を食べ始めている人たちの姿もあった。


 命の危険を考えなくても良い世界。目の前にある光景はまさしくそれである。


 それは平和を象徴する光景で、俺は強くこの光景を守りたいと思う。こういう光景を見るたびにその気持ちは大きくなるのだ。


 子供たちが笑顔で横を通り過ぎていく。


「へへーん、俺はもう一回射的をするんだぜ」

「アタシも〜」

「ぼ、僕は謎のクレープ屋さんに行きたい……」


 少ないお小遣いを手のひらに握りしめて走っていく子供たち。未来を担う次代の希望だ。


 先程までの鬱屈していた心が少しだけ晴れたように感じてくる。我ながら単純明快なものだと苦笑いをして、はたと気づく。


「イーシャさんはどこにいるんだ?」


 今日は祭りであるので、ほとんどの人は休みだ。大樹はそのへんが結構厳しい。ブラックな企業を生み出さないように気をつけていると民間ではかなり好意的な意見が多い。


 なので緊急時以外は医者も休みのはずである。救急用に残っているだろうか? ……いや、イーシャさんは働き過ぎだ。周りが無理やり休ませるだろう。彼女は通常勤務に加えて、戦場にも軍医として同行することが多いのだから。


 周囲の人間は祭りという大義で絶対にこれ幸いと休ませることは火を見るより明らかだ。


 せっかく街に出てきたのだが、これでは本末転倒である。自分の迂闊さに頭を叩きたい。


「なにやらお悩みですね、仙崎さん」


 後ろから可愛らしい声がかけられる。聞き覚えのありすぎる声なので、苦笑混じりに振り向くと予想通りの人が立っていた。


 蝶の舞うピンクの浴衣姿の少女、朝倉レキであった。クスクスと口元に手をあてて可憐に笑っているので憮然として尋ね返す。


「お姫様じゃないか、珍しいな一人なのか?」


 この娘は戦場では一人で動くが、こういったイベントでは友人たちと一緒に遊んでいることが多い。


「いえいえ、今日は屋台のお手伝いです。仙崎さん、ここで会ったのもなにかの縁、私の屋台でなにかを買っていきませんか?」


「屋台? あれか?」


 またいつもの趣味の店を開いたのだろう。格安で美味しいと評判のお店だ。


 そして俺が指差す屋台には長蛇の列ができていた。看板には謎のクレープ屋と書いてあるし、あれだろう。


「レッキー! 遊んでいないで手伝って! お客をどんどん捌かないとまずいよ!」


 たしか孤児院で働く少女が怒鳴ってくるが、それも当然だ。今か今かとお客は待っているのだから。それにしても長蛇の列が凄すぎる。どれぐらい買うのに待てばよいのやら。


「仕方ないですね〜。それならば私の華麗なる料理をお見せしましょう」


 お姫様はてこてこと屋台へと戻ると、周囲のお客へと問いかける。


「私のおすすめはイチゴチョコ生クリームクレープです! これなら私の特製手作りになりますが、皆さんそれで良いですか?」


「いいとも〜。レキちゃんの特製手作りをお願いします」


 周囲のお客の殆どが嬉しそうに頷くのを見て、お姫様は花咲くような笑みでお玉とクレープトンボを手にとる。  


「たりゃぁ」


 つぎの瞬間、不思議な光景となった。お玉から掬い上げたクレープのタネを空中に振りまく。不思議なことにクレープのタネは飛び散ることもなく空中で停止して、いくつもの無数のクレープの皮となり薄く広がる、それをクレープトンボで撫でるように触れると丸い皮となる。


「ファイヤー!」


 宙に浮く花びらのようなクレープの皮。それが一気に炎に包まれたと思ったらすぐに消えてしまう。残ったのは綺麗に焼けたクレープの皮。


「おぉぉぉぉ!」


 周りのお客はその光景に驚きの声をあげる。


「凄い手品だ!」

「あんな少女なのに」

「良いものを見たな!」


 超能力だと俺は気づいた。もちろん超能力だと気づいた天使の羽を模したネックレスをかけている天使教の人たちは拝んでもいる。超能力の有効活用とはこういう平和なときにするのではないだろうかと、ふと思う。


「ほいさっ、とやさっ!」


 重力に従い木の葉が落ちるようにひらひらと舞うクレープの皮。落ち始めたクレープを何本ものバターナイフを手にしてお姫様は生クリーム、イチゴ、最後にチョコソースをかけてクルンと巻いてしまう。そうして紙に包んだらおしまいだ。あっという間に10個のクレープができるのであった。


「さっすが、レッキー! どんどん作って、どんどんとね!」


 みるみるうちに長蛇の列は少なくなっていく。お姫様が笑顔でお客へと渡していき、傍らの少女が会計をするコンビネーションだ。


「うぅ……ねぇ、結花? さすがに限界だよ」


「もう一個! もう一個だけ食べたら次に行こう?」


「そう言って、もう八個目でしょ……もう体がクレープになった感じがするよ〜。明日の体重計が怖いよ〜」

  

 クレープ屋から少し離れた場所からなんだか聞いたような声音に苦笑してしまう。難儀な友人をあの娘はもっているようだと。


「はい仙崎さんの分。特別価格50円! 2つ合わせて100円ですよ?」

 

 小首を可愛らしく傾げてお姫様が手渡してくるが俺はまだ頼んではいないはずだ。


 だが、お姫様は悪戯そうに笑みを浮かべて


「一つはイーシャさんにどうぞ。たしか彼女は救護テントにいました。働き過ぎなので連れ出しちゃってくださいね」


 そうしてクスリと笑ったので、俺は苦笑して2つのクレープのを受け取る。


「お姫様には敵わないな。ありがとうよ、二つとも貰っていくよ、100円だったな」


 手に取るとできたてなのでほんのりと温もりを感じて、なぜかホッとした。


「さぁさぁ、私は忙しいのです。行った行った」


 クレープトンボを振って、クスリと笑い追い出そうとするお姫様。


「了解だ、それじゃあたって砕けろの精神で行ってくる」


 片手をあげて感謝の気持ちを示して俺は屋台から離れて教えてもらった救護テントへと足を運ぶのであった。


 いかつい男性がクレープを持って歩くのは少しきついが。




 救護テントは暇そうな祭りの実行委員たちが屯していた。すでに赤ら顔でどちらが救護されるかわからないやつもいる。どうやら救護テントと実行委員のテントは隣接しているみたいだ。


 会釈をしてテントに入ると、周りの人たちがこちらへと挨拶をしてくるので、来る途中で買い込んだ物を手渡す。


「どうも、これは差し入れです」


 10個ずつの焼きそばやお好み焼き、たこ焼きと色々な物を買ってきたのだ。祭りのテントへと顔を出すにはこれぐらい用意しておかないとまずいだろうと。あと、クレープだけを持って歩くのは少し周りの視線が辛かったのでカモフラージュとしても。


「おぉ、仙崎さんじゃないか。悪いね、有り難く頂くよ」


 知り合いの老年男性が赤ら顔で受け取り、周りへと声をあげて注意をひく。崩壊後は様々なところで顔を出していた俺だ。それなりに顔は売れている。


「お〜い、仙崎さんから差し入れだぞ〜」


「ゴチになります!」

「ビール足りてる?」

「皿を持ってきたほうが良くないか?」


 お礼の頭を下げながら若者たちが椅子を俺に勧めようとする。気が早い者は紙コップにビールを注ごうとしていたので慌てて止める。


「少し用事があるのでお気持ちだけ頂いておきます」


「ん? あぁ、それは悪いことをしたね。イーシャさんなら奥で子供に手当てをしているよ。お休みだと言っているのにねぇ、仙崎さん連れ出してやってよ」

  

 老年の男性がニヤリと悪戯そうに笑みを浮かべて伝えてくる。


 俺がここに来た理由が読まれていると悟った。なんというか恥ずかしいというかいたたまれないというか……。


「仙崎さんのしたことは皆知ってるよ。その話を聞いたときは感心したもんだ」


「そうそう、なんだかドラマみたいだってね」

「こら、茶化すんじゃない」

「戦いばかりじゃないんだって見直したよ」


 後押ししてくれる人たちに、コホンと咳払いをして軽く頭を下げる。


「すいません。それじゃ行ってきます」


 頑張ってな〜と言う実行委員の声を背に奥へと向かうと、仕切りができた場所がいくつかあった。その中の一つから聞き覚えのある優しい声が聞こえてくるので向かう。


「はい。ちょっとだけ染みるわよ」


「うぅ、いたーい!」


「そうね、これからはあんまり人のいるところで走らないこと」


 姉妹だろうか、浴衣姿の小さな少女たちがすわっており、その片方の少女の膝へとポンポンと傷薬を塗っている浴衣姿の女性の姿があった。相変わらず優しい笑みで、手当てをしている。俺の愛しのイーシャさんだ。


「むー、だって凄い手品を使うクレープ屋があるって、おねーちゃんが言うから」


「え〜、そこで早く行こうよって言ったのは、なーたんでしょ〜」


 可愛らしい言い合いをしている姉妹。ふふっと笑みを浮かべて二人の頭を撫でるイーシャさん。


「こらこら喧嘩をしない。まだまだお祭りは続くんだから、慌てないこと」


「は〜い」

「わかりました〜」


 素直に頷く二人へとイーシャさんは腰に軽く手を当てる。


「よろしい、それでは素直な二人へとプレゼントを持ってきた人がいるみたいよ?」


 そうして俺の手にある二つのクレープを意味ありげに悪戯そうに見つめてくるのだ。


 その表情に思わず笑みが浮かぶ。たまにイーシャさんはそのような悪戯そうな表情を見せてくるのだから。


 そして俺もその視線の意図がわからないほど鈍くはない。


「ほら、ラッキーだったな。差し入れに持ってきたクレープだぞ」


 クレープを手渡す俺を姉妹は見つめてきて、そのまま視線をイーシャさんに向けて貰って良いのか問いかける。


 コクリとイーシャさんが頷きで返すと、笑みが零れ落ちるように二人共嬉しげに受け取るのであった。


「ありがとう〜、おじちゃん」

「クレープだ〜、あ、でもこれからクレープ屋に行く予定だったのに……」

「食べたら行こうよ!」


 キラキラとした笑顔で幸せそうな空気を作り出す姉妹を穏やかな表情で見つめる。


 パクリと口に頬張って、口元を生クリームだらけにするので、イーシャさんがにこやかな笑顔で口元を拭いてあげる。その姿は優しい母親のような雰囲気だ。


「バイバ〜イ」


 食べながら歩くことに決めた姉妹が満面の笑顔で手を振って帰って行くのを見届ける。


 穏やかな雰囲気に空気が包まれる中で、イーシャさんがこちらへと向き直り、佇まいを変えて真面目な表情を見せる。


「さて、仙崎さん。私になにか御用でしょうか?」


「あ〜、そ、それはですね〜。この間のことを謝罪しに来ました」


 考えていた謝罪の内容を思い浮かべて。


          ◇


 ワイワイと騒ぐ人々の声が遠くから聞こえてくる。祭囃子の笛の音や太鼓の音が耳に入る。そんな遠くからの音を聞きながら、仙崎はゴクリとつばを飲み込み緊張を顕にしていた。


 目の前にはいつもはにこやかな笑みを浮かべているはずのイーシャさんがふわりと金髪を手で整えながら、仙崎の言葉を待っている。


「えっとですね。謝罪というのは、この間、頬を叩いたことです。大変申し訳ありませんでした!」


 背筋を伸ばし、深く頭を下げる俺にイーシャさんは言葉を発せずにジッと見ていると感じた。


 話の続きを待っているのだろうと、仙崎は息を吸ってさらなる言葉を言う。


「……ですが……叩いた理由については謝罪しません! 俺は間違っていないと思っていますので!」


 イーシャはその言葉に僅かに目を細める。仙崎がすべてを謝罪してくると考えていたのに、叩いた理由には謝罪してこなかったからだ。


「……どうしてですか? 理由をお聞きしても?」


 多少声音が硬くなるのを意識しつつそれでも問いかけるイーシャに仙崎は顔をあげる。その目には真剣な思いをのせて。


「あの時はたしかに兵士はまったく足りませんでした……。五万人の避難民、その後ろに続く数十万の化け物蟻。普通に戦っていては絶望的な戦場でした」


「そうですよね。なので訓練を受けている私も銃を持って支援をすると言ったのに、仙崎さんは許可してくれませんでした」


 責めるような声音でのイーシャだが、仙崎は怯まなかった。自分の考えは間違っていないと信じるからだ。


「たしかに銃を持つイーシャさんの姿は新兵ではなく、堂の入ったベテラン兵士にも見えました……支援に入ってもらえれば助かったでしょう。……しかしイーシャさんがたとえベテラン兵士数人分の活躍をしても足りません」


「……足りない? なにが足りないと?」


 イーシャの声は今まで耳にしたことがないほど冷たい感じを受けて、仙崎は冷や汗をかくがそれでも言葉を重ねる。


「足りないんです。医者として活躍するイーシャさんと比べ物にならない程に。未来においても多くの人々を助ける活躍にはまったく足りませんでした。なので感情的ではなく、戦場での判断として止めました! これからも同じ状況になれば、同様のことを俺はします。何度でも同じことを。だから謝罪はできません!」


 強い口調で言う仙崎をイーシャはしばらく黙して眺める。静寂が部屋に満ちて外の騒ぎ声がやたらと響く。


 そうしてしばらくしてからイーシャはため息を吐いた。


「まいりました……降参です。仙崎さんの仰ることを理解できてしまったので」


 言葉を紡いだあとに、ニッコリと笑顔を浮かべる。不器用で仕方ないですね、この人間はと思いながら。


「すいません! なので謝罪はって、あれ? 今のは謝罪の言葉ではなく……」


 あたふたと慌てふためく仙崎を見てイーシャは苦笑をする。


「はいはい、わかりました。なら頬を叩いた謝罪ですが、言葉だけでは許せませんね」


 悪戯そうな声音にして仙崎を見つめると、さらにあたふたと慌てふためく。


「えっと、それならばどうすれば?」


「ちょうど今日はお祭りです。仙崎さんの謝罪は受け入れました。屋台の食べ物を奢って貰えるなら」


 ペロッと小さく舌を出して笑うイーシャ。仙崎はその言葉に背筋を伸ばして敬礼をする。


「了解です。漢仙崎、屋台の売上に貢献します! お好きな物を買ってください!」


「ふふっ、それじゃあ先程食べ損ねたクレープから行きましょうか」


「わかりました! お姫様がやっている屋台ですよ、案内しますね」


 犬ならばフリフリと尻尾を振る勢いで喜色満面な笑顔で答える仙崎に、この人は本当に不器用な人ですねとクスリと笑ってから仙崎と共に祭りへと赴くイーシャであった。


 テントの影からは大勢の野次馬が隠れていたので、ベーッと舌を出してから。


「ぐはっ! 青春よ、あの歳で青春してるわ!」

「私たちまだ二歳だよ」

「司令に報告ね! これは報告しないといけないわ」

「ふふふ、これでライバルを減らしましょう」

「何気に最初に行く場所が司令の屋台だったような?」


 後ろではツヴァイたちが騒がしく興奮してお喋りをするのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 悪女だぁ〜って喜ぶんじゃないかな?
[一言] ライバル減ったって話はなかったきがするな。男仙崎かわいそう
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