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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
21章 仲間たちと旅をしよう

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355話 会議室が現場なのだよと叫ぶおっさん

 次の議題は五万人の避難民をどうするかである。今までも数万人を収容してきた経験はあるが、それは少しずつ解放されてきた人々を回収していったのだ。今回は一気に五万人であるので規模が違う。接木シティではもう街があったので、とりあえずは住居などは問題はなかった。少しずつ手直しをしていけばよかったのだからして。


 大変な内容だと嘆息をしながら現状の確認をする。モニターをぺちぺちと叩きながら資料を読んでいる風を装い内心で考える。


 これ、委任じゃダメなのかなぁと。委任、素晴らしい言葉である。最近の戦略シミュレーションではAIが頭良すぎておっさんよりも良い動きをするのでお任せしていたが、同じように委任をしたい。


 だが、どうもダメらしい。おっさんが顔を出さないと重要な決議は行わないらしい。なんという嫌な慣習だ、そういう慣習は破壊しないとと思うけど、たしかに彼らの方が理があると思えるので口にはさすがに出さない。


 なので、空気を読んでこれからの方針を皆で考えていきたいと思います。みんなでねと強調もするのだ。私のせいにしたら嫌ですよ?


「ハカリ、現状を説明してくれ。各町村がどのような状況であるのかを大雑把でよい」


「はい。現状を説明しますと、東北地方に現在、2000人規模の村を10箇所、北海道に港、山間、牧場と3か所、牧場は5000人程度で、山間が1000人、港が3000人程度ですね」


 スラスラと説明をしながらモニタ画面を操作するハカリ。そうすると日本地図が表示されて、各町村がある場所にマーカが現れる。なんだか格好いいよね、こういうのとワクワクしながら、表情には出さずに話を聞く。


「水無月シティが30000人程度、接木シティも30000人程度、若木シティが30万人程度ですね。しかし若木シティは元東京都の広範囲に分布を始めましたので、それほど土地が足りないというわけではなく、未だに余って仕方ない状態です」


 ふんふんと頷き、まぁ、当然だよねと思う。たった30万人だ。崩壊以前と比べるまでもない。千葉は水無月シティとして正式に発足してもいいだろうか。若木シティは東京都との県境でぎりぎりの場所にあるからなぁ………。地域の再編成が必要かな? ここを首都とすればやっぱり東京都圏内と融合させた方が良いだろう。


 う~んと顎に手をあてて考え込む。難しい問題だ、おっさんの領土も欲しいところである。というか私の自宅の土地はどうなっているんだろうね? 誰も気づかずに素通りしていく。素通りした際には一瞬で反対側に移動するみたいだから、空間の狭間にでもあるのだろうか。まぁ、半径200キロのもうありえない程広大な土地となったのだ。おっさんの家なのに。


 拠点レベルを9にしたら数千キロにはなるだろう。10にしたら、たぶん広さは惑星レベルとなると予想している。めちゃくちゃだ、さすが恐るべきゲーム仕様だね。天界とか作れちゃいそう。天界………。おっさんが主神だといらない紙としてゴミ回収業者に持っていかれそうな予感がするけど。


 常に斜め方向に思考をもっていく遥であるが、みんなが発言を待っているようなので、コホンと咳ばらいをして誤魔化しつつ、ハカリへと頷きで返す。


「ありがとう、ハカリ。この状況に5万人の救助者を取り入れるわけだ。さて、諸君らの意見を聞こう」


 きっとおっさんよりも良い提案をしてくれるだろうと、他人任せにするおっさんである。自分の提案はあんまり良いことはないと自覚しているので。


「ナナシ様、銀行としての立場から言わせてもらいますと生産能力を高めて自給率のパーセンテージを高めたいと考えます。その場合は各町村に今回の救助者を割り当てした方がよろしいかと思います」


 真面目な表情で提案をしてくるエリート美女な玲奈。こちらを見る姿はいつもと違い、極めて真剣だ。


「全員を町村に振り分けるのは困難だ。現在は次々と新たな人が加わっていく状況だが、農村は一気に増やしていくのは状況が悪い。農家は大変そうだからな、新人を教育する暇な人間はいないだろう」


「ふむ………。たしかにナナシ殿の仰る通りだが、崩壊後に加わっている農家は素人が多い。今さら増やしても問題はあまりあるまい。農家をやるには早い方が良いしな」


 水無月の爺さんがこちらを見ながら、自分の意見を言う。なるほど、たしかに一攫千金を狙う素人も多いと聞いたから、たしかに言うとおりだ。


「ですが、農家の人間ばかりにしても仕方ないでしょう。生産能力を増やすのは、なにも食料だけではないはずです。物を作るにもインフラ関係、道路を敷き直していくにも人手は必要です。それも膨大なね」


 木野が冷ややかな笑みを浮かべて口を挟む。あれが幼女のキノとは誰も思わないだろう。あの娘はいつもバイクの玩具を手に持って、ぶぶーって口ずさんで楽しそうに遊んでいるんだぜ。


「たしかにそのとおりね、服にしても何を作るにしても、工場もないし、電気も水も工場用としては足りないでしょう? 私の工房はあるけど、普通は無理だから手工業になるわ。この人口だとそろそろ働き手が必要だもの」


 肩をすくめながら叶得がまともなことを言う。いつもああだったら良いのにとか思わない。なぜならばこちらを射抜くようにさっきから見つめてくるからだ。なんだろう、この間レキの見舞いに来た時には普通そうだったのに、なんかあったのかな?


「大樹は基本、様々な物を提供はしてくれますが、それは生活必需品の基本的な物ですからな。それによって人々に仕事が生まれてくるので、必要な処置だとは思いますが」

「そうですな、もう少し酒を安くして貰っても良いと思いますが………」

「砂糖を安くはできないのかと、最近は国民の突き上げが厳しくて………」


 ワイワイと話し合う人々。色々な問題が山ほどあるのだろう。シムなゲーム仕様でしか街づくりを頑張りたくないので、正直困る。あとは豪族に任せたよ、こういうのは私の役目じゃないのでと考えていたところで、静香が口を開く。


「武器部門はなんでもいいわ。現状売り上げは右肩上がりだしね、まだまだ山ほどミュータントはうろついているし、駆逐するには人手も足りないしね」


 妖艶な微笑みと共にぶっちゃける静香。どうやら金がウハウハな状態で入ってくるので、今回のことも新たに客が増えるとしか考えていないのだろう。気楽そうでなによりです。おっさんも武器部門が良かったなぁ。


「売り捌いた武器はちゃんとナンバーをつけているんだろうな、五野さん?」


 マフィアとか作られても困るので、一応確認しておく。許可制は泣く泣くなしにした。関東圏内は問題はないが、他の地域はまだまだゾンビやらが徘徊しているのだ、許可制は無理であろう。なのでナンバー制にしてどこになにがあるかを確認できるようにした。


 それでも抜け道っていうのはたくさんあるから、全部の把握は無理であろう。それならば登録者しか使用できないようにする未来的な武器にすればいいじゃないかと思うが、それをすると………。


 ゾンビが現れて、傷ついた仲間を守ろうとするおっさん。しかし先程、敵を防ぐために武器を投げつけてしまった。手元には武器はない。ピンチなるおっさん。


 守ろうとした仲間が銃を差し出して、これを使ってくれと言う。おぉ、ありがとう、ここは任せろ!


 銃を構えて戦おうするが登録者しか使えないので、引き金をひけない。あれぇ? これはやばいよねと焦る中でゾンビにがぶりと喰われるおっさん。その後に二枚目な主人公が仲間を絶妙なタイミングで助けにもきたりするだろう。


 以上、おっさんの妄想終了。実にしょうもない妄想だが、たぶん実際もそんな感じになる。


 軍隊で武器を使うのに、登録者しか使えないようにしてどうするのかといつもSF映画を見たときに思っていたのだ。敵襲と報告があったら、武器庫にみんなでどやどやと集まって、これお前の? いや、俺のとか銃の確認をしていくつもりなのだろうか。間抜けな光景となるのは確実だ。


 なので登録者しか使えないという仕様は諦めた。やれるけどやらない。格好いいとは思うんだけどね………。現実では厳しいのです。


「大丈夫よ、ナンバー制にしているし、買った人間の名前も控えているわ。まぁ、でも抜け道は色々あるから保障はしないけれど」


 袖の下を渡されたら、密かに横流しを平気でしそうな人だしねと、嘆息しつつ自分の考えを伝える。


「町村には500人ずつ送りたいと思う。その際にトラクターなどを無料で配布して、不満を和らげようと思う」


「その条件ならば、水無月シティでも5000人程度なら受け入れよう。どうせ、この先も増えるんだろうしのぅ」

 

 水無月の爺さんが素早く同意の言葉を伝えてくる。機械化すれば農家はだいぶ楽になる。しかも大樹製の極めて強力な物だ。それにこれからも増えていくだろうことは間違いないので苦笑で返す。


「では、それでいこうじゃないか。各町村に500人ずつ、水無月シティに5000人。残りは若木シティに引き取ってもらう。これは決定だ、日位君、農家への融資を頼む」


「はい、わかりました。若木シティにも大勢の農家の方がいらっしゃいますし、説明会も必要ですね。慣れ始めたので問題はないでしょう」


 コクンと頷く玲奈に安心して任せることにする。これで農家はだいぶ増えたと思う。様々な物が作られていくのではないだろうか。ビニールハウスから、特殊な育生室の建物も建設しても良いだろう。


 大樹が供給している以外の野菜などはそれこそ山ほどあるのだからして。


 うんうん、私も上手くできるじゃないかと自画自賛するおっさんに静香が挙手をしてくる。


 なんだろう………。嫌な予感………。なんで、口元を怪しい笑みにしているのかな? 見て見ぬふりをしたいが仕方ない。はい、静香さん発言どうぞ。


 こちらの頷きで、静香は困ったような口調で語りだす。ちなみに、表情はニマニマと笑っているので全然困ってはいないだろうことは間違いない。


「ふふっ、もう一つ重大なことが発生しているのよ。最近の死者率の急増にも繋がっているわね」


「死者率の急増? どういうことだ? そこまでの死者はでていないはずだが?」


「そうね、見た目には極少数だから、急増はおかしいのかしら。それじゃ死因と言い換えるわね」


 肩をすくめて色気のある笑みにて静香は聞き捨てならないことを言う。死因? 人が蟻になっていくとかいうんじゃないよね? 


 内心では慌てて、その様子は外には出さずにモニタ画面を操作すると、過去の行方不明者や死者が表示される。


 その死因は推測であるが資料に書かれており、眉を顰める。まじですか、この死因。


 ちらりと静香を見返すと頷きで返答を示す。


「そうなのよね。最近の死因の原因トップ。それは物資調達に遠征して死んでいく人たち」


 その答えに苦々しい表情になり、遥は豪族へと鋭すぎて食パンも貫けない眼光で尋ねる。


「これは本当なのかね? 百地さん」


「………あぁ、本当だ。一攫千金で借金を、いや金を稼ごうと純粋に考える奴らが無茶をしている」


「この問題は以前に出されたはずだ。車のナンバー制で片付いたはずだろう? ウォーカーが使っているのは知っているが、それほど車両は多くない。問題はなかったはずだ」


 ちらりと叶得へと視線を向けると


「そうね、ナンバー制にしたからほとんどの人は探索には行けないはずだわっ。どうやっても大樹の工房以外ではエンジンがある車両は動かないしねっ」


 フンスと平原なる胸をはって得意げになる。


 それならば問題はないはずだ。近場にしか行けないのだからして。

 

 そこでふと気づく。エンジンがある車両? 


「エンジンがない車両。自転車などはどうしているんだ?」


「そこなんだ。エンジンがない車両。塞がれた道路も行き来できる小回りが利く車両。自転車で移動を始めた奴らが出始めたんだ。遠出をするのに食料を積み込んで移動をしている。酷いのになるとリヤカーを自転車で牽きながらだな」


 はぁ~、と深く息を吐く。なんともはや………。人間の欲望には限りはなく自転車であれば普通のゾンビからは逃げられるだろうから。


「やはり物資調達は遠出になると金になる。だが、最近のゾンビは派生系が多い。ナイトストーカーが陰に潜み、オスクネーは巣を張って獲物を待ち受けるようになった。厄介な敵も多いんだ。死ぬ奴らもその分多い」


「以前に子供が言っていたハンターギルド。あれを作らないといけない時期じゃないかしら? 人が多いと言うのも考えものよね」


 困った表情になる豪族に、ハンターギルドという懐かしい名前を言ってくる静香。ここにも人が増えた弊害がでている。


「ハンターギルドか。ゾンビの耳を集めて換金させるつもりはないぞ。薬草でも取ってこいとミュータントがうろつく山の中へ素人を放り込むつもりもない。現実ではゲームのようにはいかないのだからな」


「そうだな。そんなことをすれば、命がいくらあっても足りないからな。ならばどうするんだ? これはちょっとした社会問題だぞ」


 尋ね返す豪族に嫌そうな表情で返したい遥。社会問題………。まじですか、ここは崩壊した世界だよと。


「仕方あるまい。出入りをする際には目的を提示してもらう。ウォーカーは規制をしたくはない。現状では定期便を各町村には送れないしな。物資調達は場所を決めて回収させる。その護衛から始まり遠出をする人間にも高値での護衛費用がかかるように」


「ハンターギルドじゃないけど、それに近い形のを作るのかしら?」


「五野さんの言う通り、そうするしかあるまい。そうだな………ハンターギルドだと名称から敵を倒すイメージを与えてしまうだろう。サルベージギルドにしようじゃないか。それならば問題はあるまい。護衛の兵士も訓練をして登録志願制にして、自転車で外壁から出ていくのは規制しようじゃないか」


 サルベージギルド。その名前の通りに物資調達をするギルドだ。ランク制にはしないよ? 意味が無いしね。Sランクの凄腕サルベージャーなんていらないのだ。


「それしかないか………。こんなことで規制をするようになるとは考えもしなかったが、仕方あるまい。まぁ、抜け道は色々あるもんだな」


 豪族が疲れた吐息を吐いて、椅子にもたれかかる。ぎぃと椅子が軋む音が聞こえてきて豪族が疲れているのだろうことがわかる。


 見渡す全員も疲れている雰囲気だ。会議に疲れているのではなく忙しさに疲れているのだろうことがわかる。それはそうだろう、ひっきりなしに問題は発生するのだからして。


 おっさんも疲れたよ。そろそろこの会議もおしまいだねと思いながら、まだ話は終わっていないとも考える。


 だが、今回の会議はこれで終了だ。頷きながら周りへと会議の終了の合図をするとハカリが閉会しようと、遥の意図を理解して口を開くのであった。


 ぞろぞろと会議室を出ていく人たちを見ながら、そういえば仙崎の様子は聞かなかったなぁと思う。そして叶得がこちらへと近づいてくるのを見ながら、なんだか面倒そうだなぁとも思う。


「ナナシ、なんで私に会いに来ないのよっ! 新しい発明も見せたいのにっ!」


「あぁ、最近忙しくてね。そうか新しい発明ができたのか。ならば見せてもらおうかな?」


「えぇっ! なんだか疲労が回復する服を作れたみたいなのっ。気のせいかとも思うんだけど一応確認してくれる? えっと、今から?」


 身体をくねくねとさせて、もじもじしながら、こちらを上目遣いで見てくる叶得に対して頷きを返すおっさんであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 疲労回復できる服って地味に強くね?
[一言] 武器の登録は出来ればいいけど、奪われたらなーって。 あーめんどいわ。
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