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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
21章 仲間たちと旅をしよう

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354話 再びのおっさんのお仕事

 若木シティの大会議室。多少なりとも改造されており、外の昭和戦後間もないような騒がしい世界とは違い、近未来的な部屋となっている。


 空中ホログラムから、手元には透明なガラスの板のようなタッチパッドがそれぞれ個人の手前に浮いている。あまりにも違いすぎる環境だが、紙の資料を使っての話し合いなど面倒だし資料作成に凄い時間がかかるので仕方なく市庁舎には導入したのだ。イーサネットと言うやつである。社内だけで使えるネットワーク網だ。各拠点にももちろん支給はしてある。


 その環境を知る人々は外にも販売をとお願いしてくるが、それは無視して放置している。ブラックな世界にはさせません。作戦名のんびり暮らそうぜ、なのだからして。社給品のスマフォ? 配る会社は崩壊すれば良いと思う。休暇中も電話のベルがジリリとなる恐怖を味わったおっさんの体験談だ。


 ネットワーク? 便利すぎて人との生の関わり合いが薄れるでしょ。あれは便利すぎるのだからして。


 なので、独善的に通信許可は未だにしていない。ただ、ラジオは許可しました。あれはなんというか味わいがあると思うので。夜中の深夜ラジオなんか良い感じだと思う。まぁ、おっさんは聞かないで寝ちゃうんだけどね。


 そして本日は定例会である。いつもの有識者のなんちゃって議員が集まる会合ではなく、普通に政策を協議する面倒な仕事を押し付けられた責任者のみの会議だ。


 定例会という最も嫌な仕事である。おっさんは定例会の恐ろしさを知っている。特に週次定例などは恐ろしい。定例会をやろうと言い始めた当初は良いのだ。たくさんの提案があり、直すべき不具合もあるので活発な話し合いが行われる。だが、それも最初の内だけで週一で会議なんかやれば、すぐに話すネタが無くなり上司は重箱の隅を楊枝でほじくるようにアラ探しをして、部下は見た目だけの中身のない提案をしてくる。


 結果、中間管理職だけが週次定例会の議事録作りで不毛な残業をするという恐怖………。もう絶対に崩壊した世界ではやらないと決めていたのに、なぜかくたびれたおっさんは出席しています。救いは全てに出席することは無いというところだろうか。これはトップの役得だねと内心で思いながら会議室の面々を見る。


 傍から見たら冷酷そうな男性が周りを睥睨していると思われているのだが、くたびれたおっさんはその辺の自覚はまったくない。


 そう、本日はもっと出現率が低い方が良いという噂のあるくたびれたおっさんぼでぃの朝倉遥となっているのだ。嫌なんだけど仕方ないのだ。レキの身体の時には無邪気な暴走をしてしまうので。あれは何なんだろうね? きっと力があるから余裕があるのだろう。心がきっと解放されているのだと現実逃避をする遥。


 自分の右隣にはハカリが座っており、ウサギリボンをぴょこぴょこさせている。これでエリートだというのだから、崩壊後の世界で良かっただろうと思う。崩壊前ならば老害が権力を握り、決してトップに少女などを座らせることはしなかっただろうから。まぁ、偽装済みなんだけどね。


 そして左隣にはできる女性といった感じでこれまた美女の玲奈が涼しい表情をして座っている。これは銀行側の意見を取り入れて話し合いを行うべきですという玲奈の提案で渋々出席させることになったのだ。出席は前から許可しているけど、なにもおっさんの隣に座らなくても良いと思う。


 周りには豪族や蝶野、仙崎、ナナ、噛みつきそうな顔をしている叶得、静香、水無月の爺さん、木野といった面々やそれ以外のモブキャラも座っている。モブキャラと言ってごめんなさい、おっさんは顔を覚えるのも名前を覚えるのも苦手なのです。庶務の新人さんが来て半年たっても、この人は誰だっけと思いながら、知ってるよ、覚えているから大丈夫と思い話しかけるおっさんなので。そんなことをしたら、来客の女性に間違えて話しかけた黒歴史があるとかないとか。


 あと、最後にゲストとして不夜城灯里。これは蟻の巣の以前の状態を話してもらうために連れてきた。


 そしてたった今、灯里はしどろもどろになりながらも懸命に説明を終えたところであった。


 遥は鈍い身体を動かして話しかける。鈍いというのはおっさんの固有スキルだが、そうではなくて未だに暴走モードから完治していないのだ。ただ、レキの時と違いなんとか動けるといった感じ。辛さは二日酔い後の疲れた身体で会議にでなきゃとあくびを抑えて出席するレベルだろうか。全然参考にならない例え話かもしれない。


「以上なのです。灯里さんたちは蟻人に捕獲されて今まで蟻を世話してきました」


 灯里がきょろきょろと周りを見て、最後にこちらを見ながら話を終える。お偉いさんの前でプレゼンみたいなことをさせてごめんねと内心で謝りながら、彼女の気概を知っているので任せたおっさんである。


 パチパチと軽く拍手をして、それに追随して周りも拍手をする。


「ありがとう、不夜城さん。やはり蟻を中心にしてなにかを企んでいる敵ということになるのだな」


 ホッと安心の息を吐いて座る灯里を横目に、軽く腕組みをして険しい表情になり蝶野へと視線を移す。


「蝶野さん、どうなんだろう、蟻の巣の探索は進んでいるのだろうか?」


 答えは知っているのだが、一応尋ねてみる。蝶野は首を横に振り、否定の発言をする。


「残念ながら探索は進んでおりません。無数のドローンと兵士にて探索をしているのですが、野良となった蟻がそこそこおり、その退治をしながら進んでいる形です。なにしろ蟻の巣というだけあって、入り組んでいる迷宮みたいな場所ですので」


「そうだろうな………。私としては蟻の殲滅はともかくとして、探索する場所は隠蔽されていた場所を中心にすればよいと思う。そちらはどうなのかね?」


 ハカリへと視線を今度は向ける。こうやって議長みたいな司会進行を行わないといけないのは極めて面倒である。誰か変わってくれないかな。なんで私が流れを作るという形になっているんだろう。


「はい、ナナシ様の仰る通りそちらを中心に探索しております。今のところ判明しているのは7匹の強力なミュータントがいた跡がある空間。そして女王蟻がいたと思われる広大な空間。最後に細長くどこに繋がっているからわからない通路ですね。西に向かって線路が敷かれており、トロッコを何台か発見しております」


「西か………。ならばなんらかの資源を運んでいたのだな………。岐阜を大渓谷にした理由もわからないしな………。強化するためだろうとは推測できるが、先入観は危険だ」


 ヘリウムガスよりは重々しい頷きをして、おっさんはわかった風な表情で返答する。こういうのは得意なのだ。知ったかぶりが得意という全然自慢にならないおっさんである。まぁ、こういう会議だとある程度は必要なスキルなのだ。上司はなんでもかんでも知っているわけではない。というか現場の話を半分も知っていないという方が正しい。


「では、線路がある通路を中心に探索をする方針で行くか………。しかしそうなると危険なミュータントがいる可能性があるな。だとすると………」


 レキの出番だよねと思うが、未だに回復しきっていないので出撃不可能であると思う。まだまだ、ナインに、あ~んと桃を食べさせてもらい、ゴロゴロと寝ていたいのだ。病人なんだからチヤホヤしてよと甘えまくるのだ。ナインは甘えたら甘えた分だけ甘やかしてくれるので、底なし沼に入り込んでしまうかもしれないけど。


 苦渋の表情を一瞬浮かべる。まだゴロゴロしたい、寝たい、ナインとイチャイチャしたい。おっさんの苦渋の表情の根源がどうしようもなくしょぼい。


 だが、レキ出撃します! といつものようには言えないのだから仕方ない。ならばサクヤかナインで良いんじゃないのかと考えるのだが、サクヤは働きすぎましたとバイオリンを奏でながら、自宅でくつろいでいる。まるでキリギリスのようである。


 ナインは家の家事をしなくてはいけませんのでと断ってくるので、単独での行動はしないという意思を二人とも示している。あくまでサポートキャラというわけなのだろう。おっさんの成長を妨害するようなことはしないという訳だ。


 まぁ、仕方ない。サポートキャラを派遣してクリアするゲームなんかないしね。存在するゲームがあったら知りたいところだし、最初から期待もしていなかった。たぶん断られるだろうなぁとは思っていたので。


「レキ様が最善だと思われますが………。」


 ハカリがへにょんとウサギリボンをしおらせる。リボンで感情がわかるという極めて付き合いしやすい少女である。ちなみに偽装してあるので、ウサギリボンは見えず、年齢ももう少し上に周囲は見えるのだとか。芸が細かいねと感心してしまう。まぁ、10代だとさすがに責任者は厳しいか、よくあるアニメとかとは現実は違うのだからして。それでも無理はある感じがするがギリギリ許容範囲といったところか。


「必要ありません! こう言ってはなんですが、大樹のパワーアーマー隊は極めて強力です。それに合わせて他の兵士でフォローに入れば探索可能です。レキちゃんは必要ないと思います!」


 挙手をしながら、ナナがその話に食いついてくる。ナナならば反対するだろうとは考えていた。豪族たちも賛成するように腕組みをしながら黙ったままだ。静香は面白そうにこちらを見つめており、他の面々は流れに任せるといった感じか。


「大樹本部のパワーアーマー隊は極めて強力だが、乗り手も兵器も極めて希少だ。危険であるとわかりきっている隠し通路の探索への出撃許可がでるかどうかだな」


 う~んと考え込みながら返答する。失わせる可能性がある? なしだね、ツヴァイが死んじゃうような可能性が極めて高い場所には探索に向かわせたくない。向かうなら保護者としてレキが同伴である。なので、現状のレキが出撃するという内容と全然変わりがない。


 バンと机を叩いて、怒りの表情を浮かべるナナ。かなり今の発言に怒っているとわかる怒気を纏わせて言う。


「おかしいじゃないですか! レキちゃんだって危険な場所にいけば死んじゃう可能性があるんです。それをパワーアーマー隊が失われる可能性があるから出撃させないなんて!」


「危険度への対応力の問題だ。レキならば強力なミュータントも問題なく倒せるだろうが、パワーアーマー隊では同じ敵でも死人がでる可能性がある。両者には圧倒的な力の差があるのだよ」


「それはそうかもしれませんが、それをなんとかするのが私たち大人の責任なのでは? 戦術と戦略、そして兵士の力を信じないといつまでたってもレキちゃん頼りは解消できないです!」


 ナナが懸命に説得しようと言ってくる。この間の那由多との話の後だけあって、その本気度がわかる。那由多を説得するためにも実績は必要だと考えているのだろう。


 人間ならばできると示したいのだ。レキ抜きでも戦えると言いたいのだと理解できる。


 ナナは多少焦りも見えるのかもしれない。たぶんサクヤの適当理念を本気に取ったのだろう。真面目な人だからなぁ。


 さすがにもうステータスボードは治っているので、モニター越しに巨悪の根源のサクヤを見るとキリギリスの着ぐるみを着込んでバイオリンをかき鳴らしているアホなメイドが見えた。働きません、勝つまではというタスキをかけている。意味が分からない上に働く気はまったくないと表現していた。そしてバイオリンがギコギコと音をたてており、凄いへたくそで騒音レベルだと思う。ミュートにできないかな、このモニター。


「俺も荒須と同意見だ。そこまで恐れる事はあるまい? 危険だとわかったら退却できる程度の力をパワーアーマー隊は持っているのだろう? 俺たちもできるだけバックアップできるように行動したいと思う。それが軍の役目でもあるしな。お姫様はゆっくりと休ませておけ」


 豪族がなぜか優しい目つきでこちらを見ながら提案してくるので、豪族の優しい目つきというのは反対に怖いなぁと酷い事を考えながらもその内容を考慮する。


 ナインをモニター越しに見るが、せっせと掃除をしていた。三角頭巾にエプロンをしてはたきをパタパタと振って掃除中みたいだ。こちらに気づいていない様子である。本当に気づいていないという事はないと思うが、恐らくは自分の判断に任せるという事だろう。


 ならば答えは決まっている。おっさんは強力な理念に基づいて動いているのだ。


 その理念は楽しく生きよう。仲間は死なせない。常にお気楽な雰囲気でという理念である。適当に今考えたかもしれない理念なので、明日には変わっているかもしれない。晩酌には日本酒をとか、すぐに変えてしまうおっさんだ。


「わかった。そこまで言うのならば、パワーアーマー隊を動かして、君たちとの連携をとりつつ探索をしようではないか。なんとか許可を貰ってこよう。そのつもりで君たちは作戦を練ってくれ」


 きらりと豆電球みたいな鋭い光を目に漂わせて遥は周りへと指示を出す。パワーアーマー隊の選抜は数日はかかる予定であるからして、なんとかなるだろう。なにをなんとかするかは秘密である。


 その言葉に嬉しそうにするナナが満面の笑みになり、勢いよく頭を下げてくる。ガツンと机に頭をぶつけてしまう間抜けな光景を見せてくるが、いててと手で額を抑えながらも嬉しそうだ。まったく愛らしい主人公様である。


「ありがとうございます! なら、私たちもそれに合わせて行動をしたいと思います。絶対に死人なんか出させないので安心してください!」


 ナナの嬉々とした発言に、まったく安心できないよと内心で呟く。なんというかフラグだよね? どう聞いてもフラグである。


 豪族たちもニヤリと口元を曲げてこちらへと重々しく頷く。


「それじゃあ、俺たちの力を見せる時だな。これまでの戦いの経験もあるんだ、大船にのってとは言わないが、気を付けて戦うつもりだ」


「ですね、俺たちに任せてください。新型も支給されているんです。昔とは違うところを見せましょう」


 蝶野も豪族に合わせて、同意の発言をしてくる。その姿はゴリラなので頼もしい感じがする。


 感じがするけど………。フラグ信奉者な私としてはやっぱり気になるんだよね。だが、パワーアーマー隊の選抜も含めて時間を引き延ばせばいいだろう。


 仙崎も同じように頷いているが、疲れたというか心ここにあらずのような顔つきでどことなく元気が無さそうだ。なんだろう? あとで聞いてみるかな?


「よろしい。それでは任せようじゃないか。では、蟻の巣探索は百地代表たちの活躍に期待する」


 反対者はいないよねと、周りを見渡すとそれぞれ資料を見ながら小声で話し合うだけなので、反対意見はなさそうだ。


 まぁ、そうだろう。軍のことは軍人に任せれば良いのだ。戦いに文官が口を挟むと碌なことにはならないと古今の戦史でわかりきっている。


 それに彼らは蟻の巣の話を聞きに来たわけではない。元から、次の議題を待っているのだからして。


 促すように玲奈へと視線を向けると、できる女性な玲奈は小さく頷きで返して、口を開く。


「では次の議題に移りたいと思います。議題は5万人の避難民についてです」


 待ってましたとばかりに周りのモブキャラが顔つきを変えてくる。施設の建設も含めた話し合いが今回のメインイベントなのだ。


 水無月の爺さんも厳しい顔をしているので、これは話し合いが大変そうだと内心で嘆息をするおっさんであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] とうとう追いついてしまいましたが 何気に好きな京都編や この作品の三大好きなシーンがまだ控えているので楽しみに待ちます
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 引き伸ばして引き伸ばして、パンにしましょう!!
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