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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
19章 西日本に行ってみよう

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316話 ゲーム少女と狼少女

 ショートテレポートをした先は瑠奈が潜んでいる廃墟となっていたビルであった。気配感知で瑠奈がいることに気づいて、お話しようとショートテレポートをしたのだ。霞は蜜柑愚連隊拠点まで飛ばしておいた。ショートテレポートは短距離テレポートだが、都市内ぐらいならば転移ができるのであるからして。


「こんなところで出会うなんて奇遇ですね。なにをなさっているんですか?」


 パンパンとローブの埃をちっこいおててではたき落としながら瑠奈へと尋ねる遥。


 なんでこんなところにこの少女が? と疑問に思いながらも、瑠奈は答える。


「あぁ、俺は隠れていたんだよ。チャンスを狙ってな」


 ニカッと犬歯を見ながら快活に笑う瑠奈。


 やだ、この娘は相変わらず男前だなと思いながら遥は小首を可愛らしく傾げる。


「チャンス? こんなところでなんのチャンスを?」


 見渡す限りただの瓦礫のビルであった。なんのチャンスなんだろうか? 


 遥の不思議な表情に悪戯そうにちょいちょいとこっちこっちと手招きをしてくる瑠奈。


 なんだろうなと思いながらついていくと、窓越しに一直線にある方向を指し示す。


「あぁ、もしかして悪徳ビルに入るチャンスを狙っているんですか?」


 指し示す方向にはちょうど悪徳ビルが見えた。大通りからちょうど視界が通っている場所にあるのがこの廃墟なのだと遥は理解した。


「へへっ。そのとおり! あのビルのドアが開いたら、一気に乗り込んで頭のモンキー秀吉を片付ける予定なんだぜ」


 鼻をこすりながらドヤ顔で答えを伝える瑠奈。ナイスアイデアだろという感じを見せてきた。


 悪徳ビルの200メートルぐらいの範囲には戦車、装甲車、バギーが列を並べて、玄関ドアへとその凶悪な武器を向けている。膨れ上がったレジスタンスはその火力で玄関ドアを破壊しようというのだろうが……。


「……本当にあの玄関ドアを破壊できると思います?」


 ドヤ顔の瑠奈へと可哀想だが、疑問の声音で尋ねちゃう。だって、先程から戦車砲を撃ち込んでいるがガラスでできているはずの玄関ドアには傷もついていない。


 周囲を囲んでいるレジスタンスの方もピリピリとした表情でその様子を見ているが、事態が好転すると考えているのだろうか?


「そうなんだよな……。俺も最初はすぐにあんな玄関ドアなんか破壊してレジスタンスが乗り込むと思っていたんだ。でも、あの様子だからなぁ……本当に破壊できるのか疑わしくなってきたぜ」


 しょぼんと頭を俯けて、がっかりする瑠奈なので、んしょと背を伸ばして爪先立ちをして頭を撫でちゃう。慰めるには頭を撫でるのが効果的かもと考えたのだ。おっさんの場合はそのまま通報されてからの事案になると考えて、仲がかなり良い娘にしかやらないが、美少女レキならば大丈夫だろう。崩壊後から、おっさんも少しは成長しているのだ。


「にへへ、大丈夫だぜっ! 慰めてくれてありがとうよ。だがチャンスは確実に来る。その時を捲土重来で待つんだ」


 難しい熟語を使いながら、頭をあげてこちらへと笑顔を向ける瑠奈。なかなか精神は強固なのだろう。まぁ、崩壊後のきつい世界だしね。人も成長もするだろう。ただしおっさんは除くという副音声も聞こえたような気もするが気のせいのはず。


 ズンズンという戦車砲の音を聞きながら、少し気になったことを尋ねる。自分では少し気になることだが、このコミュニティの人たちにとっては重要なことを。


「レジスタンスは玄関ドアを破壊したら貴族はどうやって倒すつもりなんでしょうか?」


 朧へ支援要請していたし、朧頼りかな?と小首を傾げて尋ねると、キョトンとした表情で予想外のことを伝えてきた。いや、ある意味予想通りの答えであったが。


「あいつらは銃は効かないからな。戦車砲で倒すつもりなんだろ? 動きを止めて命中させるのは大変だろうけど……。俺はその間にビルに潜入してから、ボスを倒すつもりだ。ボスさえ倒せれば敵も瓦解するはずだしなっ」


 はぁ、と嘆息する遥。美少女なだけに嘆息する姿も美しい。


「もしかしてもしかしなくても戦車で貴族と戦闘をしたことがないんですね?」


「あ、あぁ。戦車が持ち込まれたのは崩壊後、貴族たちが持ってきたからな。銃だけじゃ対抗できないのはわかっていたんだ。その時に俺も親父も捕まっちまったんだ……」


 改造人間になるイベントがあった模様。だが、それ以上に重大なことがある。


「せ、いえ、なんでもないです。それじゃその時を待って待機しているんですね?」


 戦車では勝てないと言おうとしたが思い留まる。今、悪徳ビル前には全ての戦車、装甲車、銃付きバギーが集まっている。普通の車両も持ち込まれて100両近い。


 それだけ悪徳ビル攻略にかけているのがわかる。


 そしてあの車両は呪われている。遥にとって、大樹にとっても、邪魔な存在だ。きっと解放後に親切心から手放してと伝えても、呪われていると教えても、自分たちの武器を奪い取るつもりだろうと、絶対に手放すつもりはないだろうし、代替として大樹の車両と交換しろと言われても困る。


 ならばこの機会に一掃しようと遥は嘆息しつつ、そう内心で決めた。冷たいようだが、このコミュニティは大きすぎる。レジスタンスがここを経営するのは構わないが、後々面倒なことになっても困るからして。これって戦争なのよねと。でも、できるだけ死なないように支援するからと。


 なので伝えることはやめて、瑠奈へは話を変えたのだ。


「早く玄関ドアを破壊してくれないと食糧が尽きちまうから困るんだよなぁ」


 へにょんと眉をさげての瑠奈の答えを聞いて苦笑いをする。


「あぁ、都市が解放されてご飯を奪う敵がいなくなったからですね?」


「そうなんだよ。解放されたのは嬉しいんだけど、俺の食い扶持もなくなっちまった。外に取りに行けば良いんだけど、今はもうかなり離れた場所まで行かないと手に入らないんだ。取りに行っている間にドアが開いたら、中に入るチャンスが失われちゃうだろ?」


 ぐ〜っとお腹を鳴らしてしまう瑠奈。その音は結構大きくてほんのりと頬を赤くしてしまう。

 

 むふふとゲーム少女はその音を聞いて、仁王立ちして片手を掲げる。


「じゃ〜ん! ここにお弁当があります! 蓋を開けるだけで食べれる蜜柑愚連隊御用達ですよ。これをどうぞ」


 アイテムポーチから取り出したお弁当をほいっと瑠奈へと手渡す。


「おいおい、これはお前のだろ? 良いのかよ?」


 手渡されたお弁当を前に戸惑う瑠奈へと、瓦礫の影を指し示して教えてあげる。


「ほら、私は物資を運ぶ途中だったんです。なのでたくさんあるから大丈夫ですよ」


 影にはダンボール箱が置いてあり、そこからお弁当をホイホイと取り出す。


「良いのかよ? これ、レジスタンスの大事な食糧じゃないのか?」


「これは私が手に入れたものなので大丈夫です。文句を言われる筋はどこからも無いので、じゃんじゃん食べましょう」


 自分から率先して、パカッとステーキ弁当を開けてみせる。ふわっと温かいことを示す湯気が吹き出してきて、ホカホカすぎる弁当が姿を表す。


「ウォ〜! なんだそれ? なんで温かいんだ? え? 今のお弁当ってこんなもんなの?」


 湯気がたつお弁当を見て驚愕する瑠奈。


 そうだよね、これが普通の人の反応だよねと遥は瑠奈の反応に満足げだ。蜜柑愚連隊は全然驚いてくれなかったので少し不満だったのだ。


「ふふふ、謎の放浪者、朝倉レキのルートにはこういうのもあるんですよ。あ、飲み物は何にします?」


 アイテムポーチから取り出す飲み物を見て、瑠奈はさらに驚く。


「今何もないところから取り出したよな? え? なに?」


「なにを言っているんですか。瓦礫の影に置いておいたんですよ。瑠奈さんは気づかなかったんですね」


 いつもの有耶無耶にしよう作戦を発動させる遥。今まではそう答えると怪しみながらも自分の経験と照らし合わせて、相手は納得していたから問題はないだろうと。


 しかしいつもとは違うところがあった。あってしまった。


「俺の目は飛んでくる銃弾も見えるんだ! お前が空中から取り出したのをはっきりと見たんだ! 間違いない!」


 むぅと、唇を尖らせて顔を近づけて詰問してくる瑠奈。


 しまったと遥は内心で舌打ちした。そういえばこの娘は人外能力つきだったのだ。迂闊であったとなにも考えていないで行動する自分に反省をする。


 仕方ないか、答えようと。


「よくわかりましたね。実は私は東日本から来たエージェント。瞬間移動の能力持ちの超能力者なんです。懐中電灯がなくてもテレポートできる系です」


 嘘は言わないが真実も言わないゲーム少女である。設定はあまり変えていないからボロが出ることも少ないだろう。


「ほら、こんなふうにできるんです。アポート」


 レベル1のアイテムの引き寄せ転移を使うと目の前に飲み物が現れる。


 驚きで目を大きく広げる瑠奈。


「マジかよ……超能力者なんているのかよ……」


「はい。崩壊後の世界を生き抜くために作られた超能力者。その中の私は物資調達及び偵察係なんです。あと他にも色々と」


 あと、敵の殲滅係と面白いことを探す係もあるけどと内心で言う。


 小柄な脆弱そうな庇護欲を生み出す美少女。その姿を瑠奈はじっと見つめてくる。


 そうしてしばらくしてから、ため息を深く吐く。


「なんだよ……お前もそんな存在だったのか。いや、俺の言えたことじゃないな」


 ヘタリとあぐらをかいて座り込み、ペリペリと弁当の蓋を開け始めながら伝えてくる。


「そっか……だから俺のことを怖がらなかったのか……」


 世捨て人のように乾いた笑いを浮かべて告げてくる瑠奈。それに対して遥も問いかける。


「私はたとえ普通の人間でも瑠奈さんを怖がることはしなかったと思います」


 その言葉にピクリと躰を震わせて、ニヤけ始める瑠奈。


「そ、そうか? 俺こんなんだぞ?」


 ぴょこんと耳と尻尾を出してくる瑠奈。フリフリと尻尾が揺れていた。


「モフモフ〜!」


 ぴょんとその尻尾に飛びついてじゃれ始める美少女。


「おぉ〜! ふわふわです、モフモフです! これを嫌う人が本当にいるんですか?」


 確かに小説とかだとありえる話だが、ここは現実だ。この可愛らしい獣っ娘を見て恐れる? あり得ない。


 キャッキャッと犬派の遥は尻尾にじゃれつく。むむむ、凄いモフモフしていると。


「あわわわ、チョッやめろって、こらっ!」


 小柄な少女を手で抑えようとするが、うまく体重移動をされて抑えることができないで慌てるやら、恥ずかしいやらの瑠奈。


 実に無駄なことに体術スキルを活用しながらしばらく戯れるゲーム少女であった。


 少しして気がおさまったのか、諦めたのか、尻尾や耳をサワサワと触る愛らしい子供のような美少女をスルーして、ぱくぱくとお弁当を耳や尻尾の触り代だとばかりにいくつも食べる瑠奈。


 むしゃむしゃと凄い勢いで食べながら、ほっぺにご飯粒をつけたままで遥へジト目を向ける。


「変なやつだなぁ、こんなに人懐こいやつは初めて会ったぜ」


 たしかに人懐こい美少女だ。幼げな子供にも見えるし、愛らしくて可愛らしい。これで中身におっさんという異物が入っていなければ完璧だろう。


 ムフ〜と尻尾をいつの間にか持った櫛で漉きながら、ゲーム少女はにこやかに微笑みながら答える。


「今まで助けてきた人たちはどうしたんですか? 話を聞く限り大勢の人々を助けてきたと聞いたのですが」


「あぁ、みんな笑顔でありがとうと言ってくれたよ。食糧を分ければ笑顔で返してくれたさ……」


 瑠奈は悲しそうな表情を遥に向けながら言う。


「でも小声で聞こえるんだ……なんて魔性な娘だとか、危険すぎる女だとかな。皆は笑顔の影で本当は俺を恐れているのさ」


 次の弁当箱の蓋を開けながらも、皆に受け入れられない自分が嫌なのだろう。さらに言葉を紡ぎながら、諦めたようにフッと息を吐く。


「よく映画とか小説であるだろう? 異形種は普通の人からは嫌われる運命なのさ」


 へっと渋い感じでトンカツを口にする瑠奈。食べることは絶対にやめない模様。フードファイターになれるだろう勢いだ。口調と食べる速度がまったく比例していない。


 そんな瑠奈を見つめて、ふむんと遥は尻尾をちっこいおててでムギュムギュしながら考える。


「瑠奈さん。周りの人々は皆そんな感じだったんですか?」


「あぁ、皆そうさ。目つきを鋭くして、手をわきわきと動かしながら呟くんだ。なんて、魔性の娘だって。子供が近寄ろうとしたら慌てて親は止めて、失礼なことをするんじゃありません! お母さんも我慢してるのよって言うんだよ……」


 悲劇の孤独なるヒーローを演じるように空を仰ぎつつ、さらにもう一つのお弁当を食べ始める瑠奈である。


「瑠奈さん……それは皆が忌避していたんじゃないですよ? 漫画や小説の見過ぎです。皆、モフモフしたかったんですよ。恩人だから、皆我慢していたんです」


 この獣っ娘はどう見ても魔性の娘である。特に耳と尻尾。可愛らしいモフモフぶりなので皆が愛でたいのは間違いない。


「え……? なにそれ? 俺をモフモフしたかった?」


「皆の前では獣っ娘だったんですか?」


「あ、あぁ……。危険な時が多かったからな」


 ようやくお弁当を食べるのをやめてこちらを見ながら答える瑠奈。だが表情はマジかよという信じられない様子。


「それじゃぁ、私みたいにモフモフしたかったんですよ。現実では獣っ娘なんて確実に愛でる対象ですよ?」


「え、えぇぇぇ! たしかに凄いモフモフしているとか、触りたいとか聞こえたときもあったけど………マジでっ?」


「間違いないでしょう。このモフモフは魅惑的過ぎます」


 ガーンとショックを受けて、お弁当を横に置いて倒れ込む瑠奈。恥ずかしいのだろう。耳まで真っ赤にして呟いている。


「俺、今まで孤高のヒーローを気取っていたのに……本当は皆はマスコットな獣っ娘だと愛でていたのかよっ!」


 うわぁぁと床をゴロゴロと羞恥で転がる狼少女であったりした。


          ◇


 しばらくしてから、すぅはぁと息を整えて瑠奈はこちらへと向き直る。


 指をもじもじと絡ませながら、こちらを上目遣いで


「な、内緒だぞ? 俺が孤高の狼を気取っていたとか内緒だからなっ!」


 いいなっ? と睨みつけるように顔を近づけてくるので、黒歴史から目覚めたんですねと生暖かい視線で返す遥。自分は絶賛黒歴史を量産しているのは考えない模様。さすがおっさんである。


「わかりました。内緒にしておきます、そんなことより」


「そんなことってなんだよ? 重要なことだぜ? 俺の矜持がかかっているんだからな!」


 ドウドウと狼少女をちっこいおててで抑えながら真剣味を含めて指を向ける。


「玄関ドアが開きましたよ、どうやら誰かが、いえナニカが出てきたみたいです」


 指差す先には悪徳ビルがあり、その玄関が開いて異形のモノが3体出て来ていた。


 どうやら敵が動くことにしたのだろう。恐らくは絶望を与えるために。

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[気になる点] ≫お前が空中から飛び出したのをはっきりと見たんだ! 飲み物を取り出したのを見られたら、突然ぱぱしゃんが飛び出したことになってるのでつ でも、ぱぱしゃんなら急に飛び出しても違和感ないの…
[一言] かっこよくてかわいくてもふもふでおとこまえ。 さいこうかよ!
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