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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
19章 西日本に行ってみよう

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307話 ゲーム少女は王政コミュニティの話を聞く

 王政コミュニティとでも言えばいいのだろうかと椅子にもたれかかり、聞いた内容を咀嚼する遥。


「なるほど………。貴族の一部は車両を作ることができる。そして武器も。それを人間たちにばら撒いては少ない食料を取り合う無法地帯を作り出していると………」


 ギィギィと椅子を揺らしながら考える。どうやら貴族たちは生産系のスキルを持っているのだろう。


「ですが、無から作れるほどではないようです。工房を持ち、そこで作っているようでして、そこで働いている人間たちもいます」


 朧がこちらへと真面目な表情でこっそりと周りに聞こえないように言ってくるのを、ほむほむと頷いて聞く。


「無からは作れない………。そこまでたいした力をもってはないのですね。どういう人外なんですか?」


「それが、樽のような胴体、ひげもじゃで背丈は低いのです。そんな人外が数人いて車両を直して、銃を作りばら撒いています。車両は確保していますが、しょぼい銃などは無軌道にばら撒いていますね」


「うへぇ~。それはドワーフってやつ? というか銃を無軌道にばら撒いて食料は全然ないとか………なるほどここはきつい環境だね」


 ふむぅと顎にちっこいおててをあてて、ドワーフかぁと考える。ドワーフといったらひげもじゃでおっさんなのがデフォルトスタイルだったが、いつの頃からかロリな少女がドワーフの少女ということになっていた。おっさん的にはそれでいいねと思っていたが。誰でもひげもじゃ親父よりロリドワーフのほうが嬉しいだろうと。


 相変わらず、自分の興味を優先するおっさんであった。


「ここのコミュニティには各地に隠れ潜んで生き残っていた人間たちを集めています。かなり激しく人間たちは死んでいくので、そのような形で人口を増やしても段々減少をしていますが」


 なんという危険な場所だ。おっさんならばきっとパンの一かけらのために銃で撃ち殺されてどぶ川に浮かぶ様子が簡単に想像できる。しかも苦労して手に入れたパンをあっという間にとられるに違いない。うわぁという情けない声まで想像できちゃうしょうもなさであった。


「これを見てください」

 

 朧がバングルを操作すると王政コミュニティの街のマップが3Dで空中に浮かびあがる。


 リアルな映像であり、ジオラマといった感じだろうか。たんにポリゴンでないのが凄い科学技術だと見る人に感銘を与えるだろう。


「この真ん中の高層ビル。これは崩れることは無く綺麗なままです」


 指を差して拡大を行うと何十階かわからないが、かなりの高さのビルが映る。キラキラとガラス窓が輝いており、壁も崩壊前のように綺麗なままだ。


「このビルに領主と貴族と呼ばれる人外が10名程度、そして貴族の青い血を貰ったという騎士たちが100名程度います。あとは取り巻きの軍人やら世紀末チンピラ軍隊たちですね」


「お~。もう調査しているんだ。さすが朧たちだね」


 すごいよとちっこいおててでパチパチと拍手をしちゃう美少女である。椅子に座りながら、ブンブンと足も振って見せちゃう。周りのお弁当を食べながらホログラムを見ていた子供たちもレキの姿を見て、自分も拍手をしなくちゃとパチパチと拍手をし始める。


 キャッキャッと無邪気な子供たちが一斉に拍手をしたので、ほんわかな空気を部屋に生み出すのであった。


「えっとね~、空間結界が張られているから内部まではわからないんだ。というか、この話はもう有名な話だよ。あのビルの中だけは崩壊前と同じ水準かそれ以上の金持ちの住むセレブなビルになっているんだ」


 霞が合いの手をうつように口を挟んでくる。


「なるほど、それで周りにはスラム街を作って、人々はばら撒かれた銃を持って生存競争をしているということですね」


「その通りです。なかなか考えられた世界ですね。そしてこの元名古屋ドームなんですが」


 ピピッとマップを移動させて名古屋ドームを今度は拡大する朧。


 名古屋ドームは天井が3割ほど崩れて崩壊していた。


「ここがスラム街の人間が集まる悪徳の街の象徴ともいえる場所です。カジノあり、闘技場あり、娼館ありと様々な悪徳の遊びが設置されています。工廠もありそこで車両や銃が作られているのも特徴です。そのため、このドームにくれば銃が手に入る。そしてそのついでに遊んでいく………という流れとなっています」


 真面目な表情で次々と情報を開示していく朧である。フンフンと少し得意げな表情で語っているので、この情報を集めるのも大変だったのだろう。


 うんうん、さすがくノ一だねと感心をしちゃう遥であったが、またもや霞が茶々を入れてきた。


 ニヨニヨと口元を悪戯っ子のように笑みへと変えて


「この情報も有名なんだよね。少し住んでいればわかる情報なんだよ」


 茶々を入れられた朧がムッと頬を膨らませる。


「むぅ。レキ様、たしかにこれまでは有名な情報でここに住んでいればわかると思いますが、まだまだあるんですよ」


 ホログラムが???とでてきて、マップがunknownと表示される。


「この連中に対抗するためのレジスタンスも存在します。潜伏場所は不明です。このレジスタンスはゲリラ戦を用いて街を解放しようとしているのですが、リーダーが誰だかわかりません。少なくない人間が集まっている模様です」


「なるほどね~。ありがちだけど、ゲリラ戦でも敵に敵わない?」


 ふむふむと遥はその話を聞いて、小説や漫画を参考に尋ねると、朧はかぶりを振って


「そうですね。騎士ならなんとか倒せるレベルですが、オリジナルミュータントである隊長クラスですと人外です。彼らでは敵わないでしょう」


 まぁ、そうだよねと納得する。人外のオリジナルミュータントでは戦うことはできないだろう。なにしろオスクネーを軽々と超える戦闘力を持っていると思われる。ここで使われる銃、そして例え車両を奪取しても敵わないだろう。


「初めから自分たちが負けないとわかっているから銃を配布しているんだね。車両もそうだけど武器という甘い希望を持たせている」


「はい。レジスタンスは人々の希望となっていますが、もう一つ希望となっている人がいます」


 朧が再びバングルを操作すると、さっき会った少女が賞金首として表示された。1億クレジットと表示されている手書きの賞金首の紙であった。あんまり似ていないかもしれない。可愛さがないねとそれを眺めるゲーム少女。実に気楽な感じである。


「この少女、大上瑠奈は義賊として活動しています。青い血を受けながらスラム街の人々の為に貴族向けの食料を奪い、貧困に喘ぐ人々へと配っています。その他にも襲われている人間を助けたり、あくどいことをしている集団を懲らしめたりと。そのため賞金首でありながら市民の通報は皆が庇うためにありません。探すのは軍隊もどきだけです」


「わかりやすい娘っ子だね。なるほど、朧が警戒するのもわかるというものだよ」


 テンプレそのままの英雄だ。改造人間にされた主人公が脳改造のみは逃れるという最初に脳改造しておけよというツッコミをしたくなる状況で敵から逃走して、人々のために戦う。わかりやすい図式だ。


 だからこそ、罠ではないかと朧は考えたのであろう。霞へと視線を向けるとこちらの考えを表情から理解したのだろう、軽く頷く。


 でもあの娘の様子を見るに主人公っぽい匂いがしたし、演技っぽい感じもしなかった。


 だが、本人が善意の為に行動していることを利用できる環境にある。確かめなければいけないけどと推察する遥。こんな場面はいくつも経験をしていたのだと内心で自慢する。もちろんその経験はゲームや小説であるのがおっさんらしい。


「これが1か月で集めた情報ですね」


 朧が話が終わったので、息を吐いて肩から力を抜く。


「うんうん。ここまで集めておいてくれてありがとうね。これなら謎の放浪者である私が動きやすくなります」


 動きやすくなっても常に失敗をしていく潜入ミッションへの適性ゼロなゲーム少女であったが、ムンと胸をはって得意げにするのであった。


「んじゃ、レキちゃん、次の行動はどうするのかな?


 ちゃん呼びで霞がムフフと楽しそうに尋ねてくるので、遥は次の行動は決まっていると答える。


「レジスタンスのリーダーに会いましょう。こちらの動きを邪魔されると困りますし」


 その言葉に戸惑いを見せる朧。


「レジスタンスのリーダーですか………。しかしレジスタンスは巧妙に隠れています、空間結界が張られているのも理解しているらしくその境界線上をうろうろとしているので気配感知にもなかなかひっかからないのですが。ここのコミュニティは3万人は住んでいますし」


 そういう調査を司令はできるのだろうかと不安気な表情だ。まぁ、無理もない、今までそのような情報を集めたことはないかもしれない。小さなコミュニティばかりであったのでそんなことをする必要もなかったし。


 そしてゲーム少女は、得意げにフンフンと可愛く鼻歌を歌いながら、ランランとスキップをして街中を情報収集と称して歩き回りそうである。コマンド話すとか言いそうであるので、ツヴァイたちからもアホであると考えられている可能性が微レ存。


「むぅ。なんですか? その疑いの表情は。レジスタンスの一員に尋ねればいいんですよ。もう一人知り合いがいますし」


 ぷぅっとお餅みたいに頬を膨らませてパタパタと足を振って不満を見せるゲーム少女。その姿は小柄な美少女なので物凄い愛らしい。


 だが、その姿を見てホンワカしながらも朧は驚いて尋ね返す。


「えぇっ! いつの間に知り合いを作ったんですか? お菓子をくれる怪しい男性とかじゃないですよね?」


 顔を近づけてきて聞いてくる朧。無邪気な美少女が騙されていると考えているだろうことは間違いない。


 霞はケラケラと笑っているので、遥の言葉を理解しているのだろう。相変わらず抜け目がない。


「いるじゃないですか。目の前に。貴女はレジスタンスの一員、もしくは知り合いですよね? ねぇ、サラさん?」


 サラへと視線を向けると、あらあらと手を頬にあててサラが笑う。


「どうしてそう思うのかしら? 根拠はなぁに? お嬢ちゃん」


 サラがこちらへと鋭い視線になり尋ねてくるので、ふむんと得意げに両手に腰をあてて胸をはるゲーム少女。


「どうもこうも、誰かしらの支援がなければ子供たちを養うのは不可能です。というかなんでみなさんホログラムを見ても不思議に思わないのかと、そこを聞きたいのですが」


「ふふっ。そうね、東日本の方々が凄い技術を持っているのはわかるわ、だって霞さんたちの持つ装備は普通じゃ考えられないのだもの。壁を偽装するホログラムとか」


 えぇっ! と朧がショックを受けるが、朧はバングルを使って色々とやってきておきながら疑問の表情とならないこの人たちを見ておかしいと思わなかったのだろうか? 


 恐らくは霞は既に理解していた。それを朧には教えなかったみたいだけど。


「そ、そんな私たちを騙していたのですか! 子供たちを養っていて大変そうな集団だと思ったのに………。たしかにサラさんは色々と私の出身地とか聞いてきましたが」


 その時点でおかしいと考えない朧はゲーム少女に匹敵するアホさを持つと判明。これはシノブと霞のコンビの方が良いのだろうか? アインはもちろん大樹本軍のエース。情報収集としてシノブも本軍にいるので連れてこれなかったのだが。


 クスクスと笑いながらサラが話を続ける。


「霞ちゃんは気づいていたみたいだけどね。朧ちゃんは本当に気づいていなかったのね」


「霞は気づいていたのですか! 教えてくれれば良かったのに!」


「え~。だって、朧は確実に表情にでるじゃん。隠し事ができないと思ったから内緒にしていたの」


 うっきーと笑いながら霞が言う。隠し事ができないくノ一………。転職をお勧めしたい。


 サラは真面目な表情になり、再び遥へと視線を戻して話を続ける。


「そうね、私はレジスタンスの一員よ。この街を解放するために頑張っているのだけど、ここの領主を倒す方法がないから、なにか状況が変化しないかと考えていたんだけど………」


 ちらりと朧と霞へと視線を向けて微笑む。


「1か月前に来た朧ちゃんと霞ちゃん。乾パンと水という貴重な食料を持ってきて子供たちを助けてくれたのは心の底から驚いたわ。彼女らは東日本からきた生き残りと言っていたけど………」


 苦笑いとなり、食べていたお弁当を見せてくる。


「これ製造日が3日前になっているわ。保存食料で、蓋を開くだけで温かくなるお弁当なんて見たことも聞いたこともないけど、乾パンや水のペットボトルにも製造日が書いてあったの。それはいつも大体1週間前の製造日だったから、どこからか補給を受けているのはわかったわ」


 なんと製造日からばれたのかと、以前も同じようなばれ方をしたような記憶があるかもと考えるゲーム少女。デフォルトで記憶をデリートするので仕方ないというかアホなのでしょうがない。


 その血を朧も霞も受け継いでいるのが判明したのであった。


 サラは苦笑交じりのまま、こちらへと真剣な目となりながら言う。


「最初は罠かと思ったけど、こんなに新品同様の食料品なんてみたこともなかったし、どうやら東日本からのスパイだとはわかったわ。しかもお人好しのスパイさん」


 あちゃ~と顔を真っ赤にして顔を手で覆い恥ずかしがる朧。朧しか恥ずかしがっていないので、朧へと同情心が湧いてしまうゲーム少女であった。


「そうして新しい生き残りの友人と合流しようと言ってきたので、新たなスパイさんが来たのかと思ったんだけど………まさか、こんなに可愛らしい少女だとは考えてもいなかったわ。ごつい男性がくると思っていたの」

 

 ごつくはないがくたびれたおっさんなら来れたかもしれない。でもその場合は門で銃殺か、チンピラに殺されるか、子犬に噛まれるかと碌なことにならないのは簡単に想像できてしまう遥であった。


「そうですか。ごつい男性ではないですが、私は謎の放浪者なので色々とできますよ。レジスタンスに会わせてもらいますか?」


 その言葉に素直にサラは頷く。


「ここまで支援されてきて罠だとは考えないわ。いいわ、明日になったらレジスタンスの拠点の一つに案内するわね。それと、お弁当をありがとう、子供たちが嬉しそうにご飯を食べるのは久しぶりよ」


 ニコリと笑うサラ。その言葉にお弁当をまぐまぐと食べていた子供たちも一斉にお礼を言う。


「おね~ちゃん、ありがとう~。お弁当美味しかった」

「はんばーぐおいし~」

「まだおべんと~ある?」


 キャッキャッと子供たちがお礼を言ってくるので、おねーちゃんと子供たちに言われて嬉しくなるゲーム少女である。


「むふふ。まだまだ段ボール箱に入ったお弁当はたくさんありますよ! お菓子もあるので後で食べましょう」


「いや、今の段ボール箱にはお弁当はもうないぞ?」


 カツがすぐさま尋ねてくるが、遥は飄々とした表情でテーブルの下をちっこい指で指さす。


「なにを言っているんです。私が先程段ボール箱を大量に持ってきたではないですか」


 言われたとおりにカツがテーブルの下を見るといつの間にか段ボール箱の箱が積み重なって置いてあったので、頬をひくひくとひきつかせる。


「い、いつの間に………」


「ふふん。謎の放浪者は凄腕の手品師でもあるのです。ネタバレはしませんよ? さて、サラさん、レジスタンスの拠点への案内宜しくお願いしますね」


 そうしてにっこりと可憐な微笑みを浮かべるゲーム少女であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] お菓子ではなくお弁当を要求する子どもたち 救わなきゃ(使命感)
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