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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
3章 初めてのコミュニティを助けよう

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30話 ゲーム少女はダンジョンを攻略する

 駅前は車道がぐにゃぐにゃと曲がりくねっており、そこかしこに警官ゾンビやら犬ゾンビがいる場所となっている。生者はおらず、死人のうめき声しかしないはずのダンジョンに可愛い声が響いた。


『超技サイキックハイジャンプキック!』


 大きく跳びながら叫んだのは失敗だった。またもや黒歴史に1ページ追加してしまったと瞬時に悟りながら遥は超技を使った。


 レキを揺らめく何かが覆っていき、その姿を歪ませていく。ゆらゆら歪む空間はそのままゲーム少女の力となった。


 エンチャントサイキックでゲーム少女は力を増大させ、スタンスタンとリズムよく足踏みした後に遥は足を強く大きく踏み込んだ。すごい速度で足が踏み込まれて、ガシャンという音がして踏み込む足の力に耐え切れずに足元の看板が砕け散る。


 そのまま砕け散った看板が落ちる音を耳に入れながら、大ジャンプをして、大きく蹴り足を天井に向け遥は超技を発動した。


 迷宮化して、入り込む生者を迷わせ殺さんとする異界である。その周りは天井を含めて空間が歪んでいる。通常は、一度入れば決まった出口からしか出られない駅前ダンジョンだ。


 だが、高スペックなチートな可愛い子、レキには関係ない。そのちっこく可愛い足で全く可愛くない勢いで天井を蹴りつけた。


 風をも切り裂く勢いで蹴りは繰り出され、歪んだ空間がパリンと割れる音がしてダンジョンを覆う見えない壁はあっさり砕け散った。そのまま空に向けて跳んでいく。


 周りの風圧により、バタバタとコンバットブレザーが煽られる。風圧は凄く髪もバタバタ、スカートもバタバタ煽られるのでカメラドローンはすごい勢いでスカートの周りをバタバタ飛んで近づいてきている。


 もうこのカメラドローンの存在は無視することとして、遥は眼下に広がる迷宮を見下ろす。


 超技で天井を打ち砕き、外に飛び出た遥。今日は良く晴れた青い空が広がっている。飛んでいたのだろう鳩が、まるで弾丸のように勢いよく飛び出してきた遥を見て、驚いて逃げる姿を見てとれる。


 逃げる鳩を無視して、周りをチェックである。歪んではいても一定の大きさで存在する駅前ダンジョン、多分一キロあるかないかというぐらいである。真ん中には12階はある駅ビルがドンと城のように建っているのが見える。


 その駅ビルも無視して、遥はロータリーを確認した。先ほど気づいた行き止まりのロータリーである。確実に玄室だと思っている遥である。玄室にしか宝箱はないダンジョンだと確信していた。


 即ち、全部のロータリーを回ればほとんどの宝箱は確保できるでしょの考えのゲーム少女であった。


 歪む空間内から素早くロータリーを空間把握、地図作成で確認していく遥。頭にロータリーの場所を叩き込む。


 そのまま風圧が耳にバタバタという音を入れていく中、パラシュートなしの着地である。


             ◇


 短銃を持って、うめき声をあげながら徘徊する警官ゾンビたち。うろうろと警官ゾンビがうろついている。そのさなかにズガンという音が道路のど真ん中に響いて、アスファルトが砕け散り、パラパラとその破片が周りに降り注いだ。


 パラシュート付きで安全に着地をしたかった遥であったが、足が痺れることなく高空から見事に着地をした。足首が埋まってしまい着地地点は小さなクレーターができている。アスファルトは砕け散っており、まだ砕けた埃が散らばっている中、遥はぴょんと飛び出してそのまま移動を開始したのであった。


 滑り降りるプールのスライダーを目の前まで行ってから、うんうんなるほどと、わざとらしくうなずいて滑らないで階段を歩いて降りていく安全第一なおっさんであるが、高性能なレキならこれぐらいの高空でも大丈夫である。


 ちょっと怖いで済んだ、精神のステータスも人外であるレキに補助されまくりのゲーム少女であった。


 ズガンズガンという音が響き、遥が踏み込む先のアスファルトが砕け散る。警官ゾンビはその音に気づいて短銃を向けるが、そこにはすでにゲーム少女はいなかった。


 あっという間に、高速で異界化して歪みまくった道路を突き進んでいく遥である。アスファルトが砕け散るほどの力を足に込めて移動中。残像が見えてもいいぐらいである。エンチャントサイキックもかかっているので、もはや自重をやめていた。


 その高速移動は警官ゾンビどころか、はっはっと荒い息を吐きながら食いつこうとするドーベルマンの速度をも上回る。犬ゾンビの鼻先を横切りながら、警官ゾンビの横をかいくぐり、時たま路駐の車さえ邪魔だからという理由で蹴り飛ばし、道を開けろと前を塞ぐデカ警官ゾンビを殴り飛ばして進んでいく。


 腐臭溢れる死者のみが存在していた危険なダンジョンは、今や修羅と化した小柄な少女の狩場となっていた。


「4つ目ゲット!」


 玄室扱いのロータリの隅にあった宝箱である水晶に素早くちっこいおててを掲げて確保して喜ぶ、修羅は修羅でも宝箱を狩っていく修羅な物欲丸出しのゲーム少女であった。


「後、2個だな!」


 地図作成スキルに間違いはない。私はスキルを信じていると、むしろ依存をしているゲーム少女。それでも問題なく次々と宝箱を確保していくのであった。


 着々と増えていくマテリアルを見ていきご機嫌な遥さん。鼻歌も歌っている。


 おっさんが鼻歌を歌うと、耳に障害が発生する可能性が高いが、今はゲーム少女である。

可愛い鼻歌を歌っていた。


 ふんふんふ~んと可愛い声で歌いながら、


「全部回収できた?」


 と、ナインに聞いてみる。あれから1時間ちょい、ようやくロータリーの宝箱を全て確保したのである。ずらりと並ぶ希少マテリアルである。


 そして、汗一つかくことなく平気な顔でナインに問いかけるゲーム少女。人外突破間違いなしだ。同じことをしたら、おっさんなら体も汗になって全て流れ落ち汚染公害として浄化作業が必要になるだろう。


「恐らくは確保できたのではないかと。しかし残りはどうするのですか? たぶん駅ビルにもありますよ?」


 全て確保するつもりだと言い放っていた遥である。駅ビルの中も取るつもりであろう。しかし駅ビルも駅前とは違うが巨大な建物である。まるで城かと見間違えるほどであるのだ。12階建ての駅ビルである。空から玄室らしき行き止まりは勿論見えなかったのである。駅ビル内の探索に時間はかかりますよ? と疑問を顔にだしてくるナインである。


 疑問を顔にだしているナインもすごい可愛かった。帰ったら、頭をナデナデしてみたいと考える遥である。ナデナデする際に何をプレゼントすればいいのかしらとも思う、貢ぎ始めたら自己破産確実な遥であった。


 ちなみにサクヤは先ほどの撮影内容を編集するので一休みしてきますと、しばらく前に席を離れている。何を編集するつもりなのか、せめてモザイク入りな映像は勘弁してほしい。もう戦闘用サポートなのに席を離れていることも突っ込むのをやめた遥だった。


 あの銀髪メイドも美人なのだ。サクヤのこめかみを両手の拳をかためてぐりぐりとしてあげようと、ちょっと怒ってもいます。


 そしてナインの疑問には答えは行動で示すと決めていた。


「こうする」


 駅ビルが見える場所に移動する遥。スタタタと可愛い足音をさせて駅ビル前のちょっと大きいビルの屋上へと壁を登っていく。因みに壁走りである。もうくノ一かもしれないゲーム少女。


 屋上に登って、ガシャンとスナイパーライフルをアイテムポーチからだす。コンクリートで囲まれている寒々しい感じの屋上である。人の姿がまったく見えないのもまた寂しさを感じさせた。自分の周りにアイテムポーチからマガジンを大量に取り出して、ばらまいていく。


 そしてコンクリートに這いつくばり、スナイパーライフルを構えてそのサイトから駅ビルを見て照準を合わせる。


『エンチャントサイキック』


 ぽそりと呟いて、再度エンチャントサイキックをかけなおす。またもや歪んだ空間が体を覆い、人外の力をゲーム少女に与えていく。


 冷たい鉄の塊であるスナイパーライフルを軽くつかんで、指先にも及んだ人外の力でトリガーを引いて銃弾を撃ちだそうとする。


『超技ラピッドファイア』


 ズズズズズとありえない音がスナイパーライフルから響く。びりびりと銃身が揺れるのをそっと人外の力で押さえる。スナイパーライフルはその反動を抑えられて、装填されている弾丸を全て吐き出していった。


 ガトリングでもこうはいかないという感じで、激しい音を立てて撃ちまくる。分厚いコンクリートで覆われた堅牢であるはずの駅ビルは次々と発泡スチロールの如く穴を開けて砕け散っていく。


「リロード」


 遥はちいさく呟いて素早く周りのマガジンを拾ってリロードを行う。リロードと声をだして弾丸を装填するのはかっこいいのだと、わざわざ声に出していた。そして超技ラピッドファイアを再度使い弾丸が全て吐き出されていくスナイパーライフル。


 ガンガンガンと反動が物凄いことになっているが、ゲーム少女は全くその反動をものともせずに押さえることに成功する。弾が切れることなく撃ちまくるスナイパーライフルは、もはやガトリングスナイパーライフルと言っていいかもしれない別物である。


 超技の影響もあるのだろう、小さな穴ではなくまるでロケットランチャーをドカンドカンと撃ちまくられているがごとく大きな穴を開けていく駅ビル。撃ち終わった後はまるでネズミにかじられたように穴だらけのチーズとなったのであった。


「ほらほら。これで行き止まりぽいところも探索できるでしょ?」


 無限なランチャーで敵を倒しまくり無双することに定評のある遥である。無双な力を使うことにかけては誰にも負けてはいなかった。笑顔でナインにどや顔で言ってみる。


 ゲーム少女はどや顔も可愛いのだ。その顔を見れば可愛い可愛いと見た人は好感度を大幅に上げるだろう。


 おっさんのどや顔は他人の好感を大いに下げて空気を重くするのであるが。


 スナイパーライフルの弾丸を使うことはもったいない精神ではあったが、ナナたち人々のためにダンジョンをクリアする早さを第一に考えて、泣く泣くスナイパーライフルの弾丸を使った遥であった。


 クリアの基準は勿論宝箱を全部開けてという前提条件があるゲーム少女ではある。


「ご主人様、編集作業が終了しました! すごい可愛く撮れています!」


 弾丸を撃ち終わり、一息ついた遥の前のウィンドウに見たこともないほど良い笑顔で、ようやくサクヤがウィンドウに現れた。


 素晴らしい笑顔なので、こめかみぐりぐりは決定だと固く決心を決めた。まぁ、帰宅して実際にできるかといえば、多分できないだろう大穴万馬券のオッズのレベルではある。お疲れさまでした。とニコリと玄関でお出迎えされるだけで許してしまうだろう柔らかな決意の塊なのだ。豆腐よりは固いかもしれない。


「そして主も現れたようです」


 と、突如きりっとした顔で忠告してくる銀髪メイド。最低限の仕事はするつもりらしい。きりっとした顔であれば誤魔化せると思うのだろうか。会社ならさぼりの常習犯として減俸は確実である。


 駅ビルの壊れた壁の穴に手をかけて、ズルッと巨人の警官ゾンビが這い出てきた。


 今までのデカ警官ゾンビと違い、プロテクターをつけて兵隊ぽいヘルメットもかぶっている特殊部隊ぽい巨人の警官ゾンビである。


 それと合わせて、プロテクターを装備してライアットシールドを左手に持ち、もう片方はショットガンをもっている特殊部隊な感じの部下であろうゾンビが続いて出てきた。


 ヘルメットは割れており、その隙間からは肉がこそげた顔と白目が見えている。よくよく見ればプロテクターも破損しており、破損個所からは骨が見えていた。今までの警官ゾンビと同じく足を引きずっている。たぶん足は遅いだろう。銃撃で戦闘をするタイプらしい。


「うぉぉぉ~」


 と唸りながら、ボスっぽい巨人の警官ゾンビが叫んで右手を掲げる。


「ご主人様、あの主はボス警官ゾンビと名付けました!」


 サクヤも同じく叫んでどうでもいいことを告げてくる。


 ようやくデカシリーズから抜けたんだね。良かったねと、レキの可愛い笑顔をみせておく。


 この可哀そうな銀髪メイドはどう扱えばいいのであろうか? とつい憐れんでしまった遥であった。


 ボス警官ゾンビが掲げた左手には黒い塊が集まっていた。怪しい黒い光を放ち凝縮していく。その黒い塊からズズズとごついガトリングが生み出されてきた。どうやら装備作成スキルらしい。そのごついガトリングで戦うつもりだろう。


「実にボスらしい装備だこと」


 遥は嘆息して、再度スナイパーライフルを構える。まだまだ敵の姿は距離が遠い。ショットガンは勿論、ガトリングが当たるであろう距離ではない。ここはスナイパーライフルの距離なのだ。芋スナの距離なのだ。芋スナは得意である遥である。


 ゲームでは芋スナで1体はプレイヤーを倒せるのだ。1体は少ないので得意とは言えないかもしれない。


 ウィンドウのESPとSPの量は確認したところ、まだ40%は残っている。撃ちまくる前は85%ぐらいであった。


 遥は弾が空になったマガジンを隅に避けて、新たなマガジンをコンクリートの上に再度ばらまいていく。はぁ~、初の大ボス戦がこれかと、さすがに少し寂しいが安全第一な遥である。


『超技ラピッドファイア』


 仕方ないなと、やる気が全くない声で出血大サービスだと駅ビルからこちらに向かってくる特殊部隊軍団をみて、再度超技を使いスナイパーライフルを撃ちまくっていったゲーム少女であった。


 ボスの戦闘シーンは大幅にカットできたようである。すぐに肉が砕け散る音が狙った先から響いてきて、全ての敵は沈黙した。


 数時間後、全ての宝箱を取りつくし、ほくほく顔でゲーム少女は駅前ダンジョンから帰宅したのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] この章をありがとう
[良い点] 異界攻略! [気になる点] ボス警官ゾンビより更にデカいのが出たらきっとデカボス警官ゾンビとかまたデカシリーズになりそう。 [一言] 犬がいました。
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