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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
18章 国を建設してみよう

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294話 ゲーム少女は佐渡旅行をする

 空を高速で飛行している大型輸送用ヘリ。空を斬るように移動をしながら一路向かっているのは佐渡である。


 本土から離れて、海へと入り薄らと島が見えてくる。それを輸送用コンテナ内で窓越しに鋭い目つきで確認した女性が口を開く。


「ふふふ、あれが佐渡ね。最盛期の力を取り戻した島というわけよね?」


 確認するように他の窓で確認している少女へと言うと、少女はコクリと素直に頷く。


「はい。調査ドローンが偵察したところ、生存者はなし、周りには異様な概念が広がっている模様だと情報が収集されましたよ」


 サクヤが言うには佐渡金山ダンジョンを解放せよ!exp40000、報酬スキルコアなのだそうな。ちょっとしょぼい。


 だが、女性にとってはしょぼいどころではない。


「それじゃあ、金山として復活しているという訳よね? あと、触れる金のインゴットもたしか観光名所としておいてあったわよね? 仕方ないから、私が保護するわ、お嬢様」


 ふんふんと鼻息荒く、常日頃のクールな妖しい表情ではなく、目にドルマークを浮かべ守銭奴ポンコツモードとなっている静香がそこにいた。


 ゲーム少女はその様子を見て、大丈夫かなぁと嘆息して静香の服装を見やる。


「静香さん………。本当にその装備で行くんですか? もう少し何とかした方がよいと思いますけど」


 ゲーム少女にしては珍しく注意をするが


「大丈夫よ、金山モードの私に隙はないわ」


 自信満々にフンスとふくよかな胸をはりながら答える静香。


「え~………」


 ジト目で見てしまう遥の視線の先、静香の装備はダウンジャケットに自分の背丈を超えるリュック、そしてツルハシとそれだけであった。


「ナイトメアモードでこのエリアをクリアするつもりですか? 無駄に武器を召喚するつもりなんですか?」


 ツルハシ一本でダンジョンクリアなど正気なのかしらんと金を前にするとポンコツ化する静香に恐れおののくゲーム少女。


「大丈夫よ、チビシリーズも武装を外して、ドリル装備とコンテナを背中につけたから」


 静香の目は本当にこれで問題ないと信じているようであった。まじですか、武装ゼロで突入するつもりかと嘆息してしまう。


 チビシリーズは言われたとおりに、銃を外しておりでかいコンテナを背負って右手がドリルに改装されていたりする。本気でナイトメアモードでクリアを目指すのだろう。ゲームにおけるナイトメアモード。極悪難易度で即死が多くおっさんはその難易度はクリアしたことはない。というか選択もしない。


「泣けてくるぜっ! 姉御のアホっぷりにな!」


「むぅ………。主殿、盾も無く我らの戦力は半減どころではないのですが………」


 カインとアベルが苦言を呈する。当たり前である。サポートキャラが武装をしていないでどうするのだ、主人をまったく助けることができないではないか。まぁ、足を引っ張るサポートキャラもいるとかいないとか噂はあるが。


「無駄に武器なんて持てないからね。お嬢様と違って私のアイテムボックスは持てる物が決まっているのよ」


 アイテムボックスがあれば、たぶん山ごと持っていこうとするのだろうなぁと呆れる遥であった。


 なにをしにきたかと言われれば、東日本制圧作戦とは別に佐渡を制圧しにきた遥たちである。金山が復活していると聞いた静香がこの作戦に参加しないわけがないのである。というか最初は偵察よねとレキと静香と荷物持ち以外は不参加にさせている徹底ぶりだった。


 そう、荷物持ちがいるのである。どれだけ金を持っていこうというのだろうか?


 遥は荷物持ちへと眠そうな目を向けて、最終確認として尋ねる。


「ほんとーに荷物持ちでくるんですか? ほんとーに? 命の危険があるんですよ?」


 荷物持ちは声をかけれらて、ガタガタと体を震わせながらも強い口調で答える。


「あぁ、問題ないぜ、アタシがデビューするにはもうこの手しかない! おい、ディー? ちゃんとカメラを撮っていろよ、新米冒険者のダンジョン探索ノンフィクションだ」


 口汚く言うのは真琴である。そんな真琴は隣にいる伝子ことディーへと震えながらも確認する。


「フヒヒ………私のプロデュースは完璧だったはず………。広場でのゲリラライブ、人気が出てきたら劇場でのライブそして復活したラジオに出演して銀髪巫女隊は大樹のアイドルとなるはずだった………」


 ディーはゲーム少女に貸与された高性能カメラを構えながら、悔しそうに呟く。


「そうだそうだ! アタシたちは上手くいってたはずなのに………なんで、レキのお金を盗んだとか噂がたって人気がどん底まで落ちちまうんだよ!」


 うぬぬと世の無常を儚む真琴。どうも銀髪の少女がレキのお金を盗んだとか横領したとかいう噂がたったらしい。そして銀髪なんて真琴たちしか見たこと無い若木シティは勘違いしたそうな。


 なんだろうね、その噂。誰だろうね、その横領犯。


 半眼になってウィンドウ越しにサクヤを見つめると、さすがにバツが悪いのか頬をぽりぽりとかいて、サクヤが気まずそうに口を開く。


「ちょっと遊びすぎましたね。まさか彼女たちに被害がいくとは思いませんでした。たしかに銀髪なんてアニメや小説、そして美女たる私以外では銀髪巫女隊の彼女たちしかいませんからね、迂闊でした。反省反省」


 てへぺろと舌をちろっと出して、可愛くウィンクをする銀髪メイドであった。


「フヒヒ………ちょうど劇場に出演させるために金を凄い使ったから、私たちは文無しに近い。天使様が危険地帯物資調達許可証を用意してくれて助かった」


 ディーがお礼を言ってくるが真琴は疑わしそうに遥の目を見るように、身を乗り出して尋ねてくる。


「なぁなぁ、お金を盗んだとか、横領したとかいう銀髪はお前の専属だと聞いているんだけど………本当かぁ?」


「そうですね、あとでサクヤには土下座謝罪をさせましょう。真琴さんたちが人気を取り戻すように私も手伝いますよ」


 まさかの遊びすぎた結果がこんなことになるとはと、さすがに真琴たちが気の毒に思い助けるために連れてきたのだ。冷や汗を一筋垂らして、小首を可愛らしく僅かに傾げてゲーム少女はニパッと微笑む。


 うぅっと、同性であってもその可愛らしさにやられて、真琴は顔を赤くしながら離れて聞いてくる。


「これから、佐渡へとパラシュート降下するんだろ?」


 輸送ヘリは佐渡上空にて6人を降ろす予定であると聞いているので。残り二人は朧と霞であり、真琴たちの護衛だ。


「そうですね、佐渡に生存者はなし。あとは金山ダンジョンへとダイレクトにお邪魔をして解放をするだけなので」


「もちろん、金を掘り尽くしてからよね、お嬢様?」


 にこやかにそして目が笑っていない真面目な視線で静香が尋ねてくる。


「まさかと思うけど、小判妖怪を独り占めしたのに、金山もなんて、な、い、わ、よ、ね?」


 ググっと顔を近づけて威圧をしてくる女武器商人なので、コクコクとその威圧に負けて頷くのであった。


「………なぁ、聞いて良いか? いや、聞かないといけないと思うから尋ねるんだけど」


 真琴が聞きづらそうに尋ねてくるので、良いですよと答えると


「朧さんと霞さんは何故かくノ一装束だけど、それでも背中にパラシュートを背負っているよな? あんたらは?」


 静香は空のリュックを背負っており、パラシュートなんて背負うことはできなさそうだ。なので、聞かれた答えは


「足で着地するわ。大丈夫、私は柔道の受け身ができるから」


「………あぁ、そう………。あんたも超人なんだよな………、でレキは? 乗っているそれはなに?」


 こんな高空で受け身とかわけわからんと呆れながら諦める。


 そうして、真琴がジト目で指さすゲーム少女の足元には大きいたらいが置いてあった。というか、それに乗っているゲーム少女だった。


「たらい船ですね。見たことありませんか? これで海を渡れるらしいんです。凄いですよね、たらい船」


 オールもついているんですよと得意げに、んしょんしょとたらい船に備え付けられているオールを振って見せる。


「そのたらい船はなにか? なんか凄いテクノロジーでできていたりするのか?」


 そうであって欲しい、いや、そうだよね、パラシュート降下で使うんだものと真琴が尋ねるが


「いえ、これはたらい船です。それ以上でもそれ以下でもありません。ただの木でできたたらい船ですよ」


「それ以上であってくれよっ! なんだよ、ただの木のたらい船って! え、それで降下するの? レキはそれで降下するわけ?」


 やはり普通のたらい船だったかと驚愕の表情を浮かべる真琴。それを聞いてカメラを落としそうになるほど動揺するディー。超兵器かなにかだと考えていた模様。


「大丈夫です、たらい船は3人までは乗れるんですよ。真琴さん、ディーさん、乗ってください。そろそろ出発しまーす」


 世にも恐ろしいことを平然とのたまうゲーム少女がここにいた。


「嫌だっ! こんなの死んでしまうだろっ! アタシはあんたとは違うんだよ、超人じゃないのっ!」


 叫ぶ真琴。当たり前である。自殺行為と変わらないのだからして。


「まぁまぁ、よくお笑い芸人が身体をはってスカイダイビングとかするじゃないですか。それと同じようなものですよ」


 小柄な体躯で、紅葉のようにちっこいおててで真琴の裾を引っ張りたらい船へと押し入れようとするゲーム少女である。正直鬼畜以外の何者でもないだろうことは明らかだ。


「はい、ディーさん、カメラを回してください、真琴さん、スタート!」


 飄々と言う遥を、歯ぎしりをたてそうな恐ろしい形相で睨む真琴だが


「シーン1、パラシュート降下の真琴、スタート」


 監督兼カメラマンのディーが合図を出してカメラを回し始めるので、それを見て引きつってはいるが、笑顔を浮かべる真琴。


「は、はーい、ノンフィクション冒険活劇銀髪巫女の冒険始まりまーす。これから私はパラシュート降下をして佐渡へと進入します。優れた護衛がいますが、私も頑張って戦いますよ~」


 ぐっとひ弱そうな腕を曲げて、力こぶを作るように笑顔でセリフを発するプロ根性の塊な巫女である。


「果たしてこれはパラシュートなんでしょうか? たらい船にしか見えませんが、信じています。信じていますからね、レキさーん」


 ひくひくと口元を引きつらせてのセリフにフンスと得意げに胸をはりながら遥は真琴とディーを乗せてハッチを開ける。


 高空であり、轟々と風が唸りながら、貨物室へと入ってくる。冬なので、極めて寒い。


「お先に、お嬢様」


 待ちきれないわと、チビシリーズを連れて静香が飛び降りる。


「では、レキ様、朧たちも向かうでニンニン」


「いってきまーす」


 朧と霞も素早く駆けだして、ハッチから空へと飛び出していく。


 青い空、白い雲が目の前にあるので、極めて恐ろしい光景だ。


「それじゃ、私たちも行きますよ、アイン、あとは任せました、いってきまーす」


 オールをガンガンと床へとぶつけて、力づくで外へと向かうたらい船一行である。


「あ~、私も行きたかったけど、了解だぜ、レキ様!」


 アインが自分も行きたかったなぁと言いながらも、素直に答える。


 ガンガンガンガンと床を削るように移動しながら、外へと躍り出る遥一行。


「ほんぎゃー! 絶対に助けてくれよ? 絶対だからなっ!」


「フヒヒ………遺書は書いておいた………、安心すると良い、真琴」


「まったく安心できね~。遺書の話は初めて聞いたぞ、こんにゃろ~!」


 真琴がディーへと食いつくように文句を言い始めるが


「アイキャンタラーイ!」


 楽しそうな声音で実際に楽しくて仕方ないという表情で嬉しそうに空へと遥は飛び出す。乗っているたらい船ごと。


「いってらっしゃーい」


 アインが答えるさなか、空へと消えていく遥であった。


             ◇


 轟々と風が逆巻き、髪が浮き上がり、服がバタバタと勢いよくはためき、地上はちっぽけなジオラマに見える。そんな光景を見ながらウキウキと叫ぶゲーム少女。


「これは楽しいですね! 自由落下って楽しすぎます。ジェットコースターとか大好きなんです」


 キャッキャッと無邪気に楽しむ子供へと、その足にしっかりとしがみつき真琴が暴風の中で声が散らないように叫ぶ。


「大丈夫だよな? え? カメラ回っている? えっと、今私たちは空中でたらい船に乗っています。極めて意味が分かりませんし、そもそもたらい船って、海の上を移動するんじゃないかと思われがちですが、空も飛行できるんですね。私はまた賢くなりました!」


 うふっと微笑むカメラの前の真琴であるが、確実に昨日の自分よりアホとなっているのは間違いない。


 凄い勢いでグングンと佐渡の島が近づいてくるのを見ながら泣きそうな真琴。


 先に降りていた静香が脚についているバーニアから炎を噴出して、ホバリングを始めたチビシリーズに手を掴まれて、速度を落としゆるゆると着地するのを見て安心したように遥へと尋ねる。


「なぁなぁ、あれであたしたちも降りるんだろ? ホバリングってどこのボタンなんだ?」


「そんなのはないですよ、言ったじゃないですか、これはたらい船であり、それ以上でもそれ以下でもないって」


「ひょえぇぇぇ~」


「フヒヒヒヒヒヒ」


 平然と答える遥の言葉を受けて、ついに混乱した二人であった。なんだかんだ言って遥を信用はしているらしいのだが。


 口元をぷぷっと楽し気に抑えて、遥は叫ぶ。


『ショートテレポート!』


 超常の力が一瞬のうちにゲーム少女とたらい船の乗客を包み込み、その姿をかき消す。


 そして、次の瞬間には地面へ移動してた。


 ボスンと軽い音をたてて地面へと着地するたらい船。


 混乱した二人は気を取り直してきょろきょろと周りを見渡して


「な、なっ、なんだよ! 大丈夫なんじゃん! なんだよ、テレポートが使えるならいえよなっ!」


「ふふふ、サプライズです、楽しかったでしょう? ショートテレポートを使えば、自由落下の慣性力も無にできるんです」


 その技で、テレポートや敵へと取りつく超能力を持つ暗殺者のゲームを楽しんでいたおっさんだ。


 自由落下もキャンセルする技は大の得意であったので心配ないのだからして。


「フヒヒ、カメラまわす」


 ディーの言葉にすぐににっこりと輝くような笑顔を作り、真琴が両手を広げて周りの光景に感心したように言う。


「着地成功しましたっ! そして見てください、この雪景色に包まれた佐渡を。ここに金山があるらしいですが、気持ちの良い風景ですよね、大自然の中にいると………」


 最後までセリフを続けることはできなかった真琴。


 ん? 真琴の視線の先を確認すると、元は観光名所であった金山からぞろぞろとスケルトンたちがでてきていた。


「はぁ、スケルトンとは懐かしいですね。これは囚人たちが死してスケルトンになったということでしょうか?」


 コテンと首を傾げて、懐かしきスケルトン部隊を見つめる。


「ヒャッハー! お嬢様、先に行って金を掘ってくるわね!」

 

 いつもとは違い、ぴょんぴょんとリズムよく機嫌よくジャンプしながら、スケルトンたちの集団へと入り込み、そのまま骨を繰り出すパンチとツルハシ攻撃で蹴散らしながら金山入り口へと向かう静香であった。


「どっちが悪役かわかりませんね………。まぁ、いっか、朧と霞は真琴さんたちを守ってください。私も蹴散らすので」


 トントンと軽やかに地面を蹴りながら普通のスケルトンたちへとゲーム少女も突撃するのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒャッハー!(雑魚風味
[一言] 佐渡の金山が復活してるなら、山梨や静岡のも復活してそうな気が。 信玄の隠し金山&温泉とか好きそうな人間ごろごろいるし。
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 悪役?どっかの令嬢でしょう
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