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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
18章 国を建設してみよう

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290話 ゲーム少女は話し合いをする

 若木シティ中央ビル。大幅な改修が行われて横幅が大幅に増えた。国会議事堂のようにちょっと宮殿ぽく改修されたのである。


 国家の中央施設として使うのだからと、大樹が不思議パワーで一夜にして作り上げたのだ。どこから突っ込めばいいのだろうかと、普通の人ならば考えるだろう。


 だが、残念ながら不思議に侵されて慣れすぎた若木シティの面々は、ふ~ん、さすが大樹だねと一言言って感想は終わりとしてしまった。


 彼らはもはや余程のことがない限り驚くことは無いだろう。それが良い事なのか悪い事なのかは不明である。たぶん良い事だと信じたい。恐らくは悪い事のように感じるが。


 病は気からというから、多分大丈夫だと思う。意味が少し違うかもしれない。


 そんな相変わらずのアホなことを考えながら、ゲーム少女はぼんやりと大会議室で話を聞いていた。


 ぷらぷらと可愛く足を振りながら、真面目に聞かなくちゃと愛らしさの塊である美少女は上下の瞼が仲良くしたいとくっつこうとするのを我慢していた。


 以前と違い、議会場と化した広すぎる会場で難しそうに空中に浮かぶ情報を皆が眺めて、厳しい表情を浮かべている。


 なので、さすがに空気を読んで、昼寝したいとはいえないゲーム少女であった。極めて珍しい。


 空気を読むというか、こんな大勢がいるなら自由すぎる行動はちょっとだけ恥ずかしいと考えちゃうのだ。


 100人近くの人間がいる中で、ちょっとだけ恥ずかしいですむのがさすがは心臓がダイヤモンドでできているかもしれないゲーム少女であった。


 この会議場では、ナナも静香の姿も見える。そして叶得の姿も。


 お金持ちを含む有力者が一応議員として選抜されたのである。まぁ、今のところ名ばかりの議員であり、公共工事に寄付をするのが条件となっているのが悲しい現実ではあるが。


まぁ、議員と称していると言っても良い。本当の名前はこれからの未来を考える有識者の会だ。定期的に行われており、有力者が集まるので自意識過剰な人間が議員と自称し始めたらしい。(あるいは、権威主義者が議員と呼び始めたらしい)


「であるからして、東日本の制圧作戦は極めて順調であります。ですが、それに伴う生存者の流入により貧富の差がはっきりとしていることから、関東圏内を超えて多数の人間が外部での物資調達を行っております。………そして戻ってこない人間も多数おります」


 モニターの情報を操りながら、議員が説明をすると周りの面々は難しい顔をして顔を見合わせてお喋りを始める。


「やれやれ、流入民の問題が早くも生まれるとは困ったものですな」

「僅かな借金を早々に返そうとして命を失うとは………」

「これは法で決めたことを実施できるだけのシステムを考えないといけないのでは?」


 難しそうな話を始める議員に、遥もうんうんと頷いて、私もなにか難しい話をしないとねと隣を見る。話し合いをするフリをして議員らしいことをしたいゲーム少女である。


 なぜゲーム少女が議員にという質問には大金が動いたとしか説明できない。ザルな議員選抜システムであった。


 隣には右にはナナ、左には静香が、後ろには叶得がいるので、誰に話そうかなと無邪気に考えるが先に静香がきりりと真面目な表情を浮かべて、話しかけてきた。


「佐渡は特殊部隊での攻略をするのでしょう? 私も行くわ? というか私も行くわ? 絶対に行くわ?」


 今の話と全然関係ない話をぶっこんでくる強欲女商人であった。どうやら、小判と化した妖怪の話を聞いてから、儲け話には絶対に行くレディとなった静香である。


 こりゃダメだと、隣のナナへと話しかける。


「え~とっ、ナナさん」


 ナナもきりりとした表情で先に声をかけてきた。


「ねぇ、サクヤさんと言ったっけ? あの人はどうなったのかな? あの横領犯」


 憎しみを感じるような視線で尋ねてくるので少し怖い。


「えっとですねぇ~………」

 

 ちらりとウィンドウを見ると、のんびりと漫画を読んでいるサクヤの姿が映し出されている。即日で牢獄から釈放されて横領などなかったことにした悪役令嬢サクヤ。


「あのお酒はスタッフが美味しくいただきましたという感じになりました。私もサクヤがいなくなると困りますし」


「それって横領はなかったという事にしたということ? ムムム………やっぱりあの銀髪メイドは危ないよ、今までの会話からも思ったけど! レキちゃんの財産は信頼できる管財人さんに管理してもらおうよ? そうしないとあのダメメイドが優しいレキちゃんの財産を使いこんじゃうよ?」


 もはやサクヤへの信用はゼロどころか、マイナスらしい。まぁ、これはフォローできないかもしれない。


 そして、この議会場での話し合いとまったく関係がない。静香と同じく自分の気になることしか聞いてこない二人である。


 ツンツンと背中がつつかれて振り向くと叶得がきりりとした真面目な表情で口を開く。


「なんですか、叶得さん?」


 まったくもはや期待していないジト目となり内容を聞く遥。


「ねぇ、おっさんはどこにいるのかしら? 今日も話し合いにいないみたいなんだけど」


「ナナシさんはサクヤさんと話し合い中です。私の財産について話し合い中です」


 一応ナナへのフォローも含めて答えると、叶得は少し目を厳しくして尋ねてくる。


「それって、貴女の専属メイドの美女よね? おっさんを誘惑しようとしていない? 私もその話し合いに加わるから、本部に連れていきなさい!」


 もはやナナシへのアタックを隠さずに話す叶得。というか積極的すぎる。勢いのまま家に居座りそのまま同棲しそうだ。


 おぉぅ、こりゃ話が進まないねと、ボケ担当であるはずのゲーム少女は嘆息するのであった。


「というか、ナナさんが今回の状況に対して気にしないのは珍しいですね?」


 懲りずに再びナナに話しかける。正義感の塊であるナナであるので、今回のことに対して興味を持たないのは珍しい。


 う〜んと困った表情で渋々ながらナナは返答する。


「駄目だと言われているのに外に出るのは自己責任だと思うの。助けた人の話を聞いたら、大樹の借金を一気に返すためと言っているし」


 静香も呆れた声音で口を挟む。少し薄笑いをしながら救助者への蔑みも見られた。


「無利子無担保での支払いなのに馬鹿よね? この場合、たった100万円というのもネックになったのね。手付かずの廃墟なら簡単に集まりそうな感じがするし」


「そんな人たちを助けに行く防衛隊の方が大変だよ。正直甘い対応はしたくないと思う」


 ナナの言い分になるほどねぇと納得して頷く。冷たいようだがたしかにそのとおりだ。そんな人たちを助けに行って死んでしまう防衛隊の方が可哀想である。


 正義感の塊であるナナは今回は防衛隊の命を優先したのだ。危険と承知でゾンビ溢れる圏外へと移動する人間を助けに行くことは普通に考えても嫌だもの。


 山登りで注意をされているにもかかわらず、軽装で登山しちゃうようなものだ。しかも助けに行く際には殺しにくる化物付きと条件は極めて悪い。


 ただの避難民を助けるのとは違うんだねと納得していたゲーム少女に、新たな声が耳に入ってきた。


「この度の出来事はなるべくしてなったという他ないでしょう。避難民支援金として、救助費用も僅かでありながら新たなる避難民は大樹への感謝の気持ちを忘れて一括で返却しようと無茶をした。これは今までのやり方が甘かったからだと私は思う」


 耳にするりと入るような渋い声音で、よく通る声でそう言ったのは遥たちとは反対側の席に座っている40代の男性からであった。立ち上がりあたりを見渡しながら話を始める。


 中肉中背で目つきは鋭く二枚目だ。背筋を伸ばし綺麗な立ち方をしている。人を引きつける話し方ができる野心溢れる二枚目の渋いおっさんという感じだ。どこかのくたびれたおっさんとは生物学的に違うかもしれない。


 手を広げ大げさにも見える手振りで人の目を引き付けるように話している。その効果はなかなかで周りの議員たちは注視しているのがわかる。


「今までのやり方を否定するつもりは毛頭ない。正しく効果を発しており、初めから復興作業をしている者たちと新規の生存者たちの軋轢を少なくしたとわかるからだ」


 そうしてこちらへとじろりと視線を向けて


「だが、多くの人々が集まった今はわかりやすく人々を区別することが必要だ。差別ではない、区別だ。借金を返却できていない者の銀行カードに避難民のマークをつけたらどうだろう? 関東圏内で検問を実施して、そのマークを持つ者は申し訳ないが検問を通る際にチェックを厳しくする。そうすればこのような悲惨な出来事も少なくなるだろう」


 息を吐き、満足そうに話を終えるその男性に、周りに座っていた者たちが一斉に拍手をし始める。


「さすがは木野議員、良い提案と思います」

「いやはや、自分たちが避難民であるとわからせるためにも必要ですな」

「人の出入りを監視するのはいつの世も同じ。私は賛成ですぞ」


 わぁっ、とパチパチパチパチと拍手が大会議室に広がり、ワイワイと今の提案に対する話が各所にて起こる。


木野勝利きのまさとし議員ね。早くも自分の派閥を作り始めたエリートさん。彼の目指すものはなんなのかしらね」


 静香が冷静な目つきで木野を見ながら呟くように口にする。それを聞いて憤懣やるかたないとナナが言う。


「あの人は私の大嫌いなタイプです。一部では貴族主義とか呼ばれているんですよ。きっと次は金持ちで国へと寄付している人達への特別扱いをしようと言うつもりです」


 100人いれば派閥ができるのは当たり前という人間の業が復活していた。議員たちも複数の派閥を作っている。


 その中でも木野の派閥はナンバー2である。周りにはよく見ればナナシの取り巻きを称していた狐目の男と腰巾着たちも見える。木野は取り巻きを作り、影響力を増やすのがとても得意なのだ。


 取り巻きたちとの頻繁な勉強会と称した食事会や、その自尊心を満足させる発言は合理的かつ実力主義なナナシとは正反対の為に、そういった人間たちが集まっていた。


 ナナシはくたびれたおっさんでは? いやいやきっと噂に聞くナナシは合理的で実力主義なのだ。おっさんとは違う人間に違いない。


「特別扱いですか……それはそれでいいとは思いますが、現状では避難民のマークなんていりませんね。特別扱いの人はゴールドカードにして、どこのお店でもそのカードを見せるとソフトドリンク一杯無料の権利が貰えるとか良いですよね」


 どこかのレストランのおまけみたいな権利を提案するアホな美少女。


「きっとそうすれば、じゃんじゃん寄付をする人が増えますよ。寄付は大樹では無税ですからね! 寄付は無税。宗教法人は課税対象にしましたけど」


 目をキラキラとさせて無邪気な発言をするゲーム少女をナナが優しい視線で頭を撫でててくる。


「レキちゃんみたいな人がたくさんいたら、平和に暮らせるんだけどね〜」


 おっさんがたくさん……地獄かな?


「私はナナシとの一日デート券で良いわ! お泊り付きでなんとかならない?」


 身を乗り出して無茶な要求をしてくる褐色少女はライオンかな?


「貴女たち、あんまり目立つことはしないでよ、百地さんがこちらを睨んでいるわよ?」


 静香が呆れた声で告げたとおり、少し前に座っていた豪族が顔を赤くして怒っているので、コントはここまでである。


「最大派閥とはいえ、中心人物のナナシさんは今日もいないからね。百地代表も大変なんだから、これ以上胃痛の原因にならない方が良いわ」


 ナナシ率いる派閥。それは総合エネルギー会社オーナーの荒須ナナ、光井コーポレーションの光井叶得、武器商社宝樹の五野静香、そしてくたびれたおっさんが取り憑く美少女朝倉レキと大金持ちが存在している。レキだけ称号が変な感じもするが気のせいであろう。


 金の力が派閥の力と言わんばかりであるが、若木コミュニティと呼ばれていた頃からの初期メンバーが多く真面目な人間が多いのが特徴だ。


 それとやっぱり寄付金が圧倒的であるが。やっぱりマネーパワーかも。


 そんなマネーパワーと初期メンバーに支えられており、筆頭はナナシであるが、常に忙しいナナシは出席することが稀である。その代わりに百地代表が代わりの代表として出張っているのだが。


 まぁ、大きな話し合いのためのなんちゃって議員なので、仕方ないだろう。札束を積めばアホな美少女も議員になれるのだ。これもいずれは変えなければならないが、現状は民主主義による選挙もできないので。

 

「それにお嬢様のために、メイドとの話し合いを優先するなんてね」


 クスクスと口元を抑えて静香が笑う。話し合いもなにももうメイドは漫画を読むのに飽きて、寝ていますとは言いづらい遥であった。


 そんな困った状況の中で、豪族が挙手をして大声を張り上げる。


「反対だ! 検問は良いだろう、しかし避難民のマーク? そんなものはいらん! 後々になってきっと差別の対象になるのが簡単に想像できる。木野議員は禍根を残すようなやり方をするというのか? 悪法となるぞ!」


 怒鳴る豪族へと木野は怯みもせずに冷静な返しをする。相当な胆力の持ち主だ。


「こんなに安い金額ですよ? 2年も働けば返せる金額だ。一般人へと昇格できると彼らの目標にもなって良いと思いますが?」


「馬鹿を言え! こんなものは簡単に差別の原因となるんだよ! 元避難民とか、マーク持ちとか言われる未来がなぜ想像できん!」


 さらに畳み掛けて怒鳴る豪族。言い分は極めてわかると遥も納得する。どんな事柄でも差別の対象になるのが人間たちだ。きっと後々の未来で儂は建国当初からのエリート家系なのだとか威張る人間も現れるに違いない。


「馬鹿とはなんだね! 百地代表!」

「議長! 今の暴言を許すのか!」

「退場させろ!」

「レキ様、後でサインください!」


 ワイワイと取り巻きたちが豪族の言葉尻を捉えて、器用に小声で叫ぶその姿は国会にしか見えない醜い争いであった。そして豪族はこのような政治活動にはまったくあっていない。まぁ、相手もなんとなく小声で叫んでいるのが情けない感じもするが。


「皆さん、静まってください。百地代表の言うことも理解できます。ならば検問のみを実施するということでどうでしょうか? 先日物資調達は許可制となりましたので、それをチェックするという形で」


 妥協して現実的な提案をしてくるので、ドスンと大きな音を立てて豪族は唸りながら座る。


 その提案を認めようとしている顔だ。


 だが、まとまりかけたその提案をぶち壊す人がいた。


「はいっ! センセー!」


 シュタッと手をきれいにあげて、議長からの発言許可を貰う。


 どうぞ朝倉議員と言われたので


「とうっ!」


 シュタッと机の上に飛び乗るお子様。だって背が低いので周りから見えないからだ。腰に両手をつけて、得意げに胸をそらしていた。可愛らしいことこのうえない。


「無駄ですよ、無駄無駄無駄〜っ!」


 シャドーボクシングをするように腕を何回か振るって、鈴のなるような綺麗な可愛らしい声音で発言をする。


「レキ様、無駄とはどういう意味でしょうか?」


 木野議員がピクリとその発言に反応して尋ねてくる。


「検問なんて、絶対に迂回路を探されて抜けていくに決まっています。崩壊前にパスポートがあったにもかかわらず密入国や密輸がなくならなかったように!」


「ならばどうすれば良いとお思いで?」


 合いの手を打つように木野が答えるので、ムフンと鼻を鳴らして、答えてあげる。


「そもそも関東圏内から歩きで関東圏外へ向かうというのがおかしいんです。皆さんはこの雪の中で歩きで関東圏外まで行けます?」


 コテンと可愛らしく首を傾げて確認する美少女。


 その言葉に議員たちはまた顔を見合わせて話し始める。


 ざわつく喧騒の中で豪族が深くため息を吐く。


「軍部でトラックの横流しをしている奴らはいないぞ? 既に調べた」


 まぁ、そうだろうねと遥も頷く。


「………そうか、トラックに代わる何かを利用しているのだな?」


 木野議員が困った表情となる。それは答えを既に想像できたからだ。


「トラクターね。あれパワーがあるからトラックのコンテナを取り付けるように改装が簡単にできたもの」


 あっけらかんと叶得が口にすれば、周りもそんなものがと疑問の表情になる。


「叶得さんの言うとおりです。トラックへの改装をしている工場を探して、トラックをナンバー制にしましょう」


「わかったわ、これからはナンバー制ね。話し合う必要があるからおっさんを後で私の家に連れてきてね」


 諸悪の根源がここにいた。魔王な褐色少女であった。なぜならば改装できる工場は若木シティでは叶得のところしかないのだ。


「最初から答えを知っていて、話を通そうとするとは少しばかりやり方がずるいとは思うがね? まぁ、それならば検問を実施すると共に車両はナンバー制にする。私はそれで提案したい」


 木野が多少口元を引き攣らせて怒ったふうに言う。


「……とりあえずはそれで良いだろう。防衛隊から検問する兵士を選抜しよう」


「免許センターも作らなきゃですね。ナンバープレートは特殊な装置にしますので、叶得さんのお家に頼みましょう」


 パンと手を打ちながら、ニコニコ笑顔でそう提案するゲーム少女へと木野は口元を僅かに曲げながら


「レキ様の提案は素晴らしいものがあります。では免許センターは私の方で準備をしましょう。問題はないですね? 検問の手配、ナンバープレートの請負先はそちらに任せるということで」


 上手く分配できましたなとの提案だ。


 チッと舌打ちをしながら、そこが妥協点だと豪族は考えたらしい。


「詳細は詰めるとして、大筋はそれで進めよう。俺は賛成だ」


「別に私も構いません。それで良いですよ」


 レキの言葉を受けて、そう決まった。


 議会の様相を見せてはいるが、企業国家らしく上位の者の決定で決まってしまうのだった。


 ちらりと木野へと静香が視線を向けると取り巻きたちがお世辞を言って媚びている姿が見えた。


「フフ、どうせ実利を取りましたねと煽てているんでしょうね」


 免許センターの建設はともかく、雇用と内装の手配、様々な事柄において金は大きく動くだろう。


 こちらも検問を含めて、ナンバープレートなどの利権をとった形となるのであった。


 結局決定権があるのは一部の人間のみであるので、議員というのが単なる賑やかしなのは明らかであった。


 とはいえ決定権の無い議員でも小さな提案は通るときがあるので、人々は政治に参画していると満足しているのかもしれない。


 元々定期的な会合以外は、レストランとか雑貨品店を経営している店主だし。


 しばらくのちに閉会となり、ゲーム少女はしばらく面倒くさいので会議室へは寄らないぞと役に立たない決心をしているとき


「けっ! 復興したと思ったら利権争い、派閥争いとは嫌になるな」


 憎々し気に豪族が言うのを、近寄ってきた水無月の爺さんが苦笑しながら言葉をかけてきた。


 水無月も国家運営としてもちろん議員となっているのだ。金持ちだし。


「あれで良かったのだ。避難民にはマークをつけるなどと将来の禍根になる提案よりも、提案を取り下げさせて目の前の人参を食べさせておけば良い。小人しょうじんにはちょうど良い餌だ」


 取り巻きに囲まれながら会議室を去る木野へと侮蔑の表情を浮かべて水無月爺さんが言う。


 ガリガリと頭をかきながら苛立たしげに豪族は疲れた息を吐く。


「目を光らせておかねえといけない事柄が次々に増えてきて、まったく楽しい老後生活だぜ」


「まったくだ。しばらくは儂も頑張るとしよう」


 老人同士、共感したのかワハハと笑うのであった。


 そんな二人と周りの真面目な側近たちを眺めながら、遥は誰にも聞こえないように呟く。


「透明度の高い清き水には魚はすまないので、仕方ないのです。随分な大池になりましたしね」


 いきすぎた善人たちの集団は危険であるので仕方ないよねと、そう呟いてゲーム少女は会議室を去るのであった。


 大樹からの出向幹部の木野勝利、その正体は幼女なドライであり、多様な方向性を会議にてもたらす引っ掛け役であることは秘密であるのだった。


 あと密かに他の役目もあるのだがゲーム少女には秘密であるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 憎たらしいキャラも中の人が幼女なら よく演技できたねと飴ちゃんあげたくなる不思議 そして静香さん、貴女も睨まれている原因ですよ そういえばミュータント時代に学生をそそのかして 金品回収さ…
[気になる点] >大樹からの出向幹部の木野勝利、その正体は幼女なドライであり、多様な方向性を会議にてもたらす引っ掛け役であることは秘密であるのだった。  あら?  改稿前はバラすのはもうちょっと後じ…
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] これもマッチポンプっていうのかなぁ
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