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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
16章 バイオなゲームを楽しもう

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264話 女武器商人と大蜘蛛機動兵器

 ビームと化した蜘蛛の糸は複雑な軌道を描いてガンリリスたちへと迫りくる。複数の糸が鞭のようにしなりながら迫ってくるので、直線的に攻撃がくるよりもその軌道を読み難く回避しにくい。現に静香は何回か接触していた。まともに食らえばあっさりとガンリリスを切り裂ける威力の糸だが、圧縮エネルギーフィールドの反発により弾いていた。


「う〜ん、実際に糸がしなりながら向かってくると、こんなにも回避しにくいものなのね」


 はぁ、とため息をついて、空気を引き裂きながらぶれて見えるほどの速さで接近するビームの糸をバーニアを噴かせて回避していく。鋭角な空中機動はその噴出された圧縮エネルギーの残光でよくわかる。美しき幾何学模様を空中に描きながら、高速にて静香は回避し続けて、アトラク=ナクアの胴体へと躱しながらの攻撃を撃ち続けるが


「巨大過ぎてダメージが入っている感じがしないわ。しかもあの巨大さで高機動。どんなチートなボスなのかしら」


 呆れる静香。ビームマシンガンからの圧縮エネルギー弾にて攻撃を繰り出しても、その巨大さに慢心することなく、アトラク=ナクアは残像を残しながら高速で身体の各所にあるバーニアを噴出させて回避していくのだ。


 数発は命中する。なにしろビームマシンガンはその嵐のような連射が売りなのだから。しかし、数発ではダメージは僅かに体表を多少焼くのみである。再生能力もあるのだろう、すぐにその焼けた体表も元に戻っていく。


「オラオラオラ! これでもくらいなっ!」


 ガンカインがロングスナイパーライフルで攻撃するが、その攻撃は遠距離からなので、見事に避けられる。


「これならばっ!」


 ガンアベルが弾速の遅い近接爆発式バズーカから砲弾を撃ち込むが、それも残像にしか当たらない。単にその凶悪なる圧縮エネルギー弾による破壊の跡を地上に刻むだけであった。


「参ったわね……。複眼が問題なのかしら? 機動力では負けてはいないと思うけど、あの巨大さに私たちと同じ機動力だと、ちょっと効果的なダメージを命中させる光景が予測できないわ」


 アトラク=ナクアが、針のようなミサイルを全身から発射させて、ガンシリーズにそれぞれ襲いかかってくる。


 ミサイルの噴煙だけで、空中は埋まり、ミサイルの数は雨のようだ。だが、静香も負けてはいない。レバーを思い切りよく引きながら、機体を上下左右に回転も加えて移動して、ミサイルの雨を素早く掻い潜り、命中しそうなミサイルはマシンガンで撃ち落としていく。マシンガンの放つビームに被弾して爆発するミサイルの爆炎の中を突っ切り、一気に他のミサイル群から距離をとる。外から見たらまるで蜂のように真紅の機体が鋭角に空中機動をしているように見えただろう。


「フフッ、私は弾幕ゲームも嫌いではないのよ」


 モニターをチェックしながら、小刻みにバーニアによる位置変更を行う静香。見る限りガンアベルとガンカインも決定打は与えていないが受けてもいない。


「ちょこまかとまるで蜘蛛に囚われる虫のようであるな」


 恐怖を覚えそうな声音でアトラク=ナクアは嘲りながら、後部全体のバーニアから黒い光りの粒子を放って急速でこちらへと接近してくる。至近距離での戦闘で一気に終わらせるつもりなのだ。恐らくはお嬢様が戦闘態勢に入る前にこちらを倒すつもりだと理解する。


 目を僅かに細めて、静香は怒りを心に抱えながら呟く。


「舐められたものね。私をそんなに簡単に倒せるとでも思っているのかしら?」


 チロッと艶かしく口を舌で舐めて、自らの部下に指示を出すべく声をあげる。


「空中戦は不利だわ! 盾にできるものがないのよねっ!」


「了解だ、姉御! あそこのビル群に向かうぜっ!」


「承知! いざ我らが狩場へ蜘蛛を案内しましょう」


 ガンカインとガンアベルが了承して、一気にその機体を加速しながらビル群に向かう。


 最大加速では静香たちの方が速いのだろう。アトラク=ナクアは徐々に引き離されて、攻撃が届く範囲を超えそうなときであった。


 アトラク=ナクアがビルさえも飲み込みそうな程の口を大きく広げて、口内に黒き粒子を集め始める。


 薙ぎ払い系の巨大なビームだと、静香は判断して回避行動に移るが、アトラク=ナクアは高速機動での回避を悠然と見て力を解き放った。


 ズズズと地面が割れるような威力で黒き巨大なる光は放たれて、前方にある全てを飲み込みながらガンリリスへと迫ってくる。


 静香は部下の位置を確認すると、ビームへと向き直りシールドを構えて防御態勢をとった。


 そして黒いビームに巻き込まれてガンリリスは見えなくなるのであった。


「ふはははは、我が縮退砲の前に敵はおらぬ。残りも片付けてくれる!」


 高笑いをしながら、他の機体を倒さんとアトラク=ナクアが向きを変えようとするが、縮退砲による破壊の猛威が消え去ったあとに影が見える。


 そこには重装甲の機体が輝く盾を構えながら存在していたのだから。


「ヌゥッ! いつの間に入れ替わった!」


 光り輝く盾を解除しながらガンアベルは、フッと鼻で笑った。


「残念ながら我が盾を破ることは不可能だ。悍ましき蜘蛛よ」


 超技にて完全無欠なる防御をしたのであるガンアベル。得意のお互いの位置交換を行う術にて静香と入れ替わり防ぎきったのだった。


 アトラク=ナクアが何が起こったのかわからずに混乱している最中、細くそして極めて強力なスナイパーライフルのビーム光がアトラク=ナクアの赤い目の一つに着弾して爆発を起こす。


 慌てて距離をとるアトラク=ナクアであったが、命中した目は溶けており使い物にならない。


「ちっ、今のは会心の一撃だと思ったが、あれでも目ん玉一つしか破壊できないのかよ」


 スナイパーライフルを肩に引っ提げて、アトラク=ナクアから離れた右奥の森の中でガンカインがぼやく。今のは無防備なので、かなりのダメージが入ると思っただけに悔しい。


「最初の予定通りにビル群に入るわよ。隙を見て切り札を使うわ」


 大きくバーニアから圧縮エネルギーを噴出させたガンリリスはそのままビル群へと飛び込んでいく。ガンアベルもガンカインも同様に飛翔していく。


「愚かな。我相手にそこは最悪だぞ?」


 余裕の声音でアトラク=ナクアは告げて、腹から子蜘蛛を無数に生み出していき命じる。


「行けっ! 奴らを炙り出してやれ!」


 高速にて子蜘蛛たちは空中を飛び出してビル群に向かい始めるが、その横から巨大なる白光が貫き通され、その高熱の光で子蜘蛛たちは爆発していき、地上へとポロポロと落ちていく。


 高速にてビル群へ潜ろうとする静香はちらりと撃ち出された方向を見ると、スモークを張り姿を隠しながら多脚戦車がアトラク=ナクアへと攻撃を仕掛けていた。


 ぴょんぴょんと飛び跳ねて家々を踏みつぶしながら移動したかと思えば、一気に直線を加速して突っ切りスモークにてチラチラと姿を隠して戦っている。


「巧妙な戦い方ね。どうやら良いパイロットが乗っているのね」


 静香はその戦い方を見て、お嬢様ではないと看破した。お嬢様ならもっとグイグイと攻めてくるだろうから、あのような小技を用いた戦闘はしないはずだ。


 恐らくはお嬢様を回収したパイロットの腕なのだろう。アトラク=ナクアが新たに生み出した子蜘蛛も、ミサイルポッドからの射撃で次々と撃ち落としていく。不規則に機動している子蜘蛛はグネグネと空中にて捕まえようがない蝶のような動きをしているのに、的確に未来位置へと予測攻撃をしていき、子蜘蛛を破壊していくのであった。


 アトラク=ナクアに劣らない高速での機動をしながら、移動射撃を次々と続けて正確に敵を倒す多脚戦車。


「大樹はあれだけのパイロットを抱えているのね……。今度お茶にでも誘わないとね」


 ふふふと妖しく微笑み、あの戦車兵はお嬢様を回収できるほどのエースなのだと予測をする。それならば本部でもかなりの力を持っているか、知識を持っているだろう。是非ともお知り合いにならないとねと。


「姉御! 奴ら倒しきれないぜ、ちまちまと襲いかかってくる!」


 ビル群が近づく中で、空中を飛翔してくる無数の子蜘蛛たちから黒いビームが放たれて、その光線は家々を発泡スチロールをハンダごてで溶かすかのように切り裂いていく。


 次々と爆発炎上していく家屋。崩壊している家々も窓ガラスが割れているコンビニも自動ドアが傾いているビルも全て燃えていき、周囲は炎の世界へと変わっていった。


 少なからずガンリリスにも命中していき、美しい真紅の装甲が溶けて、肩当てが弾き飛ばされていく。


 迫りくる蜘蛛のビームに対して機体を仰向けに飛行させて、飛行している子蜘蛛をビームマシンガンで撃ち落としていくと、空がミサイルの雨に覆われる。


「本日は晴れ時々ミサイルの雨が降るでしょう」


 フフッと余裕の笑みを浮かべて、モニターの前面を見ると、一際高い高層ビルが見えてきたのであった。


 静香の計算どおりに。


「少し、そのミサイルは遅かったわね。アベル、カイン、ビル内に飛び込むわよ!」


「おう!」


「了解した!」


 真紅の機体を傾けて、ショルダーアタックの形でビルに飛び込むガンリリス。ガンガンとコンクリートの壁が鉄筋ごと砕けて行く中で内部へと入っていく。


 ガンリリスの前にはコンクリートなど豆腐と同然である。アベルも、カインも同様にビルに飛び込んでいくが、ミサイルはそうはいかなかった。


 コンクリートに反応して、雨ともいえる無数の強力な火力を伴うミサイルは全て爆発していくのであった。


 ミサイルが無数に命中していき、崩壊前は高価なマンションは一瞬で瓦礫へと変わっていき崩れていく。


                ◇


 崩壊していくマンションにより、砂埃が怒涛のごとく空に舞い上がっていくのをアトラク=ナクアは満足したように見つめながら息を吐く。


 毒の混じりし吐息は周辺を腐らせて、人の生きる世界から死人の蔓延る世界へと変えていった。


「愚かなる羽虫め……。貴様らなどを相手にしている時間はないというのに……」


 ゆっくりとその巨大なる体躯を今も戦い続けている多脚戦車へと向きを変えようとしたときだった。


「少し帰るのは早いんじゃないかしら? まだショーは終わりじゃないのよ」


 傷だらけのガンリリスが瓦礫の山となったマンションから、ブースターの噴射により、周辺を弾き飛ばしながら飛翔してくる。夜の世界が消え始めて、雲の隙間から陽光が差し込んできて、ガンリリスを照らしその輝きを見せる。


 傷つきながらもガンリリスは、光に照らされて美しかった。それは光の世界に生きることができるようになった静香の姿そのものであった。


「ガンシリーズ、合体よ!」


 静香の叫びで、その姿は気のせいだと思われた瞬間であった。


 いい歳をして、どこかのおっさんと同じ童心溢れる趣味を持つ女武器商人。


 ノリノリで叫ぶ静香に合わせて、ガンアベルとガンカインもビルから飛び出してきた。


 そのまま、ガンアベルとガンカインはパーツに分解していき、ガンリリスの装甲パーツとなり、ガンリリスは空中で合体をしていき、大型の機動兵器へと変貌する。2体の機体をパーツに変えて、ガンアベルの重厚な装甲を纏い、ガンカインのパーツを骨組みとして合体をしたガンリリス。


 最後にロングスナイパーライフルにガンカインのエンジンと思われるパーツが合体して、それを大型化したガンリリスが掴み取り、ジャキンと身構えるのであった。


 静香はコックピットの中で素早くモニターを見渡してチェックをして状態を確認していく。


「システムオールグリーン、最大エネルギーゲインは今までの5倍よ。名付けてガンヘブン! 蜘蛛さんには耐えられるかしら、この攻撃に!」


 ニヤリと獰猛に笑って、静香はガンヘブンを発進させる。超火力となったスナイパーライフルを構えて今までとは違う速度をもって。


「小癪な! 消えろ、羽虫め!」


 ぐわぁと口を開き、身体に備わっている毛であるミサイルを再び放つアトラク=ナクア。


 またもやミサイル群が雨ともなるかと思われたが、ガンヘブンに乗る静香は慌てなかった。


 すぐに切り札を使い、敵を一気に倒す作戦を取ろうとシステムを起動させる。


「トリニティシステムオープン!」


 紅い光の粒子がガンヘブンを覆い、更に力を上げる。もはや残像が生まれたときには、距離の離れた場所へと瞬間移動のように移動しているのであった。


「この力は伊達じゃないわよ、蜘蛛さん」


 超高速にて移動をしていき、ミサイルをも超える速さで飛来するミサイル群の間を縫うように移動するガンヘブン。


 近接信管もあるはずのミサイルは爆発することもなく、通過を許し地上へと落ちていく。


 次々と爆発していくミサイル群を尻目に、ガンヘブンは機体を縦横無尽に空中にて機動をしていき、アトラク=ナクアの複眼へとスナイパーライフルの射撃にて攻撃をする。


 紅き閃光は次々と複眼を破壊していくが、アトラク=ナクアはその攻撃を回避することは不可能であった。


 あまりにもガンヘブンが高速で移動するため、巨大なる体躯ではいくら高速で移動しても回避しきれないのだ。


 超エネルギーの力により、核の高熱にも溶けないはずの複眼は溶けていき、体には穴が空いていく。


 苦しむアトラク=ナクアではあるが、すぐに再生を始めてしまうので、チッと静香は舌打ちをする。


「ちょっと再生が早すぎるわね。まぁ、準備はできたし終わりにしましょうか」


 ほとんどの複眼が撃破できたことを確認した静香は悪戯そうに笑いながら、ガンヘブンをアトラク=ナクアの正面へと移動させて、ロングスナイパーライフルをアトラク=ナクアへと向ける。


「これで終わりね、害虫退治はおしまいと」


「愚か者め。わざわざ正面からの撃ち合いを臨むか!」


 ガンヘブンがロングスナイパーライフルに紅い粒子を凝集させていき、その凝集光は空間を波のようにたゆませていく。


 対するアトラク=ナクアも口内に縮退砲を撃つべく力を集める。


『天技血塗られた小枝』


 引き金を引きながら超常の技を放つ静香。紅き閃光が発射されて、周囲を紅く染めていく。


 ぐわっとアトラク=ナクアも縮退砲を放つ。黒き閃光が周囲を粉砕していき放たれる。


 お互いの攻撃が相殺するようにぶつかり、力の押し合いを始めて、世界が軋むような音が響き渡るが、アトラク=ナクアが勝利を確信した声音で告げてくる。


「無駄だ! 貴様の力では我には及ぶこと敵わず! 死するが良い、地獄へと誘おうではないか!」


 言葉通りに黒き閃光が紅き閃光をジリジリと押していき、ついに静香の攻撃は押し切られて弾けて消えていくのであった。


 かなりの力は相殺されたが、それでもかなりの威力を保った縮退砲がガンヘブンへと命中して、静香は大きくコックピット席で揺られながら吹き飛ばされた。


 瓦礫を溶かし、家を焼き尽くし、黒き閃光がガンヘブンを包み吹き飛ばす。


 轟音と共にガンヘブンは装甲を弾き飛ばしながら爆発してしまう。


「むぅ、威力が相殺されたか………。だが、次で最後だ!」


 アトラク=ナクアは吹き飛んだガンヘブンが原型を留めており、未だに健在であるのを確認して追撃を仕掛けようとするが、ボロボロのガンヘブンから声がかけられる。


「あらあら、私の攻撃で倒せないのは予測していたわ」


 その言葉に思わず聞き返すアトラク=ナクア。


「わかっていながら戦いを挑むとは、いつの世も人とは愚かなる者。奇跡でも信じていたか」


 全身各所が壊れて、モニターでは数多くの真っ赤なアラートが機体の状態を警告していた。その中で静香は余裕の表情で教えてあげる。


「複眼を潰し、周りの状態を確認する余裕がないほどの攻撃を貴方にさせた時点で私の勝ちよ。蜘蛛さん、貴方の上に害虫駆除業者が来ているわよ」


 その言葉にギクリとアトラク=ナクアは動きを止める。自らの失敗を悟ったからだ。目の前の羽虫を倒すのに集中しすぎた。あの強大なる力を持っている少女は今どこにいるのだろうかと。


 複眼が潰されて、周囲の様子がわからないアトラク=ナクアの頭にトンッと極めて軽い羽毛のような軽さのなにかが飛び乗ったことを感じる。


 そうして恐怖に襲われるアトラク=ナクアへと、水面のような平静な声音で少女の声が頭上より聞こえてきた。


「チーム戦では、パートナーの存在を忘れぬように次の世では覚えておくのが良いでしょう」


 生存者を回収しおわり、自由の身となったレキが戦車を飛び降りて、アトラク=ナクアの頭上へと飛び乗っていた。


 眠そうな目を眼下の蜘蛛へと向けて、星金の篭手の煌めきを右手に宿し。


「ま、まて! 我は降参する! そなたの眷属となって働こうではないか。我は役に立つぞ、人間を操ることにかけては追随を許さない、きっと役に立つ!」


 負けを悟ったアトラク=ナクアは焦った声音で命乞いをしてくるが、レキはその言葉を冷笑にて返答した。


「まさか、あの粘土細工の世界で、無様な人形操りしかできないで得意とは笑わせます」


 そしてレキは星の光で世界を塗り替えて拳を振り下ろす。


「超技星金獅子の牙」


 光の牙はあっさりとアトラク=ナクアの頭を食い破る。その波動は瞬時に胴体へも伝播していき、空へと光の柱を作り出し全てを浄化させていくのであった。


             ◇


 プスンプスンとポンコツな音をたてながらガンリリスが飛行していた。既にボロボロのパワーアーマーはハッチも壊れており、先程の速度など出すことも叶わない。


 そんなガンリリスの肩には装甲が破損して中破状態のチビアベルとチビカイン、そしてゲーム少女が乗っていた。


「ねぇねぇ、静香さん? 合体機構を取り付けたなんて知りませんでした! 私も直ったら乗せてください。がったーいとか叫びたいです。やっぱり決め台詞はガンビームでしょうか?」


 キラキラとした光を眠そうな眼に宿して、ワクワクと玩具を強請るような無邪気なる笑顔を見せる中身は年齢不詳な美少女である。


 とや~っと手を振り上げて決めポーズをする遥へと静香はレバーを操作しながら、微かに笑みを見せて答える。


「これはオンリーワンな私専用なのよ。お嬢様はわかっていると思ったけど」


「むぅ、やはりそうですか。やはり私も合体機動兵器が欲しいですね。作ってくれないか帰ったら確認しましょう」


 フンフンと鼻息荒く、アホな発言をする遥を見ながら、空へと片手をフリフリと振る静香。


 なんだろう、雨でもふってきたのかなと、遥も空を眺めるが晴天で日本晴れなので、コテンと可愛く首を傾げて


「なにかありました? 何かあるんでしょうか?」


 ゲーム少女も真似をして、ちっこいおててでフリフリと片手を振る。そんな姿も愛らしい少女へと静香はからかうように言う。


「私はSランククリアしたと思うの。あれはレイドボス並だと思うけど、それを私たちだけで倒したのだから。だから空から報酬が落ちてこないか確認していたのよ」


 なるほどと遥はその言葉に納得して、ほいやっと手を振りかざす。その拍子にアイテムポーチから小判が出てきて、静香へと降り注ぐ。


「どうですか? Sランククリアおめでとう〜な感じの報酬です」


 野の花が咲くような可愛らしい微笑みで遥が静香へと告げる。


 フフッと妖艶なる微笑みを浮かべて、静香はコックピットに落ちた小判を一枚手に取り


「悪くないわね。これぞゲーマーの醍醐味よね」


 そう答えて、小判をチンとつついて鳴らすのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 静香さん強い……!
[一言] ミサイルが雨あられ 赤い蜂 弾幕ゲーム... うっ吐き気が...
[一言] 小気味良いやり取りが楽しいですね。 ステージクリア後の会話味がある。
感想一覧
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