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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
16章 バイオなゲームを楽しもう

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263話 ゲーム少女は真犯人を告げる

 メインホールはシーンと静寂に包まれていた。子供のような美少女がシャーロックホームズの格好をして探偵ごっこをしている感じで、語り始めたからだ。


 自信満々なその表情は、いつものゲーム少女を知る人にとっては不安しかない表情である。また、アホなことを言わないといいけれどとナナなどはハラハラと学芸会で劇で演技をする娘を見るような視線を向けていた。知力においてまったく信用されていないゲーム少女である。


 そんな名探偵な美少女は白衣の博士ごっこをしている少女へと視線を向けて、意味深に微笑みを浮かべていた。


「この世界はゲームの世界。最初に出会ったときに綾さんは私にそう言いましたよね。新たなプレイヤーさんと」


 遥の意味深な笑みに戸惑いながらも、ゴクリとつばを飲み込んで綾は頷く。


「あぁ、そう言ったと思う。それがなにか?」


「スタートからおかしい話だと私は思っていましたが、次に会ったのが亜久那さんです。怪しいことこの上ない男性、怪しんでくださいという男ですね」


 ふふふと謎解きをしている私は主人公だねとスキップをしながらの発言に亜久那が疑問を呈してくる。


「なにが言いたいのかな? まぁ、予想できるけど」


 そんな亜久那へとニコリと微笑んで答える遥。


「馬鹿でもわかる怪しさ。怪しい発言、ヒーローになりえない感じの方なのに無双する強さ、レアな食物を見つける不自然な強運」


「だから、僕が犯人だと言うんだろう?」


 自分が犯人ではない。このエリアのゲームマスターではないと確信している表情だ。


「もちろん、犯人ではありません。この世界を作り上げたボスではありえません」


「なら、わかり易くない人が犯人なのかしら?」


 腕を組んで、綺麗なモデル立ちをしながら静香が合いの手を入れてくれるので、ナイスワトソン役ですと親指をたてて答える。


「わかり易くない人。すなわち初めてあったときに前になにか運動をしていたのかを聞いてきた人間。先程も同じことを聞いてきた人間」


 ツイっと視線を佇み戸惑う綾へと向けて話を続ける。


「女神像の謎をメインホールに人がいる中で解こうとした人間。ツインクネーのゾンビ化毒があるだろうに懸命に人を連れてこようとした人間…。ですか?」


 うぅ、と綾がたじろぐように後退る。


「崩壊前。崩壊前に運動をしていたのかいと聞いてきた綾さん。なぜ貴女は崩壊した世界を知っているのでしょうか? たしか起きたらこの世界に放り込まれたと言っていたのに」


「そ、そんなことを言ったかい? 記憶にないけどな……。な、なんだい、崩壊した世界って?」


 ビシッと綾に指を指して、遥は声をあげる。


「既に世界は崩壊しています。もはや世界に生き残りは少なくゾンビが支配する世界となってるんです。それを貴女は知っていた。知っていたんです! だから私と初めて会った時についつい言ってしまったんです。崩壊前は運動をしていたのかい? と!」


 漫画だと、ババーンという音と共に周りが騒ぐが、現実だと周りはナナと静香以外はポカンとバカみたいに口を開けて戸惑っているだけであった。


 その様子を見ても、珍しくゲーム少女はリアクションが薄いと残念がらずに口元を微かに笑みに変えて綾へと伝える。


「だから貴女こそ、実はこの世界を作り上げたゲームマスターです!」


「わ、私がゲームマスター! そんなことがある訳は」


 シュタッと手を差し伸べて、綾の反論を止める遥。


「冗談ですよ。そう考えて欲しかったから、わざと崩壊前と口にしたんでしょう」


 テヘッと小さく舌を出しておどけるので、まさに美少女詐欺であろう見かけは可愛らしいゲーム少女である。


「ここまでは、多少知恵が回る人間なら気づきます。現に貴女は私が貴女をゲームマスターと疑ってくれないと困るから、わざと静香さんの前でも崩壊前は運動をしていたのかと尋ねたんです!」


 その発言でピクリと眉を顰めて、予想外であったと疑問顔で静香が尋ねてきた。そしてナナは話がわからないので、空気と化してゲーム少女を見守る保護者となっている。


「この娘がボスじゃない? 私はそう思ったんだけど、違うのかしら?」


「違うんですよ、静香さん。ここのボスの能力は敵味方無差別に力を表したら結界から弾き飛ばすんです。シンプルなために繊細な設定がないために強力な結界。その結界には自分ももちろん引っかかります」


 厳しい目つきになり、口でドドドドと無駄に擬音を口にするアホな美少女名探偵。


「そのために、間違っても攻撃を受けてはいけないんです! 怪しすぎる亜久那さんは、いつ怪しんだ人に撃たれてもおかしくなかった! 間違って外から来た人間なら、綾さんの言動を怪しんで殺そうとするかもしれない! そして外にいれば無差別にビルごと破壊されるなどの攻撃を受けるかもしれない!」


 シャキーンと両手を頭上に掲げて絡ませる。ここがキメどころだぜとドヤ顔で最後の発言を皆に聞こえるように言う。


「なので、絶対にダメージを受けない場所で、人々を飼いながら自らは潜まないといけなかったんです! 人々を生かさず殺さずの状態で!」


 さらに鈴のなるような声音を響かせてゲーム少女は


「既に人々は毒の混じった食料で思考力をかなり鈍くされています。それでも傷つかない場所。それは安全地帯にあって、なおかつこの世界から脱出できると期待する見せかけの物。人々の様子を常に監視できる場所!」


 ビシリと部屋の隅にある傷一つない女神像の上半身へと指さして叫ぶ。


「私の前で不自然に自分を綾さんに運ばせたのは間違いでしたね! あの時に僅かに力を発しましたね? 私はそれを見逃さなかったんです! ツインクネーはわざと上半身を保護する形で吹き飛ばしていたんです! 万が一にも正体を私に気づかれないように」


 そうして、シュルンと手を女神像に突きつけて目を閉じる。


 再び開けた瞳には深く強い光りを宿したレキへと変わっていた。


「隠れんぼは終わりです。この一撃で」


 トンッと地面を蹴り、瞬時に女神像の目の前に残像も残さずに移動して腕を振りかぶる。ピーとバングルが赤く点滅して、景色が歪み始めるが


「遅いです。既に私の攻撃は入ります」

  

 ズドンと転がっている女神像へと杭打ち機のように豪快に拳を振り下ろすのであった。


 パリンと女神像が砕け散り、歪む景色が収まる。


 そして、おどろおどろしい声が砕け散る破片から聞こえて、あたりへとその不気味な背筋が震えるような声が響く。


「正解だ、小娘。我が謎を解くとは褒めてやろう」


 破片から灰が噴き出して集まり始める。景色が再び変わっていき、岩だらけの世界へと変わって、周りにはボロボロの社が現れた。


 呆然としていた人々はゆらゆらと身体を揺らして、綾と亜久那はパタリと倒れてしまう。


「え? これはなに? なんなのレキちゃん!」


 慌てるナナをちらりと見て、淡々とレキは告げる。


「食べ物には僅かながら毒が入っていました。それが理性を僅かに弱くしていたので、人々は一年半も閉じ込められておきながらここがゲームの世界だと疑問を持ちませんでした。私たちは最初にナナさんを迂闊にも簡単に治してみせたので、このボスは私たちの周囲にある食料には毒を混ぜるのをやめました」


 灰が100メートルはある巨大な蜘蛛へと変わっていくのを眺めながら、さらに話を重ねる。


「そこまで警戒していたのは、結界が空間拡張と空間変性の両方を持っていたからです。だからこそ迷いの森となり、力ある者を距離に関係なく弾き出すことができた。その結界が壊れたので本来の空間が現れたのです。ここは恐山、力をもっとも集めやすい場所、それが警察署に変成していたのです」


「すべて正解だ。脆弱なる人間に見えぬその力と知性。貴様は何者だ?」


 形成された肉体からヌッと針のような毛を伸ばす蜘蛛の脚が現れる。


「私は朝倉レキ。貴方を倒す者にして、このエリアを解放するものです」


 静かなる声音で、興奮も気負いもなく戦いへと立つ少女がいた。そしてウィンドウ越しにサッと姿を消すナイン。その手には真犯人はという説明書きが書いてあるクリップボードが見えたが、きっと気のせいであろう。まさか、名探偵が他にいるなんてありえないのだ。


 完全に身体を形成した蜘蛛が身体を身じろぎさせながら、戦車をも噛み砕きそうな口を開き、レキへと告げる。


「我が名はアトラク=ナクア……。世界へと我が巣を広げ終焉とするものなり……」


 ギロリと血のような紅い複眼、黒曜石のような硬そうな体皮、巨大なる体躯。


「あ〜、あ〜、現在精神を集中しているご主人様へ告げます。あの敵はアトラク=ナクア。旧き神にしてその巣を張ると世界を終わらせるモノですね」


 多少目を細めて、苦しそうに遥が答える。


「ちょっとあとで詳しく聞きます。オーバー」


「わかりました。とりあえず世界へと糸を張ろうとするモノ、アトラク=ナクアを撃破せよ。exp80000報酬がミッションで発生しました。気をつけてくださいね」


 単体ミッション発生にして、この間よりも報酬が高いことにレキは気づくが、特には、気にしなかった。自分の役目は目の前の敵を倒すのみであるからして。


 おっさんなら、パクらない名前と経験値の高さに動揺してあたふたとしていたことは間違いない。


 そんなアトラク=ナクアが、見下すように話を続ける。


「汝は大罪人、我が巣を破壊したことにより、人間共は死人に喰われるのみであろう。見よ、貴様が正義感より起こした現状を!」


 レキが周りを見渡すとボロボロの社にフラフラと毒による支配が消えた人々がぼんやりと立っていた。


 そして、その周りにはノソノソとゾンビたちが徘徊しており、すぐそばの人間に気づき、喰おうと動き始めたものもいた。


「安全地帯を無くした人間共は周りにいるゾンビたちに喰われるだけだ。再生能力を無くしたゾンビたちでもその数は人間共よりも多い。あっという間に人間共は食い尽くされるであろう」


 ふははははとラジオが壊れたようなガラスを引っ掻くような声音でアトラク=ナクアは叫ぶ。


「まずいよ、レキちゃん! すぐに生き残りを助けないと!」


 この結界の範囲は大きい。青森県をほとんど覆う程である。だからこそ広い範囲に生き残る生存者たちを守り切ることはできないとナナは焦る。


 だが、レキはフフッと冷笑を浮かべて答える。


「蜘蛛だから、知恵がないのでしょう。だからこそ、あの粘土細工のような街しか作れなかったのですね。結界を破壊するならばそのことを念頭においていないと本当に思ったのですか?」


 そうして、再度目を閉じて片手を天へと掲げる。


「既に青森県の生存者は把握した美少女レキちゃん。フルパワー!」


 目を開けて、遥がそれまでのシリアスを打ち砕くシリアルなセリフをミルクをかけながら叫ぶ。


「サイキックスパイダーネット!」


 既に力をためていた遥は、青森県の全てに細い念動力でできた糸を伸ばしていた。広大なる土地全てへと瞬時にその力を及ばしていた。


 恐ろしい集中力でその念動力でできた糸を繊細にして精妙な操作にて操り、生存者全員を絡め取る。


「サイキック空中戦艦に生存者入れちゃうアターック」


 長過ぎる技名を叫び、片手をグルリと回すと青森県の生存者たちが糸に引っ張られて空を飛んでいく。


 飛んでいくその先には空中戦艦が飛行しており、各ハッチを開けていた。


 ヒョイヒョイと生存者が入っていく。その超能力の巨大なる力に静香もナナもそしてアトラク=ナクアも驚愕する。


「こ、これはきついです。ちょっと何日間かは寝込みますね。寝ちゃいますね」


 軽口を叩きながらも、脂汗をかきながら生存者を入れていくゲーム少女をアトラク=ナクアは黙って見ているわけがなかった。


「人間にはあり得ぬその力。ここで絶つ!」


 アトラク=ナクアが地面に降り立ち、その巨体を僅かに沈めてタメを作る。


 そのまま飛びかかろうとするアトラク=ナクアである。今の目の前の人間は隙だらけであるが、生存者をあの戦艦に回収したらその力を自分に向けてくることは明らかだからだ。


 だが、そのタメは一陣の白光がアトラク=ナクアを襲うことで防がれる。表皮に次々と白光が命中していき、それを嫌がり大きく後ろへと飛翔して下がりズシンズシンと地面が震える音がする。


「ヒャッハー、圧縮エネルギー弾だぜ! 効くだろお〜!」


 チビカインとチビアベルが空から舞い降りてきて、アトラク=ナクアの前に静香が立ち塞がるのであった。


 そうして冷ややかな笑みで片手から小石をパラパラと落としてアトラク=ナクアへと視線を向ける。


「お嬢様は忙しいみたいだし、私がお相手をするわ。それに……」


 プルプルと身体を震わせて顔を俯ける静香。地獄の底から絞り出すような恐ろしい声音で言う。


「ちょっと小石と化したこの宝石についてクレームを入れたいの。私の宝石を小石に変えてくれた虫に文句を言いたいのよね」


 顔をあげて怒りの表情になって片手をあげて叫ぶ。


「来なさい! ガンリリス! そしてオーバーブースター!」


 空中から雷光が走り、真紅の人型機動兵器が現れて、静香は開いたハッチへと飛び乗る。


 そして、チビシリーズに紫電が走りながら光り輝き、以前の大きさの機動兵器へと姿を変える。


「フッ、我らの力をこの蜘蛛に教えてあげるとしましょう」


「ハッハー、久しぶりの姿へと戻ったぜ! 蜘蛛なんざ、ぷちっと倒してやるぜ!」


 3機は飛翔して、各々の武器を構えて散開するのであった。


「ちょっ、ちょっと、レキちゃんを放置しないで〜!」


 戦いを始めようとする静香たちへと、ナナが叫んでツッコミを入れるが時すでに遅しである。既にイミテーションジュエルの恨みをはらさんと怒りに包まれているので聞いてはいない困った女武器商人である。


 ゲーム少女は未だに集中して動くことはない。


 だが、空中から新たに多脚の機動戦車アメンボが降下してくる。


 ズズンと着地をして砂煙をあげて、その威容をみせる多脚戦車。


「荒須さんはそこのポニーで避難をしてください。レキ様はこちらで回収してますので」


 戦車から聞いたことのない声が聞こえてきてナナは戸惑う。


「え? だれ? 誰?」


 そのナナへと高速でポニーが飛んで来るので、飛び乗る。


「スレイプニル見参! 断じて、今のパイロットが言うポニーではありません、ナナ様!」


 スレイプニルが叫ぶように自分の名前をアピールして、動けないゲーム少女を巧く前脚を使い回収するアメンボ。


 うにゅ〜と可愛く唸る遥は戦車長席に座りながらまだまだ集中して動かない。が、その遥へとサクヤが振り向いて悪戯そうに微笑む。


「しっかり回収できたので、あとはあの蜘蛛を撃破するとしましょう……と言いたいところですが静香さんの援護に徹して様子をみましょう」


 素早くパネルを操作してサクヤが告げる。


 モニターには撃ち合う静香たちとアトラク=ナクアの姿があった。


「あのアトラク=ナクアというのは、見た目は生物ですが多数の兵器を体に隠しています。見かけと違って機動兵器みたいですね」


 ナインがモニターを見ながら解析をして感想を言う。


 ガンリリスたちが攻撃をしているのを、体の各所に隠されていたのだろうバーニアによる噴射にて高速で回避をしている。


 そして体表に生えている針のような毛はミサイルと化して飛んでいき攻撃を繰り返していた。


「蜘蛛なのに糸での攻撃をしないんですかね? 見掛け倒しなんでしょうか」


 サクヤが戦闘を見ながら、アトラク=ナクアの姿格好から拍子抜けした表情になるが


「いえ、姉さん。どうやら糸での攻撃も可能みたいですよ?」


 ナインの言葉通りにビームワイヤーと化した糸をアトラク=ナクアが吐き出してきていた。


 素早くガンリリスたちは回避していき、戦闘は激しくなるのであった。

 

 なお、ゲーム少女はまだまだうにゅにゅと唸って、サイキックスパイダーネットを操っていた。脇役化しているのであったりする。

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― 新着の感想 ―
[一言] メイドズのどっちかが助けに……?
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] 主人公交代しちゃった
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