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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
3章 初めてのコミュニティを助けよう

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25話 ゲーム少女は女警官と再会する

 ピョンピョンと店々の看板の上を飛び跳ねて移動する少女がいる。


 洋服屋のごつい看板、ケーキ屋のカラフルな看板。看板の上を少女がいても揺らぎもしない。軽く揺れるだけで壊れもしない。ありえない体術で看板の上を凄い速さで移動する。


 少女は朝倉レキ。ショートヘアと眠そうな目、小柄な体な可愛い女の子だ。鉄パイプを担ぎ、装甲を各所につけた服装をしている。


 中身が遥というおっさんでなければと思われるチートなゲームキャラである。


 風を切って看板の上を移動する遥はその体術を駆使して悲鳴がしたほうに向かっていた。目線を下に向ければ、警官ゾンビやら犬ゾンビ、スカートの中をアングルに入れようとする盗撮ではないかと思われるカメラドローンがいる。


 カメラドローンは変態メイドが操っています。後で訴えたいと思います。


 絡まれては時間がもったいないと、遥は店の看板の上を移動していたのだった。


 警官ゾンビはずるずると足を引きずりながらこちらを追ってくる。犬ゾンビもぐるると唸りながら追ってくる。駐車してある車をよけながら移動してくるが、段々増えてきている。トレインとなっており、看板の上を移動していた遥は、移動方法を間違えたとも思っていた。


 仕方ないのだ。可愛いレキなら余裕で看板の上を移動できたのだ。かっこよく移動したかったのだ。おっさんなら確実に最初の看板の上にも登れないのだ。梯子を所望します。


 大量のゾンビたちをトレインしながら、ゲーム少女は悲鳴の聞こえた場所に向かっていた。向かわない方が安全な可能性のある悲鳴の主である。


 看板の上を飛び跳ねて、迷宮化している道を移動してようやく悲鳴の主を見つける。


 曲がり角から、そっと体を乗り出して覗いてみると、100メートルぐらいの先に元のモデルはバスのロータリーだろうか? 行き止まりになって大きい部屋と化している場所に、いつか会った女警官がいた。サスマタを右手に、左手に短銃を装備している。リュックは離れた方に転がっていた。


 キャーキャー言いながら警官ゾンビと撃ち合っていた。撃ち合いながら、デカ警官ゾンビの猛攻から逃れている。


 逃げ方が物凄い。ロータリーであっただろう場所にはバスやら車が駐車している。部屋の出口には追いかけているのだろう警官ゾンビ。バンバンとナナを狙って撃ちまくっている。


 チュンチュンという音と共にナナの周りに銃撃の弾痕がどんどん生まれている。その銃撃の射線から逃れるために、車のフロントガラスが割れる勢いで、足を踏み込んで大ジャンプ。車の陰に隠れて移動。射線から逃れたら、今度はデカ警官ゾンビである。筋肉パンパンの巨人である。ドスドスという足音がしてすごい勢いでナナに近づいてくるが、素早く駐車してある車の窓をサスマタで破壊して窓のフレームを握って、素早くスライディングの勢いで車の中に入り込む。


 車からナナを引きずりだそうと、デカ警官ゾンビが車の窓をのぞき込もうとしたときには、反対側から飛び出してすでに逃げている。しかもデカ警官ゾンビが車の窓を覗き込んでいる間に、警官ゾンビに反撃している。そしてまた、駐車してある車の間をスルスルと逃げるのであった。


 どうやら彼女はどこかのアクション映画俳優らしかった。


 たぶん女主人公役だろう。


 ダンジョンに不幸にも入ってしまったのだろう。たしかに気を付けないとわからないレベルの空間の歪みである。物資を補給しにきて警官ゾンビたちと戦闘に入って追い込まれた感じだと思われる。


「まだ余裕そうだな」


 遥は覗き込んだ結果、そう思った。まだまだ余裕そうだなと感じたのである。


 おっさんなら、即殺されているパターンである。多分助けに行く役でも少しゾンビたちの足止めをして、おじさんありがとうと言われながら逃げる主人公を前に、逃げ遅れて死ぬ脇役だと思われた。


 遥はすぐには助けに行かないで自分の後ろを見た。


 2車線の車道を埋めるように、警官ゾンビがずるずると足を引きずり、ぐるると唸りながら走ってくる犬ゾンビが見えた。ちょっと数が多い。


 これを連れていったら、MPKである。


 何度も芋虫を連れたプレイヤーにMPKされた経験のあるおっさんはMPKをするのは嫌である。地道に魔法使いのレベルを上げていたのに、MPKをされて今までの経験値が全てパァじゃねぇか! と怒ったことが何度あったことか。


 なので、遥は助ける前にこのゾンビたちを殲滅することにした。


 看板の上でゲーム少女は超能力を発動させる。


 唯一の範囲攻撃である氷の超能力である。


『アイスレイン』


 心の中で発動をイメージする。発動したとたんに周りの気温が低くなったことを感じる。


 吐く息が白くなり儚き氷粒が遥の周りから生み出されていく。周りをどんどん白く染めながら、氷粒はゾンビたちの前に広がっていった。


 氷の粒が最初に現れた犬ゾンビに触れた途端、ピシッという音と共に氷像と化していた。勢いよく走っていた犬ゾンビは、凍り付いたまま、その勢いは落ちることなく目の前の駐車してある車に激突。バラバラになってしまった。


 後続の犬ゾンビも同じようにビシリビシリと氷像と化していく。続いた警官ゾンビも同じように氷像と化していく。ずるずると足を引きずり、こちらを殺そうと近づいてきていた警官ゾンビもビシリビシリと凍っていった。


 見事、周りは真っ白な氷原と化して、敵は全滅であった。


 やったかと言っても大丈夫だろうというレベルの効果範囲であった。生き残っているゾンビはいなかった。生き残っているカメラドローンは看板の上に座っている遥の真下でこちらを撮影していた。


 カメラドローンはぴんぴんしている。どうやらフレンドリファイアはない仕様みたいだ。残念でもある。


 でも、フレンドリファイアがあると、味方を殺す方が敵を殺すより多くなるレベルのプレイヤースキルなので困ってしまうから仕方ないかと諦めることにしたのだった。


 さて、ナナはどうなっているかと、見てみるとバスの上に飛び乗り、デカ警官ゾンビの目を串刺しにしていた。助けなくても大丈夫そうだと迷う様子である。


 だが、デカ警官ゾンビはその攻撃にわずかにのけぞっただけで、その大きな手のひらでナナを捕まえようとしている。バッとバスから飛び降りて、着地したと同時に目の前の車をスライディング。車の真下を潜り抜けて逃げていた。


 本格的に助けなくてもいいのではないかと思うが、それでも助けることとした。まぁ、いくら強くてもデカ警官ゾンビの命を奪える火力はないと思ったからである。


 ギュッと足に力をいれて、遥は看板を蹴る。ガシャンという音と共に看板はその力に耐え切れなくなり、砕けて落ちていった。


 風圧を顔に感じながら次々と看板を蹴っ飛ばして凄い速度で移動する。気分は忍者である。


 近づいてきたロータリー。ひゅぅと一回息を吸う。小柄なゲーム少女は、たった一回の呼吸で息を整えた。狙いはデカ警官ゾンビである。最後に一回看板を蹴るとデカ警官ゾンビが目前に迫った。


『エンチャントサイキック』


 ふわりと空間が歪み、自分が目に見えぬ鎧で包まれたことを感じる。体は頑丈に、力は大幅にアップしているのを遥は感じた。


 準備は万端である。デカ警官ゾンビを一撃で倒すためにデカ警官ゾンビの頭の上に両手を乗せて倒立である。


『超技首砕き』


 ナナがいるので声に出すわけにはいかないし、もう黒歴史は作りたくない遥は心の中でイメージした。両手はどでかいデカ警官ゾンビの頭を持ち、そのままぐるりと体ごと回転する。


 勿論、ぐるりと一緒にデカ警官ゾンビの頭も回転だ。バキッという骨が砕ける音がしてデカ警官ゾンビの首は砕け散った。デカ警官ゾンビはふらついて、そのままズシンと大きな音を立てて膝をつく。ばたんと倒れてそのまま起き上がることはなかった。


 計算通りである。素早く警官ゾンビの射線から逃れるために、ナナと同じく車の壁に飛び込んだ。一撃でデカ警官ゾンビを倒した遥である。


 さっきとは大違いの攻撃力が発揮できたのは簡単な理由だ。


 たった1の数字の違いで、大幅に性能が変わるスキルの仕様。さっきまでは棒術や氷念動を使っていたのだ。それらは最高のスキルレベルの技ではない。


 当たり前すぎて気づかなかった。鉄パイプを振ればゾンビはそのステータスで切り裂けたということもある。


 体術が一番スキルレベルが高いのだ。同じレベルは銃術である。


 ゲームキャラであるゲーム少女が使う必殺技は体術でなければいけなかったのだと、先ほど気づいたのであった。


 大変な発見であると喜んだ遥である。


 昔にシューティングゲームでボムが使える仕様だと、ゲームオーバーになってから気づいたときぐらいの驚きの発見であった。良かった良かったと知力が活動していない遥であった。


 その後は簡単であった。デカ警官ゾンビを回避しながら警官ゾンビと戦っていたのだ。警官ゾンビだけならナナと遥なら簡単に対処できたのである。


「こんにちは、ナナさん。今日も学校は休みなんです」


 ニコリと笑ってナナにくだらない冗談を混ぜて挨拶する遥。


 10数分後、何はともあれ全ての警官ゾンビを倒した二人は改めて再会をしたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] この章をありがとう,たのしかった
[一言] 赤芋虫懐かしい。MMOはすっかり廃れてしまった
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