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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
16章 バイオなゲームを楽しもう

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252話 ゲーム少女と不気味な街

 再度の潜入を試みようと、青森県の海岸線にヘリで移動中のゲーム少女たちであったが、いきなりのピンチであった。


 ウィーンとフォトンシステム搭載ヘリがその機体を横回転しながら、森林へと入っていく。輸送室に乗っていたゲーム少女たちは、その回転により振り回されるが、なんとかしがみついて怪我をしないように頑張っていた。


「まだ森林に入ってもいないのに、ダメージを負うとは思わなかったのですが、なんとか運転席に向かいますね」


 ヘリの回転で揺られるが、ヨロヨロと身体が揺られる中で遥は冷静に足を強く床につける。


 腕に光る時計のようなバングルは緑色の光を発していた。この光が点滅する赤色になった時に、結界から弾き出される程の力を発揮したということらしい。


 ゲーム少女の力とは即ち全てである。人外のステータスから始まり、超常のスキルまでが力なので、それを抑えている今はオリンピックに出られる程度の力しかない。


 スキルは超能力系はレベル1でもアウトらしい。予測が入っているのでそこは仕方ない。


 一気に弱体化した遥であるが、動揺はしていなかった。まだ体術はレベル1あるのだし、他の細かいスキルも低レベルながらあるのだから。


 横回転して、皆の動きが止まっている中で遥は床をタンッと蹴る。ヘリの回転に合わせるようにジグザグに床を蹴り、天井へ手をつけて、素早く移動していく。


「よっと、ほっと、さっと」


 リズムにのるように移動して、運転席と輸送室を阻む場所まで移動して窓越しに運転席へと視線を向けて声をかける。


「翼! なにかありましたか? 大丈夫ですか?」


 それに答えるように運転席が動き、ぽてんと翼の姿が見えた。縄でぐるぐる巻きにされて、さるぐつわをかけられて、ムームー言っている姿が。


 いつの間にか敵が入り込んだのかと、本気になろうとした遥であるのだが、副操縦席に座っている人物がちらりと見えた。

 

 銀色の髪が見えて頭につけているプリッツも目に入る。というか見慣れた変態メイドであった。


「………サクヤさん? なにをしているのかな? 叩かれたいのかな?」


「フフフ、謎の襲撃者なメイドがこのヘリを確保しちゃいました。ご主人様、ヘリは墜落するものなのです!」


「機動兵器に乗れるようになったら、早くも悪戯をするとは! ヤーメーロー!」


 確かにヘリは墜落するものだけどと同意するけどと、遥はドアをがちゃがちゃと開けようとするが、力が落ちているので開かない。それがわかっているサクヤは高笑いをして


「フフフ、仕方ないのです。メーデーメーデー! こちらクイーンサクヤ号〜。 メーデーメーデー! 不時着しま〜す」


 ずずんと地面へと不時着をするフォトンヘリであった。


「ほら、早く行かないと敵が来ます! 急いで脱出してください。後ほどお迎えに来ますね」


「うにゅ〜。サクヤ、覚えてろよ〜!」


 仕方ないので、スタコラサッサッと輸送室へ戻り、開いているハッチから飛び降りる。


 既に蝶野ゴリラ、ナナ、静香は降りてごついリュックを背負っていた。仙崎は地味に豪族と留守番である。なぜならば、念のために追加で潜入できる人を残しておこうという考えからだ。


「レキちゃん、パイロットは?」


 ナナが緊迫感溢れる表情で尋ねてくるので、進退極まるゲーム少女。どうすれば良いのだろう、なにか良いアイデアはと考えて、考えた末に答える。


「謎のパイロットごっこを私としたかったみたいです。きゃーとか私に言わせたかったみたいです。可愛らしく叫ぶ私を撮影したかったと犯人は言っていました」


 考えない方がマシなこたえになった予感のアホな美少女がここにいた。だってトイレに行っていたとか、漏らしそうだとかはちょっとサクヤが可哀想だと思ったのだ。余計なフォローを考える遥であった。まぁ、ある意味真実なので問題はないかもしれない。


 はぁ〜と、ため息をついてナナは、まったく目は笑ってないのに口元を微笑みに変えて


「そのパイロットさんとは、帰ったらお話をするから教えてね」


 と、言ってくるのであった。もちろん遥はコクコクと頷くしかなかった。ナナが怖かったので。


 そして、ウィンドウ越しにナナの発言を聞きつけたサクヤは慌ててヘリを発進させて帰還していく。


「お遊びは終わりにして、ここからは真面目に行くぞ」


 蝶野ゴリラが、ゲーム少女たちを見渡しながら真剣な表情で言うので、皆はそれぞれの武器を確かめてから頷く。


 ランチャー付きアサルトライフルをメインウェポンとして、ハンドガンにグレネードランチャー、コンバットナイフ装備。それに加えて防弾チョッキに額あて、ごつい軍用リュックである。念のために全員バングルをつけており、今は緑色である。


 しかし、正直言って………。


「暑いです。まだ夏ですので暑いです」


 多少の汗をかいちゃうゲーム少女である。そして力を抑えているということは、多少の防御ダウンも感じるので気をつけないといけないと、気を取り直す。


 雑魚敵に、ガブガブやられるのはくたびれたおっさんだけで良いのだ。


「それじゃあ出発だね!」


 ナナの掛け声に、お〜! とゲーム少女だけピョンピョンと飛び跳ねて腕を掲げるのであった。残念ながら静香と蝶野はのってくれなかったので、少し寂しいナナと遥であったりする。



 目の前の森林は暗闇に覆われている。この間と変わらないエリアだ。四人でてこてこと歩みを進めていくと、同じようにガザガサと茂みが動き


「ガゥッ」


 ポメラニアンゾンビ犬が飛びかかってくる。だが、ゾンビ犬如きでは、このメンツを動揺させることもできない。ナナと遥が、えぇ〜と小型犬ゾンビに嫌な顔をするだけである。


 素早くホルスターからハンドガンを抜き、早撃ちでヘッドショットを決める容赦のなさを見せる蝶野。


 キャインと吹き飛んでいくポメラニアンゾンビ犬。ゴロゴロと転がり動かなくなるが


「すぐに動き出すわよ。この間の体験からいくと数分というところかしら」


 ジャキッとハンドガンにしては、へんてこな短銃を取り出すとポメラニアンゾンビ犬へと撃つ静香。撃ち出した弾丸はワイヤーネットとなり、ゾンビ犬を地面に縫い付ける。


「おぉ〜。それがワイヤーネット弾丸ですか?」


 興味津々な表情でゲーム少女が動けなくなったゾンビ犬を見ていると、少しして復活したゾンビ犬が動き出す。だが、ワイヤーネットが動きを封じており、動くことはできない様子であった。


「麻痺弾に電撃弾、火炎弾にワイヤーネット弾と質量変化弾。かなりの種類を配ったけど使いこなしてくれると嬉しいわね」


 フフフと妖しく微笑む静香にナナと蝶野が真面目な表情で頷く。


「ちょっとマガジンが多すぎるけど気をつけて使うね」


 ナナが戦闘服に取り付けられたポケットに差し込まれている色が違うマガジンを見て頷くと蝶野もマガジンを入れ替えてハンドガンを構える。


「短時間の停止ならば麻痺弾、動きを継続的に止めてダメージを与えるのは電撃弾。焼き尽くして復活できないようにするのが火炎弾だったな。ワイヤーネットは敵の動きを完全に止める。ゲームのようだが、現実に使いこなすとなると難しいが気をつけよう。まずは麻痺弾を確かめてみる」


 渋い返しをする二人だねと、ゲーム少女は、フンフンと興奮しながら私もなにかやらなきゃと考える。


「継続的にダメージを与えるのが、今回の武器のコンセプトよ。敵は弱いけれど、すぐに復活するからね。なら、弱い攻撃で継続的にダメージを与えるほうが倒しやすいはずよ」


 静香が歩き出しながら語るので、ゲーム少女はサブマシンガンを取り出して見せる。


「私は無限サブマシンガンで敵を倒しますね。もう倒しまくるから、任せてください。てやっ!」


 新たにゾンビ犬が現れたので、サブマシンガンで蜂の巣にする。


「リロードッ!」


 全弾撃ちきったので、格好よくリロードするゲーム少女。無限弾なのに無駄にマガジンを取り出して、また収めるというアクションが必要な仕様だ。フフフ格好よかったでしょ?とみるとナナが苦笑して


「撃ちすぎだよ。あと、リロードの声がデカイから敵に見つかっちゃうよ?」


「むむ、敵を確実に倒すために無駄に全弾撃ったのですが。確実に敵を倒すには全弾撃ちたかったのです。無限弾ですし」


 無限弾の時は、常に空になるまで引き金をひき、敵を倒していたおっさんである。そのためにリロード時間が隙になり、追加の敵にダメージを負うことが多かったしょうもなさももつおっさんであったり。


「その言い回しは、スレイプニルが言ってたよ。似た者同士なんだね」


 クスクスとナナが笑って言うので、むぅと頬を羞恥で赤くする。やっぱり銃スキルに従って無駄な弾丸は撃たないようにしようと決心する。


「無限弾は一応の保険ね。威力は極めて弱いわ。普通のハンドガンより弱いから気をつけてね。あと、エネルギーが尽きたら使えなくなるので、使用期間は10日間というところかしら」


 は〜いと無限弾があれば無敵でしょうという根拠なき自信を持って森の中に入っていく遥であった。


 森林にはゾンビ犬が数匹いたが、対抗手段を持った四人には敵わなかった。


「一撃で吹き飛ばしても、そこまでダメージが入らないようだな。粉々になった時点で、限界を超えたダメージは無効になるのか………」


「火炎弾の炎上ダメージなら倒しきれるみたいですね」


 メラメラとゾンビ犬が燃えている中で、蝶野とナナが感想を話し合う。再生を繰り返すが、数分後に動かなくなり、灰へと変わっていった。


「でも、火炎弾を受けても怯まずに突撃してくる敵だとまずいわよ。大火事になることは間違いないわね」


「炎の超能力が使えれば、この程度の敵は簡単に倒せるのですが」


 炎の超能力のレベルを上げればだけどと副音声が流れるが、気にしない遥である。スキルポイントはあるから上げようと思えば上げれるし。


「超能力に頼った弊害ね。使えなくなった途端に普通の子供に戻ってしまったのかしら」


 からかうように静香が言うので、平坦な胸をトンッと叩いて遥は反論する。


「フフフ、私は超能力が使えなくても強いですよ。問題ありません。無限弾もありますし」


 無限弾最強説を持っているおっさんは、超能力を使えなくても気にしないのだ。


「普通の子供になったら、私は喜んで一緒に住むからね!」


 静香との会話を聞いて、ナナが口を挟んできてアピールする。最近はどこも肉食系ばかりかもと思う遥である。


 接敵するのはゾンビとゾンビ犬のみ。森林地帯であるが、敵の種類は珍しくもなんともないレパートリーであった。新種に会えて名付けができると考えていたサクヤが不満そうにふぐみたいに頬を膨らませていた。


 そんなサクヤを放置して、しばらく進むと森林地帯を抜けて、街へと到着する。


「なんとまぁ……」


「これは少し怖いわね」


「生存者が絶対いますよね!」


「注意深く移動していくぞ。これはおかしい……」


 それぞれが感想を言う。そこは暗闇が支配する世界の中にあって、壊れているビル、砕けた窓ガラス、放置された車両に、看板が砕けながらもネオンが輝いている街であった。


「う〜ん……まるで崩壊当時の世界ですね。タイムスリップしていないとなれば、この様子はどういうことでしょうか?」


 遥が感心しながら、街並みを見渡す。なにしろ電気がまだ通っている。


「いや、完全におかしいんだけど。電気が通っているわけはないんだけど?」


 サクヤにウィンドウ越しに尋ねると、あっさりと教えてくれる。


「ここは宵闇の不死なる街エリアですね。exp65000報酬?です。エリア概念は強者を弾く世界。敵も味方も関係なくです」


「ミッション発生か……。超能力を抑えるとなるとスキルが全然使えないんですよね。初めて知りました」


 苦々しげに目の前の街並みをみると、なぜかまだ燃えている場所が見えており、そこら中にゾンビたちがウロウロと徘徊していた。


「懐かしのゾンビ世界ね。力が抑えられている以上、気をつけないと」


「あいあいさ~。まずは生存者探しですね」


 静香と顔を突き合わせて話す。生存者さえ探し出せれば、あとは脱出して吹き飛ばす予定なので。


「ねぇー、ねぇー、なにか変じゃない? 日本なのに看板とかが英語だらけ。放置車両もナンバープレートが英語だし」


 ナナが目敏く告げてくるが、確かにそのとおり。変な世界すぎる。


「とりあえず街に入るぞ! 全員注意深く移動するんだ」


 蝶野がアサルトライフルを構えながら、ゾンビに見付からなように放置車両を素早く移動していくので、他の面々もついていく。


「あぁ、この街並みは日本ではないですね。あんなバーなんて日本ではありえないです」


 遥がちっこい人差し指で街角をさすと、遠くに全面ガラス張りのバーが見える。


「これはもしかしなくても、嫌な予感がするわ。危険な匂いもね」


 車の影に隠れながら移動するとバーの姿が見えてくる。


 それとともに、放送がどこからともなく響いてくる。


「住民の皆さん、暴動が発生しました。避難所として警察署にいらしてください。食べ物や医療品がありますので、気をつけながら集まってください。繰り返します……」


 凄い聞き覚えのある放送である。ちょっと聞き覚えがありすぎて戸惑ってしまう。


「これはあれですね。あのバーには彼女に振られた新米警官がいるかもです」


「あ〜。私も最初の設定の方が好きだったわね。なんというか人間味があって」


 静香ものってきて、やっぱり人間味があった方が、かっこよくなくても良いよねと話し合う二人。


「とりあえずはバーに入って見るぞ! ゾンビだけならば、問題はないだろうからな」


 蝶野が指示をだして、コソコソと移動して、バーの眼前まで行く。そこには、古めかしいネオンの看板がピカピカと光っていた。チチチッとチラついて消えそうな光である。


 ドアからチラ見するが、ゾンビの姿は見えなくなり、生存者の姿も見えなかった。


「行くぞ!」


 カランとドアの鈴音をたてながら店へと入る蝶野。


 ナナもすぐに飛び込み、静香があとに続く。そして警戒しながら遥も店に入る。


「ゾンビ、いませんね……」


 クリア! と小声で言いながら、店内を確認するプロらしいナナ。私もクリアと叫びたいゲーム少女は小さな声でクリアと囁く。まったく意味のないいじらしさの中に可愛らしさを生み出す美少女である。


 遥と静香も動き、敵の姿がいないのを確認して、一安心する。


「あれだけゾンビがいるのに、店内にはいないなんて変ね……」


「地下室ですよ、地下室! きっと地下室です!」


 ピョンピョンと飛び跳ねながら確認していくが、本当に誰もいない。そしてゲーム脳なおっさんだったのでこういう場面も体験しているからこそ地下室と叫ぶのであった。


「どうします?」


 蝶野は考え込むがすぐに答えた。


 姫様が次の拠点を作ろうとするので、このままでは押し切られそうじゃないか。そう思いすぐに指示を出す。


「もう少し安全な場所に拠点を作るべきだ。もう少し調査をしよう」


 慎重派な蝶野であった。だが、状況は動いていた。


「蝶野さん! この厨房、ガスが出ています。逃げないと!」


 厨房を覗いていたナナが叫び


「脱出だ! 全員脱出しろ!」


 蝶野が叫んで指示を出すので、素早く脱出しようとする面々だが遅かった。


 シューと音をたてながらガスが出ていた厨房は大爆発を起こして、4人はバラバラに脱出したが、爆風により吹き飛ばされるのであった。


 というか、一人ピョンピョンと飛び跳ねながら、裏口まで地下室ないかなと探していたアホな少女だけ裏口から脱出したので、皆と分断されるのであった。


 爆風で地面に叩きつけられるが、力を抜いて受け身をすることによりダメージを最小にするゲーム少女。


「けほっけほっ! 皆さん大丈夫ですか〜?」


 他の面々が怪我をしていないのか気になる遥は叫んで確かめる。


「大丈夫〜。大回りで合流しよう!」


 ナナのその言葉に嫌な顔になるゲーム少女。だいたいその言葉を聞くときはなかなか合流できないのがゲームの鉄則であるからして。


 まぁ、仕方ないかと嘆息してゲーム少女は動き出す。周囲には爆発により集まってきたゾンビたちの姿があったので、ゲームかな? ゲームの世界に入ったのかなと思いながら。

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― 新着の感想 ―
[一言] レオンの設定ほんとなー。カプ◯ンは昔のほうがカッコつけて無くて好きだった。
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] あの世界かな?
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