24話 引き続きダンジョン探索するゲーム少女
遥は移動前に保留スキルポイントを全て使い、ダンジョン探索に必須なスキルを取ることに決めた。
『地図作成lv1、空間把握lv1、物理看破lv1、取得!』
わざわざ言わなくてもいいが、一覧から検索するのが面倒だったのだ。ゲーム少女の可愛い声で叫ぶのでサクヤが物凄い喜んでいる。何かツボに入ったようである。
『地図作成lv1』は迷宮の地図を頭の中に描けるスキルである。
『空間把握lv1』は戦闘での自分の位置以外にも自分がどこにいるのか把握するスキル。
『物理看破lv1』は見えない隠された物を看破するスキルである。
これらが無いと迷う可能性を考えたのである。何しろ先ほど意外な弱点がゲーム少女にあることが分かったのだ。もしかしたら段ボールに隠れている大男も見つけられないほど、節穴である可能性もある。
迷宮を探索したら、あっさり迷子になる可能性が高いのだ。
知力の項目がない遥はゲーム少女の弱点と固く信じることにした。絶対に遥の脳みそが足りないなんて、あるはずがないのである。
改めて準備ができたので、ダンジョン探索を遥は始めるのであった。
◇
テクテクと歩いて横道を見てみる。うぉぉ~と相変わらず警官ゾンビが襲ってくる。
銃術を取得していた遥は全弾ヘッドショットである。パンパンと音がして、ゲーム少女が構えた短銃から弾丸が発射される。今度こそ銃は器用度と銃術のスキルに従い、ヘッドショットとあいなったのであった。
倒れた警官ゾンビからも弾丸を回収していく。ご機嫌になるゲーム少女。弾丸のストックがじゃんじゃん増えていくのが嬉しいのだ。もうスナイパーライフルは家にしまっておこう、万が一間違えて使わないようにと、どういう場合が万が一なのかわからないゲーム少女である。
警官ゾンビ以外にも犬ゾンビたちが現れた。
「ぐるるるる~」
と襲い掛かってくる犬ゾンビたち。
意外にも全部ドーベルマンである。ここの主はバイオ的なゲームのファンだった可能性がある。脱出用のヘリがあっても絶対に乗らないでおこうと誓う。
ジャンプをして襲い掛かってくる犬ゾンビ。
「はっ!」
遥は掛け声とともにその頭上を通り越すジャンプをした。そして頭上を通り抜ける寸前に犬ゾンビの頭に蹴りを加える。ドゴッと音がして犬ゾンビの頭は砕かれ地上に伏せる。
「お座り」
ニコッと笑って、どこかの漫画で見たようなことを言うゲーム少女。
うるうるした目でお座りした銀髪メイドが片隅に見えたが次の行動に移る。
他の犬ゾンビが予想外の遥の行動に動きが止まった。その隙を逃さず遥は念動を発動する。
『サイキックブリッツ!』
もちろん心の中で唱えて、他の犬ゾンビを狙い撃つ。犬ゾンビたちは無色のサイキックブリッツに気づきもせずに爆散して消えたのだった。
楽勝、楽勝と口ずさみながら、スキップする勢いで進む。続いてでてくる敵も全て警官ゾンビのため、全て撃破して進んでいく。
ちなみにおっさんぼでぃではスキップはできない。謎の足踏みとなるだけである。
進んでいるうちに見たことが無いものを見つける。
「おっとあれは?」
尖った水晶が次の通りの部屋っぽい場所の隅にあるのを見つけた。
「あれが宝箱です。マスター。おめでとうございます!」
ナインが声をかけてくる。宝箱はナイン担当なのであろうか。たぶんクラフト系アイテムが入っている可能性が高いからだろう。
近づいて水晶を取ろうとした瞬間に壁から巨大な手が現れて、ゲーム少女を捕まえた。
「まずい!」
と焦ったが既に遅く、凄い勢いで投げられたのだった。
ガシャーンという音と共に路上駐車してある車に叩きつけられてしまう。車はぐしゃぐしゃにへこんでその中にゲーム少女は埋まってしまった。
「ごほっごほっ」
何気にダメージらしき攻撃を受けたのは初めてであった。いつもは攻撃を受けても防ぎきっていた。よろよろと車から這い出てきたところをドスドスという足音がして、頭上から殴りつける拳が見える。
「ぐっ、サイキックブリッツ!」
即座に目の前にきた拳に発動させたサイキックブリッツをぶつける。バンと乾いた音がして拳が弾かれて敵がのけぞったのを見た。
「ご主人様、デカ警官ゾンビです。お気をつけください」
4メートルぐらいの巨人の警官である。ごつい警棒を腰にさしてオーダーメイドでも無理な大きな警官の制服を着ている。後、サクヤは巨人系は全てデカを頭文字にすればいいと思っているのだろうか。
弾かれて、腰の警棒を引き抜くデカ警官ゾンビ。
『フィンガーサイキックブリッツ!』
5本の指からそれぞれサイキックブリッツを飛ばす。あの漫画の魔法はかっこよかったとパクった遥。バンバンという音がして敵がよろめく。
「よろめいただけか!」
舌打ちして警戒をする。今までとは一味違う敵みたいである。というか、今までの敵が楽すぎたのもある。おっさん的にはイージーでノーダメージクリアが嬉しい仕様なのだが。
「ぐおぉ~」
と警棒を振りかぶるデカ警官ゾンビ。
『アイスレイン!』
この間は日本語で氷雨と言った技を使う。あの後に、日本語と英語の両方の名前で使えるとサクヤに教えてもらったので、多分ヨコ文字のほうがかっこいいでしょというおっさん的なしょうもない理由で英語に言い方を変えたのだった。
キラキラと周りが氷粒で覆われる。続いてエンチャントアイスを自分にかける。
『超技、鉄パイプ式アイスミストスラッシュ!』
全ての氷粒が鉄パイプに集まる。遥はその鉄パイプをデカ警官ゾンビの頭へと兜割の要領で叩きつけた。ガシャーンという音がして、氷粒がデカ警官ゾンビの頭を凍らせる。
『アイスブレード!』
白い光が生まれアイスブレードが遥の右手に作成される。鉄パイプとの2刀流になった遥は続いて超技を使った。
『超技ブレード十字斬り!』
鉄パイプとアイスブレードをクロスさせるように上段と横薙ぎを同時に行う。ゲーム少女は使用したスキルを十全に使いデカ警官ゾンビを切り裂いたのであった。まぁ、切り裂けたのはアイスブレードの部分だけであったので、一文字斬りかもしれなかった。
凍り付きバラバラになったデカ警官ゾンビである。
「ふへぇ~。あぶなっ!」
ダメージを受けることを恐れて即座に強力な超技を連続使用した遥である。敵の攻撃など見る価値はないという合理的な考えである。敵の真の力なんか見たくないのである。変身中に攻撃しろ精神なのであった。
「素晴らしかったです。ご主人様! とっても可愛かったです! 超技を叫ぶ瞬間もばっちり撮れました!」
サクヤに動画を撮られたことに気づいた遥。どうやら危険は去っていなかったようであった。
「うげっ! 20%近くSPもESPも減っているよ!」
因みにHPは3%も減っていなかった。ビビりすぎな遥であった。オーバーキルすぎたのである。
「なんであいつがいることがわからなかったんだ? 気配感知活躍していなかったぞ、常在戦場スキルも!」
動揺する遥。何しろイージーモードで今までやってきていたのだ。スキル様の力に依存しながら進んできたのだ。できるならば、敵のダメージ無効コマンドを打って進みたかったゲーム少女である。
「空間の歪みの向こうに隠れていたのでしょう。気配感知では察知できないタイプです。超術看破が必要ですね」
さすがに予想外だったのか、申し訳ない顔でサクヤが話してくる。
「うげっ! 物理看破だけではなかったということか。もうスキルポイントないぞ」
冷や汗が流れる遥である。さっきの銃術に3レベルも振らなければ良かったと後悔する。ちゃんと説明書を見ない弊害がついに噴出したのであった。
次からは必要なスキルを全部サクヤに決めてもらおうと考えた、スタイルを改める気が全くないゲーム少女であった。
それでもダメージは僅かである。
遥は決断する。
「もう帰ろう。疲れたよ」
勿論、帰宅する方を決断したのであった。
「きゃ~!」
どこかで聞いた覚えのある声の悲鳴が聞こえなければ。




