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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
14章 北海道に行こう

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204話 強制労働所で暮らすゲーム少女

 小さな盆地では人々がずらっと並び畑を耕していた。いや、過去系である。緊急にて空中戦艦を早くも呼び出すことになったために、少ないながらも耕作用機械が取引によりレンタルされたので、それを利用しはじめたことで、ずらっとまでは人々は並んでいない。


 それでも、まだまだ人手は必要なので懸命に働いていた。まぁ、それでも昨日までのように全員ではない。女子供は他の簡単な仕事や炊事を割り当てられている。


 そんな中でノシノシと、いやテコテコと可愛い小柄な脚を動かして少女が畑へと近づいてきた。看守のような帽子に黒い制服らしきもの。でかいリュックを背負っており、そしてサングラスをつけてテコテコ歩いている。手には労働者を叩く悪魔の武器を持っていた。


 本日は看守ごっこを楽しむゲーム少女である。中身はレキ一択でいいだろう。もういらないよね、誰かさんの表記すらも。

 

 ゲーム少女の後ろには、ちっこい子供たちが面白そうについて回って真似をしている。可愛さ溢れるカルガモ集団のような看守たちであった。


 働いている人々を見ながら、鈴の鳴るような可愛らしい声音で、声をはりあげる。


「ん~? みんな働いているかね? 私のために働いているかね? こら、そこっ! さぼっているんじゃない!」


 畑を見ていた男性へと悪魔の武器を振り下ろすゲーム少女。実に楽しそうな笑顔である。


 ピコピコと音がしてピコピコハンマーが男性に命中する。とうとうっと、何回も男性の背中を叩くゲーム少女。周りの子供たちも貰ったピコピコハンマーで、同じように、わぁ~と楽しそうな声を出して男性を叩く。


 ピコピコピコピコ。長閑な畑に可愛らしい音が響き渡り、叩かれた男性が振り向く。


「姫様………。おふさげも度が過ぎると俺は怒るぜ?」


「働いていないのが悪いのです。それならば罰を与えなくてはいけません。なので、罰を与えているのです。このような過酷な世界では仕方ありませんよね」


 さらに、とうとうっとピコピコピコピコと叩くゲーム少女。周りの子供たちもきゃいきゃいと叩く。


 はぁ~とため息をついて、こちらのピコピコハンマーをひょいと取り上げる豪族である。


「こっちは本当に見回っているんだ。邪魔はやめろ!」


「え~。ノリが悪い豪族ですね。そこはうわぁと言って逃げ惑ってくれないと。蝶野さんはやってくれましたよ?」


 ねぇ~と、周りの子供たちに聞くと、うんうん、あのおじさんはノリがよかったよね~と同意する。


「悪いが、現役で子供をもっている親と一緒にするな。俺はもう歳なんだよ」


「むぅ、仕方ありませんね。他の犠牲者を探しましょう。ナナさんはどこにいますか?」


 小首を傾げて、可愛らしい微笑みで尋ねる。


「あぁ、あいつは大変そうな場所を駆けずり回って手伝っているぞ。大樹から貰ったパワードスーツの力を使って。切り株や石を簡単に引っこ抜いていたな」


「あぁ~。さすがナナさんですね。それじゃ、お邪魔するのは悪いですか」


 納得したよと頷いて、畑の人たちへと顔を向けて叫ぶゲーム少女。


「少し休憩にしましょう~。差し入れを持ってきましたよ~」


 おぉ~と、その言葉がいつくるかとソワソワしていた人々は休憩だ~と仲間に言いあいながら畑を出てくる。


 んしょんしょとリュックから、スポーツドリンクとアイスをどんどん取り出すゲーム少女。なぜかアイスは溶けもせずに冷えた状態である。そして明らかにリュックに入る量ではない。誤魔化し方が雑すぎるゲーム少女である。まぁ、周りの人々は気にしなくなってきているが。そして、ついてきた子供たちも、嬉し気に群がって、キャッキャッとアイスを食べ始めた。


 わいわいと騒がしくなり、人々が思い思いに座って一休みをしているのを見て、豪族が口を開く。


「ここの連中は大変だが、最初から農業ができるというスタートは大きかったようだな。痩せている人間はいないのは良いことだ。やはり都内とは違ったということか………。他の地域でも生き残りが多数いそうだな………」


 難しそうに顔を顰めて、遥に言ってくる豪族に対して、呑気な表情で返答をする。


「他の地域を探索するには人が足りません。私たちは少しずつ解放をしていくだけですね。3分の1ぐらい日本を解放できたら、状況はだいぶ変わるかもしれませんが」


「ちっ。足元を固めながらではないと、こちらが崩壊しちまうからな………」


 人々を単に救助していけば良いのではない。もはや1年過ぎているのであればなおさらである。


「ここも若木コミュニティに移る人々は少数ですし、独自に交易にて暮らしていくと言ってますしね。独立心ができているので、これまでみたいに簡単にはいかないのかもしれません」


「あぁ、その通りだ。だが、あの婆のやり方はダメだ。矯正が必要だからな、今やり方について話し合っている最中だ」


 頭をガリガリとかきながら不機嫌そうになる豪族。どうもコマンドー婆ちゃんが気に入らない模様。まぁ、お互いに頑固そうな老人である。水と油みたいな感じかもねと遥は思った。


 まぁ、見るからに強制労働所のような雰囲気であったのだ。善人たる若木コミュニティの面々なら口を出すだろう。


「それはそうとだ。このピコピコハンマーは本当に役に立つのか?」


 遥から取り上げたピコピコハンマーをしげしげと見て、豪族が聞いてくる。よくよく見ればピコピコハンマーはメカニカルな感じである。各所に回路が取り付けられており、光のラインが走っていた。そして、柄には残り回数12回と小さい液晶画面がついているところに表記されていた。


「精神支配系は結構簡単に打ち破ることができると解析されました。そのピコピコハンマーは見た目も可愛いですし、僅かにダメージをダークミュータントに与えます。そしてもちろん精神支配も解除される優れものです」


 むふふと、ちっこくて可愛い人差し指をたてて、得意げに振って答える。


「なので、脆い寄生赤昆布はその僅かなダメージで死に至り、精神支配も解けるという一石二鳥の武器なんです。凄いでしょう? おらあっ! とか言ってどこかの高校生が頭から根株を抜き取る必要はないのです。プラチナな幽霊の力は必要ないのです」


「………凄いとはわかるぞ? だが、もう少しなんとかならなかったのか? デザインとか、デザインとかな」


 はぁ~と嘆息する豪族。すでに説明は受けているが、納得はいかない様子。まぁ、北部で人々を救うためにこの武器を使うのは防衛隊である。気持ちはわかるというものだ。


 なので、ニコニコ顔で親切に教えてあげる。


「私がこのデザインにしようと言ったのです。可愛いでしょう? 他には銃弾タイプもあったのですが、それは可愛くないのでやめさせました」


 むふふと、胸をはり両手を腰にあてて伝えた遥の頭へと拳がおろされた。ごちんと叩かれて、痛い痛いと痛くはないが地面を転がるゲーム少女である。


「やっぱり姫様が関わっていたのか………。くそっ。銃弾タイプへと切り替えてもらうようにナナシに言っておいてくれ!」


「うぅ、絶対に笑いが取れると思ったのですが、仕方ありませんね」


 じゃらんとポッケから銃弾タイプを取り出す。黄色の弾丸でありフヨフヨと柔らかそうな感じである。それを豪族に渡しながら伝える。


「まぁ、そういわれると思って、こちらも用意しておきました。特殊ゴム弾であり、人間は少し殴られた程度のダメージしか受けませんが、後は先程の説明通りの力を発揮しますよ。ただこれを使うのならば他の武器を持っていかないと、間違えてこの弾丸を装填した武器でゾンビを撃っても倒せないから注意してくださいね」


「あんだよ。用意してあるなら、先に言っておけ。了解だ、この弾丸はハンドガンに装填させることにしておこう」


 受け取った銃弾を眺めながら、満足そうに頷く豪族である。まぁ、遠距離攻撃ができるとできないとでは違うからねとゲーム少女は考えるが、たぶんそこが問題ではない。


 ゴリラ軍団がピコピコハンマーを持って人々を叩きまくる姿も楽しそうな光景だったんだけどなぁと、内心で呟く遥であった。


 そんなカオスな光景も面白そうだよねと考えていたところで、男性が遠くから走ってきたのだが見えた。


 青年は汗だくになり、声を大きく張り上げる。


「百地隊長! どうやら頭に何かが聞こえると言い始める防衛隊の人間が出たみたいです。来てください!」


 豪族と遥は顔を見合わせて頷く。


「わかった。急いでいこう」


「ようやく出ましたか。もう起こらないと思っていたところです」


 ようやくこの地での目的である洗脳攻撃が始まったと、にやりと可愛く笑いを見せるゲーム少女であった。



 てってこと歩いて、仮設キャンプへと向かう二人。キャンプの診療所には人々が集まっていた。ほいほい、どいてくださいねと人々をかき分けて中に入る。


 そこにはベッドに寝かされている男性を囲んで数人が難しい表情をしていた。その中の一人は遥が来たことに気づいて声をかけてくる。というか、イーシャであるのだが。


「あぁ、レキ様、いらっしゃいましたか。見てください、この人を」


 ふむふむと近寄り興味深げに眺めてみる。寝かされている人は苦しそうにうなされている。


「今は寝てもらっていますが、起きている間は何かが頭に囁いてくると言っていました」


 ほむほむと頷く遥。まぁ、予想通りだ、予想外なのはすでに1週間過ぎていたということである。ちょっと長すぎる期間である。イーシャを若木コミュニティへと戻せと若木コミュニティの面々が騒ぎ始めているという噂もあったので、眼鏡をもう一個作ろうかなぁと考えていたところだ。


「解析結果は洗脳レベル2です。通常の人間には耐えられないでしょう。ですが、それ以上の意思を持つ人間には効果はありません」


 一呼吸をおいて、イーシャは真面目な表情で話を続ける。


「しかも、この洗脳は特化型です。内容は自衛隊隊員を洗脳することですね。特化することにより効果を上げているのでしょう」


「なるほどねぇ。それならば問題はないですよね? この特化型はどうやって広範囲に使用しているのでしょうか?」


「広範囲洗脳型のミュータントを使用していると思われます。恐らくはボスとは別の敵ですね」


 おぉ~、さすがはイーシャさんとゴリラ軍団が感心しているが、眼鏡の力である。全てを解析してしまうので、どのような攻撃か、何を利用しているか、効果レベルがいくつかを解析してしまうのである。


 というか、こんな一目で見ただけで、状況がわかる人間ってどんな人間だよとツッコミを入れたいが、イーシャ信者たちは盲目のために、異常には思えないのかもしれない。それか、ゲーム少女のように超能力者だと考えているかだ。


「では、まずはその洗脳型ミュータントを撃破しちゃう必要がありますね。とその前に」


 ベッドで魘されている男性へと紅葉のようなちっこいおててを翳して、超常の力を使う。


「クリアボディ」


 ぽうっと淡い光が男性を包み込み、魘されていた表情が和らぎ、落ち着いた感じとなる。


「良いですね。この力ならば大体は回復できますね」


 わきわきと手をぐーぱーさせて、ご満悦な遥である。この精神攻撃という事態に至り、治癒術LV6までレベルアップさせたのだ。これで残りのスキルポイント43である。


 今のはあらゆる精神異常を回復するlv6の治癒術。本当は治癒術をとる気はなかったおっさんであるが、新ステージでは状態異常を使う敵は多い。自分やマシンロイドは効かないが、他の人々が状態異常になって死んじゃうのは嫌であり、回復アイテムが足りない時などを考えると、取得一択なのであった。竜もまたぐ魔導士なのに、回復魔法が苦手で女戦士を死なせて相方が喪失により魔王になるなんて状態は却下なのである。そういうのは先手を打って防止をするのだ。


「他の人もいるのですか?」


 イーシャへと尋ねると、ベッドの奥を指さして頷くので、今度は豪族へと声をかける。


「その武器が効き目があるか試しておきましょう。どうぞ、豪族さん」


 ニマニマと口元を可愛らしく微笑まして、お願いするゲーム少女である。ピコピコハンマーは豪族に取られたから仕方ないよね。豪族さんが使ってくださいねと悪戯な笑顔を浮かべる。


 ぬぅっと、手にあるピコピコハンマーを見て、苦々しく表情を変える豪族。少し考えて、集まってきていた蝶野へと手渡す。


「蝶野、重要な任務だ。俺は後ろでどうなるかを観察する必要があるからな。お前が使え」


 どうやら恥ずかしかった模様。まぁ、大の大人が真面目な表情でピコピコハンマーを振るうのはシュールであるから仕方ない。苦笑交じりに蝶野は頷き、もう一人へと素直にピコピコハンマーを振り下ろす。


 ピコンと音がして、一瞬光に包まれる男性。すぐに穏やかな表情となっていった。それを見て、おぉっと周りの人々からざわめきが起こる。


「どうやら問題は無いようですね。これは苦労して作った逸品なのですから、当然ですが」


 性能通りの力を発揮したことに満足げに嬉しそうな表情で遥は頷く。これが効果が出なかったり、一般人が使えなかったりしたら、非常に困ったのであるからして。


 実はピコピコハンマーは装備作成レベル7である。凄い高レベルが必要であったのだ。しかも治癒術か、調合スキルが6はないと作成できないアイテムであった。物凄く貴重品なのであるが、ダメージがほとんどないので、誰でも使えるのが売りである。銃弾も同じように貴重品なので、あんまりバカスカ使わないでねと祈っているケチなゲーム少女であった。


 しかし予想通りに力は発揮した。そして精神支配レベルも低いと判明した。調合スキルによるレジストマインドを付与する薬を飲んでもらえれば大丈夫だろう。ちなみにレジストマインドは調合スキル7必要であった。精神系は回復する方法が全て高レベルなので、全部自分でやらないといけない面倒さなのだ。


 内心でホッとする遥。もしかしたらナナたちが暴れる可能性もあったのであるから内心で不安があったのだ。あんぎゃーとナナが暴れたら、さりげなくボディタッチをしながら倒しても良いのかしらんと考えていた不埒なゲーム少女でもある。


「これなら安心でしょう。元自衛隊隊員にはレジストマインドの効果がある薬を服用してもらいます」


 うむと頷く防衛隊の面々。それに面白いことも判明した。ゲーム仕様の裏技みたいな内容だ。


「それにイーシャさんの解析から、ボスとは別に洗脳特化のミュータントがいるという内容がわかりました。まずはそれを密かに撃破してから、人々を救いましょうか」


 本当は敵地へと潜入して調べないといけない内容であったのだろう。しかし、解析結果のテキストフレーバーに書いてあったのだ。ゲーム仕様万歳といったところであろう。こういう裏技的な使用をするのはゲーム少女は得意なのだ。


 皆を見渡して、これからの行動を宣言する。


「では、いつも通りに私が華麗に潜入して、敵を撃破してきますから待っていてくださいね」


 華麗かどうかは不明なゲーム少女の行動。いや、レキならば華麗である。まぁ、遥もカレーと言っておこう。辛いかどうかはわからないが。たぶん甘口である。


 久しぶりに蛇な美少女になる時間ですねと、楽し気にむふふと笑うゲーム少女であった。

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― 新着の感想 ―
スレイ○ーズ…… 自分も好きです。そのあたりの話は少し辛かったな……
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] ピコンピコン!
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