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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
14章 北海道に行こう

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189話 ダンジョンを探索するおっさん

 ぎぃぎぃと不気味な鳥の鳴き声が聞こえる大森林。見上げても木のてっぺんがわからないほどの高層ビルのような巨木が道脇に並ぶように生えている。


 陽光がなかなか届かないのか、地上を照らすのは木洩れ日だけで薄暗い感じだ。鬱蒼と生い茂る雑草は1メートルはあり、何かが潜んでいてもわからないだろう。


 たまにガサガサと音がして、生き物が飛び出てあっという間に走り去っていく。森の向こうを見ると山脈が連なっており大自然がこの地を支配していた。


 この地はどこか? 帯広、千歳、富良野を頂点とする三角形で囲まれた森林と山脈である。だが、普通ではない森林だ。北海道といえど、高層ビルのような巨木が並ぶように生えているわけはない。しかも道脇にずらっと並ぶわけはないのだ。


 そして大きな違い。それはというと………。


 ガサガサと音がして、1メートルはある雑草から、緑のなにかが現れた。小柄な体躯で、こん棒をもっている。細い緑色の腕、脚、服は着ておらず素肌のままだ。そしてぎぃぎぃと唸りながら道をきょろきょろと見渡して移動していた。


 そう、有名なあのモンスター。妖精だったのに、何故か雑魚の魔物と化してしまった有名すぎるモンスター。最近ではあのモンスターは強いとか、あのモンスターに転生したけど、最強まで成り上がるといった話が多い有名モンスター。


 その名はゴブリン。


 ではない。緑色で1メートルぐらいの大きさの体躯。こん棒を持っているのは間違いではない。だが、よく見ると腕も足もそして体も植物の蔦でできていた。


 そして頭がメロンであった。


「ご主人様、敵が近づいてきます。準備はよろしいですか? そんな装備で問題ないですか?」


 緊張感のないニヨニヨと口元を笑いに変えて、サクヤが聞いてくる。


 遥は緊張してガチガチの中、小さく頷いてアサルトライフルを握りしめた。力を込めすぎて指が白くなる。


「大丈夫だ。問題ない」


 そうして、敵が無防備に近づいてくるのを待ち受けて銃を構えた。


 メロンの化け物は、道を歩き獲物が無いか見渡しながら移動していた。そこへがさりと音がしたので、音の方向へと目を向けると、2メートルあるかわからない貧相な木が突如として人間へと変化していくのを目にした。


 人間は銃を構えており、そのままこちらへと銃弾を発射する。所詮はメロン。頭に命中すると、あっさりと粉々になっていくのであった。


 メロンの化け物が粉々になり、ふぅ~と息を吐く。木への偽装を解除した、くたびれたおっさんがそこにいた。汗を指で軽く拭い、敵が完全に倒せたか、アイテムドロップを確認する。ウィンドウにはこう書かれていた。


「ライトマテリアル(小)、メロンマテリアル(R)」


 その戦利品を見て、満足げに頷くおっさん。もしかしたら初戦果かもしれないと嬉しい限りだ。一年間をゴロゴロ暮らしていたおっさんは初めて敵をまともに倒してアイテムをゲットしたのかもしれない。


「やりましたね。あの敵はメロリンと名付けました。雑魚っぽいし、遥様のぼでぃの相手にはちょうどいい雑魚さでしょう。遥様のぼでぃも雑魚ですし」


 ふんすと鼻息荒くドヤ顔で名付けをしてくるサクヤ。たしかにメロリンで良いかもしれない。アサルトライフルの斉射であっさりと倒せたし。そしてさりげなく遥のぼでぃを雑魚扱いする戦闘用サポートキャラがそこにはいた。


「ここらへんは雑魚なんだね~。安心安全な稼ぎ場所というわけだ。これならスキルが取得できるかな?」


 なんということだろうか。いつも引きこもりであり、絶対に危険な場所には行かないはずのおっさんがついに外出していたのである。それには理由があったのだが。


 まぁ、しょうもない理由である。北海道内部へと探索を開始したら、即サクヤからミッションの発生連絡が入ったのだ。


「ご主人様、北海道大ダンジョンを攻略せよ。exp65000、アイテム報酬? が発生しました。おめでとうございます。かなりの大ダンジョンの模様ですよ」


 嬉し気にこちらへと笑顔を向けて告げてくるサクヤ。そのミッションを聞いて遥は飛び上がって喜んだ。久しぶりのダンジョンである。しかも大とついている。これは出会いでもあるかもしれないと。


 そうして、ダンジョンへと向かうと、すぐに異常に気づいた。巨木が並ぶように生えているダンジョン。気配感知でも見通せない広さであった。というか、外縁部しか感知できなかった。ご丁寧なことに、地域ごとに空間結界を張っているようなのだ。


 気配感知は空間結界が張られていると、内部に入らないと遮断される。細かく地域ごとに空間結界が張られていると、中の様子がわからないのだ。


 しかし、それ以上に気になったことがあったのだ。敵が弱すぎる場所が多い。たぶんグールとゾンビの中間ぐらいの強さである。しかも種類も様々なものたちがいそうである。


 さすが大ダンジョン。わかっているねとゲーム脳な遥はすぐに探索しようとしたが、ふと思いついた。思いつかなくても良いことを突発的に思いついた。


 これ、おっさんのスキル取得に使えるんじゃないの? と。この一年間暮らしていてスキル取得できてないからねぇと思い、すぐさま家に帰宅。


 以前と違い、護衛のツヴァイもいるし、強力な装備もある。機械操作や銃術がないと扱えない装備もあるが、さっき感知した程度の敵ならば、スキルが無くても強い装備なら問題ないだろうと。


 そこで、おっさんはステータスを開き、考えることにしたら、驚くべき内容がステータスに記載されていた。


 ステータスボードに記載されていたのはこんな感じ。


朝倉 遥(年齢不詳)

筋力:8

体力:3

器用度:5

超能力:0

精神力:12


スキル:レベル上昇無効、経験スキル取得、経験ステータス取得、状態異常無効、自動蘇生、料理LV1、偽装LV1、演技LV1


 お分かりだろうか? なんと偽装と演技がスキルに入っていた。いつ取得したのだろうと考えるが、わからない。わかるはずがない。なにせ1年ぶりぐらいにおっさんのステータスボードを開いたのだから。


 外に出ないから、絶対にスキルなんか取得不可でしょうと諦めてみてもいなかった弊害である。


 このスキルがあるならば、他の人たちがおっさんをエリートと思うのは当然だ。レベル1でも強大な力を発揮するゲーム仕様であるからして。


「やったよ、ナイン、サクヤ! 私の訓練の成果がでたよ。スキルを2つも手に入れたよ!」


 脳内で頑張っていたから、スキルを手に入れたと記憶を捏造するおっさん。いつもの得意技である。半年もしたら、このスキルを手に入れるための訓練方法も捏造することは間違いない。そして武勇伝っぽく酒の席で話し始めるかもしれない。


「おめでとうございます、マスター。ようやくスキルが手に入りましたね」

 

 ちっこいおててでパチパチと拍手をしてくれて、野花が咲いたような癒される微笑みをナインは見せる。


「おめでとうございます、ご主人様。本当はずっと前に手に入れていたんですけどね」


 サクヤもパチパチと拍手をして褒めてくれるが、どうやら、このメイドはスキルが取得できたことを黙っていたことが判明した。


 こんにゃろー、教えてくれよと思いつつ、頭をかいて、ありがとうありがとうと喜んだおっさんであった。


 そして、このスキル取得に調子にのり、その調子は天を貫き次元を突破して、新たなるスキル取得をしようと思いついた、やめておけばいいおっさんである。


 装備をこんな感じに整えて、大ダンジョンの表層部分で戦ってみることに決めたのだ。


装備:無反動ハンドガン

   無反動アサルトライフル

   ジャージ(シールドワッペン搭載)(防御力5)

   パワードスーツモジャコ(O)防御力10(全ステータスを+2)


 無反動なのは、おっさんの筋力では絶対に銃身が射撃時に跳ね上がるからである。そして、スーツはこの間ナナが装備した進化するパワードスーツモジャコである。このスーツは5段階に分けてレベルアップをするのだ。ちなみに前のスーツはナナにあげた。空中機動バイクポニーと一緒に。


 モジャコとはどういう意味かというと、出世魚の一言でわかるだろう相変わらずのネーミングセンスの無さである。


 ちょっとうら若き女性が着たパワードスーツを着ることをためらったことと、ためらったと思ったら、既にスーツは四季がナナにあげちゃったし、新しいスーツをナインがなんだか怖い微笑みで作ってくれたのだ。隙を見せない連携であった。


 このモジャコの効果は雑魚なおっさんぼでぃには強大である。たかだか、2だと侮るなかれ。たった2で大幅に筋力は変化するのである。即ち20キロの持ち物をずっと持ちながら飛んだり跳ねたりできるのであるからして。


 そうして、おっさんは意気揚々大ダンジョンへと足を向けたのであった。新たなるスキル取得のために。


 そして空中戦艦にて、大ダンジョンぎりぎりまで近づき侵入したのである。


 ヘルメットにも戦闘服にも草木をつけた迷彩モードにて、道に立っていたおっさん。偽装の力を使い演技がその力を上乗せして木へと偽装していたのだ。


 木の役には定評があるかもしれないおっさん。もはや木が本体ではと思われるほど見事にしょぼい木になりきって、見事メロリンに気づかれることなく、撃破することに成功したのである。


「ねぇ、ナイン? このメロリンはメロンの変異したやつなんだよね? 食べられるんだよね?」


「はい、倒したことにより、普通のメロンとなりました。美味しいですよ」


 小首を可愛らしく傾げてニコリとナインは微笑む。メロンは美味しいですよと表情で語っている。


 遥はなんと答えたら良いか迷う。笑顔のナインには悪いが、地面に倒れ伏すメロンを食べる気にはなれない。蟹ならばまだ良い。メロンは種があるじゃん? 体内に入ったら、芽が出てきてメロン人間とかにならないかなぁと不安だ。まぁ、ナインが大丈夫と言うなら大丈夫なんだけど。


「でもダンジョンでドロップする食べ物系って、現実だとドン引きだよね? チョコレートとかケーキって、絶対に汚い感じがするし食中毒になりそうだし」


 大丈夫だと言われても、やっぱり生理的に無理だよねと、おっさんはナインの悲しい顔は見たくはなかったが、それでもそう伝えるのであった。だって、やっぱり嫌なのだ。種がないやつをお願いしますなのだ。保身に走ることには妥協しないおっさんなのだからして。


 もぉ、しょうがない人ですねと、母性本能全開の笑みでナインが解決策を教えてくれる。


「アイテムポーチへ入れれば大丈夫です。害のある物は全て浄化されますので」


 フフっと悪戯顔での提案だ。ナインはいつも可愛らしいなぁと思いつつ、今の言葉を考える。たしかになんかアイテムポーチに入れると大丈夫な感じになる。なんというかちゃんと洗浄したような感じ。理性ではなくて、感情が忌避しているので、そんな感情を持つのだろうと推察する。


「それじゃあ、頭ではなくて、身体を攻撃しないとだね」


 地面には頭を砕かれたので、ぐちゃぐちゃのメロン。土で汚れて普通のメロンでも食べられまい。スイカ割りをされたスイカもぐちゃぐちゃで食べたくないおっさんには無理だった。


「よし、アイン、シノブ行くぞ」


 何もない空間へと声をかける。頭がおかしくなったわけではなく、ステルスモードで2人が隠れているのだ。おっさんがこんな危険な場所に1人で来るわけはない。装甲車がないと、崩壊後の外を外出するのも嫌なのだから。


 そんなおっさんが奇跡的に、こんな危険なダンジョンに入ったのであった。明日は大嵐かもしれない。それだけスキル取得が魅力的であったのだ。


 もしもスキルを大量に手に入れたり、スキル強奪とか超レアなスキルを手に入れたりして、おっさん無双とかになったらどうしようと、ニヤニヤ笑いながら、妄想するのであるが、脇役体質なおっさんにそんな日は来ることはないだろう。強奪どころか、財布を落としてがっかりと悲しむことは間違いない。現実を見ないと駄目なのである。


 ちなみにスキル強奪は存在しない。スキルを強奪することは、すなわち相手の知識、記憶をコピーすることになるのだ。なぜ、そう動くのか? どうやって戦うのか? どうしたら作れるのか? 全ては記憶と知識の賜物だ。テキスト化した知識をインストールするのと、相手から強奪するのは訳が違う。多数の混在した記憶と知識を強奪した存在はいずれキマイラ化して、知能を無くすだろう。最終的に考えることもしない岩となるのではなかろうか。そんな生命体が存在できるわけはないので。


 こそこそキョロキョロしながら歩くおっさん。そろそろ気配感知が手に入ったかなと、10分毎にステータスを見て、何もないのでがっかりする。そんなことを繰り返して1時間経過した。


 その間、メロリンを5匹、ジャガーレムを2匹撃破した。


 ジャガーレムとはその名の通り、土塊の身体に頭が男爵いもであった。幸い身体を砕いても倒せたので、楽々倒したおっさんだった。あんまり倒しても嬉しくない敵でもあった。だってじゃが芋なんだもの。


 ジャカンとアサルトライフルをリロードして、道端で一息ついておっさんは呟いた。


「ねぇ、銀色のスライムはいないのかな? 王冠を被っている銀色のスライムとか」


 1時間をドスドスと歩いて疲れた模様。さすが体力3である。ひ弱なことこの上ない。


 なので、サクサクスキルを上げたいので、自分の好物のスライムを所望するおっさん。


「そんな都合の良い敵はいませんよ、ご主人様。これは現実なんですよ?」


 ゲームの中から出てきたような銀髪メイドが困惑したような表情で、ここは現実ですよと返事をしてくるが、口元のニヤケがその表情を裏切っていた。絶対に今の状況を楽しんでいるとわかる。


 しかし言っていることは正しいので、ぐうの音も出ない悔しい思いをする遥。


 そこへガサガサと草むらから音がしてくる。ハッと素早く、いや、おっさんにしては素早く身構えて、音の方を見ると銀色をしたなにかが飛び出してきた。


 すわ、おっさんが求めた敵かと、緊張しながら見ると、銀色の毛皮の狼であった。やけに小さい狼で1メートルぐらいの体格をしている。ちょっと狼なのこれ?と疑いを持ちつつ、銃で撃つ。引き金を引き続けるフルオートだ。おっさんには走ってくる狼を狙い撃つのは不可能なのは当たり前なので。


 得意技の数撃てば当たるだろうたぶん戦法で、走りよってきた狼は銃弾を受けて吹き飛んでいく。質量変化弾は安くて、そこそこ弱い敵には効くから良いよねと結果を見てご満悦となる。


 だが、ご満悦なのもそこまでであった。草むらから次々と狼が出てきたのだ。その数は5匹はいそうだ。


「ご主人様!」


 すぐにサクヤが叫んでくるので、なにか良い考えかもと耳をそばだてる。


「あの狼は変異した犬ですね。シルバーウルフと名付けました!」


 違った。いつもの名付けであった模様。ちょっと空気を読んでよと内心で抗議をしながらも


「うぉぉぉ! 来るなぁ! 来るなぁ!」


 なんか以前言った覚えのある叫び声を発して、遥はフルオートで再度射撃を開始する。


 タララと射撃は開始され銃弾は発射されたが、すぐに銃声は止む。弾が尽きたのだ。フルオートで撃てば当たり前である。


「あわわわ、リロードリロード」


 焦る遥はポケットからマガジンを取り出すが、バラバラと焦って落とす。散らばるマガジン。迫りくるシルバーウルフ。まったく成長しないおっさん。


 全ての苦難が重なり、おっさんが狼に喰われそうな時であった。


 ひゅっと、瓶が狼とおっさんの間に投げ込まれる。割れた瓶は火が発生して、地面を、突撃して回避しきれなかった狼たちを焼いていく。


 ギャインと目の前に発生した炎にびっくりして、狼たちは背を向けて逃げ出していくのであった。不思議なことに炎はすぐに他に燃え移ることなく自然に消えていく。ダンジョンの力なのだろう。


 投げられた方向を見ると、もじゃもじゃの髭を生やした中年のおっさんがいた。


「大丈夫か?」


 もじゃもじゃは片手に追加の瓶、あれは火炎瓶なのだろう。それを持って近寄ってきた。


「えぇ、危ないところでした。助かりました、ありがとうございます」


「いいってことよ。こんなところでなにをしているんだ?」


 その言葉を聞いて、遥は考える。ヒロインはやっぱり若い子が主人公でないと、出てこないのねと髭もじゃをみてがっかりするのであった。


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[良い点] ポニーか、がんばれ。 ポニーが何進化したらスレイプニルになるんだろうか
[一言] 元祖ヒゲモジャはここだった?
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