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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
13章 要塞を攻略しよう

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166話 ゲーム少女は戦争の準備をする

 直径5キロにも及ぶ上級大型機動兵器作成工廠内では、忙しなくツヴァイたちの声が行き交っていた。その工廠には改修の終わった空中戦艦が威容を見せて佇んでいる。


 全長3キロに及ぶ新型空中戦艦、もはや改修というか新型空中戦艦となったスズメである。山をも吹き飛ばすであろう超大型3連装量子砲を多数装備している。もはやインチ砲ではなく、いうならばメートル砲である。どこかの宇宙戦艦にも勝てるかもしれない砲だ。そして、量子レーザーが半球形のガラスのような形で戦艦に死角がないほどに設置されている。他にも特殊ミサイルボックスや機動兵器発進用のカタパルトが設置されているのが見える超戦艦である。


 その威容を見て、うんうんと頷くゲーム少女。すごいかっこいいよと興奮気味だ。でも不満点はある。振り返り後ろに立っているメイドたちに声をかける。


「なんで、名前がスズメダッシュなの? ねぇ、この名前は本当に変更できないの?」


 戦艦名は改修が終わって、スズメダッシュという名前になった。名前の適当さは相変わらず変わらない哀れな空中戦艦であった。


 ブーブー可愛く遥は口を尖らせて文句を言う。こんなにかっこいいのに名前が変更できないのは悲しいよと。


 ん~とゲーム少女の尖らせた口へと、自分の口を尖らせてキスをしようとするサクヤに対して身体を華麗に回避させて、といやっと床へと投げ飛ばし放置してナインへと顔を向ける。


 困り顔でナインが返答をしてくれるが予想通りであった。


「申し訳ありません。マスター。残念ながら戦艦の名前はデフォルトになっています。変更不可です」


 やっぱりそこは変更できないんだねと、銀色の巨大空中戦艦をちらりと見て嘆息する遥である。うぅ、こんなにかっこいいのにと。


「ご主人様、戦艦の名前は変更できませんが、船体に名前を書いておけばいいのではないですか? 一般人はその名前が空中戦艦の名前だと思うでしょうから」


 床に突っ伏していたサクヤが復活して提案してくる。


「おぉ! サクヤにしてはまともなアイデアだ! それいいね!」


「そうでしょう、そうでしょう。船体に一年一組朝倉サクヤと書いておきますね」


 たわけたことを言い調子に乗ったサクヤのほっぺを紅葉のような可愛いおててで掴んでグニグニして断言する。やはり、この銀髪メイドの提案は許可してはいけない。


「やっぱりスズメダッシュでいこう! 船体に悪戯書きは禁止だからね!」


 さりげなく苗字を朝倉と言っているあたり、サクヤへと内心照れる遥。だが、このままだと忘れ物を防ぐための名前が戦艦に書かれていると思われてしまう。こんなに巨大な戦艦をどうやって忘れるというのだ。


 結果、空中戦艦はこうなったのである。


小拠点:マイシップ

維持コスト:0(拠点聖域化の影響)

防衛力:500

防衛兵:100機 

拠点の種類:空中戦艦スズメダッシュ

搭載機:フォトンタンクニワトリ、10機、無人フォトンタンクヒヨコ100機、フォトンヘリクイーンビー2機、無人ヘリミツバチ20機、戦闘機ウミネコ10機、無人戦闘機ウモウ100機、空中強襲艇ドラゴンフライ2機


 空中強襲艇がトンボからドラゴンフライになった。名前が英語になっただけなのに、新型扱いされている。たしかに英語のほうが響きは良いのだがと遥は不満である。他は新型機動兵器が満載してある。


 全長3キロでも、こんなに入らないだろうというツッコミは無用だ。なぜならばアイテムボックスと同じ原理を格納庫は使われているので、1000機まで機動兵器が搭載可能なのだ。


 そして注目が防衛兵である。もはや人が足りないのが慢性的であるので、ツヴァイたちの抗議には贈り物作戦で懐柔して、追加のツヴァイを100機作成したのである。もう50機は基地に通常配備されている。手料理を贈り物にしたのだ、ちなみにクッキー。ウルウルおめめの上目遣いでツヴァイ増やしていい? とクッキーを手渡しながら提案したらあっさりと了承された。あと、クッキー強奪犯が出没したので退治に苦労した。その強奪犯は銀髪の誰かに似ていたが。


 とはいえ、要塞ダム戦ではツヴァイの全員を連れていくのだ。若木コミュニティに常駐しているツヴァイもである。悪いけど、銀行員も医者も支部詰めも全員である。仲間外れは可哀そうなので、数日は休暇ということで若木コミュニティにはツヴァイは誰もいなくなる予定だ。それを告げたところ、飛び上がって喜び、若木コミュニティ詰めのツヴァイは遥を抱きしめたものだ。その後に他のツヴァイたちが、ずるいと同じように抱きしめてきたので、レキぼでぃでなければ倒れていたかもしれない。さすがに200人はきつい。追加でメイドたちも抱きしめにきたし。


 そしてスキルも取得しておいた。こんな感じ。


体術LV8→9、機械操作lv6→8


 これでスキルコアのスキルポイントを加えると、残りスキルポイントは3である。


 体術はもちろん戦闘用だが、機械操作は戦艦などの機動兵器を扱うために必要だ。しかもアインたちの機械操作レベルも4に上げられるというおまけつき。本当は運転スキルを上げたい。でも汎用性のある機械操作を上げるしかないスキルポイント事情である。そろそろ氷念動も上げたいよねと浮気心をもつゲーム少女でもある。


「でも9レベルなら英雄レベルだよね。ドラゴンも倒せちゃうよ」


 可愛い顔を綻ばせて、ご機嫌に呟くゲーム少女。紙で神なテーブルトークゲームなら、もう英雄だ。


「そうですね、まぁ、ドラゴンなんて今まで見たことはありませんが」


 遥の呟きを聞いて、サクヤが相槌をうってくる。サクヤの相槌でハッとする遥。


「そうだね、今の会話で次に出てくる敵がドラゴンなのは確定したね」


 サクヤの相槌をうけて、項垂れる遥である。今の会話は確実にフラグをたてたよねと。


 小説やアニメでは当たり前のフラグ、何々なんか見たこと無いよ、アハハと会話をすると、その敵がでてくる法則である。


 迂闊にもフラグをたててしまった二人。まぁ、この二人はいつも迂闊であり、迂闊が服を着ている存在なのだが。


 その二人に安心するように言葉をかけて微笑むナイン。


「大丈夫です。ドラゴンすらも今のマスターならば倒せるでしょう。私たちも空中戦艦から支援しますし」


 両手を胸の前で合わせての言葉である。そんなナインはすごい可愛い。後で頭をナデナデするしかない。


「大丈夫です。子犬にすら負けるおっさんぼでぃではないのです。私たちも空中戦艦から支援しますし」


 両腕を胸の前で組んでの言葉である。そんなサクヤは凄いドヤ顔だ。後で、両頬をムニーンの刑しかない。


「大丈夫です。旦那様。ドラゴンもメイドも全て倒しますので安心してください」

 

 レキが最後を締める言葉を発する。駄目だよ。さりげなくメイドも倒しちゃと苦笑いをする。そんなレキは相変わらずの愛らしさだ。


「よし! 戦艦内に移動するよ。全員搭乗せよ!」


 そうしてコントを終えて、ゲーム少女は全員に指示を出すのであった。


              ◇


 ブリッジは前よりも倍は広くなっていた。広々とした空間で中央辺りがひらいておりバーベキューとかできそうな感じがする。


 そこにどやどやと皆で移動する。見慣れた熾烈なるツヴァイたちの席取りゲームが始まるのを、諦めとともに嘆息して眺めながら、よいしょと司令席に座る。横にはいつものようにメイドたち用の椅子も用意してある。司令席の横には漫画が積んであったのでロマン溢れる未来的な風景は台無しになっている。


「後輩は席を譲りなさい。甲板を磨いていなさい」

「世は下剋上の世界です。先輩こそ甲板磨きを」

「この椅子の周りには地雷が仕掛けてあります。私以外は近づけませんよ」


 なんだか物騒な話し声が遥の耳に入ってくるが幻聴だ。最近歳だし仕方ないよねと現実逃避をするゲーム少女。あんな会話をツヴァイがするわけはないのだ。いや、最近はああいう会話ばっかりの感じもするが………。


 専用の椅子が用意されていて、慌てていない四季とハカリがパネルを押下して戦艦の機動準備を始める。引き出しがシャッと開き、ゲームのコントローラとマウスが出てくる。どうやら操作方法は変わらないらしいがっかり戦艦。


「システムオープン、スズメダッシュ、起動開始」


 遥が音声にて指示を出す。その声に従い駆動音が響き始めて、ぽつりぽつりと空中戦艦に明かりが灯り始める。その様子は幻想的であり、未来的なロマンの溢れる風景だ。


 パネルを見ながら、ハカリが報告する。


「エンジン出力30%、更に上昇中」


「ずるいです、ハカリ。それはオペレーターのセリフのはずです。司令、そのツヴァイはくびにしましょう」

「そうです。そうです。人の仕事をとらないでください」

「もうリーダーもくびにしましょう」


 ブーブーと他のツヴァイたちが文句を言い始める。こんなときだけ連携するマシンロイドたち。


 はぁ~。サクヤもそうだけど、第一印象からどんどん変化していくね、この娘たち。


 呆れて口を挟もうとする遥。だが、他から声がかけられた。


「貴方たち、全員ブリッジから降りますか? 操作も補佐も全てこのナインが一人でできるんですよ?」


 ナインが珍しく冷たい声音で、普通に話すぐらいの声の大きさで言う。


 ぴたりと静まり返るブリッジ。それぞれきびきびとようやく動き出す。


「火力管制問題なし」

「シールド発生開始。出力問題ありません」

「レーダー感度良し」


 おぉ、少し怖いよ、ナインさんやと恐る恐るナインの顔を覗き込む小心者代表の遥。


 遥の視線に気づいて、にっこりと微笑み返すナイン。さっきの態度が嘘のようだ。ほっと一安心してナインを怒らせるのはやめておこうと誓い、ナインの頭を一撫でしてから前へと向き直る。


「司令。システムオールグリーン。発進可能です」


 四季の声を聞き、遥は立ち上がり、ビシッと指を前方に指し示して叫ぶ。


「よし! 空中戦艦スズメだっちゅ! 発進!」


 ちょっと噛んだゲーム少女であった。噛んで恥ずかしがる姿も可愛い。おっさんならなかったことにするだろう。


「空中戦艦スズメだっちゅ! 発進!」


 うきうきと楽し気な明るい声を出して、こういう発言は逃さないサクヤがいらんことを繰り返す。オノレサクヤ。後で絶対になにか仕返しをしてやると心に決める。


「了解! 空中戦艦スズメダッシュ、発進します!」


 四季は気をつかってくれたので、優しさがほろりと胸に響くゲーム少女。こうやってサクヤの株はどんどこ下がり続けるのであった。


              ◇


 工廠の天井が開き、日差しをキラキラと反射させながら空中戦艦はゆっくりと飛翔を始める。


「前進開始! 目標は奥多摩要塞ダム。わが軍は再度の侵攻作戦を開始する。第二次侵攻作戦の開始である!」


 楽しくて仕方ないと表情と声音でわかるゲーム少女。天井が全天モニターへと変わり、周辺のマップや敵影が無いか表示されている。


 空中戦艦が航行していくと、その威容に驚いたのだろう。ハトや烏、スズメが飛んで逃げていく。スズメは逃げなくていいんだよ。これもスズメだしとくだらないことを考えながらも満足げに椅子に深く座る。


「ご主人様、この漫画を読みましょう。第二次世界大戦の時代にタイムスリップする自衛隊の戦艦の話です」


 サクヤが漫画を取り出して勧めてくるが、嫌なラインナップをきっちりと用意したらしい。


「それ、うちには無かったよね? その作者のは潜水艦のやつしか私は持っていなかったよね?」


「ええ、なのでツヴァイに命令して持ってこさせました。面白いですよ」


 ドヤ顔になり、胸をぽよんとはるサクヤ。こんにゃろー、私をからかうことに人生をかけているのかと疑う遥。


「読むけどさ………。この戦艦がタイムスリップしたら確実に世界支配できちゃうよね」


「そうですね、マスター。以前の世界なら軽く数十回は世界を崩壊させることができるのではないでしょうか?」


 ナインが同意してくる。恐ろしい同意であるが。なぜ支配と言ったのに崩壊へと会話内容が変化しているのか。


「と、いっても私一人で昔なら世界支配できちゃうか。崩壊すらも」


 紅葉のようなおててをグーパーする。可愛らしいおててだ。脆弱そうで皮膚の感触もぷにぷにしていて触り心地が良い。そしてサクヤよ、どさくさに紛れて私の手を触ろうとするな。


 この手はいかなる物も破壊できる力をもつ。その体は核ミサイルの直撃すらも防ぐだろう。恐らくは核が効くのは20000ぐらいの経験値の敵までではないか? たぶんその感覚は当たっていると考える遥。それ以降は超常の力を含めないと物理攻撃は効かないとの理解を体が教えてくれる。


 我ながらもの凄い存在になったと感心する。


 そして思う。


 今後も自由に遊べるよねと。


 おっさんの精神は熟成して腐敗しているので、葛藤とか力をもつ不安とかはないのであった。もう若くないし。若い人ならば葛藤やらこの力を振るう義務とかを考えるのだろうが、そんなものは社会の荒波に揉まれて板切れのように消えてしまった遥の精神には響かないのであった。


「おぉ、人が蟻のようだ。ふふふふ、この戦艦はすずめだけど」


 尊大ぶって背もたれに深く寄り掛かり呟く遥。大物であることを見せたいのであるが、残念、レキの姿では船長ごっこをしている子供にしか見えない。ちなみにおっさんならどうあがいても小物にしか見えない。


 空中戦艦は移動していき、若木コミュニティの上空へと入っていく。地上では巨大な空中戦艦を指さして人々が騒いでいるのがわかる。もう大騒ぎになっていて、地上からこちらを指さしたり、家の窓も開いて、みんなが空を見上げている。


 ここは一つ挨拶をしておくかと、わくわく顔で皆を驚かせたいゲーム少女。サプライズなので、もう挨拶するしかないと余計なことを決意する。一旦空中戦艦を空中で停止させて、マイクを持って話し始める。


「テステス、テスト終了。みなさん聞こえますか? こちらは空中戦艦です。内部は広くて涼しくてリクライニングもよく利いている椅子があります。住み心地が良い戦艦です」


 最初から余計なことしか言わないゲーム少女である。でも、その言葉で騒いでいる人々が安心したように騒ぎが静まっていく。


 どうやらあの少女が乗っているようだと理解したようだ。ただ、豪族が怒鳴っていたり、リィズがぴょんぴょんと跳ねて何か叫んでいるが。


 まぁ、大体何を言っているのかは理解するので、放置する。


「えっと………。ちょっとこれ照れますね。照れちゃいますね。ちゃんと聞こえてますか? マイクオンになってますよね?」


 マイクがオンになっているか確認する。今更ながら不安になったらしい。どうしようもないゲーム少女。誰か喋るのを代わってあげた方が良い。


 嬉し気に撮影するサクヤが頷いて親指をたてる。それに安心して話を続ける。


「これは新型空中戦艦です。凄いですよね? 私もこれを見たときは感心しました。後で記念撮影もしたいと思います。そうだ、発進前に進水式もするのを忘れて………」


 いつまでもくだらないことを言い続けるゲーム少女である。


 それを見て、ナインが紙のボードを見せてくる。そこには、そろそろ航行を再開します。空中停止しているとエネルギーを食いますよと書いてあった。


 ケチなるゲーム少女はその言葉に頷き返し、話を終わらせることにした。何故か最近の紙芝居の感想に話題は移っていたし。


「というわけで、私たちはこれから強大なる敵要塞へと侵攻作戦を開始します。一度負けているのでリベンジ戦です。もう負けません。空をビーム砲が飛び交ったり、戦闘機が戦っていても気にしないでくださいね。それじゃ、えっと、オーバー?」


 たしか、会話を終わらせるには、オーバーと言わなければいけなかったと、いらん記憶をしていた遥。その言葉では全然安心できない内容だと思われるが。


 そしてあの撤退戦は、ゲーム少女の中では敗退したと認識していた。なので、リベンジである。もはや容赦はしない。使わなかったとはいえ、飾っておけばかっこいい戦車とかを全滅させられたのだから。飾っておくだけで良いのだ。かっこいい戦車が並んでいるのは見ていて楽しいのだ。


 放送を終えて、ブリッジ内を見渡して満足げに遥は言う。


「ではでは、はりきって要塞ダムへと進軍しましょ~」


 緩い口調でそう宣言してゲーム少女の軍団はかつて撤退した奥多摩へと進軍を再開するのであった。


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― 新着の感想 ―
もう性格統一のロボットのフリをまるでしなくなったツヴァイ達草
[一言] >「そうですね、マスター。以前の世界なら軽く数十回は世界を崩壊させることができるのではないでしょうか?」 >ナインが同意してくる。  戦闘関連の話にクラフト担当のナインがなぜか応じてる。…
[一言] そういえばダム周辺で攫ってきた人達って牧場組以外あれ以降出たっけ?
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