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16話 ゲーム少女はゴリラと合流する

 遥たちは立体駐車場の前にたむろしている骨軍団を避けて、立体駐車場沿いに横道に入っていく。


 骨軍団はこちらに気づくことなくバリケードを破壊しようと頑張っている。スケルトンウォーリアがバリケードの車にシミターをガンガンと打ちつけているが壊れそうには見えなかった。


 駅前の立体駐車場はどーんと巨大な建物である。中世からきた人が見たら難攻不落な砦だと思うだろう。壁も高くスケルトンは勿論ゾンビも入れないように見えた。人影は見えないがバリケードがあれば十分なことがわかる。


 スケルトンは高くジャンプすることは無いように見える。というかノロノロ歩いており走ることができないみたいである。壁に張り付くこともスケルトンは無いみたいなので拠点とするのには、丁度良い建物なのだろう。


 もっとも壁に貼り付くゾンビを遥は昔の映画で見たことがあるので完全な安心はできなかったが。前に壁に貼り付くゾンビを映画で見たときは怖いと遥は思ったのだった。


 だが現状のゾンビは小走りだし、そんなに凄い能力はなさそうである。怖いとすればゾンビを食べてしまう皮膚が剥がれたバイオ的クリーチャーだなと、ゲームを基準にする遥であった。


 横道にはスケルトンは全くいない。どうやら入口のみに集まっており周りには無頓着のようだ。遥はそのことにホッとする。スケルトンなので生命感知なのではと、警戒していたのだ。


 勿論生命感知の可能性を考えた根拠はゲームである。


「こっちだよ!」


 ナナが小声で遥を誘導する。横道の途中の壁に避難用のハシゴがかけてあった。


 なるほどなるほどと遥は納得する。ゾンビ達はハシゴが使えなさそうだ。拠点の出入りには丁度良い。もしも登ってきたらハシゴを切り離せば良いだけだ。


 考えてるなと感心した遥へ先に登ってと、ナナが言ってきたので素直に登ることにした。


 ハシゴの長さの限界を利用したのだろう。到着まで数階通過した遥達。縄梯子はかなり登るのが難しかった。

 おっさんなら数階どころか、数段ハシゴを登った所で息が切れて落ちそうな感じであった。そして手を滑らせて落ちて、ウギャーと下に待ち構えていたゾンビに食い殺されるパターンである。


 つくづくレキぼでぃに感謝する遥であった。


 遥達が登りきったところ、目の前に筋肉ダルマがいた。ゴリラに変異したミュータントかと遥は警戒するぐらいの筋肉ダルマである。服は筋肉でパンパンになっており背丈も190はありそうな短髪の30歳ぐらいの男性であった。


「よく生き残った!」


と遥の背中をバンバン叩いてくる。


 学生時代の体育教師を思い出して少し嫌そうな顔になる。あの時の教師もマラソンで完走してきた学生の背中をバンバン叩いて褒めてきたものだ。


 疲れているのに背中を叩かれて凄い嫌だった記憶があったんだよ。初対面でこの男性に苦手意識を遥は持ったのだった。


 その後、ナナと話し込むゴリラな男性。遥は他の人に奥へ連れていかれるのであった。よくよく周りを見ると警官の服に自衛隊の服と、人々を守る職業の人ばっかりみたいである。装備もアサルトライフルからショットガンと火力が物凄い高そうな武器ばかりであった。


 その火力の充実した人々を見て疑問に思う。この近くに自衛隊の基地は無い。そして警官もショットガンと火力高すぎである。サスマタとちっぽけな拳銃しか持っていなかったナナが可哀想に思えたのだった。


 謎の武器商人でもいるのかと思った遥に声がかけられた。


「大丈夫か? 君は今までどこで生きていたんだい?」


 と、先程のゴリラがナナを連れてやってきた。


 ゴリラと渾名を決めた。有名なゾンビハンターもゴリラと呼ばれていたので良いだろうと勝手に決めつけた遥であった。


 何はともあれ聞かれたことには答えなくてはと遥は返答する。


「家の周りにはゾンビが少ししかいなかったんです。周りの家は避難して誰も居ませんでしたし、誰もいないから食べ物とかを…」


 ゴニョゴニョと最後は小声にする。生き残るために仕方なく他人の家から食べ物を取っていたんです感を出しながら答えた。涙目にもしたかった遥であるが、そこまでの演技力は無かった。


 だが美少女なレキぼでぃである。先程ナナも窃盗していたぽいのだ、窃盗して生き残った美少女は許されるだろうとの考えである。


「そうか!よく頑張った!」


 またバシバシ叩いてくるゴリラ。レキぼでぃなので痛くはないが、止めてほしい。だが、周りがよく生き残ったねという感じでこちらを見ているので口に出せないゲーム少女であった。


 空気を読まないとコミュニティではすぐに孤立してしまうのである。


 合流したことにより状況説明を遥は受ける。


 彼らは市庁舎、警察署、消防署で生き残っていたメンツらしい。よく生き残ったものである。ゲームなら大体全滅していそうな場所である。今もそれぞれの場所に人々は生き残っているのでどれかに連れていってくれるとのことだ。


 そんな親切な提案であるが遥には困った提案だ。正直、そろそろ家に帰って風呂に入って寝たい。


 キューッと、一杯やるのも良いかもしれない。今日は俺は頑張ったと自分を心の中で褒めている。強力なレキぼでぃでも軟弱な考えは無くならない遥であった。


「あの、私家に帰ります。そろそろ門限なんで」


 と余計な一言も加えて断る。


 何故門限とか加えたのか? 美少女なら門限があると言えば大抵の人は帰してくれるでしょと思った知力の項目が本当に欲しいゲーム少女であった。


 ナナがゴリラの耳元に口を近づけてゴニョゴニョと何かを言っている。何かと言うか、遥が哀れな心の壊れた少女とか言っているのであろう。


 返答を間違えたと気づいたが、時すでに遅しであった。


「そうか門限か。今日はお巡りさんたちもいるし門限は大丈夫かもしれないぞ? ご両親に聞いてごらん?」


 ナナから遥が保護者が家にいますと返答した内容も聞いたのだろう、既にその保護者も死んでいるんだろうと優しい顔でゴリラは言ってくる。最早何を言っても帰してくれなさそうだとゲーム少女は気づくのであった。


           ◇


「さて、全員帰還したのでこれから移動を開始する!」


 ゴリラが周りの人々に言う。


 遥の隣には目を離さないからねという感じで、ナナがマークしている。このディフェンダーを引き離すのは難しそうだ。しかし全員帰還か。この人々はかなり優秀なメンツらしい。


「先ずはいつも通り屋上から隣のビルまで張ってあるロープにて移動。各自その後にそれぞれの拠点まで戻る。拠点毎に創られている移動路に問題が無いか先頭はしっかり確認しながら移動するように!」


 はい! と周りが答えてゾロゾロと移動を開始する。


 屋上まで来ると道を挟んだ隣のビルまでロープが張られていた。


「え? ここを渡るんですか?」


 ちょっとドン引きしてナナに聞いてみたが


「大丈夫、安全に移動できるようにラペリング用のフックもあるから!」


 と遥の腰にもラペリング用のベルトをつけ始めた。


「なんて脳筋の集まり!」


 おっさんなら絶対にお断りな渡り方である。


 レキぼでぃだからこそ渡れるなと、渋々ゲーム少女はロープを渡っていくのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この章をありがとう [一言] 彼らが彼女の保護者になろうとしていること、そして良い人たちであることはわかっていましたが、それでも、この状況はなんと苦痛なことでしょう。
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