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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
2章 初めての生存者と遊ぼう

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14話 ゲーム少女と女警官

 遥は声をかけられてびっくりしていた。


 常在戦場スキル仕事しろと心の中で文句も言った。


 常在戦場スキル的には危険も何も感じなかったから、気配感知を発動しなかったんだと抗議がきそうである。


 声をかけられた方を見れば、女警官である。職質だろうかといらない心配をする。私は普通のサラリーマンですよとしっかりはきはきとした口調で答えなければと身構える。


 何もしていなくても警官が苦手なのだった。


「君、大丈夫かな?」


 優しい口調で心配気に女警官が声をかけてくる。遥は今は美少女キャラを使用していたっけと、改めて思い出した。ちょっとパニックになっていたらしい。


「はい。大丈夫です。お疲れ様です。何か事件ですか?」


 と野次馬根性が少しある面倒な人ですよアピールをする。そうすれば、警官も適当な受け答えで解放してくれるのではないかと思ったのだ。今の状況を全く省みない知力の項目がステータスにない遥であった。


「えと、一人かな? 親御さんたちは?」


 女警官は戸惑いながらも親切に聞いてくる。


 これがおっさんぼでぃならもっときつく聞かれていただろう。万歳、レキぼでぃ!


 遥はようやくこんな返答では、おかしな少女と思われると気づいた。


「家に保護者がいます。今日は休みなんです」


 今日は学校は休みですよアピールである。だから平日に出歩いていても補導しないでくださいね、普通の少女ですよと心の中で思いながら返答を行った。


 ゲーム少女は未だにパニックしていたみたいであった。


 状態異常無効はどうやら物理的にしか守ってくれないみたいである。もしくはこの状態が平常運転の可能性もあるおっさん脳であった。


「えと、おねえさんと一緒に安全な場所にいこっか?」


 あぁ、この少女は心が壊れてしまっているんだなと女警官は思ったのだろう、優しく保護しようと話しかけてきた。その言動を聞いて、こりゃ、やばいといい加減、現実に戻ってきた遥である。


「すみません。冗談を言いました。でも、保護者が家にいるのは本当ですよ?」


 と、テヘペロをしてみる。


 美少女である。その行動は抜群に似合っており、10人中8人はその姿に魅了されていただろう。中身がおっさんな少女にとっては、かなり勇気ある行動だったが。おっさんがテヘペロなぞしたら、どんな下心を持っているのかと周りはドン引きであろうから。


 また、遥の心も自分のテヘペロにより心に大きなダメージを受けていた。


 ホッとしたのだろう、女警官も少し緊張を緩めたみたいである。


「そう、どうやってここに来たの? ここは危ないよ?」


 当たり前の事を当たり前に言ってくる女。まぁ、それはそうだろう。ここまで来るのに大量のゾンビやらミュータントやら、最後には中ボス的な巨人もいたのだ。ここまでどうやってきたのか疑問に思うのは当たり前である。


 冷静になった遥は、その問いをスルーして女警官をじろじろ見た。


 ストレートロングの髪のちょっと勝気な目つきの160センチぐらいの女警官である。薄汚れてはいるが制服と防刃ジャケットを着ており、腰に拳銃を装備している。背中にはでかいリュックも背負っている。片手にはさすまたをもっている。よくよく見るとさすまたの先には包丁が括り付けてあった。


 遥は一番危険な物に気づいた。


 拳銃である。


 すぐにステータスボードを開く。レベル9になり50になっていたステータスポイントを全て均等に割り振り使い切る。拳銃が怖かったのである。レキぼでぃは人外ステータスであるが拳銃の弾丸に耐えられるか不安であったからだ。


 さらに人外となったゲーム少女である。


「もしもーし?」


 女警官がまた心配そうな声で、こちらの反応を見ようとしている。遥がぼーっと空中を眺めていたからだろう。これが、主人公的な人なら、即座にステータスを割り振って、何ですか? という感じを出せたであろう。


 しかしおっさんな遥はステータスの割り振りに間違えが無いか何回も確認してから、ステータスの確定ボタンを押していた。仕事でミスを防ぐための行動が、ついつい現状でも表れてしまったのである。そのため、結構な時間を空中をぼーっと見ていた美少女という絵柄になった。


 第三者から見れば、確実に不審者である。崩壊したかもしれないこの世界では心を壊していると思われてもおかしくない行動であった。


 おっさんなら問答無用で不審者と思われていただろう。


「いえいえ、大丈夫ですよ? ちょっと疲れてしまいまして」


 自分の行動に気づいて慌てて返答した遥であったが、もはや女警官の緊張は解かれることはなかった。


           ◇


 駅前通りの細道を隠れつつテクテクと女警官の後に続く遥。あれから、仲間との集合場所に向かうから一緒に来なさいと強めに言われてついてきている。国家権力には逆らいにくいゲーム少女であった。


 前を歩いている女警官の姿を再度見る。今の状況を考えてみる。女警官から体臭がこの距離でも臭う。かなり臭い。女性にそう思うのはおっさん的には、周りを全て敵にまわす危険な考えであったが心の中に止めておけば大丈夫だろう。


 臭いことから、いまだにインフラが復興していないのがわかる。たぶん風呂には入れていないのだろう。シャワーすら厳しいのかもしれない。


 駅前にくるまでにあった公園で水を飲もうとして備え付けの水道の蛇口をひねったところ、水が出てこなかったことを遥は確認済みであった。


 アイテムポーチの中にあるDLCで買った水を飲むのはもったいないと、慌てて家に帰って水を新たに用意したセコさも見せていたりする。


 ちなみに遥はレキぼでぃで毎日ふんだんに水を使い風呂に入って、メイド二人に磨き上げられている。そのため、いつもレキぼでぃはピカピカでいい匂いがする可愛い美少女である。


 勿論、おっさんぼでぃは磨き上げられたことは無い。まぁ、メイド二人におっさんぼでぃを磨き上げられるとある部分がやばいことになるので、残念と思いつつも安心はしているのだが。


 遥は考えを戻す。インフラは復興していないが、この女警官は警官らしいことをしている。そしてここら辺にはゾンビたちを見ないのだ。


 この事から遥は政府が復興し始めたのではないかと、勘違いをした。


 崩壊した世界を描く映画の中でも、警官は出てくる。殺された家族の復讐をするヒャッハー白バイ警官とか、警官であった経験を活かして地位を築き、俺王様、周り下僕みたいなことをするパターンである。


 どちらにしても警官という職業は辞めていた。


 しかし、この女警官は自分を保護しようとしている。この周辺にゾンビたちもいないとなると、ゾンビたちを排除できる武力を持っており、なおかつ生存者を優しく助けることができる資材も確保できていて、誰か指示を出して統率された動きもできるということになる。


 遥の知力では珍しいほど考えられた考察である。これからはおとなしく暮らしていけるかもと希望を持つ。レキぼでぃとメイド二人はどうしようかなぁと、もはや社会が完全に復興したことを考え始める楽観主義な遥である。


「君は今までどうやって生きてきたの?」


 考え事をする遥に対して女警官が問いかけてきたので返答を迷う。


 敵を倒してレベルを上げてドロップアイテムから食料などを作り出し生きてきました。などと本当のことを言うともはや完全に心が壊れた少女扱いは解かれないであろう。


 そして遥は自分の力を教えるつもりも毛頭なかった。


 ゾンビ映画などで一番怖いのは人間である。


 コミュニティが崩壊するのも、親友が死んじゃうのも、上司が無理な仕事を押し付けてくるのも、全部人間関係が原因なのである。その為、確実にトラブルを呼び込むだろう、この力を教える気はなかった。


 たとえ心が壊れた少女扱いを受けてもである。


 何やら関係のない事柄も混じっていたような感じもするが、遥はどう答えようか非常に迷っていた。ウィンドウを見るがサクヤは何も言ってこない。


 戦闘用サポートだからだろうか? ただのポンコツである可能性もある。何しろ口パクで早く家に戻れ、カメラを作ってくださいよと言っている。


 幸いこのステータスボードやウィンドウは遥とサポートキャラであるサクヤ、ナインたちしか見えない仕様らしい。これが見られていたら大変だったと、ホッとしながらサクヤを無視した。


 何気に口パクでも意思のやりとりができるようになっている仲の良い二人であった。


「ゾンビに気づかれないようにこっそりと生きてきました。危ないときはこの鉄パイプでバシーンと敵を倒してきましたよ」


 と、美少女なレキぼでぃの力を発揮して、あざとく可愛いフォームで鉄パイプをへろへろな素振りで振る。他人が見たらほっこりする可愛さである。


 ゲーム少女はがんばったのであった。


「そっか、そっか、生き残っていて良かったよ。もう安心だからね」


 にっこりと笑う女警官。だが、そこに不安が混じっていることを遥は気づいた。おっさんはいつも対人関係には特に気を付けないといけないのである。


 但しメイド二人は除く。


「鉄パイプは持っていていいですよね?」


 取り上げられそうになったらばっちゃんの形見なんですと泣き真似をしながら、取られないようにしようと考える。鉄パイプが形見ってどんなばあちゃんよと、つっこみがくる可能性は高い。


「うん。自分を守る手段は大事だよ」


 女警官の言葉に安心する。


 遥は装備作成時に鉄パイプを選んだ自分を心の中で称賛した。


 ハンドガンやら日本刀を選ばなくて本当に良かったと思った。復興を開始した状態で、そのような装備は無用なのである。もし作成していたら、全力ダッシュで逃げて、あとはおっさんぼでぃで暮らすしかないのである。銃刀法違反を恐れまくるゲーム少女であった。


「私は朝倉レキと申します。申し訳ありません。あなたのお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか? 後、どちらにむかっているのでしょうか?」


 ゲーム少女の年代にふさわしくない聞き方で遥は女警官に聞いた。美少女の言動にしたいが、ついついおっさん時の言い方に戻る遥である。その聞き方に違和感を覚えたはずなのに、女警官は優しく教えてくれた。


「私の名前は荒須ナナ。これから立体駐車場に行くんだよ。そこに仲間がいるの」


 荒らすな? いや荒須ナナか。語呂が面白い女性だなと遥は思った。そしてナナが仲間と言ったことにも違和感を感じた。


 普通、同僚の警官を仲間と言うのだろうか? そういうシチュエーションになったことがないので判断がつかないが、少し言い方おかしくないか? と少し警戒心が戻ってきた。


 自分の記憶が確かなら、駅前の立体駐車場はもうすぐである。

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― 新着の感想 ―
[一言] この章をありがとう
[気になる点] サポートキャラが主人公の意向にも状況の改善にも反して行動するので見ていて痛々しい。というか邪魔しかしていない。あちこちで紹介されていたので見に来ましたが今のところ出だしは損しているかと…
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