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コンクリートジャングルオブハザード ~ゾンビ世界で遊びましょう  作者: バッド
10章 体験牧場を楽しもう

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124話 コミュニティに紛れ込む謎なるゲーム少女

 そもそも奥多摩に来たのは小河内ダムの様子を見ようと考えたためである。依頼に書いてある内容を見て遥は気づいたのだ。発電所とダムはどの地域を解放してもクリアとなる可能性があることに。


 依頼内容が発電所ダンジョンをクリアせよと、ダムエリアを解放せよ、だったのだ。


 他の依頼と違い、解釈によれば目的地がどこでも良い可能性がある内容だったので、遥は都内にあるダムをクリアしようと考えたのである。そのため、隠蔽をフルに使い、こっそりと奥多摩に偵察に行ったのだ。


 まぁ、実際に見に行って、ダムの堅牢ぶりがわかりうんざりしたのだが。


 ここのダムエリアはダムの真ん中におかしな城が建っていた。天守閣付きの純和風のお城で、城の名前が書いてある色とりどりの幟が城のあちこちから掲げられており、観光名所みたいなお城であった。


 しかし、観光名所みたいなおかしな城であるが、それは見た目だけである。ダムは城壁となり、トーチカと巨大要塞砲が多数配置され、守備するのはキングモンキーに似た強化されていると思わしき猿たちが多数と水の中にもスカイ潜水艦らしきものが潜んでいるのも水に映る影がみえたので分かった。


 スカイ潜水艦の強化型とかがはいっているのだろうと、すぐわかる布陣であった。時代考証無用な近代兵器などで防御している布陣である。


 それ以外にも尻尾が生えている装甲車やらムカデみたいな脚の生えている戦車やら、口がある戦闘ヘリやらとたくさんそろっていたのだ。近隣周辺のミュータントがやけに弱いので、かき集めたのであろう。


 どうやら戦国武者たちとか戦国時代の古臭い兵力で自軍の戦力を揃えようとは考えていない模様。


 戦略シミュレーションゲームで一番面倒な敵である。巨大な城、豊富な兵、有能な武将がいるのに、周りへの侵略意識が薄く、自分の城を守る君主タイプ。城塞度をMAXまで上げて、兵も限界までそろえているのに、周りに攻めに行かないので、戦う時は大体力押しになるのだ。そして恐ろしく被害がでるのだ。小田原城をもつ君主がそういうタイプであった。名前が似てるから、そんなことになったのかわからないが面倒なのは間違いない。


 以前に倒した幽鬼一族と同じことをしているが、地力が違った。こちらの方が何十倍も面倒である。零細大名と大大名の悲しい格差である。幽鬼一族が決戦をしかけたら、小河内軍はその兵力の一欠片も使わずに圧勝できるであろう。戦略シミュレーションゲームと同じ結果である。


 勝利をするのは難しいと考察して、行き詰った遥は面倒そうだから放置しようかと考えて帰ろうかと思った。


 そうして、テッテコと歩みを速め奥多摩から脱出しようかとしていた時に、気配感知のレベルを上げた影響で離れた山奥に生命体の反応があったのを感知した。


 まじかよ、まだ生き残っている人がいるのかと見に行ったのが、彼女らである。なんでこの人たち生きているの? もしかして小河内軍の奴隷か何か? と思い観察したところ、侵略意識が薄い小河内軍は軒並みこの周辺の敵を徴兵したので、弱いミュータントしかいないことが分かったのである。


 ほとんどがゾンビまたは小走りゾンビ、稀にレアモンスターみたいにグールがいる状況。その中で懸命に生き残っている彼女らを見つけて、崩壊後のサバイバルが面白そうだからという理由で、このコミュニティに加わったゲーム少女であった。無論、ハッピーエンドが好きな遥なので、密かに助けるつもりである。


               ◇


 昨夜遅くに雪がまた降ったのであろう。ドサドサと屋根から落ちる雪の音がする。


 冬の柔らかな日差しが窓から入ってきて就寝していた人々はその日差しを受けて朝となったことを知った。

 

 思い思いに布団を敷いて布団にくるまり雑魚寝している皆が起き始めてくる。


 自らの子供を宥めながら起こす母親や、元学生たちが暖かな毛布から這い出るように起きてきた。


 今日は久しぶりにゆっくりと寝れたので、皆寝ぼけまなこである。なぜなら灯油が大量に手に入ったのでストーブをつけっぱなしにできたので、部屋が暖かいままで寝られたのだ。


「おはよ~」「おはようございます」「はよ~」


 それぞれが朝の挨拶をしてぞろぞろと食堂へと移動する。


 起床した人々は段々意識を覚醒し始めながら、また缶詰かぁとうんざりする。


 だが、この状況である。自分たちは食べられるだけマシであることを知っているので不満は心の中に納める。


 水もガスも電気も使えなくなり、雪国のような雪の降り方だ。もう外で火を起こしてご飯を作るのも大変だと知っている。


 そもそも何を燃やして火をおこすというのか。木はすぐそばに生えているが、生木が燃えるわけはない。しかも雪の中なのだ。


 なので、皆は溜息をつきながら、これから先も冷たいご飯であることを我慢しながら食堂に入ると鼻にいい匂いが入ってきた。


「あれ、今日は何の缶詰? なんかいい匂いだね」


 一人の少女が食堂に漂うその匂いをクンクンと嗅いで、不思議に思い首を捻って今日の食事係に聞く。


 聞かれた食事係の数名はなぜか配膳の終わった食事を見ながら呆然としている。


「どうしたの? なんかあったの?」


 他の女性が困惑している食事係に聞いてみると、おずおずと配膳の終わっている食事を指さした。


「おぉ! 今日は御馳走だね!」


 テーブルには、白米と豆腐の味噌汁、ふんわりと焼けている甘い卵焼きに熱々に焼けている鯵の開きがおいてあった。


 それを見て不思議さが増す。どうやって作ったのだ? ご飯も味噌汁もインスタントなのだろうか? それでも水を沸かすだけでも大変だと知っている。今日の食事係は随分と頑張ったなと思う。


 大変だったでしょう? お疲れさまと声をかけようとしたところ、思わぬ返事が返ってきた。


「あの、私達が起きてきたら、今日はもうご飯ができていたんです」


 おどおどと答える食事係。そして厨房を指さすとゲーム少女が割烹着を着て立っていた。


 眠そうな目でこちらを見ているが、口元が得意そうに微笑んでいるのが愛らしい。


「やっぱり新入りが食事係をするものだと思いましたので、皆さんの分を作らせていただきました」


 そう言って、かすかに平坦な胸をはって答える遥。新入りが食事当番は当たり前だよねと映画や小説で学んでいるゲーム少女である。なので食事係として頑張ったのだ。


 皆、ゲーム少女の言うことを聞いて、まじまじとテーブルの上の料理を見て、それからまたゲーム少女を見るという作業を繰り返している。


「どうやって、この料理を作ったのか、皆が不思議に思っているのさ。レキ、あんたどうやって作ったんだい?」

 

 疑問どころか不思議な現象を見るように人々は感じているのを代表して、早苗が同じように不思議な表情をしながら厨房のカウンター越しに遥に聞いてきた。


「はい、合宿所だから大きい炊飯器があったので、ご飯はそれで炊きました。お味噌汁も大人数用の大きい寸胴鍋がありましたのでそれで作りました。後は普通に焼いて作りましたよ」


 ニコニコと微笑み、何も間違いがないという表情で答える遥である。


「電気は使えなかったよね? どうやったんだい?」


 ん? という不思議な表情になり首を傾げて答える遥。


「倉庫に発電機がありましたよ。段ボール箱に入っていました」


 えっ! という驚いた表情になる早苗。発電機がないかと思い倉庫を調べたが何もなかったのだ。見逃していたのかと口元を後悔できつく結ぶ。見つけていれば、これまで寒い思いをしなくて済んだのである。


「でも、味噌汁とかはどうしたんだい? 外で火を起こしたのかい?」


 かなりの労働力だし、そんなに燃料はなかったはずなのでどうやったのか疑問に思ったのだ。


「プロパンガスボンベが倉庫にありましたよ。段ボール箱に入っていました」


 それも見逃していたのかと、早苗は後悔で顔を俯ける。リーダー失格だねと自分を責めながら、それでも続けて遥に質問をする。


「お米とかはどこにあったんだい? 醤油やみそもなかったと思うけど」


「お米も醤油も味噌も倉庫にありましたよ。段ボール箱に入っていました」


 ん? と顔を上げて続けて話しかける早苗。なにか会話が変であることに気づいた。調味料とかも一生懸命に探した覚えがあるからだ。


「鯵の開きはどこにあったんだい?」


「倉庫にありましたよ。段ボール箱に入っていました」


 ジト目になり、遥との距離を詰めながら、まだまだ問いかける。どうやら自分のリーダーの素質の無さではないかもしれないと思い始める。


「卵はどこにあったんだい? 鶏はいるけど、今は餌がないから卵を産まないはずだけど」


「そ」


「倉庫にありましたよ。段ボール箱に入っていました、だろ! 無いから! そんなに見逃さないし、なんで卵が段ボール箱に入っているんだよ。とっくに腐っているだろ! というか他のも段ボール箱にそんなに入っていたら気づくから。余裕で気づくから!」


 遂にそのおかしな会話に耐えられなくなり、カウンターをバンバン叩きながら、内容のおかしさにツッコミを入れる早苗。


「とにかく段ボール箱に入っていたんです。凄いですね、段ボール箱。さすがは様々な戦場で役に立つアイテムですね」


 両拳をお腹辺りに持ち上げてぎゅっと握り、あざとく可愛さを見せながら返答する遥。段ボール箱絶対最強説を推し進める様子である。ちょっと額に冷や汗をかいているが。卵は少し無理があったかと思ったのだ。他も色々無理があると思われるが、倉庫にあるのを見逃した説を推すゲーム少女。


 見ると、周りの皆もジト目になりゲーム少女を見ていた。静寂の中、重いプレッシャーが遥に襲い掛かってくる。


 しかし、精神力のステータスは高いゲーム少女である。それぐらいでは負けないのである。誤魔化す一手を繰り出してみる。


「せっかくの温かいご飯が冷めちゃいますよ?」


 小首を傾げて、食堂にいる皆を見渡してそう言うゲーム少女の言葉で、問い詰めるのは後でいいやと、今は久しぶりの温かいご飯を食べようと席につく人々であった。



 皆が食べ終わり、一休みしている間に、ここの状況を教えてもらうことにした遥。


 これまではざっくりとした説明以外はあんまり状況を聞いていなかったのである。


 たまにはこんなこともあるよねと、反省しないゲーム少女。いつも状況を聞いていないから困るのに反省しないので成長力はゼロである。


 早苗が腕を組み、椅子の背もたれによりかかり、このおかしな子供に牧場の状況を教えてくれた。


「まず、ここはわくわくふれあい牧場だよ。体験合宿もできるようになっていてね。私は合宿の手伝いのバイト。バイトは5人。後は体験合宿の女学生30名と、他のツアーで体験合宿にきた母親と子供の66名かな。幸いというかなんというか。死んだのは、このパニック時に街の様子を見てくると言って帰ってこなかった牧場主とバイトの男性たちさ。見に行って帰ってきた人はいなかったよ」


 なるほどねぇと、納得する。どうして女子供たちのみだったのか不思議であったのだ。


「あとは乳牛が120頭に鶏が300羽、山羊が4頭だね。それも餌が無いから厳しい状況だけど……」


 話している間に、ばたんと食堂のドアが大きな音と共に開けられた。焦った表情の女性が入ってくるなり叫ぶ。


「十勝リーダー。大変です。牛や鶏、山羊の飼料が見知らぬ倉庫に満タンに入っています!」


 そのまま早苗に視線を向けて、身振り手振りで焦っていることをアピールしながら続ける。


「昨日はなかったはずの倉庫がいつの間にか建っていたんです。おかしいと思って中を見ると飼料が大量に入っていたんです」


 あぁ、とそれを聞いた早苗は何か諦めた表情で溜息をつく。


「大丈夫だ。きっと段ボール箱に入っていた倉庫を見逃していたんだよ」


 入るなり焦りながら叫んだ女性にそう話しかける早苗。そしてゆっくりとジト目を遥に向けた。


「きっと倉庫を見逃していたんですよ、恐らくは。ほら、同じ人が調べると同じ個所を見逃すというじゃないですか」


 どう考えても無理があるだろう内容を誤魔化すために飄々と答えるゲーム少女であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 知力を大幅に向上させるスキルは無いのか!?
[一言] >段ボール箱に入っていた倉庫 倉庫を包めるほどの段ボール箱はいったいどこにいったのか
[一言] 畜産は大事。 でも子供が育てた豚を殺して見せて教育とか言ってる連中ほんとやべー!
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