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1話 酔ったおっさん久しぶりにゲームを買う

 20時も過ぎたある都内の中古ゲーム店で酔ったおっさんがゲームを探していた。


 疲れた感じのするスーツがほどよい感じにくたびれており、多少メタボにもなっているほろ酔いのおっさんだ。


 おっさんは自分が持っているプレイシマショウ5のゲームソフトを探していた。


「今どきのゲームはFPSやネット接続前提が多いなぁ」


 自分の好みのゲームを探しているおっさんの名は朝倉遥。ちょっと将来が心配な独身のおっさんである。棚の中古品を見るがどうも心の琴線に触れるやつがないなぁと移動を繰り返していた。


 今日は久しぶりの4連休最初の日である遥は会社の同僚と久しぶりに競馬に行き、大穴を当てて20万ほどの手持ちがあった。レース終了後、同僚と飲んだ帰りである。16時から飲んでいたので結構酔いもまわっていた。


 久しぶりの4連休だ。ゲームでも買って帰るかねぇ。と帰り道に中古ゲーム店を見て、思い立ったのだった。


 しかし、最近のゲームはFPSやネット接続前提のゲームが多く、いまいち買ってまでやる気が起きない。どうせゲームをやるのも連休中とか気が向いたら次の休みでとかなので、のんびりとオフラインゲームがやりたいのだった。


「若いころはゲームを買ったら数日かけて即クリアしていたんだが──」


 と自分の若いころは……と思ったことに自分が歳を重ねた言い方だと気づき軽く苦笑する。


「もうおっさんだからなぁ」


 最近はゲームを買っても2、3か月かけてゆっくりとクリアをしていた。1週間に1度とか気が向いたときにやっていたのだ。昔のゲームに対する熱意はもうかなり薄れている。


「歳をとったんだなぁ」


 独身であることに老後のことを思い、少し恐怖する。小金を貯めており金銭の心配はしていないが家族がいないことには不安がある。


「まぁ、考えても仕方ない。今はゲームっと」


 軽く将来への現実逃避を行い、ゲームを探すこととする。


「そういえば前に買ったバイオなハザード的リメイク4は面白かったな……」


 久しぶりにはまって、ゲーム難易度最高でネコミミを手に入れるまで頑張ってしまったことを思いだす。全ては課金が解決することもついでに思い出し苦笑してしまう。


「あれと同じ系統のゲームでも探すか」


 棚に置いてあるゲームを手に取りパッケージを見ていく。事前に調べて買いに来たわけではないので、パッケージと名前から判断するしかない。次々とみていくうちに面白そうなタイトルを見つける。


「コンクリートジャングルオブハザード? パクリっぽいな」


 まぁ、パクリでもゾンビゲームではありそうだ。遥はそう思いパッケージ裏を見ていく。


「何々? 世界が崩壊した中で君は生き残れるか? 己のスキルを用い、ミュータントと戦え! 資材を集め拠点を作り生き残れ! サバイバルホラースペースオペラファンタジーRPG? すごいな、聞いたことないジャンルだぞ」


 ちょっと笑ってしまう。裏面には銃やら超能力? 魔法? やらを用いてゾンビとかでかい怪物と戦う姿が表記されている。開発会社はなぜこんな長いジャンル名を創造したのか?


 この長いジャンル名だけで────


「くそげーのにおいがするな」


 危険な香りがするゲームの価格を見ると980円と書いてある。


「うーん。まぁ、いっか」


 くそげーならそのまま積みゲーとすれば良いのだ。あぶく銭があるのであまり気にせずにそのゲームを手に取ってカウンターに向かったのだった。


           ◇


「ただいま~っと」


 誰もいない2階建ての家に遥は帰宅してソファに座った。家族もおらず独身だが、掃除には気を付けているので別にごみが散らかっていたりはしない。


 小奇麗なリビングでTVとゲームをつける。うぃ~んという音とともに久しぶりにゲームの起動音が聞こえる。冷蔵庫からペットボトルのお茶を出しながら、モニタを見る。


 ホーム画面が表示されたので、ゲームを投入する。そして遥は起動せずにまずはストアでこのゲームのDLCコンテンツを探し始めた。まずは課金強化が最近の流れだ。


「おっさんには金より時間のほうが貴重なのだよ」


 ゲーム名を検索したところ、いくつかDLCが表記されたのを確認する。もうおっさんなのだ、ゲームをやるにしてもレベル上げとか資金稼ぎとかに時間をかけるのはもったいない。楽にできるなら楽にしたいのだ。


 DLCを見ていくと「取得経験値3倍300円」「レベルアップ時ポイント取得3倍300円」「ドロップアイテム取得3倍300円」「レアアイテムドロップ率3倍300円」とある。


「ここら辺は買いだな」


 ぽちぽちと購入ボタンを押して次を見ていく。


 「初期ロケットスタート補助セット300円」「状態異常無効300円」「拠点聖域化300円」「アイテムポーチ最大拡張、重量無効300円」と次の表示されたものも購入していく。


 おっさんパワーだ。大人買いなのだ。そこに容赦はない。すでに買ったゲーム代を超えているが、少額なので気にしないで次々と買っていく。


 ………が、最後に表記された項目を見てその手を止めてしまう。


「自動蘇生※使用可能キャラが死んでも24時間後に拠点に蘇生し使用できます。死亡時の装備は全て引き継がれます。但し使用キャラがすべて死んでいる場合は蘇生不可。5000円」


 と表記されている。


「5000円! 嘘だろ、普通のサポートコンテンツでこの金額はないだろ」


 購入を止めて、遥は考える。


「なんでこんなに高いんだ?」


 買ったゲームの説明書を読むが、最近のゲームは説明書に詳細は書いてない。いいとこコントローラのボタンの機能だけで、詳細はWEBで見てくださいという感じだ。


 このゲームもそれらと同じでコントローラの機能すら書いてなかった。


 そして遥は説明書は読まない派だった。困ったら見るというスタイルだ。


 以前それをやって強力なスキルを使わずにクリアして、クリア後攻略サイトで初めてその存在を知ったみたいなこともやっていたが反省はしていない。


 今は説明書を読まずとも優秀なチュートリアルがあるのだ。それをきっちりとやっていれば問題はないということもある。


 説明書を読まずに遥は今までのゲーム経験から考える。


「うーん、サバイバルと書いてあるからキャラが死んだらロストするのか……まじかよ……」


 ロストすればセーブデータをロードすれば大丈夫だと思うが、オートセーブの場合はそのままロスト時点でセーブされてしまう可能性がある。


「そういうのは嫌なんだよなぁ」


 遥はキャラがロスト系のゲーム仕様が嫌いだ。まぁ、好きな人間もいないと思うが緊張感を持たせるためにこのような仕様であるゲームはたまにある。


「しゃぁない、買うか……」


 あぶく銭パワーのおかげでいつもは絶対に買わないであろうコンテンツも購入する。なにせ諭吉はまだまだある。懐は暖かいのだ。


「これでくそげーなら泣くな」


 苦笑をしながら、結局すべてのコンテンツを買った遥はゲームを起動する。インストール中という画面が出てきたので、その間風呂に入るのであった。インストールは容量が大きいと数十分かかるからである。


「インストールは終わっているか」


 少しして風呂から出てさっぱりした遥はゲームがOP画面のままであることを確認しスタートボタンを押した。画面が切り替わり、キャラ作成画面となる。


「キャラ作成からできるのかぁ、洋ゲーぽいなぁ」


 画面に表示されたのは面倒くさいほどに多い一覧だ。顔形はもちろん、背丈や性別までが決められるようだ。


「キャラ作成ができるってことは、オープンワールドかな」


 最近の流行りである、どこにでもいけてなんでもできる、を売りにするオープンワールド仕様の時はキャラ作成ができることが多い。


「性別は女にして、髪はショート、クールで可愛い顔で、背丈はちびっこで」


 ぽんぽんと遥はキャラを作成していく、洋ゲーでも最近はかわいいキャラが作れることが多い。自分の好みのキャラを作っていく。オフラインゲームであるし、女性でも別に気にしない。遥はロリコンというわけではない。

 

 可愛い2次元キャラが好きな傾向にある。それにゲームをやっていて女性キャラを選べるのに、なぜむさくるしい男キャラを選ばないといけないのだ。ネットゲームなら男キャラを作るが、オフラインゲームである。キャラを愛でながらゲームをやりたい。


 エロかわいい装備とかあると、特に嬉しい。そういえば水着コンテンツはDLCになかったと残念に思う。


「思った以上に可愛くできたな」


 出来上がったキャラを見て、予想以上に可愛くできたので自分で作ったにもかかわらず驚く。


 いつもと同じくらいに、なんとなく遠めに見たら可愛いんじゃね? レベルの適当さで作ったにもかかわらず、小柄で可愛いキャラが出来上がったのだ。


 黒髪、黒目のショート、12歳ぐらいに見える、おっさんと一緒にいたら、娘さんですか? と怪しまれるレベルの可愛さである。


「いいね、いいね」


 喜んでうまくできたキャラの名前をつける。


「朝倉レキ、と」


 可愛くできたので自分と同じ苗字のキャラにする。会社の同僚にばれたら、羞恥のため数日間は休暇を取り、出社時にそんなことは記憶にございません。すべて忘れましたというおっさんな顔をしないといけないレベルだ。


 次にパラメーターシートが表記される。


 筋力、体力、器用度、超能力、精神力、と表記されており、全て10と数字はなっている。


「ポイントは10とDLCのボーナスポイント100で合わせて110か、多分、初期スタートなんちゃらでついたんだろ」


 各項目を見ていくと内容はこうなっていた。


筋力:攻撃力、敏捷力、持ち運べる重量。

体力:HP及びスタミナ量。

器用度:攻撃命中率、クラフト時の成功率、クリティカル率。

超能力:超能力の威力、ESP量。

精神力:超能力耐性、精神抵抗値。


 と書いてあった。


 重量値が横の隅に表記されていたので見ると制限重量10Kgと書いてある。


「あぁ~。洋ゲーぽいな」


 洋ゲーはリアルに作るために持てる重量にもステータスやスキルで制限をかけている時がある。


「10kgって、持てなさすぎじゃね?」


 装備重量と、荷物全てに重量は発生するだろう。先ほど買ったDLCで荷物は大丈夫そうだが。


「10Kgだと重装備ができないだろ」


 試しに筋力に1を足してみると制限重量が20Kgになった。


「え! 1足しただけで10Kgも制限重量アップするのかよ」


 かなりリアルに作っているのだろうか? 確かに現実で筋力が上がれば、全体の筋力を使えるのだ、足の踏み込みやら何やらで制限重量もアップするだろう。とは言ってもゲーム的に10Kgと切りの良いところでアップしている。それでも1アップで10kgは想定外だった。


「うーん、1違うだけでかなり変わるなぁ。なら平均で取らないと詰むかもしれん」


 ボーナスポイントがない場合は10なのだ。それを考えてすべての項目を20にする。制限重量以外は数字表記がないので、どう変わったのかわからない。


「で、余った60は、器用度と超能力にふるか」


 器用度、超能力を50ずつにして確定ボタンを押下する。本当にそのステータスでよいですか? と表示されたので、OKを押下すると次の画面が出てくる。


「次はスキル設定か」


 見ると基本1とボーナスポイント10とある。そして既に獲得されているスキルがあった。


「DLCパワーだねぇ」


 見ると、『ボーナススキル:体術LV3、気配感知LV3、念動LV1、料理LV1、装備作成LV1、調合LV1』とあった。スタートを楽にできるスキルなのだろう。至れり尽くせりである。


 次にスキル一覧を表示させる。


「なんじゃ、こりゃ!」


 良いとこ50種ぐらいであろうと考えて一覧を開いたところ、7000種と最初のスキルが書いてあった。


「7千もスキルの種類あるの! うへぇ」


 うんざりしながら、見ると検索用コマンドもある。恐らく名前を入れれば部分一致されたスキルがでるのであろう。


「DLC買っていないと、しょぼいスキルを最初にとっていきなり詰みそうだな」


しかもDLCを買っていないと基本スキルポイントは1なのである。スキルを選択したところ、どうやらLV=ポイントみたいである。


 基本の1だけなら、LV1のスキルを何か取って終わりである。ボーナスを含めても11しかないのである。


「これは迷うな、何にするか」


 ちらっと攻略サイトを見るか考える。最初に使えないスキルを取って詰むのは避けたい。PCを立ち上げて検索をかける。おっさんは楽にできる場合は楽にできる方を選ぶのである。


 ────が、検索にヒットしない。


 いや、ヒットはするのだが、名前がポピュラーなコンクリートジャングルとかを使用しているせいだろう。普通に都会はコンクリートジャングルと呼ばれ、とかハザード系の他のゲームがヒットして、探したいこのゲームの攻略サイトがでてこない。


「まぁ、980円だしなぁ」


 くそげーなら、攻略サイトも過疎化が激しいだろう。いつ発売されたかもよくわからない。


「仕方ない」


 サイトを探すのを諦めて、ありふれており、役に立ちそうなスキルを取得することにする。


 『棒術LV1』(鉄パイプとかがあるとみたため)、『短剣術LV1』(最初に手に入りそうな武器のため)『鍵解除LV1』、『罠解除LV1』、『電子操作LV2』、『治癒術LV2』と取ってみた。


 鍵、罠解除や電子操作はなんちゃらアウトという近未来ゲームでそれと同じようなスキルがあると金庫や扉を開けられたりして有利にゲームが進められたからである。治癒は言うまでもなく、回復アイテムの使用を抑えるためである。遥はエリクサーや救急スプレー、マグナムをクリアするまで使わない節約派なのである。


 別名、ケチとも言う。


 できたキャラはこうなった。


朝倉 レキ

筋力:20

体力:20

器用度:50

超能力:50

精神力:20

スキル:体術LV3、気配感知LV3、念動LV1、料理LV1、装備作成LV1、調合LV1、棒術LV1、

短剣術LV1、鍵解除LV1、罠解除LV1、電子操作LV2、治癒術LV2


 確定ボタンを押下したところ、最後に装備が表示された。


装備アイテム:高性能ジャージ防御力5 

現在総重量0.1kg

アイテムポーチ(最大拡張済み、重量無効)

10㍍ロープ、10日分の水、レーション、救急セット1式 

現在荷物4/99 


「リアルな作りっぽいなぁ……」


 装備もそうだが、持っているアイテムの内容に苦笑してしまう。この内容なら飢え、渇きなどの項目もあるのだろう。


「まぁ、いいか」


 続いて保存ボタンがあるので押下する。


 ゲームを始めますか?と表記されたので──


 キャラ作成で疲れ切ったので、遥はゲームをやめて寝るのであった。

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[良い点] 良いですね、文章は読みやすいですし、ゾンビは大好物です。応援してます!
[一言] この章をありがとう,たのしかった。
[良い点] リメイクされてるのに気がつくの遅れました、漫画化!キャラのイメージとか最近は生成して渡せば作者と絵師のズレが無くなるらしいですし理想のレキをカスタムできますね! [気になる点] バイオな4…
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