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6. 進め!ミナト少年

 無事に高等部へ進学でき、無事に入寮することができた。


 フェリクスと同じ邸とはいえ、住まいは寮扱いとなった。敷地の隅にある元々物置小屋だったところが私の部屋で、小さな窓があるだけましのこじんまりした小屋。

 あとは、厨房、洗濯室、洗面室、お手洗い、浴室が、お邸で私が出入り許可されているところ。だから他の部屋は知らない。


 ちなみに食事は厨房で済ませている。寮の食堂がない代わりに食材使い放題なので作りたい放題なのだ。使用人の人たちがいない隙を狙って、お好み焼きもどきとか、餃子もどきとかを作っては食べていた。


 使用人は、本邸から通いで来るだけで、常駐している人はいない。フェリクスが仕事で城に泊まり込むことが多いから、ここではさほど世話が必要ないのである。


 王族にしては質素と評されているが、私には実に雅な生活であった。


 入浴前後に使用人がいないことを確認しさえすれば、私の男装がばれることもない。むしろ個室があてがわれている分、中等部の寮より楽で、かなり自由にやらせてもらっている。

 それに、週3で城の門番のバイトも始めて、なかなか高校生っぽい青春時代を得られていると思う。


 進学後の生活でも、男装女子あるあるドキワクな展開は一切なかった。


 心配なのは高等部の勉強だけだ。中等部とは全然違う、意識高い系の勉強を頑張るのだ。

 休日は勉強に精を出し、夕方から夜は門番の交代要員で短時間バイト。順調な高校生活を送った。


 ********************************


 魔物を殺すことに抵抗がない私は、準備で武器を仕込む過程が一番わくわくする。特に好きだった授業は、森で過ごす野営訓練だった。食料の動物を捌くのも慣れたし、薬草の種類も結構覚えたし、魔物との実戦経験が積めたし、班別でも単独でもクリアする自信がある。

 中等部はなかなかにサバイバルだった。


 高等部はというと、外国語や歴史などの一般教養はもちろんのこと、魔術式学や戦術学や軍制学といったワンランク上の内容。面白いからいいのだけれど、私は士官を目指しているわけではないので、あまり為にはならない。


 とはいえ、勉強は好きだし、考査ではきちんと上位をキープし続けている。一年半は絶対に退学したくない。

 負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、特待生であり続けること、それがいちばん大事。


 夏の定期考査でも成績上位に入れた私は、その日ご機嫌で帰宅すると、珍しくフェリクスと邸宅の玄関先でばったり出会(でくわ)した。


「丁度よかった。おまえに確認したいことがある」

「はい。なんでしょう」

「急だが今週末、もう明日なんだが、時間とれるか」

「はい、大丈夫です。用事は勉強くらいです」


「よし。歌劇に行くぞ。同僚から『行けなくなった』と譲られてしまってな」


「……歌劇鑑賞、ですか。僕でよろしいのですか? (超行きたいんだけどー!)」

 突然の申し出に内心テンション爆上がりである。


「たまには息抜きもいいだろ。男同士で行くのもどうかと思うが……、まあボックス席だし気にするな」


「ありがとうございます。謹んでお誘いお受けいたします(ハイよろこんでー!)」


 男同士でも全く問題ないのがこの世界。男と男が仲睦まじく触れ合っても、何ら不思議ではないだろう。


(男装してて良かったあ!)


 ところで私は転生してから今まで王城内しか移動していない。街に行くのは初めてだ。果てに行ったときも王城内の転移魔法陣から行ったし、寮も学校もバイトも王城内。


 実は、市井に出るのは怖い。物価とか治安とか、何も知らないからだ。さながら電波○年のヒッチハイク企画に近い。


 フェリクスがいるからなんとかなる、と信じる。それに、楽しみの感情が大きすぎて、心配より歓喜で興奮冷めやらない。


 当日は興奮しすぎて朝早く目を覚ました。


 前日に焼いたパンの残りをつまんでから、休みなのに高等部の制服に着替える。歌劇に行く格好なんて分からないから、前世の知識で冠婚葬祭オールマイティーな、制服という無難な選択をした。念のため、今まで貯めたバイト代を持っていく。

 邸宅の玄関先にスタンバってフェリクスを待った。

読んでいただきありがとうございます。毎日更新頑張ります。


サブタイは電波少年をもじってます。進め!より進ぬ!の時代でした。

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