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3. 出番はなくてもいればいい

 主人公を追って魔石を取り返そうとする輩は、主人公に返り討ちにされる運命にある。いわば脇役の雑魚。その一人が私だ。


(ストーリーは絶対変えたくないよね! 魔石を取り返す振りはちゃんとして、あとは適当に住み着いてしまえば良いわ)


 なにしろアルカディア=理想郷。

 魔物は知を得、人と意志疎通ができ、皆が助け合って暮らし、土地は豊かで果実はたわわに実り、反対側には穏やかな海、野には花が咲き乱れ、山には温泉が湧き、清い川が流れる。

 私はそれを知っている。


 果ての地に名はない。だから誰にも尋ねることはできないし、地図にも載っていない。果てに一番近い転移魔法陣からスタートしたとはいえ、辿り着くのは容易ではなかった。

 出遭った魔物に何度も話しかけ、その度に魔物を殺した。そうして三日目の朝に出会った魔物にまた話しかける。


「すみません、ここはどこですか?」

「ん? 外から来たの? 珍しいね。この地に名はないよ」


 果てに到着したようだ。


 ********************************


 陛下の命により参上したことを王子殿下に挨拶し、力ずくで帰還を促すも、あっさりと負けた私は、王子の近所に居を構え、虎視眈々と機会を狙って……いる振りをして彼の肉体を鑑賞(ストーキング)する毎日を送った。


(良き良き♪)


 しばらくはこの安穏とした日々が続く。

 この地で出会った果ての少年とともに生活し、心を通わせていくハートフルな展開だ。バカ正直でクソ真面目で善人すぎる嫌いのある彼は、この地での暮らしに素直に適応していくのである。


 この物語は決してラブな内容ではない。むしろ友情やら家族愛やらの感動話である。


 ではなぜメンズラブの教本と称されるまでに至ったのか。それは、腐女子に対して包囲網を敷いたキャラクター設定にあった。


 王子殿下は聖人君子な王子様。悪く言えば愚直なトラブルメイカーだが、それは主役として当然あるべき姿である。学友たちもまたそれぞれ個性的で、ガサツだがいざというとき頼りになる男子や、甘いマスクなのに特殊魔法で王子と渡り合う男子や、気弱で優しすぎて王子の味方しちゃう男子や、王子をライバル視するクール系男子がいた。完璧すぎるゴレンジャーである。


 国王陛下は典型的なイケオジ。物腰柔らかい紳士でありつつ、睨みを効かす様はぞくりとする。王弟は二人いて、色気むんむんセクシー担当と、ワイルド系マイルドヤンキー。独立しているミドルたちは妙な威厳を備えており、枯れ専でない私ですら魅力的に感じた。


 果ての少年と第二王子は同世代。王子は女の子のように華奢で守ってあげたい系で、果ての少年は明るいムードメーカーでマイペース系。犯罪的ショタではなく良い塩梅の少年のため、薄い本に登場することも少なくなかった。匂わせに定評がある。


 このように、10代~40代が揃って包囲しているため、どこかで撃ち抜かれるのである。


 私は第一王子殿下推し。だったのだが、クライマックスに初めて登場したキャラクターに一目惚れした。ここにいれば、居続ければ、あのシーンに立ち会える。

 彼に相(まみ)える。


(それまではとにかく現状維持よ! 優先すべきは目立たず観察(ストーキング)することね!)


 転生後にありがちなストーリー改編をしないよう細心の注意を払い、理想郷を堪能するのだった。

面白かったら星5個ください!

面白くなかったら…応援で星1個でもください…。

毎日更新を目標にしておりますのでブクマもよろしくお願いします。

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