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必死に考え、ペンを動かす。少しでも多く問題を解く。

一学期期末テスト。夏休み前の最後の学校行事。


  ♪〜♫〜♬〜


「そこまで。皆ペンを置いて。答案用紙は後ろから回収して」


最後のテストが終わり、進藤(しんどう)先生の掛け声で答案用紙を順に前に回す。これで夏休みに入ることができる。チラリと栞里を見ると安堵のため息を吐いている。手応えがあったのだろう。安心して誘うことができそうだ。


「弘〜 どうだった? 俺もう駄目だわ」


「まあ、悪くはないかな」


(みちる)の嘆きに余裕を持って応えておく。栞里のことばかり考えていて結構危ない問題があったが、平均以上は取れているだろう。


「とか言ってお前、前回の中間ちょっと落ちてたじゃねえか」


恭弥(きょうや)が茶化しに来る。それを言われると弱い。実際に順位が落ちたときは焦った。まだ下がるのは早いと期末に向けて智久(ともひさ)と勉強したおかげて今回は少し盛り返したと思うんだけど。


「それな、意外と赤点だったりして」


「そういえば神崎(かんざき)はどうよ? 前回結構良かっただろ」


恭弥が(さき)に話を振る。


「今回も結構良い感じ」


人の関係が変わっても時間は過ぎていく。毎日会って、毎日仲良く話をする。皆に心配をかけないように。告白してくれた咲に恥をかかせないように。

俺は咲とこれまで通り友達として接し、咲もまた、俺に友達として接してくれている。

俺にとって咲は友達で、それ以上には見られない。あの時しっかりと伝え、咲を泣かせてしまったが今の状態に落ち着いている。咲はどう思っているのかはわからないが、俺はこのまま友達として最後までいたいと思う。


  ♪〜♫〜♬〜


放課後、今日まで部活のない龍と栞里に声をかけて誘う。


「もうすぐ夏休みだろ? 皆で海に行こうぜ」


「海か、良いじゃん。予定空けておくぜ」


龍が返事をしたところで教室にいる充や恭弥も続いて、


「三島さんも来んの? 絶対行くわ」


「良いんじゃないか? 他に行きたいやつ〜」


恭弥が行きたいやつ、と手を上げたところかなりの男子が、女子もそこそこ手を上げた。


「よ〜し、夏休みは予定が合うやつ皆で海に行くぞ〜」


「「お〜う」」


最後に音頭をとって手を振り上げると皆も乗って手を振り上げてくれた。栞里は皆の雰囲気に少し気後れしながらも、最後に手を上げてくれた。


  ♪〜♫〜♬〜


栞里はあまり大勢で動くのが好きではない。栞里は2年どころか他の学年にまで知られているほどの人気者だが、友達はそこまで多いほうではない。仲の良い友達と言ったら学年では数人程度、学校全体で見ても十数人くらいだろう。男子達や悪意を持って栞里に近づくやつは俺や龍が防いでいるというのもあるが、本人がそういうのを避けているのが1番大きい。周囲の流れに乗りつつ危険なところではしっかり回避していく。

だからこそ、この話に栞里は周囲に合わせて参加せざるをえない。俺や龍が海に行くと言えば、今のクラスなら半分程は行ってもいいくらいの気持ちに持っていけると踏んでいた。予め龍と恭弥には海に行くと言った時に皆で行けるよう、皆の気持ちを盛り上げてくれと頼んであり、流れを作れば栞里はその流れに乗ると確信していた。


「じゃあ当日は9時に駅前に集合で」


海に行くと誘った翌日、1限目が終った休憩時間に皆の空いている日を確認して段取りを決める。その後昼休憩に入ってから龍と恭弥にこっそりと礼を言いに行く。


「ありがとな2人とも。お陰で話を纏めることができたよ」


「良いってことよ。栞里との仲を進展させるチャンスなんだろ。協力するって」


龍は俺が栞里が好きだと伝えてから本当に俺に協力してくれている。登校中も度々俺と栞里に話題を振って自分は相槌だけで一歩引いたところにいるし、放課後も男女で別れているといっても同じテニス部ということで栞里の予定を伝えてくれる。休日は俺は充たちと遊ぶからお前は栞里を誘ってデートでもしてこいと言い、遊びにばかり行って俺と栞里との時間を作ってくれたり。まあ、これは栞里の予定が空いてればの話だが。

龍の協力もあって休日も栞里と遊ぶ時間がとれたことは大きく、何度か2人だけで遊びに行ったりもしている。ただ俺のなかではデートだと意識し、仲を進展させたいところなんだが、栞里はかなりガードが固い。人混みが苦手なはずなのに、出かけても人が大勢いるところや、お母さんが心配するからと日が暮れる前に必ず帰るなど、2人っきりになれる状況を避けられているし、未だに手をつないだこともない。


「おう、弘が三島さん狙いなのはなんとなくわかってたしな。友達の恋路はちゃんと応援する」


恭弥は普通にバレた。遊んでいる時に、栞里のこと好きなんだろって言われてドキッとした。幸い恭弥は1組の渡辺(わたなべ)さんに気があるということで、お互いに協力するという条件で協力してもらっている。


「ちゃんと2人っきりの状況にしてやるからな。決めてこいよ」


「うるさい充はこっちで面倒みてやるから、頑張ってこい」


「ありがとう。必ずチャンスを活かしてみせるよ」


改めて2人に礼を言う。なかなか進展しないままだったが、この機に栞里との仲を一気に進めてやる。


  ♪〜♫〜♬〜


期末テストの結果が発表され、何とか上位に浮上することができた。勉強で今回助けてもらった智久に礼を兼ねて近所のファミレスでご馳走し、最後にこれからも頼むとまた礼を言って解散した。

終業式が終われば夏休みだ。夏休み中にどこまで栞里と仲を進展させれるのか、いや、進展させるためにどうするのかを考える。良い考えがないか龍に連絡する。

最初龍は隠しているだけで栞里のことを狙っているんじゃないかと疑ってたが、ここまで協力してくれているということは本当に違うんだろう。純粋に友達として助けてくれる龍にはいつか疑っていた、悪かったと謝ろう。龍に何かをしたわけじゃないけど、親友としてのけじめを付けたい。

電話をかけても繋がらない。後でまたかけよう。そう思い帰り道を歩いていると遠目に手をつないでいて歩く2人組が見えた。


(えっ?)


思わず足を止める。何も考えられずただ目の前の光景が信じられなかった。血が凍る、とはこのことだろう。あの栞里が男と手をつなぐ。その相手が龍とはいえ、栞里が男と触れ合っていることが信じられなかった。龍もなんで栞里と手をつないでいるんだ。俺に協力してくれているんじゃなかったのか。

もしかしてもう日が暮れているから栞里を守るために手をつないでいるのではないか。龍に電話をかける。龍は着信に気付いた様子でスマホの画面を見て、そのままスマホをポケットに入れた。


  ♪〜♫〜♬〜


どう帰ってきたのか覚えてない。部屋のベッドに腰掛けさっきの光景を振り返る。なぜ2人でいるのか。なぜ手をつないでいているのか。なぜ龍は電話に出なかったのか。なぜ、なぜ。わからない。わかりたくない。

友達じゃなかったのか。協力してくれるんじゃなかったのか。栞里が好きならなんで協力するって言ったんだ。なんで今まで手伝ってくれたんだ。もしかして、嘲笑っていたのか。栞里が俺を好きになるはずがないと。自分に勝てるはずがないと。

ベッドに拳を振り下ろす。何度も、何度も叩きつける。中のスプリングがクッションになって痛みはないがギシギシと不快な音がする。

親友だと思ってたのに。俺は勝てないのか。栞里を手に入れられないのか。諦めるしかないのか。

何度も自問自答した。諦められるわけがないと。栞里と手をつないでいて歩く龍を思い出す。


(なんでお前が栞里と一緒に)


更に拳を強く握る。


(栞里は俺の、俺のものだぞっ)


もう一度腕を上げる。


(許せない)


叩きつける。


(親友だろうが関係ない)


栞里がお前のものだというのなら。


(絶対に奪ってやる)



ようやく話が進みます。

ですがすいません。手が追いつかず明日の更新は難しいと思います。なるべく早く投稿できるように頑張りますので、良ければ読んでもらえると嬉しいです。


最後に今更ではありますが、これを読んで下さっている方、評価をしてくれた方、本当にありがとうございます。

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