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前話最後読みづらいのでちょっと改行追加


僕は頭が良い方ではない。だから皆と大きな差が出ない1年生の時に皆からの評価を稼がなくてはならなかった。目立って、頼られて、たくさんの友達をつくり、支え合っていける関係を築く。一方的に支えてもらうのでは直ぐに破綻するから、僕も皆を支えるために頑張ってきた。


「行ってきます」


家を出ていつもの集合場所に向かう。既に2人とも集まっており、声をかける。


「おはよう2人とも」


「ういっ〜す」


「おはよう、(ひろ)くん」


「今年は皆同じクラスになれたね。今日からまた1年宜しく」


雑談しながら学校に向かう。校門に近づくにつれ、見慣れない子たちが緊張した面持ちで学校に入っていくのが見える。


「お〜お〜 新しいガキ共がやってきたな」


「私たちもあんな感じだったのかな」


1年が過ぎ、今日から2年生に上がる。新しい教室に入って挨拶をすると皆が返してくれる。

入学して直ぐに友達になった2人には本当に助けられた。考えても上手くいかないときは龍の勢い任せで解決することもあったし、栞里は人の機微がよく分かるのか人の困っていることをよく見つけてくれた。


「よう糸巻、今年もまた頼むな」


「龍〜 やっと俺らにも後輩ができるな。使えそうな1年を確保しに行こうぜ」


「三島さんが同じクラスとかテンション上がるわ〜」


目立つことで印象付け、皆と積極的に関わって来た。入学してからの1年が上手くいき、たくさんの友達をつくることができた。そして助け、助けられるを繰り返した結果、僕やよく一緒にいた龍はクラスでもかなりの人気を持つことになり、いわゆるクラスカーストの上位という認識を持たれるようになった。

クラスカーストの上位ということで一定の立ち位置を得ることができたので、この調子でいけば卒業していずれ大人になっても友達のままでいることができるのではないか。支え合う関係をしっかりと築くことができれば、きっと僕は生きていける。


  ♪〜♫〜♬〜


チャイムが鳴り席に着く。教室に入ってくる先生は、


「おはようございます皆さん。今年2組を担当する進藤(しんどう)です。担当は去年と同じ社会だからこれからも宜しく。」


進藤健二(しんどうけんじ)先生。長ったらしい授業と宿題の多さで生徒受けが良くない中年教師だ。槙島先生は違うクラスの担当なのだろうか。

2年ということもあり、ホームルームもささっと終った。2限目からもう授業が入っている。休憩時間に入り龍たちと話をしていると槙島先生じゃないことに不満を感じているようだ。


(みちる)は槙島先生が大好きだからな」


「はぁ? 違ぇし、浅沼のほうが(かおる)ちゃんのこと好きなんだろ」


「俺はそんなん興味ねぇよ。てか薫ちゃんとかどんだけ先生のことが好きなんだよ」


「それな、みっちーキモーい」


1年が過ぎて色々と変化はあったが1番変わったことは異性を強く意識するようになったことだろう。思春期を迎え、ふとした事で今まで友達だった相手に違う気持ちを持つようになる。


  ♪〜♫〜♬〜


放課後になり、龍たちに帰ろうと伝える。


「龍、栞里、今日はテニスないんだろう。帰ろうぜ」


「えっと、ごめんね。ちょっと今日は用があるから先に帰っていて」


栞里は用があるからと早足に教室を出ていってしまった。


「どうしたんだあいつ?」


「さあ?」


と、言いつつももしやという予感はある。

龍に付いて来るかと聞き、念の為行くと返ってきた。龍も予想はついているようだ。


栞里は図書室に入っていった。この時間だと普通に人がいるし、時間を潰すためだろうと当たりをつける。つけているのがバレないように龍には廊下で恭弥(きょうや)たちと雑談してもらい、僕は一旦校舎を出て外を回る。暫くして龍からスマホにメッセージが届き、校舎に戻る。


「この中?」


「3分くらい前に入っていった」


音楽室。今日はだれも利用しないし音も聞こえにくい。告白するならいい場所かもしれない。見つからないように階段の脇に隠れる。人がいたらアウトだなこれ。

少しして扉が開き、誰かが出てくる。階段を降りて行くのを脇から覗くと栞里だとわかる。こっそりと音楽室の扉を開き、中を覗くと拓真(たくま)が泣いていた。

扉をそっと閉め、学校を出る。


「マジか〜 拓真がな〜」


「そんな素振りは無かったと思うんだけどね〜」


「栞里も人気者だよな〜」


栞里は綺麗になった。いや、初めてあったときから可愛かったんだけど1年が経ってただ可愛いだけじゃなく綺麗になったというか目が離せなくなったというか。


「龍はどうなの? 1番栞里に近い男として」


「だから俺は別に栞里をそういう目で見てねえんだって。今はテニスが1番」


龍は栞里をそうは思っていないのか。そうか。


「栞里に近いのはお前もだろ。お前はどうなんだよ」


「僕は、どうなんだろう?凄く可愛いと思うけど、う〜ん」


「おっ、結構乗り気か? だったら応援するぞ、頑張れ」


「ははは、もしその時が来たら頼むよ」


いつもの道で別れて家に帰る。


(そんな目で見てない、ね)


ならなんで告白の出歯亀に付き合ったのか。念の為とはどういう意味なのか。栞里に何かがあった時に助けるためなのか、それとも誰かが栞里とそうならないためにということなのか。

もし龍が栞里を好きなら僕はどうするべきなのか。

何気ない日常のなかで栞里を異性として強く意識するようになった。栞里の一挙一動を目で追ってしまう。今どうしているのか、もしかして誰かと一緒にいるのではないかと不安で頭がいっぱいになる。

それに龍が本当に栞里に恋愛感情がなかったとして、栞里はどうだろうか。栞里が今まで誰かと付き合ったという話は聞かないが本当のところはわからないし、これからもそうだという保証はない。

今1番栞里に近い男は僕と龍だとして、栞里は僕を受け入れてくれるだろうか。いや、栞里を見てきたからわかる。栞里は間違いなく龍に好意を持っている。自覚はしてないかもしれないが、龍に向ける目が僕とは違う。いつかはその好意を龍にぶつけるかもしれない。多分龍はそれを受け入れるだろうから、そこで僕の恋は終わる。

僕はその失恋を受け入れられるだろうか。


(受け入れられるわけがない)


何度も自問し、何度も自答した変わらない答え。なら、動くしかない。龍は言葉の上だけとはいえ応援してくれるだろう。なら栞里が龍に告白する前に、


(僕が栞里をもらう)



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