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絶対に堕としてやる 〜邪魔をするなら親友でも容赦しない〜  作者: もふもふな何か
絶対に諦めない 〜これが俺の幸せだ〜
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投稿します。

もし弘和が諦めなかったら。

最初に、これはハッピーエンドにはなりません。


「5月から付き合ってたのに?」


「・・・」


思考が止まる。5月。5月って。


「学校が休みのときは凄かったよね。小母さん達が仕事でいない日とか栞姉えの家に朝から浅沼先輩が来てさ。朝から頑張ってたの?」


「なっ、何を言ってるのかな」


「私の家から栞姉えの家の前が見えるのは知ってるよね。弘和さんのところに行くのを覗いてたら浅沼先輩が来るんだもん。びっくりしちゃった」


「ねえ、待ってよ志保ちゃん。それは」


「そっからずっとだよね。夜に帰ってきたときは弘和さんとしてたのかな? そんな訳ないよね」


夜に帰ってた。いや、そんなはずはない。


「2人を見てたけど弘和さんはちゃんと夕方には栞姉えを家に返してたよね。そっから何処に行ってたの?」


「それは・・・」


「弘和さんと別れたいなら別れれば良かったのに。浅沼先輩のほうが好きなんでしょ?」


「違うの。これには訳があって」


「へ〜 そうなんだ。だってさ先輩。栞姉えがちゃんと説明してくれるってさ」


志保に話を振られる。


「えっ、先輩って、もしかして、そこに弘くんが居るのっ!?」


動揺したような声。今まで聞いているとは思わなかったんだろう。


「栞里」


呼び掛ける。


「ひ、弘くん。なんで志保ちゃんと一緒にいるの?」


「説明してくれないか? 志保は違うって言ってるぞ。あと今のこともだ。ずっと俺に隠れて龍と付き合ってたのか?」


栞里との会話。色んな情報が入っていて混乱している。


「えっと、違うの、これは、ちょっと複雑な事情があって」


「だから、それを説明してくれないか? 俺もちょっと頭が追い付かないんだ」


どうやって誤解を解くかを考えてた。志保が龍と協力して俺を嵌めたんだと思っていた。でも志保はそんなことはしていないと言った。信じられなかったが、栞里の方が俺を騙していると言い、今、それを証明するかのように俺が知らない栞里のことを教えてくれた。


「それは、ちょっと困るというか」


「説明出来ないの?」


「うん。ごめんなさい」


それに対して、栞里は何も言ってくれない。どんな経緯で龍と関係を持ったのか。


「そっか。なあ栞里。龍と別れる気はあるか?」


事情も説明せず、反論もしない栞里には、意味の無い質問かもしれない。


「それは・・・出来ないかな」


そうだろうな。なら、これは聞いておかないと。


「俺のこと、まだ好き?」


「・・・ごめんなさい」


「・・・」


これは、認めるしかないだろう。どうやら、俺は龍に栞里を寝取られてしまったらしい。


「じゃあ、俺のことは本当に嫌いになった? もう会いたくない? これから龍と生きていくの?」


志保のお蔭で俺の誤解は解けただろう。栞里も、もう自分が騙されたことに気付いている筈だ。それなのに、栞里は龍から離れる気はないと言う。俺にも好意はないと。


「ごめんなさい」


「ごめんじゃない。俺は聞いてるんだ、答えてくれよ」


「・・・」


「・・・答えろよっ!!」


「っ・・・」


栞里に怒鳴ったのは、これが始めてじゃないか。そんなことを頭の片隅に浮かべながら、俺は答えを求める。

本当にもう俺への気持ちがないのか。龍に寝取られてもう俺の事なんてどうでもいいと思っているのか。


「頼むよ、答えてくれ・・・」


もし、これで栞里からそうだよ、と言われることを考えると辛いが、ただ今は、栞里の本当の気持ちが知りたい。謝罪じゃない。栞里の言葉が聞きたい。


「・・・だって、無理だよ」


長い沈黙の後、栞里の声が聞こえた。


「志保ちゃんが弘くんに乱暴されてない、龍くんに助けを求めてない。志保ちゃんが言うんなら、間違いないんだと思う」


弱々しくも、栞里が俺に話し掛けてくれることに安堵する。まだ、なんとかなると思ってしまう。


「でも、聞いたでしょ? 私ね、ずっと龍くんと浮気してたんだよ? 弘くんに隠れて、龍くんとしてたんだよ」


でも栞里の言葉が、そんな俺の心に刺さってくる。


「・・・だから、もう無理だよ。弘くんだって、こんな女、嫌でしょ? 気持ち悪いよね?」


気持ち悪い。確かに栞里の言う通りだ。これから先、俺は栞里のなかで龍と比べられる。


「そうだ、志保ちゃんがいるじゃない。志保ちゃん、ずっと弘くんのことが好きだったんだよね? 弘くんが大好きで、大好きで。私なんかとは違って、きっと弘くんを裏切ったりしないよ?」


「栞姉え・・・」


「ねえ志保ちゃん、弘くんのこと、好きだよね? 志保ちゃん、可愛いし、弘くん大好きだし、きっとお似合いだよ」


栞里と志保の会話を聞きながら、思う。栞里と別れて、志保と付き合ったら。

多分、今よりは幸せになれると思う。もし栞里とやり直せても、常に裏で浮気してないか疑いながら生きていくことになる。きっともう、栞里とは真っ当な形での幸せは得られない。

俺じゃなくても、こんな状況になったら栞里とは別れるだろう。きっとそれは間違ってない筈だ。


「うん、そうだよ。絶対にそのほうが良い。私の事なんか忘れて、2人で幸せになったほうが良いって」


「・・・栞里」


「弘くん、志保ちゃんと幸せにね」


「・・・好きだよ」


「・・・えっ・・・」


龍と二股したことは許せない。もう無条件に栞里を信じることは出来ない。また裏切るのではないかと疑惑を持ち続ける。

だけど、


「許せないし、怒ってるし、信じられなくなった。でも、嫌いになったわけじゃない」


それで栞里を嫌いになったのかと言われれば、違うと言える。まだ好きなのかと言われれば、間違いなく好きだと言える。


「それでも、好きなんだ。俺は変わらず、栞里のことが好きなんだ」


「・・・どう、して」


「分からない。ただ好きなんだ。諦めたくない。龍に取られるのは我慢が出来ない」


許せないけど、嫌いになれない。裏切られても、諦められない。寝取られてしまっても、まだ、好きなんだ。


「わた、私、弘くんを裏切ったんだよ」


先までの弱々しい喋りではなく、熱の入った声で俺に言う。


「弘くんの家から帰った後も、龍くんの家に行っていっぱいしたんだ。弘くんは下手だって馬鹿にしながら、上手な龍くんにいっぱい気持ち良くしてもらってたの」


体が震える。胃の奥のほうが閉まって、気持ち悪さが込み上げてくる。


「部屋でもね、したことあるんだよ? 弘くんとはしたことがなかったけどね。このベッドにも、龍くんの匂いが付いているんだよ」


吐き気が限界に近い。


「本当に、龍くんといっぱい・・・ 私の部屋、龍くんだらけだ」


涙が零れてくる。志保が見ている前だけど抑えることが出来ない。


「・・・先輩・・・」


「だからね、もう私は龍くんのものなの。弘くんが入る余地なんて無いの。もう、私に関わらないでよ」


栞里からそんなことを言われる日が来るとは思わなかった。泣いて、吐きそうになって、拒絶される。


「お願いだから、もう、私のことなんて忘れてよぅ・・・」


泣いているのはこっちなのに、何故か栞里のほうが泣いているように感じる。


「・・・嫌だ」


色々な感情が混じったなか、絞り出すように言う。


「・・・」


電話が切られた。


「先輩、その、栞姉えのことは」


「ごめん志保、疑って。お蔭で誤解も解けたし、話も出来た。ありがとな」


本当に志保には迷惑を掛けた。


「い、いえ、それはいいんです。その、先輩は栞姉えと、えっと、やり直すつもりですか?」


「ああ、ちょっと気持ちが揺らいでたところがあったけど、話が出来て気持ちが固まった」


驚いてまた敬語になっている志保に俺の気持ちを伝える。確かに、栞里とのやり取りを聞いて、まだ好きだと言う俺はどこかおかしいんだろう。


「まだ諦めないんですか?」


「ああ」


「・・・実は私、栞姉えが私と先輩がお似合いだって言ったとき、嬉しかったんです。もしかしたら、これで先輩と付き合えるんじゃないかって。だから、先輩。私と」


「志保、さっきも言ったけど、今日は本当にありがとな。風邪を移してしまったら悪いし、もう帰ったほうがいい。元気になったら、必ずこの埋め合わせをするよ」


志保の言おうとする言葉を遮り、帰るよう促す。


「・・・分かりました。今日のところは、これで失礼します」


立ち上がり、部屋を出るためにドアを開ける志保。出る前に振り返って、俺を見る。


「私も、結構諦めが悪いんで」


そう言って、部屋を出て行った。少しして、玄関の開く音が聞こえた。志保が帰ったんだろう。


(栞里・・・)


栞里を諦めない。そう決意したのはいいが、どう取り返すか。龍に寝取られた結果ではあるものの、栞里は自分の言葉で俺との関わりを断とうとした。


(寝取られ、か)


中学生のとき、始めて知った言葉。あの時は体もまだ幼く、上手く活用することは出来ないと切って捨てた手段。龍はそれを上手く活用した。それをこうしてやられると、何か因果めいたものを感じる。


(これじゃ龍に勝てない)


女の扱いに関して、俺は龍には勝てないだろう。中学のときから女子と遊んでばっかりでどうしたものかと頭を悩ませていたこともあったが、もしかするとこのときの為に準備していたのかもしれない。そうなると、俺は終始龍の手のひらで転がされていたことになる。


(どうすればいい)


どうすればいいか分からず頭を悩ませながら、只々時間が過ぎていった。


  ♪〜♫〜♬〜


体調は回復したが、いい案は思いつかなかった。だけどこのまま何もしないわけにはいかない。せめて栞里に会えば何か出来るかもしれないと、登校中に考えていた。


「おはよう」


「えっ・・・ あ、ああ、おはよう」


「よ、よう糸巻、えっと、大丈夫なのか?」


教室の入ると、皆の驚いた表情が見えた。俺に掛けられる声も、ただ風邪を引いただけにしてはやけに余所余所しい。直接的に聞いてくるわけではないが、皆の態度で志保から聞いていた以上に栞里と龍の関係が深い仲になってるかを察することができた。


「おい弘和、三島さんとなんかあったのか? 三島さん、最近龍と仲が良いみたいだけどよ」


修平(しゅうへい)に話し掛けられる。気になっていても俺を気遣った話し方に心のなかで感謝する。


「いや、ちょっとすれ違いが起きただけだよ。直ぐに元通りになるさ」


軽く答えつつ龍の席を見るが、まだ来ていない。いつも早い龍には珍しい。隣のクラスを見たが栞里も居なかったし、栞里と待ち合わせでもしているのだろう。

今は探しても無駄だと割り切り、クラスからの好奇心に満ちた視線に耐えつつ龍達が来るのを待った。


  ♪〜♫〜♬〜


1限目が終わり、休憩時間に入る。結局龍が教室に来たのは1限が始まってからだった。龍の席に向かう。


「よう龍。遅刻とは珍しいな」


栞里を寝取られ、公園でボコられた俺は完全に龍に負けている。それでも、虚勢を張って話し掛ける。


「弘かよ。よく俺に話し掛けられたな」


龍は余裕を持って俺に返事を返す。


「志保から聞いたぞ。全部お前の演技だったんだな、このクズ野郎」


「なっ、何を・・・」


関係ない志保を使って栞里を手に入れたことを指摘する。こんなに早くバレるとは思わなかったのだろう。龍は表情を一変させ、顔を青くさせた。ちょっと動揺しすぎなような気もするが、今の龍の表情を見ると少し溜飲が下がる思いだ。


「栞里と登校して遅刻したのか?」


栞里と一緒に登校したのか確認する。栞里に会いたいなら隣のクラスに行けばいいだけだが、遅刻したのが少し気になった。


「えっ・・・ そ、そうだ、栞里だ。お前、栞里に何したんだよっ!!」


急に声を荒らげて俺の胸倉を掴み上げる龍。クラスの皆の視線に晒されながらも龍は続ける。


「栞里のやつ、家にも来ねえし、連絡だってつかねえ。お前が何かしたんじゃないのかよっ!!」


連絡がつかない。俺は兎も角、龍も連絡がつかないとは。学校には来ているのだろうか。


「知るかよ。離せよクズ野郎。栞里にやったことを皆にバラされたいのかよ」


先程の龍の慌てようを思い出し、咄嗟に龍を脅すような言葉遣いをしてしまったが、かなり効果があったようだ。龍は狼狽え、手を離す。こんな奴に栞里を寝取られたのかと疑問を感じながらも、手を離した龍から意識を外して隣のクラスに行く。

クラスのなかを覗いてみるが、栞里は居ない。来ていないのかと思い、職員室に行く。


「ああ、三島か。お前なら聞いていたかと思ったんだが、何も聞いてないのか」


栞里のクラス担任の先生に話を聞くと何やら意味深なことを言われる。何があったのかを再度聞くと、先生は渋々教えてくれた。


「まあ、お前と三島の仲は有名だし、どうせもう2、3日すれば展開するつもりだったからな」


ちゃんと力になってやれよと言って、先生は続けた。


「今朝、三島の親御さんから連絡があってな。病気で入院することになったそうだ」



読んでもらいありがとうございます。

栞里ルートの後書きでも書かせてもらいましたが、かなり短くなると思います。

次か、伸びてもその次で完結すると思います。

良ければ次も読んでくれると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 個人的に本来の正ルートは こっちだと思ってます。 弘志の人格的に簡単に 諦めない方がしっくり来ます。 作者様が北斗の拳を知ってるか分かりませんが、 シンがジャギに上手く唆されてケンシロウか…
[良い点] 痒いとこに手が届く展開だぁ(歓喜) あれだけ関係も感情もこじれちゃってますからねー。 どうなるのか、楽しみにしてます。
[一言] 自分が主人公ならば、本来のルートで別れる別れないは別として龍を地獄に叩き落としてるわ。
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