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投稿します。
休み中はこれで最後になると思います。
休み、少ないので。
吐く息が白い。歩くたびにざくざくと雪を踏みしめる音がする。そういえば龍と2人だけで歩くのは久しぶりだ。部活をしてる龍とは帰る時間は合わなかったし、何より栞里が居た。
「う〜 寒い〜」
「本当にな。少し走る?」
「あ〜 いや、このままでいいや。もしかしたらお前と並んで歩けるのって最後かもしれねえし」
「最後ってのは言い過ぎだろ。でも、そうだな。少し、気まずくなるかもな」
栞里は先に行っている。澪達と準備があるようだ。時期も時期だし、何となくだが、俺と龍も、きっとそうなんだろうなと思ってる。
待ちに待った。そして来ないでほしかったときが来た。どうなるのか。選ばれなかったとしても決意は変わらないが、不安なものは不安だ。
栞里はどっちを選ぶのか。心なしかいつもより重い足取りで店内に入った。
♪〜♫〜♬〜
「うわ〜 浅沼下手くそ」
「クラスで1番の音痴だな」
歌うことに消極的な龍を無理やり歌わせてこの反応。澪は容赦がない。充はどことなく嬉しそうだが、言われている龍にはどっちでも同じだろう。
「うるせ〜 だから嫌だっつったんだよ」
「だったら何で来るんだよ」
「お前が呼んだんだろうがっ!!」
充主催のクリスマスパーティー。正確にはその前日だが、充の尽力によりクラスの半分ほどが参加することになった。
「冗談だって。ありがとな、親友。信じてたぜ」
「よく言うぜ。モテない僻みで全員招集かけたくせに」
本当に酷い友情だ。ただその友情を裏切るやつもいるわけで。
「久保くんは来なかったけどね」
「あいつの話はやめろ。あいつは裏切り者だ」
恭弥は念願叶って渡辺さんと付き合うことができた。充の誘いに彼女ができたからと断り今日は来ていない。今頃どうしているのやら。
「はいはい。馬鹿なこと言ってないで次、あんたの番」
咲がもう一本のマイクを充に渡す。充は受け取ったあと、恭弥への恨み節を吐きながら前に出る。
「浅沼って歌下手だったんだ」
マイクを渡した後、俺の隣に座った咲が話しかけてくる。
「まあ、あいつは普段あんまり歌う方じゃ無いからな」
「でも田代が誘ったらちゃんと来るんだ」
「何だかんだ言っても結構付き合いが良いんだよ」
「あっそ。ところであんた。栞里の事で色々とあると思うけど、険悪になったりしないの?」
「どうだろう。どっちも栞里が好きで、その事に対しては譲るつもりは無いけど、龍のことは、変わらず親友だと思ってる」
口には出してないけど、多分龍も同じ気持ちだと思う。
「そ。あの子の面倒な性格によく耐えられるわねあんた達」
あの子。咲も随分と栞里と仲良くなったものだ。
「二学期に入ってから急に仲良くなったよな」
「栞里のこと? まあ、結構話すようになったしね。欲しい服があるから行こうって澪とも一緒に出掛けることがあるし」
「栞里から出かけるってことが凄い驚きだよ。あんまり自分からは出掛けなかったから」
あの時はいつも誘うのは俺の方から。同性だし、俺と比べるのは違うと思うが、それでも栞里からというのは想像出来ないことだった。
「まあ、あんまり出たくないのも少し分かったわ。あの子といると大抵男に声掛けられるし。追い払うのに苦労するわ」
「本当にありがとう。心から礼を言わせてくれ」
もし栞里が、いや栞里達が変なやつと付き合うと考えるだけでもぞっとする。
「本当にね。だから出掛ける時はいつも私達が一緒に行く羽目になるのよ? 男が居たら少しは収まると思うし、今だったら普通にデートに行けるんじゃない?」
「俺としても行きたいところなんだけどね。栞里の方から付き合うまでデートはしないって断られてるから」
栞里が俺達に言ったこと。選ぶまでは恋人らしいことは無し。だから俺達はあれから栞里と休日に会うことは無かった。じゃあ登下校で手をつないだり抱き着いたりはいいのかと思うものの、それを言って禁止されるのは嫌なので黙ってる。
「やっぱり面倒くさいわねあの子」
面倒だと言いつつも栞里を気にかけてくれる。面倒見が良い性格なんだろう。
良い友達を持ったなと栞里を見ようとし、栞里の姿が見えないことに気付く。周りを見ても何処にも居ない。何処に、と思うと同時に龍も居ないことに気付く。
「っ!!」
慌てて立ち上がる。衝動のまま栞里達を探そうとしたところで咲に服を掴まれる。
「はいストップ。暫く待ってなさい」
「えっ、いや、飲み物を取ってくるだけだから」
部屋を出る言い訳を口にしながら咲の言葉に違和感を感じた。この口振りはもしかして。
「だから、もう少し待ってなさい。そのうち帰ってくるから」
やっぱり。咲は2人が出て行くことを知っていた。
「そうそう。もうちょっと待ってなさい。せっかちな男は嫌われるわよ」
いつの間にか咲と逆隣に澪が座っていた。2人で挟んで俺を止めようとする。ということはこれは栞里からの。
「本当に面倒くさい。2人纏めてチャチャッと答えてしまえばいいのに」
「そう言わない。栞里なりに真剣に考えて、1人1人答えてくって聞いたから手伝ってるんでしょう」
「まあそうだけど。ねえ弘和」
「なんだよ」
何故栞里が俺を残して龍と出て行ったのか。俺の不安通りなら今頃龍は答えを聞いている筈だ。
「あの時のこと、覚えてる?」
あの時、というのは俺が咲に告白された時のことだろう。
「ああ、4月に受けた相談のことだよな」
澪は勿論、他の人が居る前でそんなことは言えない。内容は違うが、意味は通るだろう。
「そう。そのことさぁ、前に栞里にも言ったんだよね」
前に。もしかして始業式の前だろうか。あの時の栞里もどこか考え込んでいるようだったし。
「そんでなんて返してきたと思う?」
それは、栞里のことだから。
「ごめんね、とか?」
咲を傷付けたと思って謝るか。今の栞里なら、ちゃんと選ぶから、とか一言添えそうだが。
「あの子ね、そうなの、それで? って返してきたのよ」
「えっ、いや、栞里がそんなこと言うわけないだろ」
あの栞里がそんな突き放した言い方をするとは思えない。
「まあ、最初は考えたいからアドレス教えてくれって言われてさ。その夜に掛かってきてから言った言葉がそれ。電話越しに言い合い、というか私が一方的に言ってただけなんだけど」
咲は一度ため息を吐く。
「弘和を弄ぶなとか、姫様気取りの嫌な女だとか。まあそんで色々言った後に、私達の問題に口を出さないでって言われたら、本当に何も言えなくなってさ」
その時の事を思い出してか、何処か遠くを見つめるような目で続ける。
「その後に、私が嫌な女かどうか確かめてとか言ってさ。あっちから関わってきたんだよね」
それで栞里の方から咲に話し掛けていたのか。
「そっから澪も混じってよく話すようになってさ。気が付けば頼みくらいは聞いてやるような関係になったってわけ」
咲がスマホを見てから立ち上がる。澪もだ。
「だからまあ、もうあんたに対して何も思うところは無いし、応援してあげるわよ」
咲が席を移動していく。
「よく分からないところがあったけど、まあ、私達は栞里の友達ってこと」
澪がマイクを持って前に出る。もう充の番は終わっていた。急かされなかったのは、そういうことだろう。
澪が歌っている最中に栞里が戻ってきた。龍の姿はない。
澪が歌い終わった後パーティーが終了し、解散となった。
「ねえ弘くん。ちょっといいかな?」
栞里に呼び止められる。
「ああ、いいよ」
覚悟を決めた。
「着いてきてほしいんだけど、時間は大丈夫?」
ここではやらないのか。時間はあるし、ここまで来たら早く聞きたい。大丈夫だと伝えて、栞里に着いて行く。
外に出てると少し雪が降っていた。歩いて、着いたのは、見覚えのある公園だった。
「ここは」
「咲ちゃんから教えてもらったんだ。ここがいい。ここにしてくれって」
以前、咲に連れられ、告白した場所。栞里が向きを変え、俺と向かい合うかたちになる。
「前に咲ちゃんと来たことがあるんだよね?」
「あっ、ああ。あるぞ」
咲に勧められてここに来た。どういう意図があるんだ。
「咲ちゃん、言ってたんだ。昔この辺りに住んでて、両親とよくここで遊んでいたんだって」
そうなのか。じゃあ咲はあの時、この思い出の場所を選んで告白してくれたのか。
「そんな思い出が失恋で上書きされてショックだったって」
それは、意図したことじゃないにしても、なんか悪いことをした気になる。
「だから、少しくらいは幸せでそれをまた上書きしたいって」
俺を真っ直ぐに見つめる栞里。雪のなか佇むその姿は、いつもより綺麗に感じた。
「弘くん。あの時の返事、待たせてごめんね。今、伝えるから」
ゴクリと喉が鳴る。さっきの言葉、もしそうなら。
「弘くん。私は貴方が好きです。私と、付き合って下さい」
それを聞いた瞬間、俺は栞里に駆け寄り抱き締めた。ダウン越しで体温なんて感じるわけないが、どこか温かく感じる。
「ありがとう、栞里。俺を選んでくれて」
「うん。待たせちゃったけど、ちゃんと選んだよ」
「ああ、ありがとう。本当に」
何で選んでくれたのか、龍はどうしたのかと気になることはあるが、今それは野暮なことだ。
俺の腕のなかに栞里が居る。ずっと好きで、恋人になった、大切な人。
「好きだ、栞里」
「うん。私も、好きだよ弘くん」
抱き締めたまま、顔を近づける。栞里は顔を背けず、ただそっと目を閉じた。
初めて重なった唇。それは寒さなんて少しも感じることはなく、どこまでも温かかった。
読んで頂きありがとうございます。
ここからは本編の流れと被らないのでちょっとは書きやすくなるかと思います。
気長に待ってもらえると嬉しいです。




