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投稿します。
ファミレスに入る。既に店内で待っていると連絡があったので志保を探し、見つけたので店員に言って向かいの席に座る。
「こんにちは、先輩」
「ああ、今日は来てくれてよかったよ」
「流石にここまできたらね」
ドリンクバーを注文し、互いにドリンクを準備したところで本題に入る。
「じゃあ聞くが、なんで俺と栞里の仲に割って入ろうとするんだ」
「先輩が好きだからです」
一応、予想はしていたからすぐに言葉を返すことができる。
「なんでだ? 俺とは高校で始めて会っただろ」
「はい。でも私は先輩のことを栞姉えから聞いていて、中学のときから気になっていました」
「栞里がいるって言うのに俺に好意を持ったのか?」
「会うまでは、ただの興味だったんですよ。栞姉えからは良い人だって聞いてたけど、私は栞姉えを誑かそうとするその辺の男と同じだと思ってたから」
「会ってから今まで散々俺を試してきたしな」
「うん。びっくりした。ここまで栞姉えに一途な人がいるんだって思った。ほら、自分で言うのもどうかと思うけど、私って可愛いでしょ?」
「まあ、容姿はな」
人の好みにもよるが充分に可愛い方だ。栞里はどちらかと言うと綺麗って表現が合うから、単に可愛さという点では志保に軍配が上がるかもしれない。
「結構人当たりもいいし、栞姉えより胸あるし、私が迫ったら簡単に墜ちると思ってた」
「お前は人当たりがいいんじゃなくで図々しいんだよ。いつも中途半端な敬語使いやがって」
あと、栞里はそんなに小さくない。
「ごめんね、これからはちゃんと喋る」
「敬語を無くすのかよ」
「先輩にはこのままでいく。敬語って壁あるじゃん」
「先輩は敬え。で、続きは?」
「私に全然靡かない先輩を見て、いいなって思ったんだ」
「は?」
「男ってどうしようもないやつばっかりって思ってたけど、先輩は違うって思った。一途に思われている栞姉えが羨ましい」
そして続けて、
「栞姉えの自慢の彼氏だって分かっているけど、そこにいるのが栞姉えじゃなくて私だったら、って思った。それで、私は先輩が好きだって気付いたの」
俺を真っ直ぐに見て、言う。
「弘和さん。貴方のことが好きです」
志保からの告白。だが俺の返事は決まっている。
「ごめん志保。その想いには応えられない」
「はは、やっぱそうだよね」
力なく笑う志保に言う。
「それに、俺がその想いに応えたら、それはお前が好きな俺じゃないだろ」
志保は一途な俺が好きだというが、俺が一途なのは栞里に対してだ。もし俺が志保に気を向けるようなら、志保の好きな俺ではなくなる。
「そうですね。矛盾しているのは分かっています」
「じゃあ、もうどうしようもないことも分かるよな」
「ははは、本当、どうしようかな」
俺は志保の想いに応えることが出来ないが、蔑ろにしたい訳ではない。栞里との仲を邪魔されたことには腹を立てたこともあるが、俺に好意を持ってくれているやつを嫌うほどではない。
「俺は栞里以外眼中にない。だけど、そんな俺が好きだっていうんなら、栞里との仲を応援してくれ」
俺は志保にとって最低のことを言っている。だけど、志保にはどこかで諦めてもらわないといけない。なら、この場で諦めさせる。
「ははは、いや〜 はは、・・・キッツいな」
明るく笑おうとしているのだろうが、力が入ってないせいで余計痛々しく見える。
「すまんが、諦めてくれ。もしお前がこれ以上俺達に踏み込むんなら、お前のためにも、俺はお前と口を利かないようにする」
それから、沈黙が始まる。志保から動かない限り、俺は何も言わない。お互いドリンクを飲み干して、更に数分経ってから、志保がようやく口を開いた。
「分かった。先輩と栞姉えの仲を応援する」
志保は引き下がる選択を口にした。
「諦めてくれるか」
「諦める、のはまだ無理。だけど、栞姉えが好きな先輩が私の好きな先輩だから、我慢する。だから先輩」
志保は俺を見て、悲しいような、呆れたような、そして何故か憐れんだような表情を浮かべる。
「私が諦めるまで、栞姉えと幸せに」
♪〜♫〜♬〜
「今日はどうする?」
「う〜ん、流石に勉強しないと。弘くんは勉強大丈夫?」
「まあ、程々にやれば大丈夫だろ」
栞里と2人で帰る。あの時の告白から、志保は俺達の仲に入って来ることはなくなった。挨拶や雑談くらいはするが、栞里と一緒にいる時は自然と離れていく。栞里の機嫌も治ったようだし、一安心だ。
「じゃあ、今日はこのまま帰るね」
「寂しいけど、試験勉強はしないとマズイよな」
「うん。一緒に勉強したいけど、一緒に居たら勉強しなくなっちゃうから」
寒さが厳しくなってきたこの頃、期末試験の時期がやってきた。俺は思ったより成績が良い方らしく、今回の試験もいつも通り勉強すれば大丈夫だと思う。だが栞里はちょっとマズイかもしれない。前回の中間でも数学と英語が赤点ギリギリであり、テスト返却後の帰りに顔が青かったのを覚えている。志保の邪魔がなくなったことでちょっと自制が効かなかったかもしれないが、流石に赤点はマズイので今回の期末はしっかりと勉強することになった。
栞里にキスをして別れる。勉強して損はないし、俺も勉強するか。
♪〜♫〜♬〜
期末試験最終日、最後の教科が終わり開放される。龍や修平と終わったことを喜び合う。
「いや〜 終わった、終わった。どうだった?手応えは」
「うるせえ、どうせ赤点だよ」
「俺はそこそこかな」
終わったことに気を楽にし、手応えを聞いてくる修平に龍は机に項垂れて答える。俺は今回結構自信があるが無難に答えておく。
「龍はテニスと女遊び以外はダメなやつだな〜」
「ぶっ殺されてえのか」
修平が龍をからかい、龍が凄む。いつも通りの日常だ。
「悪かったって。お詫びと言ってはなんだけど学校終わったら遊びに行かね? 飲み物くらいなら奢ってやる」
「あ〜 また今度な。今日はちょっと予定がある」
「俺も栞里と帰るから無理だな、すまん」
「ちっ、これだから彼女持ちは」
「すまんな」
「いや、俺は別れたぞ」
龍はまた彼女と別れたのか。何回目だまったく。節操がないのか甲斐性がないのか。相性の問題もあるだろうが、流石にどうかと思うぞ。
「お前、またか」
修平も呆れている。
「でも、もうすぐ次の彼女ができるんだよ。終わったら初デートさ」
「はいはい、今度はどれだけ続くんだ?」
「今度は本気なんだよ。絶対に別れないって確信があるんだ」
「本当かよ。嘘くさいな」
俺も嘘っぽく聞こえるが今回の龍はなんというか本気って感じがする。今までは彼女ができても会話に熱が入ってないように感じてたが、今の龍は違う気がする。誰だかはわからないが、龍と永く続くよう願っておこう。
「そう言うなよ修平。龍もなんだか本気っぽいし、応援してるぞ。頑張れよ」
「おう。ありがとな、お前に言われると心強いぜ」
放課後、栞里を迎えに隣のクラスに行く。栞里はまた青い顔をして待っていた。これは、ダメだったのか。
「栞里、大丈夫か?」
「あっ、うん。大丈夫だよ。大丈夫」
大丈夫と繰り返しているがとてもそうは見えない。元気づけるために早めに帰ろう。
「栞里、帰ろうか」
「うん。あっ、弘くん。ちょっと寄り道していいかな?」
「ああ、別に構わないぞ」
学校を出て、栞里の隣で歩いていく。
「あっ、降ってきたね」
空から雪が降ってきた。
「そうだな、今年はあまり積もらないといいんだけど」
積もるほど降ってほしくないが、俺は雪が好きだ。あの時の栞里の温かさを思い出すことができるから。
栞里と歩いて着いた先はあの公園だった。そうか、高校からならそんなに遠くないところにあったのか。
「懐かしい、いや、そうでもないか。あの時のことは今も鮮明に覚えている」
「うん。私もずっと覚えているよ」
雪の降る公園。相変わらず誰も居ない。それなならと、あの時と同じことをしようと栞里を抱きしめるために手を伸ばす。
「だから、ね」
その手をすり抜け、栞里が前に出て振り返る。俺の目を見つめ、
「もう限界なの。私達、別れよう」
と言った。
次回も宜しくお願いします。
これを読んでくれる方、評価してくれる方、いつもありがとうございます。




