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遅くなりましたが投稿します。
次で中学編が終わる予定です。
インターホンを押す。前に押してから1年以上経っているのか。
「はい、三島です」
「おはようございます。糸巻です。栞里さんを迎えに来ました」
「まあ、栞里を。あら、君は前にも栞里を迎えに来てくれたわね。久し振りだわ」
「お久し振りです。あのとき、今日もですが、朝からお騒がせてすいません」
「いいのよ、もう栞里が出てくると思うわ」
「お母さん、どうしたの?」
インターホン越しに栞里の声が聞こえる。前もこんな感じだったような。
「栞里、糸巻くんが迎えに来てるわよ」
「ええっ、弘くんが!!」
家のなかから慌ただしい足音が聞こえてくる。玄関の扉が開き、
「おはよう弘くん。どうしたのこんな、家にまで来て。いつもの場所で待っててくれればよかったのに」
「おはよう栞里。今日から一緒に登校したいと思ってね」
「いつも一緒に登校してるじゃないの」
「大好きな人ともっと一緒に居たいってことだよ」
「うぅ、弘くん。強引すぎるよ」
「遠慮せずにいくって決めたんだよ」
近づいてきた栞里の手を取る。
「ちょ、弘くんそれは」
「嫌?」
「嫌・・・じゃない、嫌じゃないけど」
栞里と手をつなぎながら、玄関から覗いている栞里の母さんに挨拶する。
「行ってきます」
栞里の母さんは驚きと喜び、そしてからかいの笑みを浮かべながら返してきた。
「行ってらっしゃい2人とも。栞里、帰ってきたらお話を聞かせてね」
栞里は俯きながらも、
「行ってきます」
と母さんに返した。
「も〜、弘くんはちょっと強引すぎ。あんまり強引だとその内嫌いになっちゃうよ」
「なら、また好きになってもらえるよう頑張るよ」
栞里は怒りながらも俺とつないだ手を離すことなく一緒に登校している。
「やっぱり、龍くんは居なかったね」
龍が栞里を諦めたあの日。海からの帰り道で別れる前に龍が言った。
「俺はこれから1人で学校に行くから、お前らだけで学校に行けよ」
「えっと、龍くんはそのほうが、いいのかな?」
「ああ、後は弘に任せる」
「本当にいいのか龍?このまま栞里をもらっても」
「言ったろ? 応援するって。じゃあな」
龍は俺達に背を向け歩きだし、後ろからでも見えるよう手を振って帰っていった。
「休み中の部活で話しはできたのか?」
龍と最後に帰った時のことを思い出しながら栞里に聞く。
「うん。だけど、前のようにはいかないかな。話していても弘のところへ行けとか、弘に悪いからとか、そんなのばっかり」
「そっか。・・・辛くないか?」
「大丈夫。こうなったのは私の責任だから、ちゃんと受け止めないと」
♪〜♫〜♬〜
教室に、というより校門の近くから俺と栞里は注目を集めていた。二学期早々手をつないで登校してきたから当然なんだけど。クラスの皆からは、
「おいおい、お前ら結局付き合ったのかよ」
「一学期の終わりで振られたのに二学期の始まりで付き合う。いったい何が?」
「おいっ、龍はこれ知ってんかよ」
と、海での告白をほとんどが知ってるからか驚いてはいるものの他のところに比べて衝撃は少なかった。
俺達は先に来ていた龍に話し掛ける。
「おはよう龍」
「おはよう龍くん」
「おう、2人とも早速かよ」
龍に話し掛ける俺達を見て皆に緊張が走ったような気がする。
「勿論さ。龍が背中を押してくれたからね」
「ちょっと強引すぎるから、龍くんからも弘くんに抑えるよう言ってあげてよ」
「良いじゃねえか。そのまま弘とくっついてろよ」
「良くないよ。これじゃあ龍くんのことが見れないじゃない」
「だからそれで良いんだって」
「ダメ、ちゃんと見るって決めたんだから」
俺と手をつないでいる栞里、栞里と話している龍、龍が栞里を押し付けようとしている俺。皆が不審な目で俺達を見ている。
そして皆の疑問を代弁するかのように恭弥が言う。
「なあ、お前らってどんな関係?」
皆が頷く。もう俺達の関係は隠す必要が無いため包み隠さず話すことにした。
「はぁ? それおかしくね?」
「三角関係ってやつ?」
「でも龍が引いたんならあとは弘と三島さんの問題ってことだよな」
話を聞いた皆が混乱していたが、
「巫山戯ないでよっ!!」
机を叩き大声を出した咲に意識を向けることで静かになった。
「ねえ三島。あんたのことを弘和が好きだってのは分かったわ。でもあんたは弘和か浅沼か選べないで返事を先延ばしにしてるんでしょ?」
「いや、咲。栞里はちゃんと選んでくれる。俺はそれを待つって決めたんだ」
「なんでよ!! なんであんたが待たなきゃならないのよ!!」
「好きだから。ちゃんと答えを出してくれるって信じてるから」
「散々待たされてまた振られたらどうするのよ」
「好きだから、また告白する。諦めないかぎり続けるよ」
「・・・だったら、私も、あんたを、」
泣きそうな顔で俺を見る。咲がその後を言う前に、俺から咲に伝えなければならない。
「咲、俺はお前を友達だと思っている。多分ずっと」
「・・・うぅ、ぐすっ。あんた、最低ね」
最低。そう言われても仕方がない。俺は多分また咲を振った。しかも告白させることなく振った。自分は栞里に諦めず迫っていくのに、咲には暗に諦めろと言った。
「ごめん」
それからクラスは静かに、咲が机に伏して泣きながら、でも誰も動けず、教室に入ってきた進藤先生が慌てて咲を保健室に連れて行くまで耐えていた。そして先生が咲を連れて行ってから直ぐに俺は教壇に登り、皆に頭を下げる。
「皆、すまない。咲が、いや、咲じゃなくても俺達の関係はおかしく見えると思う。でも俺はそれでいいんだ。だから栞里や龍を責めないでやってくれ」
栞里も教壇に登り頭を下げる。
「皆、ごめんなさい。私のわがままで弘くんと龍くんを振り回してしまって。2人の優しさに甘えてしまっているのは、良く分かっているつもりです。私は責められても文句は言えません。2人に対して、それだけのことをしたからです。だから、責めるなら私だけにして下さい」
続けて龍は席に座ったまま皆に言う。
「俺はもう降りたから言わなくてもいいんだけどよ、2人がそれでいいって言ってんだから他のやつがあ〜だこ〜だ言うことじゃねえだろ」
「それは、そうかもしんないけどさ」
「神崎が可哀想っていうか」
「だったらなんだよ。弘にその気がないのに付き合えばいいって言うのかよ」
皆から出てきた咲に対する同情的な意見を龍が切って捨てる。少し間をおいて澪が立ち上がり、クラスの総意をまとめようとする。
「はい。糸巻は三島さんが好き。三島さんは多分糸巻か浅沼くんが好き。浅沼くんはもう三島さんを好きではない。で、糸巻は分かった上で三島さんを待っている。当事者じゃない私達はこれ以上とやかく言わない。これでいいわね」
少しクラスがざわめき、恭弥や充がそれを飲んだのを皮切りに皆がそれを受け入れてくれた。
♪〜♫〜♬〜
あの後戻ってきた先生はバツが悪そうな顔をして咲のことには触れず、始業式の予定を話し始めた。本人からだいたいのことを聞いて触れるべきじゃないと判断したんだろう。始業式が終わり、放課後になっても咲は教室には戻ってこなかった。保健室登校ということになったのかもしれない。二学期早々やらかしてしまい株がだだ下がりだが、まだ俺は皆の友達でいいらしい。恭弥達とは咲のことには触れずに話しができる程度には落ち着いた。女子の世界は複雑そうで栞里が心配だが、澪達なら力になってくれるだろう。澪達に囲まれている栞里を見ながら思う。龍は俺に頑張れと言って恭弥達と帰っていった。
「お〜い、栞里」
囲まれている栞里に声を掛ける。栞里と澪達がこっちに向き直り、俺の言葉を待つ。
「この後どうする? 予定がなければ一緒に帰ろうぜ」
「えっと、今日は、」
「ねえ糸巻」
澪から話し掛けられる。
「ん、どうした?」
「あなたが三島さんを待つことで三島さんが他の女子から印象が悪くなっていくことは分かるわよね?」
「分かっているぞ」
「三島さんの為に諦める気はないの?」
「悪いがない。栞里を諦めるつもりはない」
「イジメられることになっても?」
「俺が栞里を助けるし、栞里もそんなに弱くない。それに、俺の手の届かないところには澪達がいる」
「何? 私達に三島さんを手助けしろって言うの?」
「ああ、頼む。栞里を助けてくれ」
澪達に頭を下げる。澪の言う通り今の栞里の現状は危ない。栞里は耐えるつもりだが、いつまで持つかわからない。栞里の味方になってくれる友達の助けては必ず要る。
「・・・わかったわよ」
少し間を置いて澪が答える。
「三島さんからも辛いときは助けて欲しいって言われたからね」
澪の言葉に驚いて栞里を見る。
「実は浜田さん達に助けてほしいってお願いしてたんだ。私のわがままで弘くん達に心配を掛けたくないから」
「一応、三島さんとは友達だし、個人的には神崎さんのことで言いたいこともあるけど、それは別の話だし。それに、自分の為じゃなくて糸巻達の為に助けてくれってお願いされたら断れないわよ。皆もそれで納得してる」
「ごめんね。ありがとう皆」
「俺からも言わせてくれ。澪、皆も、栞里の助けになってくれてありがとう」
「ただし、三島さんはちゃんと糸巻と浅沼に対して返事をすること。あとあんまり時間がかかると庇いきれないから、なるべく早く返事しなさい」
前書きでも書きましたが、次で中学編が終わる予定です。ようやく本編(?)が見えてきました。もうしばらくお付き合い下さるようお願いします。
これを読んでくれた方、評価してくれた方、いつも本当にありがとうございます。




