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男の子の成長期はすごい

森の散策では、子供達は目印にキラキラ光る石を落としていたらしく、それをチアリが拾いながら入り口までの道を辿る。


「こんな石どこで落ちてたの?」

シリンは拾った石の一つを陽に翳してしげしげと眺めつつ、子供たちに問う。


「それはねー「森の入り口にたくさん落ちてたの!」

メルとチアリがほとんど同時に答えた。

「そうなのねー」

森に自然にできるには綺麗すぎる石は、髪とりんごを交換してくれた商人がつけていた宝飾品についていた石と似ていた。そして、今朝、あの家にいくつか落ちていたものも同じ輝き方をしていた。前の住人が家に運ぶ際に落としたものかもしれない。いったい、以前の住人は何者だったのだろうか。


シリンが前の住人を警戒するのには訳がある。

なぜなら、ここが倒れた場所から一番近い森であれば、ときおり大きな唸り声が聞こえる不気味な場所「悪魔の森」だからだ。

100年ほど前に大きな災厄が森からもたらされてから、興味本意で森に入った人間は、戻って来れない、戻ってきても化け物を見たとうわごとを言う廃人になると噂されている。国民はなるべく森から離れて暮らすようになり、今も近くに済む辺境の都市の住民たちも絶対に近づかないよう、子供の時からきつく言い聞かされている。

ラークとチアリが眠れなかったのも、それを気にしていたのだろう。


「こんなところに人がくるかなぁー?」

木の幹に小屋までの道標と、ダミーの切り傷をつけていたラークはシリンに問いかける。辺境の都市の住人として、ラーク達も噂のことは知っているから、『それよりも木を傷つけて森に呪われないだろうか…』、という顔をしている。

シリンは頬をかきながら苦笑して答える。

「一応ね、私たちや、あの小屋の前の住人みたいにたどり着く人がいるかもしれないし」

子供達には言わないでおいたが、こんな噂がある森に来る人は、国からの追手か、呪いよりもよっぽど怖い事情を抱えている可能性が高い。少しでも出会う確率は下げておきたい。


といっても、この森にあまり長居をするのも良くない。

落ち着いたらどうするか、考えないと。


森の入り口まで辿り着き、念のために、周囲に人の気配がないことを確認したあと、ラークがつけた木の目印を確認しながら来た道を戻る。


小屋の周りには立派なりんごの樹が生えていたが、こちらはあまりめぼしいものはなかった。

それも周囲の住民が寄り付かない原因だろうが、薪の材料になる倒木と食料はなんとか探さないと、今後が辛い。


と、レオがシリンの袖を引っ張って声をかける。

「ねえねえ」

「ん?」

「薪って、あれでできる?」

レオが指差す方に目をやると、目印から少し離れたところに大きな倒木が横たわっていた。

子供達よりも太く高さもあって、みるからに重たそうだが、それでも少し乾いていて、このままでも薪になりそうだった。


「レオありがとう!持てる大きさに切り分けて小屋に運ぼうか」

「俺に任せろ」

ラークが腕を捲って倒木に近づく。小屋までシリンを運べる位には力持ちな様だし、体力のないシリンに代わって力仕事をやってくれるのはすごく頼もしい。

「ここね、何回か叩いて、半分にできる?」

しかし、シリンの指示に、ラークは首をふりながら斧を置いて、倒木のそばにかがんだ。

「え?」

「よっこいせ」

そのまま、みっちりと詰まった、ラークより2倍近い大きさの倒木を顔色ひとつ変えずに持ち上げ、斧を拾って歩き出した。

「一人で持てるし…帰ってから割るよ」

「え、え…ええ?」


戸惑うシリンにチアリが声をかける。

「ラークは、ほら、成長期だから」

「男の子の成長期ってすごいんだねぇ」

シリンは同世代の友達と遊ぶ機会が少なかった。

だから、レオもいつか、あんなふうに逞しくなるのか…と繋いだ小さな手を見つめてしみじみと考えていた。

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