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死に際の殺し屋は、異世界で皇王と出会った  作者: 玲島和哲
プロローグ~ボウディン
30/100

攻撃的な、食いつかんばかりの

 手に走っていた閃光が一瞬弾けたかと思うと、灰色の光る鞭となってその右手に握られる。同時に、少し屈んだルーアンが一気に飛び出し、ニンファルで怪物に斬りかかる。セトグアールは後ろに軽くジャンプして下がりながら鞭で彼女に反撃をする。


ルーアンはそれを横に身体を少しずらすことによって避け、再び怪物の方に向かう。今度は、着地の瞬間に、ルーアンは怪物の目の前に辿り着いていた。ニンファルも、その首に届く距離である。


 セトグアールはそれを予測済みと言わんばかりの余裕を見せて光弾を左手から発射させて、彼女に攻撃を加えた。それに対し、既に左の掌がこちらを向いているのを一瞬のうちに見てある程度警戒していた彼女は、それをまた右手側に身体を横向けて避けた。


更にそのまま、横向けた所から今度は全身を時計回りさせて、左手のニンファルで怪物の斬り付けた。光弾を避けられた時点で後ろに避け始めていたものの、かなり深々と傷つけられていた。ルーアンは追撃しようと、後ろに避けだしていたセトグアールを追おうとした。


その時、セトグアールの魔力の鞭がひとりでにしなり、彼女の足首に巻き付いた。


「!!」


 それに気づいた時には、ルーアンは鞭に後ろに引っ張られてそのまま投げ飛ばされた。後ろに引いて足を止めたセトグアールに付けられた傷も、既に魔力で完治している。顔を上げてルーアンの方に顔を向ける。


 すると、横から何かの気配を感じて腕を頭の上に挙げつつ振り向くと、既にとびかかってきて。真上から振り下ろされたガルティックの鎚をそこで受け止める。ガルティックは着地するとすぐに二回ほど鎚を振って攻撃にかかる。


セトグアールもそれを避け、更に光弾を発して反撃にかかる。少女がそれを避けつつ離れていくと、怪物は鞭を持った右手を振り上げる。


 その時、その右手に強い衝撃が走ると共に激痛が走った。見れば右手の小指と薬指が吹き飛び、手が半ば粉砕している。目を右手から、何かが飛んできたのであろう方向に顔を向けると、光利がワルサーを構えて怪物の方を向いていた。


 歯を噛み締めるセトグアールだが、意識もそこに向いてしまい、周囲に気を配れていなかった。ガルティックがその顔を鎚で殴りつけた。飛ばされた怪物が地面に落ちてうつぶせで倒れると、そのままガルティックが追撃しようと飛び掛かり、更にルーアンも、瞬時に怪物に近付いていた。


 セトグアールは膝を床に付きつつ身体を起こし、重ねた左右の両手を床に方に向ける。その様子に何かを感づいたルーアンが叫ぶ。


「! ガルティック! 退け!!」


 そう言って既に後ろに下がり出していたルーアンの方を見つつ、ガルティックも急に止まって後ろに下がろうとする。それと同時に、セトグアールの右手が魔力によって修復するとすぐ、重ねていた両手から灰色の魔力が爆ぜ、そこから網状の形で周囲に広がった。

「!!」

 驚く二人を他所に、網状の魔力は一気に広がり、ガルティックはもちろん、既にかなり離れていたはずのルーアンにも、ギリギリのところで届いていた。網が二人を捕らえた。


「何これっ!!?」


 ガルティックは思わずもがきながら、網を身体から離そうとする。しかしその魔力の網には、損害こそ受けるような事こそなかったが、粘着性があるために身体に張り付き、話すことが出来なかった。


 ルーアンもそれを確認して、代わりに切り離そうとニンファルを振るった。が、網は刃そのものにも張り付いた。


「くッ……!!」


 網の中で戸惑い慌てる二人を尻目に、セトグアールは光利の方に一気に向かっていく。光利は銃口を上に向けて、その場でじっとしていた。怪物は両手から鞭を発現させて、日本共々光利の方に向けて放った。鞭は左右に広がっていくかと思うと、光利の方に向かってその先端を走らせていく。


 光利はじっとそれを見つめながら、中間の部分の膨らみが萎む気配のないことを見極めると、先端部分があと少しで届きそうになった所で真っすぐ走り出した。すると鞭が、手で持たれている、そのすぐ前の部分から幅を狭めて始めたかと思うと、光利の方に向けて一気に狭まっていく。


 更に、鞭二本の先端部分も、先ほどまで光利のいた場所で一つになると同時に、その部分から日本の鞭の幅が狭まっていく。丁度、一直線の開かれたチャックが、両側から閉じられていくような状態である。


 光利は臆することなく走って進む。セトグアールは、光利が何か仕掛けてくることを予測して目を離さない。実際に、光利は走りながらワルサーを撃ち出した。狙いは正確であり、弾はそのほとんどが、セトグアールの頭に向かっていく。しかしこれらの攻撃は、魔力によって防がれた。撃たれた一、二発程、床に弾かれたものと、怪物の足をギリギリ掠めたものがあった。


 そして、光利がある一発を発砲する。その一発の弾はセトグアールの頭に向かったが、向かった場所は怪物の右目の位置よりずれた所を後ろに通り過ぎた。そしてその際、弾丸の通り過ぎる時の僅かな風圧が、その顔に一瞬かかり、怪物の頭が微かに、それに抗するように動いた。


 光利はこの一瞬の動揺の隙をついて、尻から床に身体を落とし、身体を横に移動させた。一瞬の同様の隙をつかれたセトグアールは、光利の行動に即座に反応できず、鞭で挟み撃ちにしていたのを逃がしてしまった。


 セトグアールに直接放たれた弾丸が直接当たれば弾かれてしまう。しかし、飽くまで掠るギリギリの場所になら防がれてしまうことがないのを、先ほどあえて外した二発で確認したのである。


 セトグアールは即座に鞭を逃れた光利の方へ向けて攻撃を仕掛けた。しかし、既に立ち上がっていた光利はその攻撃を避けつつ、再度再び銃弾を放つ。ほとんど防がれたと思ったが、一発だけ、その肩を貫いた。


「がぁっ!!」


 セトグアールはその場に膝をついた。


「魔力が次第に弱まっています!」


 リュナウィッシュの端正な叫び声が響いた。一瞬、セトグアールは自らの状態を明かされたことによる焦りを表情に浮かべる。それに対し、飽くまで光利は冷静に銃弾を放つ。怪物は魔力を再度発揮させて、これらのほとんどを防いだ。しかし、焦りと光利への敵対心で、後ろへの注意がぞんざいになっていた。


 後ろからの静かな気配に気づいたのが少々遅すぎた。振り返り様の勢いを付けた横の一振りで攻撃を仕掛けたセトグアールだが、ルーアンは既に身体を低めてその腹に向かって、右手のニンファルを横一直線に斬り付けた。


「グヌゥッ!!」


 苦しむ怪物に向けて、ルーアンは更に左のニンファルを、下から上に振り上げた。浅からぬ傷こそ受けたが、セトグアールはこれを、後ろに下がることによって避けた。しかし、下がった先で、身体の右側に、意識ごと吹き飛ばされそうなほどの強い衝撃と鈍痛を受けた。その場にいたガルティックが彼を、巨大化させた鎚で殴りつけたのだ。そして少女はそのまま、再度怪物の方へと駆け出した。


 地面に叩き付けられるように倒れたセトグアールはすぐに起き上がり、既にこちらに向かっているガルティックに向けて、中指と人差し指を真っ直ぐ向けた左手を前に出して、光弾を発射しようとした。


 しかし次の瞬間、散髪の銃弾が、突き出したその左腕を撃ち抜いた。それによって、ガルティックに向けていた腕の位置がずれ、あらぬ方へと光弾が飛んで行ってしまった。ガルティックが叫びながら殴りつけるのを、一度は後ろに引いて、二発目は防壁を、両腕を軽く間隔を開けて軽く広範囲に張って、既に発射されていた光利の銃弾と共に防御した。


 その防壁を一気に縮小させてそのまま両手の中に光弾へと変化させると、即座に二人に向けて放った。避けられるのを確認しながら、意識は既にもう一人の方に向いていた。ルーアンが斜め切りしてきたのを、身体を逸らすことによって避けた。


 そこから更に繰り出されたニンファルによる二、三発の攻撃も避け、上から振り下ろされた一発を、すぐに掲げた左腕をその手首に勢い良く当てて止めた。そしてそのまま右腕で腹に強めの拳を真っ直ぐ当てて、後ろに軽く吹き飛ばす。


 強めに打ったつもりであったが、殴りつけた際の腹の固さから、決して動きが鈍る程の損傷は受けておらず、すぐに攻撃に出るであろうことをセトグアールは予測した。事実、後ろに引いたのを足で止めると共に、ルーアンは、また飛び掛かってきた。


 セトグアールは、光弾を発射しようと右手を差し出した。光利がこちらを向いているのも見えたので、銃弾を防ぐだけの警戒心は備えていた。


 ……その時、左側から何か飛んでくる気配を察した。大きくないと即座に把握したセトグアールは、そちらを向いて即座にそれを掴み取った。それは、先ほどから怪物を殴りつけていた鎚であり、その先端をこちらに向けていた。軌道上に目を向ければ、ガルティックが攻撃的な、食いつかんばかりの表情をしてこちらを見ていた。


 これにより、セトグアールの隙が出来た。


 ルーアンは、セトグアールが余所見をしている時に、肘を曲げた状態で上に挙げていた右手の手首を左手のニンファルで斬り離す。そして更に、呆然とした表情をした顔をこちらに向けるのとほぼ同時に、右手のニンファルでその首を刎ね飛ばした。

感想や評価などをいただけたら幸いです


※作品の設定上、登場する人物の視点に合わせて、同じものでも表現の仕方を変えている場合があります。(例:コート→外套 ベッド→寝具)お付き合いいただければと思います。

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