006 飯ッ! 食べずにはいられないッ!
「へぇー、春華ちゃんって家でもそんな感じなんですね!」
「そうそう、俺と父さんに凄い辛辣なんだよ。おかげで毎日父さんは半泣きだしな」
ところ変わって食堂。俺と有希は食券を渡し、待っている間、春華の話で時間を潰していた。有希いわく、学校での春華は家にいる時と変わらないらしい。マジかよ、普通に怖いんですけど。
「はい、カレーライスね。あら、今日は可愛い子連れているねぇ。彼女かい?」
「違うって。ただの後輩だよ。」
あらそう、と言っておばちゃんは興味をなくしたのか、中に戻っていく。酷いおばちゃんだ。興味ないなら聞いてこないでほしいけどな。
カレーを受け取った俺は、近くの空いている席に座る。遅れて有希も反対側へと座った。こいつのメニュー……まさか、あのカツカレーナポリタン定食か!?
「有希、お前……それを食べるのか?」
「はい。私、この前食べた時にハマってしまったんです!」
ナポリタンの上にカツが乗り、さらに上からカレーをかけた高カロリー間違いなしの一品。カツカレーナポリタン定食。この学園の隠れた人気メニューらしい。昼から体育の授業ある時はやめたほうがいい一品だよな。
「おい、あれ戸崎じゃないのか?」
「やっぱ可愛いよなぁ……流石は葉蘭四女神の一人だ。」
近くにいた男子二人組がいきなり騒ぎ始めた。なに、沙也加が食堂にいるだと!? これはちょっとマズいな。あんな事があった手前、顔を合わせづらい。沙也加の方からも避けられてるし。ここはバレない事を祈るしかないな。
「柊夜先輩、大丈夫ですか? いま戸崎先輩と会いたくないんですよね?」
「あ、あぁ……けど大丈夫だ。幸いここは一番端の席。周りに空いてる席もないから、こっちに来る事はない筈だ。」
「それならいいんですが……なんか、すごいこっち見てるような気がして。」
「怖いこと言うなよ。大丈夫だ、俺は背を向けてるし、有希みたいな知り合いがいるって事も沙也加は知らない筈だ。友達が少ないって思ってるからな。」
「それ、自分で言ってて悲しくなりませんか? 聞いてるこっちも泣けてきますよ」
正直、めちゃくちゃ悲しいところではあるが、この際そんな事を考えてる時間はない。そのまま俺と思わず飯を買ってくれ、沙也加! なんか周囲がざわざわし始めたけど、振り向くな、振り向くなよ俺ェ!
「あ────」
有希の視線が、俺ではなく後ろを見ているような気がした。まさか、まさかッ!?
「ねぇ、柊夜。なにコソコソしてるのかしら?」
「……ハハッ☆」
一瞬で食堂の雰囲気が重苦しい感じに包まれる。ど、どうする俺! どーすんのよ俺! てか俺は何も悪くねェー!
「続きは次話ですよ☆」