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003 フラれマンは再びフラれた夢を見るか?


「さて、いよいよこの時が来た。黒い風が、泣いている」


 放課後。昨日の告白事件のせいで気まずい雰囲気になってしまった沙也加と元の幼なじみの関係に戻るため、俺は沙也加を屋上に来るよう連絡し、その時を待っていた。カッコイイポーズを決めながら。


「なにしてるの、柊夜」


「いや、緊張をほぐそうと思ってだな……」


「確か十六時に屋上に来てもらう約束なんでしょ? 大丈夫なの?」


「大丈夫じゃない、問題だ。正直、殴り飛ばされる未来しか視えないんだよな。どんなに誠意を見せようが、逃げてしまった事には変わりないしよ。」


「うーん、それは大丈夫じゃなさそうだね……」


 本気で怒った沙也加は恐ろしい。昔、一度だけ怒らせてしまった時はビンタどころか拳が飛んできたからな。普段はあんまり暴力とか振るってこないから余計に怖かった記憶がある


「……よし。とりあえず行くわ。明日、どうなったか報告するからぜってえ、聞いてくれよな」


「そんな次回予告みたいに軽く言ったらダメでしょ。けど、頑張って」


 僕は今から京子ちゃんとデートなんだ、と言い残して唯月は教室を出て行った。最後の最後で傷を抉りに来たか唯月。お前なんか笹川に美味しく頂かれてしまえばいい。


「……さて、行くか」


 いざ、戦場へ……!!





「遅い! 呼び出しておいて遅れるなんて、最悪じゃない」


「……」


 屋上に行くと、沙也加が待っていたお前が先に来たら俺が遅刻したみたいだから先に来て欲しくなかったんだけどな。スタートダッシュから大コケして気分だ……


「沙也加。今日、お前を呼んだのは昨日の事で言いたいことがあったんだ」


「な、なによ……」


「昨日は逃げるような事して、ごめん! あんな事になったけど、お前とは幼なじみとして今まで通り、仲良くやって行きたいんだ! だから、この通り!」


 今の俺の気持ちを全力で込め、頭を下げる。どうだ……? 伝わったか……?

 

「……カ。」


「え?」


「柊夜の……バカー!!」


「ぐわらばっ!?」


 沙也加の渾身のストレートが顔面に直撃、そして後ろに吹っ飛ぶ俺。冷静に解説してるけど、めちゃくちゃ痛い。


「ハァ……ハァ……ほんと、アンタってバカ。人の気もしらないで勝手に突っ走って……幼なじみとして仲良くやって行きたい!? ほんっとバカ!! アンタなんか、大っ嫌い!!」


「あ、待ってくれ沙也加! くそ……」


 呼び止め虚しく、沙也加は屋上を走り去って行った。昨日の俺、みたいだな。それに……


「アイツ、泣いてたな……」


 やっちまった、本当にやっちまたよ俺。大嫌いまで言われちまったし、最悪じゃねぇかよ。ハァ……もう、諦めるしかないのかな。いや、まだ諦めるな俺。まだチャンスはあるはずだ。とりあえず、ほとぼりが冷めるまで様子をみて、どうするか考えてみるか。


「とりあえず、帰ろう。イテテ……」


 血の味がする口内の不快感を耐えつつ、俺も屋上を後にした。それにしても、昨日からツイてないよな、俺……







「なんなのよ……柊夜のヤツ! けど、やりすぎたかな……」


 柊夜を殴り飛ばした右手がまだ痛い。アイツはもっと、痛いんだろうな。あんな風に言ってしまったけど、私は柊夜が大好きだ。素直になれない自分にも、柊夜のあの言葉にも腹が立つ。それもこれも、昨日の柊夜が私の返事をちゃんと聞かずに帰ってしまったから悪いんだ。だけど──


「さっき、ちゃんと大好きって言えば良かったな……」


 柊夜を拒絶するような言葉を言ってしまった事に後悔しながら、私は帰路についた。




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