002 大丈夫じゃない、問題だ
「──というわけで、フラれちまった」
「え!? フラれちゃったの!? 僕的に成功すると思ってたのに」
フラれ騒動から一日が経った翌日の朝。俺は教室で昨日の事を報告した。
柏原 唯月。中性的な顔立ちで男としては少し長めの襟足。何度も思うが本当に男なのか疑うくらいに可愛い顔をしている。お姉様方に受けが良さそうだ
「だからな、唯月。俺は決めたんだよ」
「決めたって何を? 新しい恋でも探すの?」
「いや、恋愛はちょっと休憩だ。俺は残りの二年間、青春を謳歌する事にした。もうこんな気持ちにはなりたくない」
そのためにはまず、友達を増やさないとな。別にボッチではないが、友人と呼べる存在は少ない。あれ? 俺、友達少なすぎ……?
「そっか。けど本当に大丈夫なの?」
「大丈夫って、何が?」
「戸崎さんとは幼なじみなんだよね? 家も隣って言ってたし、会うこと絶対あるから、顔合わせづらくないかな」
盲点だった。あの時はショックのあまり全力疾走して逃げてしまったが、そういえばそうだった。あんな去り方したら、幼なじみとして接するどころか気まずさが勝ってしまうのは確実。俺は本当に愚かな奴です……
「……とりあえず、これからも幼なじみとして仲良くしてくれって謝る事にする」
「そうだよ、相川くん。幼なじみは大事にしないと」
いきなり唯月の頭上に乗せられた二つのマウンティン。うわ、エッロ。朝からなんてもん見せやがる。
「わわっ、京子ちゃん。いつの間に後ろに!?」
「よ、笹崎。朝からお熱いな」
「おはよ、相川くん、唯月」
艶のある黒のショートヘアに、少し幼い顔立ちだが、パッチリ二重にさくらんぼみたいな唇。極めつけは顔に似合わない二つのマウンティンを持つ女の名は笹崎 京子。唯月の彼女でもある。そして名前が凄い噛みやすい名前をしているのも特徴だ
「京子ちゃん、いつも言ってる事だけど、頭に乗せるのやめてよ。恥ずかしいんだからさ」
「ふふ、赤くなって可愛いね、唯月は。それより相川くんがこんな時間にいるのは珍しいね。どうしたの?」
とりあえず、人前でそんな事はやめていただきたいところだ。今の俺に精神的なダメージとしてかなり効く。だがここは何食わぬ顔で対応するとしよう
「昨日、沙也加に告白したんだよ」
「お、遂に告白したんだ。それで、結果は?」
「フラれた。それで全力疾走して逃げたんだよ、俺。情けないよな……」
あぁ、思い出したくないけどアイツの嫌そうな表情がリプレイされる。忘れろ俺、忘れるんだ。そうしないと精神的にやられてしまうぞ
「あー……ごめんなさい。けど、フラれたからってそんな事したら、戸崎さん怒ってるよ、きっと」
「そうだよな。とにかく、今日から俺は二人以外の友達を増やす事にした。楽しい学園生活を送るためにな。」
とりあえず、クラスにどんなやつがいるか再確認だ。幸い、まだ新学期が始まって二週間。今からでも馴染めるはずだ。というよりか新学期始まって早々にフラれたんだな、俺。そう考えるとめちゃくちゃ悲しいものがある
そうしているうちにクラスには人が集まり始め、先生が来たので一旦解散となった。沙也加もいつの間にか来ていたみたいで、俺を一睨みして席についていた。想像以上に怒ってるな……。これは謝る時にひと悶着ありそうだ