010 希望と絶望の班決めタイム
「うーしお前ら、今日は来週末に行う宿泊研修の班を決めるぞー」
「ダニィ!?」
「静かにしろ相川。人数は基本的に六人一組な。あと、男女混合で決めるように。俺はここで寝とくから、決まったら声かけてくれ。以上」
班決め。それは俺みたいな友達が少ない人間にとってかなり過酷な決め事である。俺としては沙也加と同じ班になりたい所だが、半殺し事件(仮)が起きてから未だに気まずい感じで会話もまともにできていない。唯月と笹川だけじゃ人数が足りないぞ! とりあえず二人に声かけるか。
「唯月、笹川。俺と班を組んでくれ」
「うん、いいよ。僕たちもそのつもりだったんだ。ね、京子」
「そうだねぇ。けど男子一人と女子二人はどうするの?」
そうだ。男子の方はなんとかなりそうだが、女子はどうする。ここは笹川に頼むしかないか。えぇい、ままよ!
「笹川、誰か仲のいい女子はいないのか? いたら連れて来てほしいんだが」
「オッケー。任せてよ」
よし、これで女子はなんとかなりそうだ。後は、アイツだな。結構人気者だから、決まってなかったらいいんだけどな。
「西原、もう班は組んだのか?」
「それがな、まだなんよ。このままじゃ淋しい宿泊研修になってまうわ、マジで」
「なら俺たちの班に来てくれよ。男子があと一人決まってなくてさ」
「ホンマか!? いやぁ、それは助かるわ。喜んでお供するわ」
いよっしゃー! これで男子は決まった! あとは笹川が連れてきた子を入れれば……完ぺ───ファッ!?
「お待たせ相川くん。連れてきたよ、戸崎さんと……」
「……倉敷麻奈。よろしく」
は、図ったな笹川ァァァァァ!! あの事件を知りながらお前はァァァァァ!! 倉敷さんが本命の友人なんだろぉぉぉぉ!?
「あ、あはは……柊夜、ごめん」
「唯月、お前は悪くない。だから、気にするな」
悪いのはお前の隣でニヤニヤしてる小悪魔のせいだからな。そらみろ、西原と倉敷さんが困惑してるだろうが。それに加えて沙也加がいるから気まずさが三倍増しだ。やってくれたな笹川!!
「よし、それじゃあ私は先生に伝えてくるね。班長はそうだね、相川くんで決まりだね」
おいぃぃぃ! 元凶がどっか行くんじゃねぇよ! あとついでに俺を班長にしやがってぇぇぇ!
「……相川くん、さっきから百面相だけど、大丈夫……?」
「いや、俺にも分からんわ」
この後、沙也加ともほとんど会話することもなく、ⅬHRが終わり、宿泊研修の班が決まった。俺にとっては希望か絶望なのか分からない班構成だが、ある意味チャンスかもしれない。この宿泊研修で、沙也加と普通に雑談できるようになってやる! そう決意しながら帰路に着いた。
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「ふーん。お兄ちゃん、さやねぇとあんな事があったのに同じ班なんだ。凄いね、ある意味尊敬するかも」
「お前なぁ、他人事だと思って楽しんでるだろ。こっちは気まずくて大変なんだぞ」
家に帰ると春華がいたので今日の件を伝えると案の定、バカにされる俺。やっぱこいつに沙也加関係の事は言わない方がいいかもしれないな。こっちのメンタルが崩壊しそうだ。
「だけどなんで一年と二年の合同行事なの? 最悪なんですけど」
「仕方ないだろ。親睦を深めるとかなんとかってうちの学校の方針なんだからよ」
そう、この宿泊研修は一年と二年の合同行事なので、春華ももちろん行かなければならない。こういうの嫌いそうだもんな、コイツ。おそらくだが、有希と同じ班の筈だ。
「あ、そういえば西原も同じ班なんだよ。良かったな、春華」
「ハァ!? 別に私に関係ないじゃん! いちいちいらないよそんな情報!」
西原の名前を出すと、凄い勢いで反論された。そんな風に必死だと逆に分かりやすいぞ春華。この前の一件から気になってるんだろ。そう思うとこの反抗期娘も可愛く見えてきたな。
「ともかく、お互い頑張ろうぜ」
「……」
この希望と絶望が入り混じる宿泊研修……生き抜いてやる。そして沙也加ともう一度、他愛もない話が出来るようにまで持っていってやる!