プロローグ
処女作
本当に、普段だったらこんなミス、アタシはやらかさないんだ。
そもそも、「元の姿」に戻るのなんて簡単じゃない。体のどこかから血を出して、なおかつその血で簡単な魔法陣を描く必要がある。
だからこうして、「元の姿」を人間の前で晒すなんて絶対ありえない。夢だ。夢だと思いたい。
いくらアタシが紙で指を切ったからって、いくら隣の席の男子が魔法陣を覚えちゃうようなオカルトオタクだからって、こうして教室で「天使の姿に戻っちゃう」なんて誰が考えたよ。
あぁ、なんて言い訳しよう。
コスプレ?手品?幻覚?いやいやどれも無理があるぞ。
もっと上手い言い訳…ううん…
こういう時ってほーんと頭が回らない。ただただ頭が痛くなるだけ。この頭がギューって縛られるような感覚。この体に入って15年経つけど、未だに慣れない。
ただただ頭が痛くなるだけで、何の解決法も言い訳も思いつかない。
いや、そもそも言い訳する必要なんであるか?
幸いにして、こいつ以外教室には誰もいない。
つまり……
「つまり、僕さえ消しちゃえば、君が『元天使族』だって、誰にも気づかれないって訳だ」
そうお前さえ…って、は?
「一体いつから――――人外は自分だけと錯覚していた?」
どこかで聞いたようなセリフを吐いて、オカルトオタク…「佐藤 真鳳」は立ち去っていった。
な…なんだよ、なんだよなんだよ!!なんなんだよ!!
まって、頭の中の整理ができない。ごっちゃごちゃだよ。
この頭に全ての血が集中するような感覚。
これはアタシの考えが追いついてない証拠。端的に言えば、アタシは馬鹿なので、テンパってます。
でも、でもでもよ?いくらアイツがオカルトオタクだからって、いきなり魔法陣を描いて、アタシの今の姿を見て、平然と去って行くか……?
答えは否。普通テンパる。アタシのように。っていうかなんでアイツが飄々としててアタシがこんなに慌ててるんだよー!
もしかして……あいつはただのオカルトオタクじゃない?
そりゃそうだよ、いくらオカルトオタクだからって、いきなり人様の指を掴んで魔法陣を描くわけないじゃん!
もしかして……もしかして、アイツ、アタシと同じ、「天使族」…??
あービックリした!あいつもアタシと同じ天使族かよ!!生き残ってるのアタシだけかと思ったけど、そうでもないんだなー。
っていうか何しに来たんだアイツ。
一息つく間もなく、すぐ変身を解いた。
油断は禁物。アイツが去っていった後、もし誰かが入ってきたら面倒なことになる。
いやーでもよかったよかった!同族なら正体バラされる心配ないじゃん!アイツだって「元天使族」なんてバレたら、良くて実験対象、悪けりゃ処刑だもんねー!
元々大して頭の良くないアタシは、あいつの本性や目的を全くもって勘違いしていた。
それに気が付き、あの時殺しておかなかった事を後悔するのは、もう取り返しのつかないくらい時間が経ってしまった後だった。
設定とか何も考えずに書いてるのでお手柔らかに…
とはいえ、なにか矛盾していたりおかしいところがありましたら教えて頂けると幸いです