仮面舞踏会へのお誘い
第七話 「仮面舞踏会へのお誘い」
大正108年 6月 1日 0時 44分
オワリコマキーン歴1000年 1月 1日 17:30 (1日目)
@シゾーカ
コマンド移動『舞踏会場』を選択すると、石造りの大きな白亜の洋館がそこにあった。
正面に大きな張り出し屋根がしつらえてあり、大型の馬車が何台も停まれるほどの立派な車回しが設えてある。
玄関だけで15メートルもあるのに、そこから左右に七部屋ずつ伸びて総二階になっている。
本当に大きい。
でもこの場所にはみんなコマンド移動で来る筈だから、車回しは全く必要はない。
洋館の廻りは綺麗に間伐された林が囲んでいて、後ろには左右上下に曲がりくねった石畳の道が続き、遥か遠くに門が見える。
この洋館の入り口のようだ。
歩いて行ったら30分は掛かるだろう。
でも舞踏会場には『移動』コマンドでしか来られないから、遠くにある門も全く必要ない。筈だ。
車回しの前には大きな池があり、真ん中に筋肉モリモリの男が横向きで、目一杯身体中の筋肉を見せつけてくる『サイドチェスト』のポーズで立っている彫像がめちゃ目立つ。
その彫像はニカッと笑った笑顔になっていて、『口から弧を描いて噴水している』なら良かったのだが、噴水と言うには勢いが無く、口からダラダラ流れ出た水が、顎・胸・ブーメランパンツと伝わって池にびちゃびちゃ落ちている。
噴水なのか?
「スッゲー笑顔でゲロってるみたいになってるやん」
思わず突っ込みが出てしまった。
「良いか、サトル?くれぐれも我の事は他の者には話すなよ。神候補の能力は戦闘において最も重要な情報だ。しかし逆も真なり、こちらは何でも良いから他の神候補の情報が欲しい、誰も何も喋らんだろうがな」
そう言うシゾーカの神は、見ただけで「どんな神か?」の情報を与え過ぎてしまう損なヤツだなと、ヒョロ長もじゃメガネは感じた。
「サトルさまぁ、お土産よろしくでありんすぅ」
アイリが王城の中を漂いながら言った。
ヒラヒラと舞う薄い羽衣。そこから透ける艶かしいアイリの肢体。
アイリと会話するために『止むおえず』スケスケの羽衣をガン見して、少しムチっとした白い肌を『見てしまう』が、やはり大事な部分は見えない。
見えそうで見えない。
一番興奮するやつだ。
「いやお土産って、遊びに行く訳じゃないんだから」
甘えた声を出しながら、豊満なおっぱいをサトルの頭の上に乗せて、おっぱいで王の頭に着陸するアイリ。
頭と背中に直に感じる感触と暖かい体温がとてつもなく気持ちいい。
こ、ここは天国か?顔が人目もはばからず二ヘラーとなっている。
羨ましいぞサトル。
ふと見ると、サトルの横でじっと国王を見つめているテンコがいた。
黒づくめの幻術師は、鍔広の三角帽の奥から物欲しそうな目でサトルを見ながら、テンコ自身を指差している。
「え!?何?お前もお土産が欲しいのか?」
幻術師は目をキラキラ輝かせながらガクガク頷いた。
この娘は喋れないのか?ならば気を付けて付き合わないといけないなと、王様らしく臣下を思いやるのであった。
そんなイベントを王城でこなして、サトルと桜姫は仮面舞踏会に来ていた。
舞踏会場に入るためにサトルは、ディオニソスが送ってきた少し光沢のある漆黒のタキシードと、目の周りを隠す赤いラメラメキラキラの仮面を着けている。
桜姫はキラキラと光りを反射するスパンコールが散りばめられた目が覚めるようなスカイブルーのドレスに、ペパーミントグリーンの仮面を着けている。
「ディオニソスも粋なことをするじゃないか」
金髪の彼女が着ている美しくも爽やかなドレスを、王城で初めて見た時はそう思った。
しかし、視界の右上に点滅している赤い光に導かれて開いたディオニソスからのメールには、「やぁ諸君、俺様が送ったタキシードとドレスは気に入ってくれたかな?これからも一ヶ月毎に開かれる俺様主催のイベントには、必ず着て出席するように。------追伸。お前たちは未だドレスを製作できる城レベルに達していないだろうから、タキシードは200・ドレスは300神ポイントを徴収しておいた。俺様ってチョー優しいよな?俺様ってグレート?」と書いてあった。
確認すると本当に神ポイントが残り500しか無い。
「ふざけるなクソニソスっっっ。何かで先に神ポイント使ってたら即アウトだったじゃないか」
実はスタートダッシュで神ポイントを使いまくって王城レベルを速攻で「2」まで上げた国が一つ、ディオニソスの贈り物を受け取って自滅した。
姫騎士のドレス姿はとても美しいのだが、残念なことがある。
ドレスの背中は大きく開いていて、両肩と胸の上部が露出していて色っぽい。
色っぽいはずなのだが、彼女の場合、姫騎士の特性である『ビキニアーマーしか着けられない』と言う呪いが掛かっているので、ビキニアーマーと言う鉄の鎧の上からドレスを着ている。
そのため胸周りは異様な感じになっているのだ。
「ねぇ桜姫?ちょっと時間があるからダンスのレッスンしてくれないか?」
「まぁ、私が主君にダンスのお手引きをするですの?喜んでお教えいたしますですわ」
キラキラ光る水色ドレスの彼女が、スっとサトルの後ろに回り込み、「それでは主君、失礼しますですわ」主君の手を躊躇なくギュッと握る。
「あっ・・・」
敏感になり過ぎている手は、桜姫の手から伝わる情報をガンガン送り込んでくる。
柔らかくて暖かい。そして髪から良い香りが漂ってくる。
「どうしました?」
ちょっと首を傾げてニコッと笑う桜姫。
「お、女の子と手を繋いでダンスなんて、中学校のマイムマイム以来経験ないから、恥ずかしくなっちゃって・・・」
「・・・ちゅう・・まい?・・って何ですの?」
「あ、いや、気にしなくていい。それよりダンスを教えてくれよ」
ニカッと笑った最強の笑顔でゲロを吐くサイドチェスト像のある池の前で、ダンスレッスンは始まった。
「良いですか?背筋をピンと伸ばして、胸を張って・・・そうそう、そうですわ。良い感じですわ」
姫騎士のリードは優しく、良い匂いがした。
「では主君、この態勢を維持したまま、右手を私の腰に置いてくださいませですわ」
「こ、腰に手を回すのか?」
「密着しないとダンスは踊れませんですわ?」
(顔が)近い、近すぎる。
その上腰に手を回すって・・・あぁやーらかい。
僕なんかがこんな美少女の身体に触って良いのだろうか?
などとサトルが思っていると、
「主君、もっとしっかり腰を掴んでくださいませ。そんな微妙な触り方ではくすぐったいですわ」
と怒られてしまった。
怒った顔も可愛いぞ。
ちょっとしたダンスのレクチャーを受けて、舞踏会場に入った二人。
舞踏会場はもちろんダンスホールなので、中はとても広く、いろいろな人が招待された通りペアで居た。
みんなてんでバラバラに会場内に散らばっている。
イスもテーブルも無いので、席順も何もあるわけがなく、参加者はそれぞれのパートナーと一緒に適当に立っているという訳である。
明らかに人間ではない人たちもたくさん混ざっている。
巨人族や手足がいっぱい付いたヤツ、四つん這いになっている者もいる。
あの時、宇宙を跳んで惑星オワリコマキーン近くに来たとき、神候補の光りは全方向から飛んできていた。
つまり地球から来た人(?)は少ないのだ。
人間型が多いのだが、よく見ると同じ人型でも耳が尖っていたり豚のような顔だったり、犬のような顔だったりしている。
さながらエルフ・オーク・コボルドといったところか。
四足歩行の者もそれ以上の足を持っている人(?)もいる。
種族も身長差もぐちゃぐちゃだ。
どう見ても目元だけの仮面では、隠しきれない情報がダダ漏れなのだが?
あのマスクに意味はあるのだろうか?
舞踏はどうなるんだ?四本足とかでも大丈夫なのか?
会場はダンスホールとステージから成っており、ステージ横にはオーケストラの一団が静かな曲を演奏している。
天井からは沢山の蝋燭が灯っているシャンデリアが十五基も吊り下がっていて、壁にもずらりと蝋燭の燭台が並んでいる。
お陰で夜なのに眩しいくらいに明るい光量を放っている。
床は大理石が敷き詰められており、ピカピカツルツルに磨き上げられている。
音楽が止み、ステージにスポットライトが当たった。
光の中に巨大な人形の何かが、まるでイリュージョンマジックのようにふいに現れた。
「やぁみんな、元気ぃぃぃ?今日は、この俺様主宰の仮面舞踏パーティーに参加してくれて、ありがとうぉぉぉぉぉ」
舞踏会場の奥にあるステージの上には、筋肉モリモリでパッつんパッつんの白いTシャツを着て、スパンコールを散りばめたド派手な銀色のハーフパンツをサスペンダーで吊っている、スネ毛ボーボーな巨人が居る。それがディオニソスだ。
「まずぅ、さぁいしょに言っておくけどぉ、この舞踏会場、つまり俺様のゾーン内での戦闘行為は一切禁止ね。この約束を破ったヤツは俺様が直々に潰す。命懸けで試してもイーけどぉ、お前らひよっこが束になっても勝てないからな。よぉく覚えとけよ?」
ステージの男の顔はガッツリとメイクをしているが、アゴの周りには刈り込まれた髭が生え揃っている。
背中にサンバカーニバルのような赤・青・黄色の原色バリバリな羽を背負って、身の丈4メートルの巨人だ。
マイクを持った右手の小指が立っている。
あの声 、ディオニソスだ。
あんなデカイとは思わなかった。
そして小指が立っている。
「来なきゃ殺すって言っておいてよく言うよ」
サトルがボソッと呟くと、
「きみきみぃぃぃ、『殺す』なぁんて言ってないよぉぉぉん。『消滅する』って言っただぁけぇさぁぁぁ。言葉には気を付けておくれよぉぉぉ」
遠く離れているはずのディオニソスに届いたサトルの呟きは、しっかり聞かれていた。
「地獄耳かクソニソス」
再びボソッと呟くと、ディオニソスが近くにあったシャンパンボトルの頭を軽くデコピンした。
その刹那、サトルの顔の横を一瞬で何かが通り過ぎていき、後ろの壁がドカーンと音を立てて爆発した。
デコピンによってボトルの頭はスパッと鋭利な刃物でカットしたように切れ、切れた頭が音速を超えて壁に突き刺さったのだ。
「クソ・・・何て言ったの?坊や?言葉には気を付けろよ?ガキ!」
ガヤガヤしていた会場はシーンと鎮まり返り、サトルはただガクガクうなづいていた。
「まぁずぅわぁぁ、第百回神昇格試験全参加者四十八人のランキングを発表しちゃいまあっす」
ディオニソスのその言葉に会場中がざわめいた。
「四十七都道府県だから四十七人じゃないのか?」「四十七?四十八?何?」「誰だよ四十八人目」「ゼウスはこの事態を認識しているのか?」
ステージ上のド派手神にとって、会場の反応がとても気分を盛り上げたらしく、彼は満面の笑顔になって
「まぁまぁ落ち着いてぇぇ。俺様にもなぁぜ受験者が一人増えているのか、さぁぁぁっぱり解らないけどぉぉぉ、そこは俺様パワーで『サドガッシマー』の国を増やしておいたから無問題さぁぁ」
「お前が問題無くても、他がいろいろ問題だらけだろうが」
サトルは癖でツッコミが止まらない。
「主君、あまりツッコミをいれない方が良いかと存じますですわ。うっかりな言葉でうっかり殺されかねないですわ」
「そ、そうだね」
「さて、実はもぉ既に三つの国が消滅しちゃいまぁしたぁあ。消滅した国わぁぁ、『アオ・マーリー』『キオト』『コーチー』の三国だ。みんなも消滅しないようにがんばれー。ひゃーーっはっはっはっは」
ステージ上ではディオニソスが腰をクネクネさせながら独演会を続けている。
「こぉの地図を見ろ!」
ステージのスクリーンに十字に区切られた網目が表示され、そこに日本の地図と同じ配置で四角い国が並べられている。
実際の都道府県の形は全く無視して、それぞれの国(都道府県)が一つ一つ正方形のマスに押し込められている。シゾーカは実際真四角な土地なので、何処の国もあの通りなのだろう。
「ここにぃ四十七都道府県プラス『サドガッシマー』の地図がある。見ぃた通りぃぃ、隣合ってる国とそうでない国があぁる。戦争行動はとぉなぁりぃの国同士で行うからぁ、先ほど言った三国を消すとぉぉぉ」
四角いブロックで構成された日本地図から『アオ・マーリー』『キオト』『コーチー』が消え、全てのブロックが右詰めで揃うようにガッチャンと動いた。
「地図が小さくなる訳だぁぁぁ。果たして最後にはだぁれが残るのかなぁ?俺様には関係無いけどなぁ。ひゃーーっはっはっはっは」
ひとしきり笑ったディオニソスが指をパチンと鳴らすと、ホールに吊ってある蝋燭のシャンデリアが、ロウソクなのに不思議と暗くなり、壁に設えてある燭台で燃える蝋燭の炎がちらちらとムーディーな雰囲気を醸し出した。
「第一回の俺様の集いはここまでだぁ。これから毎月召集を掛けるからぁあ、欠ぁかさず出席するよぉぉぉに。もっちろん遅刻は即失格な」
ブンチャッチャブンチャッチャ・・・、
ステージ横のオーケストラがゆったりとしたワルツを演奏し始めた。
「ここからはダぁぁぁンスタぁイム。歌姫も用意してるゼぇぇ。紹介しよう 歌姫の『ディーバーニソス』俺様だぁぁ。ヒャッホォォォォ」
ディオニソスがそう叫んで右手で服を掴み、バッと引き剥がすと、虹色に輝く極彩色のドレスに変わっていて、髪もぎゅーんと伸びてウェーブ掛かった金髪に変わっている。
唇には真っ赤な口紅が塗られていて、おっぱいもばいーんとでかく付いている。
しかしアゴ周りに生えているキレイに刈り込まれた髭はそのままだ。
「お前が歌うのかよ」
「主君、ツッコミは入れない方が良いとあれほど言いましたですわ」
うっかりツッコんだサトルに、すかさず桜姫が裏拳を入れながらツッコむ。
「ツッコミのスキルを覚えたな、桜姫?だったら鞭でおもいッきりツッコンでくれてもいいよ。って何を言っているんだ僕は」
「皆様、楽団の音楽と歌で、今宵はゆったりとお過ごしくださいませ」
ディオニソスはディーバーニソスに変わったことで、声まで甲高い女性の声に変わっていて、話し方もまともになっていた。
流れていたワルツは一頻り盛り上がり、サビの部分が終わって、いよいよディーバーニソスが唄い始めた。
おちゃらけかと思われたものごっつい女装したディオニソスだが、まるで別人(別神?)だった。
透き通るようなディーバーニソスの唄はとても耳心地の良いものディオニソス、芸能の神様だけに神掛かっていた。
「やるなクソニソス」と言いたいところをグッとこらえた。
「主君、踊りをお相手願いますですわ」
ホールに集まっている人たちの中でも一際目を惹く金髪美少女の桜姫が、自分からサトルをダンスに誘ってきた。
今までの人生を振り返っても、こんな幸せなことはかつて無かった。
ここが異世界でなければ「後で高額な請求書が送られてくるのではないか、イヤ、むしろその方が納得できる」と心配になってしまうくらいあり得ないシチュエーションだ。
「で、ではお嬢様、お、御手をどうぞ」
サトルが桜姫に仕込まれた通り、直立不動の状態から軽く会釈をして左手を差し出す。
※初期設定のため、本編とは違う部分がございます。
役職:補佐官 秘書
名前:星五 姫騎士 桜姫
別名:オ
桜姫 姫騎士 ビキニアーマー
年齢:20
性別:女
誕生日:-
血液型:A
身長:161センチ
体重:46キロ
性格:ど真面目
世話好き
気が回る
几帳面
甘えたいけどつい我慢しちゃう
個性:一人称は「私」
主君
金髪で腰まである長髪を後ろで一縛りにしている。
白い肌 魅力的な太もも 可愛いおへそ Bカップの胸 とても健康的で魅力的な身体をしている。
特技:溢れるカリスマで人を惹き付ける。
能力・スキル:騎士道精神
王宮マナー
スキル[馬術]
スキル[細剣]レベルマスター
スキル[盾]レベルマスター
呪い[ビキニアーマーしか着られない]
家事全般
秘書としてのマネジメントスキル
姫として人を惹き付けるオーラ
カリスマスキル
見た目:青をベースに金色の縁が付いたビキニアーマーを着けている。ビキニアーマーは呪い(強制デメリットスキル)のために外すことはできない。
丸盾
フルーレ
ビキニアーマーと同じカラーリングの
グリーブ・レガース・肘当て(右手のみ)
頭にティアラを乗せている。
生い立ち:今は無き[邪馬たぁ国]の姫だったのだが、子供だったために侵略して来た[竜宮王国]に拉致され、騎士として育てられる。姫であり騎士であるオウキちゃんはついに[姫騎士]として覚醒することになる。
その後[竜宮王国]も滅亡してしまい、いつか[邪馬たぁ国]を復活させるためにサトルに仕えることになる。
その他:シゾーカ皇国 秘書
愛馬[スノーホワイト]
白く大きな軍馬、頭と身体に鎧を着けている。
[邪馬たぁ国]復活の為、
[邪馬たぁ国の朱印]を隠し持っている。