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立場逆転 異世界人が日本に召喚されました

作者: 月乃杜

 異世界人を逆に日本へと召喚する舞台装置を考え、試しに書いてみたモノになります。




.

 東京都千代田区永田町一丁目……国会議事堂。


 今現在、この場に相応しい格好の人間が十数人。


 明らかに相応しくない、浮いた格好の人間が数十人も存在しており、更にあからさまな高校生らしき者も立っていた。


 尚、相応しい格好というのはビシッと決まっているスーツ姿である。


 では相応しくないとは?


 明らかに高校生であり、学ランを着ている少年に関しては論外。


 確かに学生服は学生にとって正装だが、国会議事堂での格好ではあるまい。


 まあ、見学者であるならワンチャンかも。


 そして数十人の相応しくない格好な人間。


 例えば薄いピンク色をしたドレス姿の少女だとか、ケバい化粧をした少女に似た顔立ちの女性。


 何だか高そうな赤い服装に冠を被った初老の男。


 騎士だか兵士だか知らないけど、金属製の鎧兜に身を包んだ男連中。


 他にもカイゼル髭を蓄えたオッサン。


 お姫様然とした少女を護る位置に立っている騎士っぽい女性、『くっころ』とかが似合いそうだ。


 ある意味で壮観。


 何処のコスプレイヤー? などと思いたくなる格好の連中だった。


「初めまして。私は日本国首相……ああいえ、貴方達には宰相と言った方が言葉の通りも良いですかな?」


「ニホンコク……の宰相……ですと?」


 カイゼル髭が口を開いて首相を睨む。


「ええ。我が国の国家元首……貴方達で云う国王陛下はいらっしゃいません」


 天皇陛下の事である。


 まさか天皇陛下や親王様など、皇族の方々をこんな場に連れては来れない。


 国会議事堂という場所は兎も角、情報では魔法なども扱う連中なのだから。


 危険人物に近付けるなど有り得まい。


 首相を宰相と呼び変えたけど、実際にはどちらにせよ内閣総理大臣の事だ。


 とはいえ日本では首相の方が通りも良いし、他なら総理と呼ばれるだろう。


 逆に召喚された連中は、内閣総理大臣に相当する者を宰相と呼んでいる。


 それを識っている者から内閣総理大臣は聞いた。



 そう、識っている者から……である。


「では此方も御挨拶を申し上げます。私はペンタラム王国の王女、ティシリア・レミュール・ペンタラム。此方は我が父、アルベリヒ・オレイア・ペンタラム。母のティアル・ルミナス・ペンタラム。以下、宰相や騎士達ですわ」


『『『『姫様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』』』』


 あんまりな紹介に絶叫が上がるが、ティシリア姫は全く気にしていない。


(名前の在り方……やはりあの世界の人間だな。しかもティアル……ね)


 高校生らしき少年は睥睨するかの如くだ。


「で、此方は私の守護騎士を務めます」


「アリーゼ・リュミエール・ペンタラムです」


「ペンタラム?」


「はい。彼女は腹違いの姉に当たります。ですが母親の身分が平民である為に、ペンタラムこそ名乗っていますが王位継承権も無く、私の守護役となりました」


 要するに正式な側室処か妾ですらない、完全な不義の子という訳だ。


 火遊びの結果だろうが、王妃らしきティアルという中年女が不愉快そうだ。


 高校生の少年は人間関係を一発で把握した。


 まず、ティアル王妃? は前国王の娘の王女。


 故に目の前の国王らしき人物は、貴族家から婿養子となった男だろう。


 そしてティアルは美女ではあるが、どうにもキツい性格だから萎える。


 結果としてティアルより別の女、しかも平民で純朴な娘さんと好い仲となり、彼女より先に孕ませた。


 母親がどうなったか知らないけど、流石に物理的な首切りはしてないと思いたい処だったりする。


 まあ、謀反とかしてない辺りから生きてはいるのかも知れない。


 アリーゼは本来なら国王の娘だが、国王が婿養子で王妃の尻に敷かれてては、良くても騎士の身分で妹の護衛となるのがやっとだったのだろう。


「貴方達は我が日本国が、危機に瀕した為に喚び出したのです」


「危機に?」


「はい。ダンジョンと呼ばれる迷宮が突如として顕れまして、魔物がダンジョンから溢れ出さんとしていたので、我が国の自衛隊にて何とかしてはみましたが、補給線の維持も困難な上に武器も一〇層より下の魔物には通じない有り様です。より強力な武器も持たせましたが、補給線の維持などが出来ないとすぐに戦えなくなります」


「は、はぁ……」


 何しろ、異世界召喚物にありがちな無限収納が可能なアイテムなり、魔法なりが有る訳でもないから。


「そこで我が国が誇る異世界研究者に、異世界人召喚の魔法陣を作らせました。異世界人が召喚される際、素晴らしいスキルが幾つか与えられるそうです」


 ティシリアが試しに調べてみれば、ステータス閲覧が可能な状態だった。


 確かに普通なら在りそうにないスキルが並ぶ。




名前:ティシリア・レミュール・ペンタラム

種族:霊人族

年齢:14歳


レベル:1


【スキル】

無限収納LV:−

魔導:LV:1

七色魔力:LV:1

魔力増加:LV:1

美的感覚:LV:4


【技能】

服飾縫製

菓子調理




 レベルが高いのが一つ、恐らくは初めから持っていたスキルなのだろう。


 タップしてみたら詳細の確認が出来た。


 【美的感覚】――美しいモノを美しいと感じ取れるセンス。何かを作る際には美的感覚の補正が掛かり、レベルに応じて美しく仕上げる事が可能。但し時代によって美は変化をする場合もある。


 要するに絵画や彫刻などを作れば、レベル次第では美術史に残る偉人にも成れるという事。


 そういえばティシリアはお菓子を作ったら、可成り見た目に美しい芸術品も斯くやなものを作っていたと思い出す。


 どうやらスキルの影響であった様だ。


「それで、私達にダンジョンを攻略しろ……と?」


「はい。その為の異世界人召喚ですので」


 丁寧な言い方をするが、正に慇懃無礼だ。


 余りにも丁寧過ぎるが故に逆に無礼になる。


「私はペンタラム王国では王女ですよ? 戦いなんてした事がありません」


「な〜に。自衛隊で訓練をして貰えば戦える様になるでしょう」


「しょ、召喚されたからといって戦う義務は!」


 ティシリアが苛立ちながら叫ぶものの、学ランを着た高校生らしき少年が柏手を打ちながら、内閣総理大臣の前に立つ。


「初めまして王女様」


「あ、貴方は?」


「内閣総理大臣の息子で、今回の異世界人召喚魔法陣を構築した者だよ」


「あ、貴方が!? いったい何の権利があってこんな誘拐染みた事を!」


「俺が構築した魔法陣には一つの制約が掛けられていてね、その制約に君らが引っ掛かったって訳だ」


「せ、制約?」


「そう。この魔法陣が起動して異世界人を召喚する為の謂わば条件」


「そ、それは……?」


 笑顔な少年だったけど、其処には得体も底も知れない迫力があり、ティシリアはチリチリとした緊張感に後退りしていた。


「簡単な事さ、あの魔法陣はカウンター型。つまり、異世界人召喚の魔法陣なり魔法なりが使われたなら、それに反応してその場の者を召喚するシステムだよ」


「なっ!?」


 ティシリアだけでなく、ティアル達も驚愕に目を見開いている。


「何の権利があってか? ならば逆に問うが何の権利があって、アンタらは日本人を召喚拉致しようとしたんだよ?」


「そ、れは……」


「今アンタらが感じている怒りは、アンタらが召喚をしようとしていた誰かしらが感じていたモノ。大方、またぞろ魔王でも顕れたから三年前……否、アンタらの感覚から三十年くらい前と同じく異世界人の召喚をしようとしたんだろ?」


「ど、どうして……」


「決まっている。俺こそ、その時に異世界へ集団拉致された一人だからな!」


「そんな……召喚された者は誰も異世界に帰れなかったと聞きました!」


「帰れたんだ。数年掛かりでスキルレベルを上げて、それで得た【魔法陣構築】スキルでな! アンタらを召喚した魔法陣はこいつで作り上げたものさ!」


 その絞り出す様な叫び、其処には確かな怨嗟。


「あ、ならお前は……」


「漸く思い出したかな? ティアル王女……今は王妃なんだったか?」


「カガワリョウタ……」


 嘉川亮太。


 三年前に異世界人召喚で召喚され、唯一の生き残りとなった少年。


 魔王を命からがら斃し、その後は消息を断っていたのだが、基本レベルやスキルレベルを上げて最終的に得た【魔法陣構築】スキルで地球に帰還。


 暫く行方不明になっていた息子に、嘉川首相は細かく事情を聞き出して今回の計画に乗る。


 ダンジョンが顕れた為、計画が開始された。


 因みに、ペンタラム王国やその他の国が異世界人の召喚拉致事件を起こさなかった場合、亮太がダンジョンに潜って事態の収拾に動く予定ながら、まんまと引っ掛かったのが前回と同じペンタラム王国である。




名前:嘉川亮太

種族:地球人

年齢:17歳


LV:255


【スキル】

魔導LV:MAX

剣術LV:MAX

瑠璃色魔術LV:MAX

射撃術LV:MAX

魔法陣構築LV:MAX

錬金術LV:MAX

限界突破LV:−

臨界突破LV:−


【技能】

逸撃ち

魔法陣生成

料理




 これが最終ステータス。


 その気になればソロでもダンジョン攻略は可能であるが、彼方側でも異変が起きたと考えた亮太が父親を巻き込んで計画を発動。


 召喚される相手に拘りは無かったか、三年前のあれこれを返した結果となる。


 この後、衣食住を質にされて彼女らは渋々ながら、ダンジョンに潜らされてしまう羽目に陥った。


 ティアル王妃は兎も角、ティシリア王女はまだ良識を持っていた為、自分達がしようとした事を逆にやられて文句は言えなかったのだと云う。




.

 ステータス的に解る人も居るかもですが、ペンタラム王国が在る異世界というのはヴィオーラです。




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― 新着の感想 ―
[一言] もっと詳しい内容で是非とも続きを読んでみたいです。
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