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先生と僕の異世界デバック滞在記  作者: 野良大介
序章 ポルティオン先生とスグル少年
7/56

第7話 ステータスオープン!

 ◇◆◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇◆◇



「ちょっとごめんなさいね。頭に手を突っ込みますよ」



 ◆◇▼◇◆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◆◇▼◇◆


【氏名】

 日向ヒナタ (スグル)


【性別】

 男性。


【年齢】

 満十歳。(朔弥三十二年四月一日、製造)


【容姿】

 身長/百三十センチ。中肉中背。

 頭髪/ライトブラウン。重度の巻毛。

 瞳/ダークブラウン。威嚇時には紅く発光。


【血液型】

 OOOオートリプル型。


【配偶者】

 なし。


【身元保証人】

 担任教諭・ポルティオン=ユミル。


【居住地】

 日本国/樹界表層オノゴロ島/高天ヶ原領高天ヶ原市叢雲町/白猫タンポポ団地六号宅。


【能力査定(評価D・C・B・A・S・SS)】


 龍脈形成

  規模A、練度S、制御A、持続B、還元C

 竜体形成

  規模S、練度S、制御A(暴走の前科あり)、持続B、還元C

 気/竜血

  転化率S

 竜体行使スタイル

  外装アウトフレーム

 戦闘ロール適性

  遠距離S、中距離A、近距離B


 総括

  全体的にみれば能力は高い。

  瞬間的な爆発力には優れるものの、持続性にやや欠ける。

  気や竜血の還元(破棄)能力は他のスペックに比べて稚拙で、周囲環境への悪影響は小さくない。

  非常に臆病で自身の能力を軽視する傾向があり、過剰な火力に頼りがち。

  優れた潜在能力を生かしきれない主な要因は精神面の未熟さにあると思われる。


【備考】

 元・神血覚醒機関イザナミ所有の使徒(人造天人)。

 始祖・哪吒の細胞を用いた複製体(クローン)の一体で、始祖再誕計画の一環にて意図せず誕生。

 特異反応がみられーーー【以下、閲覧不可】


【経歴】

 誕生。

 神血覚醒機関イザナミ・第六六研究施設・第六室にて、試作段階の人工子宮・天岩戸に突如()()した胎児は自ら龍脈を形成、宿った人工子宮を侵蝕し別物へと変質させた。

 外部からのあらゆる干渉を拒絶し続けたまま三歳児相当まで成長。

 神血覚醒機関イザナミはこれに『優』と名づけた。

 貴重な人工子宮を焼失させて爆誕。


 幼児期(三歳〜五歳)。

 哪吒オリジナルのものとは全く異なる能力を発現。

 上層部は優を再誕計画から除外、改めて特殊個体イレギュラーとして研究対象とする。

 空想の友だち(イマジナリーフレンド)『妖精さん』への深い依存がみられ、問題視される。

 底知れぬ潜在能力ゆえ暴走を危惧し廃棄が検討されるも、その存在と能力の希少性から予算を大幅に減らした観察継続が選択される。


 優の再現が難航する中、その研究の過程で得たデータにより人工子宮が抱えていた諸問題が解消。

 人工子宮の改良に目処がついたことで特異体『優』の完全再現計画は断念、凍結される。

 始祖再誕計画は『優』が齎した改良型人工子宮を用いた派生体(ニアモデル)の量産計画へシフトした。

 

 幼少期(六歳〜)

 問題視されていた妄想・虚言症状が落ち着き、寛解との判断が下される。

 慢性的な前線の人員不足を解消するため、他の派生体とともに前線への実験的投入がおこなわれる。


 九歳の秋。

 ヒト宣言事件後の法改正により、優を所有していた研究組織は解体。

 他の使徒同様、人権及び日本国籍第二種・高天ヶ原領民権を獲得。

 『優』を名とし、非哪吒を意味する隠語として『日向ヒナタ』を苗字とする。

 身柄は育成施設ゆりかごに移り、同施設にて一般教育が施される。


 九歳の冬。

 真国連軍が用いた瘴気によって大半が失われた前線主戦力の補填のため、前線への配属が正式に決定。

 所属を特務独立白猫師団とする。


 満十歳。

 収容満期となり育成施設より退所。

 再三の里親制度の利用勧告を本人が頑なに拒否。

 当局は優の保有する人権を一時凍結、再検査、再々検査をおこなった。

 特別高天ヶ原民・ポルティオン=ユミルは優の復権と親権の譲渡を要請。

 倫理委員会もこれに是正の立場を取って受理される。

 下記二項を条件に、本人が希望する一人暮らしが認可される。

 ・ポルティオン=ユミルを後見人とする。

 ・ポルティオン=ユミル所有の白猫タンポポ団地を居住地とする。



 十歳の四月。

 神血覚醒機関イザナミがこれまで秘匿を貫いていた始祖再誕計画に関する研究資料を開示、対象の危険性を主張し提訴した。

『『優』は我々が始祖再誕を目標に製作した物である。だが、提供した報告書にある通り、当初の計画とは異なる意図せぬ産物である。再現を幾度と試みるもことごとく失敗。遺憾ながら、我々は様々な諸事情により研究継続を断念し実機の所有権を放棄した。我々は要求する。無知なる諸君がアレに与えた自由、人権等権利を直ちに剥奪、その身柄を拘束し我々に引き渡したまえ。成長した『優』との交配によって我らの貴重な神血に取り返し不可な損害を与える恐れがある。そのような事態は全力で回避せねばならない。正直、アレの潜在能力は惜しい。しかし、断種を施した上で戦力として運用するか、今後の技術向上に期待して凍結保存が望ましいと考える。』

 演説の終盤、身元保証人であり担当弁護士でもある白猫が登場し、神血覚醒機関イザナミの代表へ再起不能となる危害を加えた。

『お断りします。彼は面白……希少な個体なので、引き続き僕が監視を担当します。権利? 責任? それは、彼が自分たちの研究室内で生じたモノだから、そういう主張ですか? 困ります。その理屈だとこの宇宙内に生じた全ての権利と責任が僕のモノとなってしまう。迷惑です。種を脅かす危険性? 数ヶ月後に絶滅するキミらがなんの心配を。……共同研究? えっと、それで僕になんの利が……? う〜ん、じゃあ、採用試験を受けてください。『この宇宙がどうして生まれたのか』、答えてみてください。参考資料は提供しましょう。脳に直接送りますね。まずは誕生直後から現在に至るまでの宇宙全体の観測データ……ちょ!? え、あの、大丈夫ですか!? この方、景気良く全身から吹き出し始めてますけど!?』


【所属】

 樹界太宰府/特務独立部隊白猫師団/斥候部隊三番隊『災害カラミティ』。

 構成員/三名。

 隊長/日向(ヒナタ) (スグル)

 隊員/神代(カミシロ) キラ

 隊員/星馬(ホシバ) タケシ


【賞罰】

『樹界の珍味食べ歩きレポート〜目玉編〜』、樹界攻略報告書白猫特別賞。

『夏・オコジョ観察日記』、夏休み生活作文銅賞。


 ◆◇▲◇◆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◆◇▲◇◆



「なにを見せられているのかと思えば、まさかの自作ステータス画面。しかも倫理委員会の天御柱(中枢電脳)不正閲覧アクセスしないと知りようのない情報がちらほらと。ったく! もぉ〜〜〜!! 今はそんなもの走馬灯で自作してる場合じゃないんですって! スグル君、起きてください。緊急事態発生です。起きてってば! キミね、このままだと死んじゃいますよ!?」



 ◇◆◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇◆◇

                 つづく

 この先は裏事情。

 読まなくても大丈夫。

 ほかに類を見ないほど長いので、上に戻って次に進んでください。



 ◇◆始まり◆◇


 幼神ガイア。

 幼子のような見た目からそう呼ばれるようになっただけ。

 実際に彼が子供であるのか、そもそも何者なのかもわからない。

 誰にも。彼にも。

 ただ在った。

 いつからも。いつまでも。


(……さみしいな)


 ふと、彼はそう思った。

 なので、もう一人自分がいれば、と増やしてみた。


 失敗。


 全能なる神の力をもってしても自分は創れず。

 途方もない彼の力を幾許か宿した出来損ない、塊がそこに生まれただけだった。


 しばらくして、幼神は気づく。

 片付け忘れていたそれの中に『変なモノ』がいる、と。


 触れようとしたら壊れた。


 しょぼ〜ん。


 幸い、永い時間を経てまた生じた。


 何度も何度も何度も。

 繰り返せば、幼神とて学ぶ。


 ここに、生じるの待ちきれず真似て創り出したモノがある。

 変なモノへのちょっかいはそれに任せてみる。


 無理に入れたら壊れた。

 再生を待ち、今度は三つに割ってからねじ込む。


 成功!

 やったね!


 ◇◆世界の始まり◆◇


 乱暴に分たれねじ込まれた三体は、幼神が言う『変なモノ』と接触し、その正体を知る。

 それは以前、幼神が産み出そうとした己の失敗作であった。

 (以降、『幻神』と呼称する)


 どうやら持て余した過剰な力が彼の覚醒を阻害している模様。

 力を削いで目覚めを促してみる。


 削いだ一部が使いの在り様を真似て形を取った。

 それらに意思が芽生えると、使いの作業を邪魔、もとい、手伝うようになった。

 (以降、聖霊と呼称)

 聖霊にならない削いだ力の処分に困り、そばにいた聖霊に押し付けた。


 負荷をさらに軽減したいが、聖霊(贄)が足りない。


 先に器となる形を用意して聖霊の誕生を促してみた。

 器を必要とする聖霊モドキ『人』が誕生した。


 器作りが面倒になってきた。

 自ら自己増殖できるように人の器を改良。(男女の誕生)

 人は自分たちだけで増えるようになった。

 

 天然モノな聖霊に比べて人の質は大きく劣る。

 器の出来にも左右され、器がなければ存在を保つこともできない。

 でも、出来が悪いほど妙に愛着が湧くから不思議なもの。

 使いや聖霊は出来損ないを愛でた。


 聖霊と人の目に使いの存在が異質と映るようだ。

 いまさらだが何者かと問う彼らに、使いは遥か外界より覗くガイアを指して答えた。


『アレの使いだ』


 聖霊や人らでは認識できない。

 それでも天からの使いと納得し敬うことにした。


 『天使』と呼ばれるようになったが、しばらくは気にしなかった。

 だが、『あっ、いえ。貴方ではなくそちらの……そうそう!』と言われることが多くなった。

 イラッとする。

 天使らは『ルシフェル』『ウィズダム』『ジャスティス』と名乗ることにした。

 名に特別な意味はない。


 聖霊と人も真似て自分の名を考えた。

 名付けブームが到来。(不滅なる天使に認識される=真名の誕生)

 命名権は事象の第一発見者、または作成者のものとする。

 創造ラッシュが始まる。

 あとで冷静になった生産者が自作品と認めず命名を放棄したりと、よくわからないモノで溢れ返る混沌時代。

 名は実物や名づけ親が朽ちてもその在り様生き様を宿す言葉となって残った。


 古参の者が以降の人の世話をするようになり、天使たちは暇になった。

 創作に打ち込む。


 久方ぶりに人前に姿を現すもガッカリ。

 手塩をかけ育てた愛着のあった者らはとうに失われていた。

 ヘコんだ三体は本格的に人と距離をとった。


 総ての創作物が揃った。

 それらは噛み合って環となり『世界』が組み上がった。


 早速、人へ譲渡しようとした。


『さぁ、このコップを触れることなく右へと動かしてみよ』

『誰だよあんたら。できるわけないだろ?』

『できる。簡単だ。ほら、こうやって。コップ以外の世界総てを左にズラすだけ』

『できるか! てか、誰なんだよお前らは』


 世界は人の手に余った。

 一応、人とて得体の知れない連中から手取り足取り教えられるままに頑張ったのだ。

 しかし、真理のごく断片を理解できた頃には人は朽ちて還ってしまう。


 こうして人は世界を得る機会を失った。

 だが、世界を断片的に稼働(誤作動)させるすべは身につけた。(魔法の誕生)



 ◇◆世界を支える六柱◆◇


『あれ? 人はどこだ。聖霊もいないな』

『……また全滅したのか。連中、脆弱過ぎないか? なぜ我らとこうも違うのだ』

『まぁ、我々はアレが創ったモノだし』

『むむ!? 待て。それは聞き捨てならぬ。我々の培ったモノがアレに劣ると?』

『さすがに酷い。あ、そうだ。我々は女を創ったぞ』

『うむ。あれは傑作だ』


 三天使は相談の末、世界に制御装置を設けることにした。

 材料は、世界にした力の本来の所有者、未だ眠ったままでいる幻神から調達。

 その身をパカっと六分割し、本体以外の五つを用いて拵える。


『あ、しまった!』


 そこで幻神が目覚めた。

 六分割して負荷が軽減されたからだ。


『とぉ!』

『ああっ、なにしやがる。傑作(世界)が壊れた!』

『あははは! もう一回! もう一回!』


 目覚めた幻神ヴァルルアード幼神オリジナル同様にアホの子だった。


 完成させた世界を何度壊されたことか。

 その所業、積み木を嬉々して倒す赤子の如し。

 もう一度眠ってもらいたいが、材料にした力はもう還せない。


 この破壊神ヴァルルアードに世界を委ねるのは無理と判断。

 予定通り、分体五つを用いた制御装置を作り、それらに幻神ヴァルルアードの権能も分散封印。

 同時に、人が考えもなしに乱用し始めた魔法(誤作動)を修正(尻拭い)する役目も負わせる。


 分体を託す贄を古参の聖霊から選出した。


 まず、分体を一つ、聖霊バハムートに与えた。

 任せる分体名も聖霊の名からとって龍王バハムートとする。


『拭うケツの数が多過ぎる!』


 噛みつかれた。

 

 次に、盛り過ぎた龍王バハムートの反省を活かし、少々控えめにした海王リヴァイアサンを作成。


龍王バハムート海王わたくしの二柱だけでこの世界の世話を? ふふ。あの辺、海に沈めてもよろしくて?』


 世界を全て海に沈める勢いだった。


 聖竜王ホーリスト


魔竜王ヴァルルアードって要るか? あの聖霊はアホの子だ。偉大なる三天よ、なぜ、アレに任せた? 世界を支えるのが我々の仕事だろう? 壊してどうする』


 正論ばかり言う。


 魔竜王ヴァルルアード


『ほしい!』


 アレは幻神が駄々をゴネてきかないので、彼をさらに割って創り与えたものである。

 任せたというか、元より幻神のもの。

 幻神を抑える枷でもあり、彼のお気に入り。

 いまさら取り上げるなんて無理だ。


 いちいち説明はすまい。

 面倒だから。


 幸い、権能は分割封印してある。

 聖竜王ホーリストがあれば単体でも止めることはできる……はずだ。

 弟の面倒は先に創られた兄が看るのが道理。

 弟、魔竜王ヴァルルアードに滅ぼし尽くされぬよう、兄、聖竜王ホーリストはほどほどに相手をし、世界と人を護るべし。


 役に立たぬ二柱を加えたからか、龍王と海王からの圧が強い。

 口煩く言われる前に、残りの魔狼王と太陽王の製作に取り掛かる。


『いえ、結構です。あとはこちらで創りますので』

『任せる聖霊にはフェンリルとソルナーグの二人を推挙しますわ』

『あと、魔竜王も創り直させろ』


 助かる。


『汝らに総て任せよう。好きにせよ』


 …………。

 ダッシュ。


『おおぉいっ!! なんだ魔竜王アイツは!! って、あれ? 三天使様!? ちょっと! おい!? どこ行きやがった、クソ三天使どもッ!!』


 竜の四法。

 龍王バハムート海王リヴァイアサン

 聖竜王ホーリストは補佐。

 ついでに魔竜王ヴァルルアードの世話も頼む。

 主に世界関連の制御を担当。


 神秘の二法。

 太陽王ソルナーグ魔狼王フェンリル

 主に生命関連の制御を担当。


 これら世界を支える六つの御柱をもって『六柱の覇王』とする。



 世界の管理に目処はついた。


 だが、外界で三天使は悩んでいた。


 どう手を尽くそうとも人は朽ちてしまう。


 ルシフェルは『世界を根底から創り直そう』と言った。

 ウィズダムは『我々が手を引いて導けばよい』と言った。

 ジャスティスは『もう放っておこうぜ』と言った。


 原初の言葉、『暴力バベル』を尽くして語り合うも意見は一向に纏まらない。


 口論に巻き込まれた世界は何度も崩壊し、何度も蘇った。

 何度も何度も。


 あるとき、蘇ろうとする世界がいつもとは違う挙動を見せる。

 三天使を取り込もうとするのだ。


『……覇王どもの仕業か』


 正確には、度重なる討論によってなにかを壊されて怒った魔竜王ヴァルルアードの仕業である。 

 他の覇王は協力しただけ。


 三天使はそれも面白いと受け容れた。


 復活後の世界に三天使はもういない。

 代わりに神族、魔族、精霊族という他を逸脱した聖霊が世界に生じるようになった。


 世界が終焉を迎えたら三天使は復活するだろう。

 ただ、甦った三天使が世界を再生させるのか、創り変えるのか、放置するのか。

 それはそのときにならないとわからない。



 ◇◆世界の大崩壊◆◇


 世界に稀に生じる聖霊。

 三天使の因子を受け継ぐ三種の異物にして遺物。

 神族、魔族、精霊族。

 総称は聖族。


 彼らは己らに大きく劣る人を愛し『未熟な弟妹』として可愛がった。

 その幼い手を引き導くのが長兄たる自分たちの義務だと考えている。


 手を携えて墓穴に導いたり。

 試練を課して死滅させたり。

 三天使が遺した人製造システムを魔改造し、獣人やエルフなどの多くの亜人種を生み出したりもした。


 聖族の存在は人には天災と等しい。

 抗う術もない厄介な荒神として畏れ崇められていた。


 幸い、聖族にも優秀な者は生まれる。

 己が種族を『世界が取り込みきれずに吐き出した三天使の残りカス』と言い当てた者もいた。

 その希少な存在に、三天使の再来と称された神童『三賢』も数えられる。


 神族に、アルティマ。

 魔族に、ルーシオ。

 精霊族に、ユミル。


 彼らは三天使が定めた世界の摂理を総て解き明かし、三天使がおこなった数々の奇蹟をも再現してみせた。

 外界に在る創造主・幼神ガイアの存在にも気づいたが、賢い彼らは察しスルーした。


 だが、当時の権力者たちの賢さは彼らほどではなかった。

 三賢の研究を盗み見し、幼神の発見に狂喜した。

 そして、行動を起こしたのである。


『ときは来た。我々が築いた完璧なる世界を彼の御方へと献上する。偉業を成し遂げた我らと弟妹は、その御許に侍ることを許され永遠の寵愛をいただくであろう』と。


 こうして、幼神を迎え入れた世界はそれはもう盛大に大崩壊パンクした。

 わかりきっていたことだった。

 招こうとした客はこの世界よりも遥かに強大な存在なのだから。


 招待され、きゃっきゃとはしゃぐ幼神。

 その様は湯桶に入れた幼児が如し。


 三賢は世界に氾濫した神のチカラを辛うじていなし、各々世界のごく一部だが大崩壊から庇う。

 そのとき各自が庇った三残骸を、天界、魔界、精霊界、と呼ぶ。


 はよ帰れや! と敬い説得を試みる。

 幼神は、まだヤダ! と駄々をこねる。


 ラチがあかない。

 そう判断したユミルとルーシオが共謀。

 アルティマを二人がかりで簀巻きにし、それを幼神にあげた。

 そして世界の一部ごとアルティマと幼神をパージ。

 見事、厄介者どもを世界の外へ放り出すことに成功。


 めでたし!


 だが、問題は山積みだった。


 幼神が滞在した跡地に残る世界を穿つ『虚空』。

 世界に氾濫する幼神が残していった不要な『万能の力(マナ)』。

 世界の大半は瓦解し、三天使が施す前の状態『幻神の万能の力(マナ)』に戻っている。

 世界の残骸(天界、魔界、精霊界)は幼神と幻神の神気が混濁した大海に呑み込まれた状態。


 辛うじて救えた世界はこのままでは失われる。

 先に世界を壊されたと怒る幻神はせめて三残骸だけでも自分がやると暴れる。

 六柱の覇王はそれを宥めるのと現状維持と復旧で手一杯。

 世界に溢れる多量の神気ゴミを御せるのはユミルとルーシオだけだった。

 二人は醜く押し付け合い、この場にいないアルティマを激しく罵った。


 激しい話し合いの末、迷惑な幼神のチカラ(不法投棄物)の管理を仲良く半分ずつ負担することになった。

 その結論を出すために世界の残骸は犠牲になりさらに小さくなった。


 二人は残った世界を保持するために奮闘を開始。


 まず優先すべきは、現状維持。

 大崩壊の二の轍を踏まぬよう、世界と生命の在り様を常に記録セーブする観測媒体を創った。

 『魂』の誕生である。

 それを以後生まれた人の器に組み込み、世界中に配置した。


『産めや、増やせ』

『人よ、世界に満ちよ』


 次に、世界の管理者である『六柱の覇王』を模倣し『刻の王(ヴィルフィスタート)』と『冥王ガルディオス』を新たに建立。

 魂の管理、世界と生命の観測、有事の際にはそれを活用した再生を任せた。

 太陽王、魔狼王に加えて『神秘の四法』とし、総称を『八柱の覇王』に改める。


 かくして、大崩壊以降の世界は、世界と人の在り様を『刻の王と魂(アーカイブス)』に記録し続け、有事の際にはそれを参照し『復元と転生(リサイクル)』をおこなう仕様となった。


 これによって世界は幾度と訪れた滅びを回避してきた。


 だが、この救済システムには弊害ももたらす。


 大崩壊以降、生命は似た運命を繰り返す傾向にある。


 死後その魂の多くは、生前の有り様を継承するべく前世に似た身体を求めて己の子孫の身に宿る。

 前世の資質と経験を受け継いで前世と似た境遇に置かれた結果、前世と似た運命を辿るのだ。


 不死なる種はこの繰り返される人の生き様を観て飽き嘆く。

 大崩壊後の世界を延々と同じ演目を続ける『壊れた劇場』、人を役を強要された『人形』と揶揄し憐れむ。


 不死なる種たちにとって人の短い一生は娯楽。

 ときにその生涯に寄り添い書に纏め、ときに吟遊詩人となって語り伝えた。

 彼らは与えられた役を無視しアドリブかます者を歓迎し、革命者、勇者、英雄と担ぐ。

 人は助言助力を授ける彼らを神や悪魔のように畏れ敬うが、多くは脚本の改変を望んでちょっかいをかけているだけなのだ。


 無限ループへのブレイクスルーとも言える現象も確認されている。

 大崩壊後の世界には、三天使が定めた常法則では説明がつかない事象がよく起きる。

 幼神が撒き散らした神気が、人の強い想いを汲んで常法則を無視した望みを体現してしまう。

 人は奇跡と呼び、ユミルたちは幼神の悪戯と嫌う。


 現在のルーシオの活動。


①世界の修復作業。

 世界の大半は三天使の施した法則性を失い初期化された状態にある。

 神界、魔界、精霊界の三残骸はその高濃度な神気マナの大海の中を揺蕩たゆたっている。


 そこでルーシオは閉じた小世界を構築する『世界樹』を考案。

 大崩壊を招いた罰として、大崩壊以前の聖族を神気の大海へ放り込む。

 神気は聖族に絡み捕らえると、その聖族の在り様を映す小世界を構築する。

 拘束された状態での自伝を基にした舞台の強制視聴、もう拷問である。

 大海に芽吹いては創生と破滅を繰り返す小世界。

 上手くいったものがあればそれを世界に統合。


②三残骸の保護。

神気(マナ)の大海に揺蕩う天界、魔界、精霊界を彼の保有する神気で覆って完全隔絶。

 白猫がよく使う絶対防壁『天界門ヘブンズゲート』はこれに干渉し召喚する魔法。


冥王ガルディオスの権能を代行。

 千年前、八柱の覇王の一柱、冥王ガルディオスを任された聖霊ガルディオスが『死とは終焉であるべき。これでは呪いだ。牢獄だ。悪夢が終わらない』と離反。

 冥王ガルディオスを狂わせて転生システムの破壊を企てた。

 三天使が遺した神剣『世界調律神具ワールドアクセスキー』を携えた天界王カルマ(当時はまだ王子)らの活躍により冥王ガルディオスを停止させるも、復旧まで数年間転生システムが停止、世界に甚大な被害を齎した。

 現在、冥王ガルディオスの聖霊は空席でルーシオが代行している。

 魂を改良し、世界に混入した幼神の力を濾過し内に封印するフィルターの機能も持たせ、その感染した魂(勇者、聖女など)のマネージャー管理もしている。


④世界に残留する万能の力(マナ)の管理。

 万能の力(マナ)は人の負の感情の体現者『魔物』を形作る『瘴気』にもなる。

 人口過密地帯に自動生成されるよう吸引装置『迷宮ダンジョン』を用意。

 周辺の瘴気を集積し魔物の発生地点を一箇所に絞ることで駆除がしやすくなる。

 大迷宮はほぼルーシオ製、罠や照明、駆除用品の提供等至れり尽くせり。


 世界に漂う万能の力(マナ)はどこにでも在り、懐きやすく人の望みをテキトーに叶えてしまう厄介なモノ。

 気、竜気、魔力、霊力と呼び名や捉え方は違えど同一のモノ。

 それらの性質は全て幼神の神気=万能の力(マナ)が持つ一面である。

 大半は曖昧な伝わり方をするせいでデバフ効果になっているが、魔法やスキルの正体は万能の力(マナ)へのおねだり。

 記憶の引き継ぎを対価に死者と交渉し、迷宮清掃員(勇者や聖女など)を確保。

 勇者たち保有(感染)者のスキルが使い勝手が良いのは、ルーシオによる伝達が正確で、デバフ効果が取り除かれた状態だから。

 下手に接触すれば回収してしまうので指示は神託経由。

 世間で言う『幼神』とはルーシオを指すことが多いが、本人にそれを言うとブチ切れるので注意。



 ◇◆宇宙の誕生◆◇


 ユミルが担当したのは幼神が降臨した爆心地。

 厄介な虚空が生じており、放置すれば残った世界が呑み込まれる。


 ユミルは思いついた。

 受け持った幼神のチカラをここに詰めて放棄しちゃえ、と。


 虚空こそ埋められたが、そのチカラは彼に付き纏って別世界を形作ってしまう。

 それが『宇宙』。


 ユミルの目論見は失敗に終わった。

 詰め物を維持するため、チカラの所有者のまま宇宙の中心で囚われ続けることに。

 ルーシオは大爆笑し、この現象を参考に『世界樹』を開発した。


 宇宙誕生の際、余ったチカラが宇宙外部でいくつかの塊となり、意思を獲得。

 宇宙法則外の存在である彼らは目の前の世界に干渉はできない。

 退屈していた。

 あるとき、法則のゆとりをちょろまかしアバターを創って遊んでいるヤツを目撃した。


 ユミルである。


 余り物たちも真似て宇宙へと介入を開始。

 こうして宇宙法則のゆとり争奪戦が始まった。


 ポルティオンはユミルのアバター。

 宇宙の余りに宿った意志がユミル族たち。

 彼らの今の姿は宇宙最古の種族ヌコ族の姿を模したもの。

 宇宙の負担を最小限にできる姿がなぜかアレ。


 一部のユミル族の度重なる過剰干渉により、宇宙法則に深刻な負荷が発生。

 宇宙法則は不和を起こした世界の一部を破棄し回避した。

 ヌコ族はそれに巻き込まれてしまった。


 不憫に思ったユミル族・サルウッドは、自らを世界樹と化してその内に彼らを匿う。


 世界樹と化したサルウッドが生み出した小世界は、内包する宇宙の負担となった。

 その煽りを受けて行動を制限された他のユミル族と対立。

 サルウッドは孤立してしまう。



 ◇◆地球創世期◆◇


 敵対した他のユミル族をことごとく滅ぼした世界樹サルウッド


 世界樹は周辺の空間を捻転分割してその奥底に身を潜めると、外界へと侵入開始した。

 異世界あちらにある精霊界マナティアの大地を拝借し、天球(ヘブンズガルド)地球(ヘルズガルド)の双子星を製造。

 一つはその場に残し、片方を宇宙こちらに持ち帰る。


 二世界間を紡ぐ楔が完成した。


 宇宙がダメなら異世界に。

 宇宙に破棄されたヌコ族を天球へ。

 地球を介し異世界への放流を試みる。


 疲弊したサルウッドは世界樹を着床させて眠りについた。


 その間、根付いた世界樹は勝手に次代の種子の製造を開始。

 過程で環境や地球生物が生み出されて整備されていく。


 捻転分割で生み出された亜空間群『樹界領域』。

 捻転を維持する核として各領域の中心に存在する『地球の見えざる衛星』は、独自の環境・生態を育み、己を守護し侵入者があればそれを排除させる半身『領域主』を産む。

 領域主は倒しても再生成されるが、その間は捻転が弱まり、他の亜空間へと繋がる結び目『道』が開く。

 領域主を打破して連なる亜空間へと進む『界渡り』。

 それが深奥で眠る世界樹へと至る唯一の方法。


 ユミル族のカフーツイが『世界樹の抹殺』という特命を受けて世界樹の追跡を開始。

 彼は普段、宇宙評議会の特務隊に在籍(ただの道楽)している。

 これはサルウッド擁護派である厄介なポルティオンに対して用意した布石。

 世界樹サルウッド抹殺は宇宙に生きる者たちの総意だよ、というアピール。


 地球に到着。

 当時の地球に人類はまだ誕生していない。

 地上の覇権を握っていたのは恐竜種である。



 ◇◆白亜紀◆◇


 第一次種子戦争勃発。

 恐竜種は世界樹が地球を去ろうとしていることを知る。

 多くの犠牲を払いながらも世界樹に到達し種子を破壊。

 地球の延命に成功した。

 だが、禍根を絶つべく世界樹本体にまで攻撃を加えた。


 世界樹が傷つき、テラフォーミング機能が著しく低下。

 休眠状態からサルウッドが覚醒するも時すでに遅し。

 地球に氷河期が訪れる。


 地球環境維持は世界樹があってこそ。

 その恩恵は世界樹が次代の種子を完成させて旅立つと失われる。

 これはサルウッドの意思ではない。

 基にした世界樹システムが持つ習性。


 恐竜種を含む第一次種子戦争以前の地球生物種の大半が滅亡。


 恐竜種に危機をリークしたのはカフーツイ。

 ただし、彼らに『世界樹の破壊=地球が死ぬ』という事実は教えなかった。

 世界樹サルウッドを恐竜種の手で滅ぼそうと企んだのだ。

 ドMな世界樹サルウッドは自らが生んだ愛し子による滅びならば受け容れるから。


 この第一次種子戦争末期、機能不全を起こした樹界亜空間内の地球の見えざる衛星が一つ、通常空間に放り出された。

 それが現在の月である。



 ◇◆古代中国◆◇


 古代中国大陸に『獣王』と称される猛者が現れる。

 単身で幾千の軍勢を圧倒する武力を発揮した彼は愚鈍な王に仕えることを許されるとたちまち国を平定。

 当時の王朝を盤石なものとした。


 もはや獣王の武力なくして存続はできず、王とて彼を疎かにはできない。

 手綱を握ろうにも、彼は権力も金にも全く興味を示さない。

 彼が唯一求めたのは女。

 王は大陸中よりかき集めた女たちを褒賞とし、彼を利用し続けた。


 獣王は妻を次々と娶り身籠もらせるが、母子はことごとく死ぬ。

 彼の血が強過ぎる。

 宿った胎児が母の腹を焼いてしまう。


 数多くの犠牲を払いながら彼の力を受け継ぐ者が少数生まれた。

 だが、子を抱き上げた彼は喜ばない。

 それどころかすぐに興味を失い、床に投げ捨てた。

 彼にはわかったのだ。

 宿す力が非力ゆえに生まれることができたのだと。


 捨てられた子たちは、獣王を疎む者や彼と縁を結びたい者が引き取り育てた。


 獣王に捨てられたとはいえ、その血を継ぐ子らは常人よりも遥かに強く育つ。

 人は成長した人外の子らを畏怖し、仙人と呼んだ。


 彼は己の子に強さを求め続けた。

 そのためには娘や孫をも必要とした。

 獣王という呼称は『ケダモノの王』という蔑みの意味も含む。


 獣王やその子らによる交配と争いにより、古代中国大陸の人口は大きく減少していった。


 当時を記した古文書に彼らに甘言を弄する黒猫の存在が散在する。

 次は人類種の手で世界樹を破壊させるつもりだった。



◇◆古代中国〜封神戦争〜◆◇


 すでに死した王朝。

 無理に存続させる老害、獣王を打倒するために獣王の子や孫である仙人たちが手を組み起こした戦い。


 封神戦争。


 終盤、追い詰められた獣王はついにその正体を晒した。


 人の肉体を捨て『竜』と化す。


 彼は恐竜種最後の生き残りだったのだ。


 竜化とは恐竜種が至る最終形態。

 自身を竜血を供給するだけの肉核と化し、己が望む姿、膨大な竜血で構成された不死身の拡張体『竜体』を纏う。


 獣王の竜体は、頭部に加え、六つの剛腕と尾にも顎を備えた巨大な八つ首竜。


 多くの兄弟妹を犠牲に払う長い長い激戦の末に獣王は討ち取られる。


 決め手は、右腕を父と似た竜顎に変化させた長子の一撃。


 竜血を用いて大気を操る長子は戦いの中で覚醒。

 天の叢雲より下賜された雷を身に纏い、獣王の頭、尾、六肢を焼き薙ぎ払っていく。

 最後は本体である肉塊『竜核』に深々と突き立て勝鬨を上げた。


 恐竜種は遺骸を残さない。

 死後は、制御を失った竜血の暴走によって細胞の一片までも燃え尽き散るのが定め。(光華現象)

 散華する獣王の首たちはどれもが笑みを浮かべて逝った。


 恐竜種最後の一体である獣王の望みはついに叶えられたのだ。

 我が子らの手で倒されることで。


 満足だった。

 彼の目的はただ一つ。

 来たる第二次種子戦争に備え、後世に恐竜種の力を残すことだったのだから。


 しかし、仙人同士の戦争は続く。

 獣王を討った長子も仲間の裏切りにより死亡。


 争いと繁殖の難しさにより仙人の数は急激に減少していく。


 やがて人外の戦乱は仙人たちの自滅をもって終結。

 中国大陸の覇権は生き残びた人の手に戻っていった。


【獣王】真の名は伏犠。

 恐竜種最後の生き残り。

 竜体が四肢、頭、尾、双翼を武器としたのはそれだけ力に飢えていたから。

 八つ全てに頭部があったのは孤独が彼を苦しめていたから。

 八つ全てに顎があったのは秘めた想いを伝えるのに一つでは足りなかったから。

 でも、彼はケダモノだ。

 最期まで言葉ではなく力を尽くした。


【哪吒】獣王の末子。のちの高天ヶ原領民の祖。

 封神戦争当時はまだ赤児。

 取り巻きによって戦禍から逃れ、当時はまだ健在だった中国の転移門『コンロン』→『樹界』→沖縄の転移門『ニライカナイ』と経由して古代日本へ至る。

 哪吒と取り巻きたちは終結後も中国に帰還しなかった。

 転移門を閉じて樹界に篭り、戦争終期を生き延びる。

 世界各地の転移門封鎖にはカフーツイが協力した。

 彼にとって獣王は世界樹の詳細を知る厄介者であり、世界樹を破壊する手駒を増やす貴重な種でもあった。

 哪吒は獣王と仙人が共倒れした場合の保険。

 哪吒を獣王から遺言として詳細を聞いたであろう長子と隔て、彼と取り巻きが世界樹の実態を知る機会を奪った。

 成長して子をなせるようになると、取り巻きは女を集めて娶らせた。

 父同様、彼は多くの母子を犠牲にしながら後世に血を遺す。



◇◆真・封神戦争の終わり◆◇


 獣王の子の中には戦いに不参加のまま王朝から去った者もいた。

 人々に恐れられた彼らは世界各地に神として名だけを残している。

 取り巻きたちは獣王の再来を阻止する名目で哪吒を唆しそれらの血脈を念入りに絶やしていった。


 取り巻きたちは増長し『四大天』と名乗り始めた。

 彼らに哪吒は不信感を募らせた。

 だが、四大天の計略に嵌る。


 神の身でありながら人と交わった故の末路。

 お前を産みたくないと嘆き叫びながら死んだ女たち。

 それを灼き殺して生まれ堕ちたお前たち。

 なんと悍ましき業か。

 その身の穢れを祓うときがきた。

 それは元来お前の罪ではない。

 獣の仔よ。

 原初の獣が再び産声をあげる前に、己の手で元凶たる父を諫めよ。


 子を蝕む母殺しの罪禍。

 哪吒はその元凶として一身に受け負い、討たれる。

 その亡骸はカフーツイによって奪われた。

 光華する間もなく。

 彼の亜空間へと。


 その後、四大天は哪吒が遺した幼子らを傀儡にして古代日本を牛耳っていく。



 ◇◆近代日本◆◇


 樹界亜空間に存在する街、高天ヶ原。

 そこに住まう哪吒の血を受け継ぐ者たちは『天人』を自称する。

 日本を裏で支配する『五大家』は、四大天の子孫『四大家』とその傀儡と成り果てた哪吒の直系子孫『神代家』からなる。

 地球存続のためと掲げた大義名分の下、樹界を秘匿しその利益を独占。


 神代家は女系一族。

 当主は『神産女かみうぶめ』として強者と交わり、その神血を後世に遺す大役を担う。

 四大家に生まれた娘も赤子のうちに養女として神代家や分家に迎えられる。

 他の優秀な女児も、より多くの神血をこの世にとどめるために『産女』となることを強要された。


 現在、樹界へと通じる転移門は『タカマガハラ』のみ。

 これを五大家が占有。

 高天ヶ原に住む者たちは幽閉状態で外界に直接触れる機会はない。


 第二次世界大戦終盤。

 沖縄にあった転移門『ニライカナイ』はそれを嗅ぎつけた米軍が上陸する前に封印。

 人に神血を変質させる手段があることを知らしめるため、二つの原爆が投入される。

 神出鬼没の無敵を誇った『神風使い』は核の威力と毒に慄き戦場を去った。

 樹界に籠った高天ヶ原に見捨てられた日本は全面降伏。

 現在の日本政府要人は、見捨てた高天ヶ原を憎む天壊派、樹界から齎される利益重視の親天派に分かれている。


 戦後、族滅を恐れ狂った五大家は『神血覚醒機関イザナミ』を発足し、以下の声明を掲げる。

『神血を宿す我ら天人こそが真の地球人である』

『星紡ぎ(延命)を成した暁には聖別を執りおこない、偽りの人類を淘汰する』

 *ここでの聖別とは天人と交配を指す。


 樹界深奥でヤドリギという寄生樹を発見。

 根付かせることで死後も天人の身体を保存するすべを得る。

 黒猫から亜空間に囚われていた始祖・哪吒の生ける屍を提供され、天人の遺伝子研究が進む。

 以降、暴走が加速。

『地球延命のためにはより優秀な神血が必須』

 大義名分を強めた神血覚醒機関イザナミは非人道的な始祖再誕計画を始める。

 強個体の女児が生まれると即座に神血覚醒機関イザナミは献身要請を出して『産女』候補を得る。(拒否すれば社会的制裁)

 適齢期の産女に、神血覚醒機関イザナミが選定した強者との間にひたすら子を成すことを強要。

 天人の血の純度は産女の犠牲によってかろうじて維持されてきた。

 始祖を再誕させ得る者こそ救世主、真の『神産女』である。



 ◇◆最近◆◇


【ポルティオンの飛来】

 三十年ほど前。

 地球に宇宙最強生物ユミル族の中でも最狂なヤツがやってきた。


 閉じている高天ヶ原に易々と侵入し居を構えた彼はごりごり交渉して日本国籍を取得。

 各所に様々な助言を提供し、本人も起業家となる。

 現在、高天ヶ原経済の大半を掌握済み。


 星をも薙ぐ彼が居着いたことで、街での神血覚醒機関イザナミや四大家の威光と建前は失墜した。


 なにを思ったか、教員免許を取得。

 樹界中層域に私立高天ヶ原小学校を設立し、生徒を募集。

 『小学校』は小中高学校の小ではなく、小規模な学校という意味。


 彼の設立した学校は樹界中域に建つ唯一の中継拠点である。

 五大家は子供たちの入学を奨励するしかなかったのだ。


【樹界最終領域主、高天ヶ原襲来(極秘)】

 樹界最終領域主ラスト・ガーディアンにして恐竜種原種ティアマト。

 突然の襲来。


 これを迎え撃つポルティオン。


 彼が地球に来たのは彼女を排するためだったのだ。


 乗ってきた宇宙戦艦も、

 護衛機ヴァンガードも、

 数々の発明品も、

 移動要塞として機能する学校も、

 生徒を迎えて鍛えたのも、

 全てはいずれ姿を見せるであろう彼女に備えるため。

 少しでも力を削げればいいな程度のものだった。


 相対しぶつかる二人。

 その力は凄まじく、学校も高天ヶ原の街もブッ飛んだ。

 地球もろとも、宇宙もろとも。


 ティアマトの正体はアルティマ。

 かつてユミルとルーシオに騙し討ちを受けて簀巻きにされ、世界からも放り出されたあの三賢の聖族アルティマである。


 己の心象世界、宇宙を見られたくないポルティオンは彼女の依代を破壊して追い払いたかった。


 彼女が戦いの中で齎した最新情報。

 樹界最終領域主の核をアバターにしているが、本人は今も幼神とともに外界にいる。

 元凶である幼神は新世界を生み出している最中。

 その目的はダイエット。

 力を削いだ幻神の在り様にヒントを得た彼は、己の力を削ぎ落として再びこっちへ来る計画を練っている。

 ひたすら傍迷惑な話だった。


 が、悪くない手かとポルティオンは思った。

 運が良ければ、幼神の関心が新造された世界のほうにいくかもしれない。

 アルティも上手く誘導してやってもいいと言う。

 その報告と息抜きに来ただけらしい。

 世界樹サルウッドが生じさせた綻びを利用して介入してきたと。

 絶対切り倒すと誓った。


 『ヤる際は先にルーシオを』


 その密約を交わし、二人は休戦協定を結ぶ。



 時を遡ること、白亜紀。

 最終領域主ティアマトの核をアバターとした際、彼女は不要な部分をポイッと捨てた。

 主を失い瓦解した領域とともに朽ちたティアマトの身体は地上へと流出、日本海へ沈む。

 アルティマの影響を受けてティアマトの残骸から深海にて生じたのが恐竜種である。


 アルティマは神代ハルカと名乗り、ポルティオンのお宅に居候、学校にも通い始める。


 途中、神代永遠(トワ)(神代キラの父親)が生まれたりもした。

 彼はティアマトのクローン。

 ポルティオンが嫌らがらせをしようとハルカからその胚を造り、誤飲し、孕んで、産んだ子である。

 十数年後、永遠トワと神代アカネの間にキラが誕生。

 それを機に住んでいた家を彼らに譲った。


 アルティマは今も時折ふらりと現れては、ポルティオンと凄まじいド突き合いをしている。

 二人は世界樹=サルウッドとも接触し入れ知恵をしたり、蹴りを入れたり。

 生徒らには世界樹を傷つけると地球が滅びてしまう事実をあっさり暴露。


 これにはずっと静観していたカフーツイも堪らず表舞台に姿を現した。

 彼はヴォルガオ、マルス、クマルにも呼びかけ、続々とユミル族が地球へ飛来。

 彼らユミル族は地球で遊んでいるだけに見えるが、白猫の周りで宇宙の余力を消費することが介入への抑制となっている。


 刻の王(ヴィルフィスタート)の創造主にして、宇宙をなす力の所有者である白猫は、宇宙の『事象回帰』をおこなえる。

 回帰とは事象の再配置リスタート

 『待った!』をかけ、棋譜を基に数手前の状態へ碁石を並べ直すに似た行為。

 事象をなかったことにできるが、時間逆行ではない。

 更地にした地続きの未来に、かつてあった過去を再建しているだけだ。

 宇宙を構成していたモノが破棄されるなどして欠損、または、追加されると完全な回帰は望めない。


 観ていた映画がクライマックスから企画段階にまで戻されて、テコ入れまでされるようなもの。

 お気に入りシーンが失われることも。

 事象外の存在、傍観者であるユミル族にとって、これはものすごく迷惑なこと。


 未来を見透かしたような他のユミル族の言動。

 見越したように現場に姿を現すことからも、すでに何度もやり直しがおこなわれてきたことが窺える。



◇◆スグル誕生◆◇


 神血覚醒機関イザナミは、亜空間からサルベージされた生ける屍・哪吒の提供を受けた。

 ヤドリギを用いて光華しない始祖細胞を確保。

 哪吒の複製実験と人工子宮の運用実験が繰り返される。

 研究が行き詰まる中、事件発生。

 ある個体が特異な生命力を発揮、受胎した人工子宮を侵蝕し作り替えた。


 その突然変異の個体は『優』と名付けられた。


 変異した人工子宮は『優』によって誕生時に灼かれて失われたが、それまでに得られた貴重なデータから人工子宮・天岩戸(アマノイワト)の改良に目処がつく。

 産女の解放、悪名高い火産霊カグツチ試験が実行に移される。



◇◆固有の用語◆◇


天岩戸アマノイワト神血覚醒機関イザナミによって製造された人工子宮。

 産女の性能に左右されることなく安定した戦力を製造することができる。

 これの完成をもって産女制度は大きく見直しがおこなわれた。

 現在、産女は代替不可能な神代家と分家の娘だけとなっている。


【使徒】ヒトではなくシト。使われる徒。

 神血覚醒機関イザナミが所有する人工子宮・天岩戸あまのいわとにより製造されたモノの呼称。

 スグルもここに含まれる。

『使徒は、性行為又は親愛によって人間から産まれた存在ではない。志を共にする皆の献品、採取・培養された細胞の構成物であって、あくまでもモノである。人間ではない使徒を人間扱いする様々な行為は、使徒に無用な誤解を抱かせかねない非人道的行為。人間として決して許されない行動である』と主張し、神血覚醒機関イザナミは己の行為を正当化。

 一部の使徒と『白猫保護団体タワーズ』による暴動『ヒト宣言』後の法改正を経て、人と認定を受けた使徒は保護、危険とみなされたモノは処分された。

 現在は領法により使徒の呼称・製造・行使は全て禁止されている。


【火産霊試験】人工子宮『天岩戸アマノイワト』を完成させた神血覚醒機関イザナミは、世論が強く望む産女制度の廃止を飲むが、その条件として所有する産女たちに最後の貢献を求めた。

 だが、神血覚醒機関イザナミの解放とは『廃棄物の有効活用』ことだった。

 結果、新しい抗胎児抑制剤の試験投与など人体実験が公然とおこなわれ、多くの犠牲者を出す。

 強個体や興味深い特異体が多く生まれ、神血覚醒機関イザナミは大いに喜んだ。


火産霊カグヅチ】産女の腹を焼くほどの力を持った男児の総称。畏怖を含む蔑称。

 ほかに、鬼子、母殺し、人類殺し、未来断ちなどがある。

 希少な戦力である故優遇はされるが、弱者とは子を残せないため、監視や婚姻規制を受ける。

 場合によっては幽閉や断種も。

 女児の場合は火産霊カグヅチとは呼ばれず、産女として歓迎される。

 火産霊試験で生まれた男児のことも指す。


【ヒト宣言】戦闘支援機・『護衛機ヴァンガード』の技術転用として、神血覚醒機関イザナミ主導で研究が進められていた有機炉搭載型自律機・デュラハン。

 動力源兼制御ユニットとして、天人をコンパクト化して直接搭載しちゃえという頭ヤバめの計画。

 搭載予定だった使徒が白猫保護団体タワーズと接触をとって抵抗。

 使徒解放及び製造・所持禁止条例発足のきっかけとなる。

 ある日、高天ヶ原中の公共通信機器がジャックされた。

 映像に登場したのは、胸より下部がない幼い身体。

 無数のチューブが繋がる右腕も搭載まで栄養採取・調整用に残されているだけ。

 機体に載せるためにコンパクトに遺伝子操作デザインされた使徒の少年だった。

 秘匿されていた有機原動炉兼高度有機電脳の正体である彼は『ガムが食べたいな』とささやかな夢を語る。

 映像は『僕、明日大きくなるんだよ』とはにかむ笑顔を最後に終わる。

 それに対して、高天ヶ原の人々は暴動をもって応えた。

 その映像の少年であるサトル君は、救出された当時を振り返ってこう語る。

『だぁー! 黒歴史やめたれろ。恥ずかしい。あれは白猫の演出だったの! 編集もされてる。ガムなんぞ普段から盗んで食ってたわ! 悪戯にも使ってたぞ!』と。



 ◇◆【天人の特徴】◆◇


 天人の祖は恐竜種の血を受け継いだ人類。


 天人の能力。


 ①『龍脈形成』

 あらゆる物に活力を与う気、それを周囲より集める。

 自身を触媒に垂れ流すことで、その場に人工的な『龍脈』を生み出せる。

 治癒術。

 集めた気を注ぎ、細胞を活性化させる技術。

 あくまでも活性化で、劇的な工程の圧縮、ペースアップに過ぎない。

 癒すための材料と労力は身体が蓄えた栄養素で賄われるので、規模に応じて疲弊する。

 ウィルスに感染した状態や毒に侵された状態で施すと症状が悪化。

 栄養が欠損している者に無理に施すと最悪衰弱死する恐れがある。


 ②『竜体形成』

 気に感覚を通し固有化した状態『竜血』にできる。

 固有化された気は肉体の延長部として手足のごとく使役可能。

 肉体との接点を完全に断たれると制御を失って四散する。

 竜血で形作る肉体の延長総体を『竜体』という。

 竜体は恐竜種や天人が創造するもう一つの肉体。理想体。


 自意識の在り様に影響を受け、竜血の扱い方には得手不得手が生じる。

 『自己肯定型』

  制御リンクが強く、竜血を身体に重ねる身体強化に長けている。

  その反面、体外で人の形からかけ離れた形状で操作することが不得意。インフレーム型。

 『自己否定型』

  竜血の形状を自在に変化させることに長けている。

  その反面、身体と重ね合わせる身体強化が不得意。アウトフレーム型。


 竜血の最小単位は素粒子レベルにまで達する。

 理論上は竜血でこの世に起こる現象を全て模倣できるが、人間の脳でその領域に至るのは不可能。


 天人の欠点。

 ①『気の集積』『固有化(竜血)』『竜血操作』『竜血破棄』、恐竜種には可能な四動作を天人は一度におこなえない。


 ②竜血の継続時間の短さ。

 天人は竜血行使中に気を補充できない。

 生命活動に気は必須で、息を止めるも同然の行為。

 無理が祟れば最悪、竜血が使用できないエンスト状態に陥る。


 ③免疫力の低さ。

 全身に纏う竜血が体内外のウィルスや菌を滅するため、それに依存した天人の身体は素の状態では一般の地球人に比べウィルスや菌に対する耐性が極端に低い。

 そのためエンスト状態が長期化すると感染症を引き起こしやすい。

 感染してしまうと気や竜血を行使できなくなるという悪循環に陥る。


 ④スタンドアローンな戦闘力。

 竜血は他者の竜血と接触すると干渉を起こし制御が困難になる。

 肉体同士の直接接触でも干渉は起こる。

 そのため近距離での共闘がしにくい。

 竜血で止血している場合もあるので、不用意に負傷者に近づくのは危険。

 寝床を共にするのも難しい。竜血を纏わず接触すれば③のリスクが高まる。


 ⑤繁殖力の低さ。

 生まれてくる天人の強さには波があり、百年単位で上下のピークが被る。

 スグルたち世代が上のピークで、スグルたちの親世代が下のピーク。

 弱者が強者を身篭れば悲劇が起こる。

 今が、最も強者が生まれやすく、最も母子が死にやすい時期。

 決戦が迫る現在、高天ヶ原最大戦力はスグルたちの世代、十代前半の子供たち。


 ⑥天人特有の奇病『肉塊病』。

 多感な成長期、特に男児に多く見られる疾患。

 自己否定、過度なストレスなど精神的なものが起因となりやすい。

 発症すると無意識に過剰な気の取り込みがおこなわれ、竜血の制御が不安定になる。

 初期症状として手足の指先に麻痺がみられる。

 指先など末端部位より竜血による自傷が始まると、生きながらに細胞の自壊『光華現象』が起きる。

 やがて四肢を全損し、消化器官、視覚聴覚も喪失。

 最終的に脳、心臓、脊髄等重要器官のみを残す蛹のような肉塊になり果てる。

 こうなると自力では生命維持ができないため放置すれば死に至る。

 肉塊を生命維持装置の容器内に収めることで延命を図る。


 肉塊病の正体は、恐竜種から受け継いだ竜化。

 ストレスへの防衛本能、変身願望、自己否定が引き金になり、無意識に強い自分に成り変わろうと竜化を引き起こす。

 しかし、竜血の永続使用ができない天人では竜化に対応できない。

 肉体を竜核化しても竜体を維持できず、剥き出しの肉塊を晒すことになり死に至る。

 また天人の竜化は一時的な現実逃避に過ぎず、本心では人型への未練や回帰を望んでいることも不完全な竜化を引き起こす要因。


 ◇◆敵対組織『真国連軍』との戦い◆◇


【真国連軍】世間一般がよく知る表の国連ではなく、世界中の権力者連合組織。

 彼らは各地に開いていた頃の門の占有者の末裔。

 恐竜種の血を受け継ぐ天人を地球人類種を変質させて絶滅させる化け物と忌み嫌い、人類の敵と認定。

 (実は真国連の懸念は人類種の保全を考えるなら正しい)

 主目的は二つ。

 ・天人根絶。

 ・天人が占有する樹界の奪還。


 第二次世界大戦での活動。

 米軍を介して沖縄を占領。

 沖縄に存在していた転移門【ニライカナイ】確保を狙うも失敗。

 二発の原爆で神血を穢す手段があること、複数所持することを証明。

 無敵を誇った『神風使い』たちを震え上がらせた。

 天人が日本を見捨てて樹界に籠城した隙に日本を制圧。

 天人が秘匿する唯一の転移門【タカマガハラ】を血眼になって探すが発見できずに日本は復興。

 返還を阻止できず米軍駐屯地を残して撤退。


 転移門【タカマガハラ】の確保は難しい。

 五大家の食客ユミル族・カフーツイがその都度手ずから空間に穿つ門のことを指すのだから。

 

 宇宙開発計画の裏で地球脱出計画を遂行。(注・地球人は地球から離れると死ぬ)

 その過程で月の裏側にある天人も把握していない転移門【ヨミ】を発見。(月は樹界にあった領域核の一つ)

 カフーツイはその存在を知りながらも黙っていた。

 真国連軍は核軍縮で集めた核兵器を宇宙に上げ、月の門より大量投下。

 世界樹への最短ルート上に前線基地・核汚染支配領域ヘルズを築く。

 現在も天人の樹界探索を妨害しながら侵攻領域を拡大中。

 高濃度な気が満ちる最深部への侵攻手段を見出せず二の足を踏んでいたが、天人の細胞を暴走させる【瘴気】を発見し戦場に投入し始めた。

 瘴気を取り込めば天人は一瞬で全身を癌化させる。

 これを用いて、光華現象を起こさせずに生かしたまま天人の幼体を捕獲することに成功。

 念願の天人遺伝子研究を開始した。


【ベビーシットウルフ】子連れ狼。複製した天人幼体を身体に移植させられた精鋭部隊ウルフ

 劇薬で強制覚醒させられた寄生体は、相対する天人の竜血を中和し宿主を援護する。活性化させるほど寄生体に侵蝕される。

【ダディ】天人の肉塊コピーを移植されたウルフ隊員。

【ベイビー】ベビーシットウルフ部隊の身体に移植された天人幼体の肉塊コピー。

 竜血を使って本能的に宿主ダディを守ろうとする。

【アイアン・メイデン】真国連軍が護衛機ヴァンガードを模倣し製造した装着型兵器。

 プラグを寄生体に直接接続し動力源とする。


【宇宙人】宇宙法において『人』とは『個のみで己を維持可能な不死の生物』を指す。

 寿命があり摂取を必要とする地球人は『人』の条件を満たさない。

 地球内にいるうちは黙認されているが、地球外に出て搾取を始めた場合は駆除対象となる。

 すでに宇宙評議会からは駆除依頼が出ているが、ユミル族が滞在しているので誰も駆除しに来ない。

 真国連軍に手を貸した宇宙人は地球の爆発を心待ちにしていたツアコン業者。

 天体ショーを妨害する者を排除したがっていた。

 ユミル族が滞在していることを知った宇宙人は真国連軍を見捨ててトンズラしたが、途中なんらかの事故でどこかの恒星の中心かブラックホールの手前にワープしてしまうらしい。

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