第4話 スグルの高天ヶ原での日常② 〜自称猫型宇宙人の暗躍〜
◇◆◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇◆◇
【無様な証拠動画のアップロード実行まで、残り三分です。】
「はぁ、はぁ……」
【ぱぁおん、ぱぁおん、ぱぁおんーー】
【うるさいですよ。】
【ぱぉん……】
ゴミ箱+バギー、改め、ゴミ箱ザウルス。
やつの手数は合体により両腕を得たことで(当たり前だけど)増えた。
元より備えていた厄介な『全てを弾くバリア』。
そこに追加されたのがーー
右手の『空間ごと払い退ける超高速の掌底』。
左手の『空間そのものごと分つ手刀』。
加えて、バギーが有していた機動力はザウルス形態でも健在。
正直、手強い。
前の試作ゴミ箱との死闘からはすでに一ヶ月経っている。
その後も何度も死地を拵えては成長を遂げてきた僕。
ここまで苦戦を強いられるのはちょっと恥ずかしいことだ。
ちなみに、突破口はもう見つけてある。
それも一ヶ月も前に。
試作ゴミ箱にあった弱点がそのまま残っていた。
大技後におこなわれる冷却行動だ。
冷却の一つ一つは短く、三秒もかからない。
後回しにして攻撃を続けることもできる。
ただ、後回しにすればするほど冷却にかかる時間が延びる。
前の試作ゴミ箱戦において僕らは、クラス全員で時間差波状攻撃を続けることで強制冷却まで追い込んでボコった。
冷却中の隙に乗じてこのペットボトルをやつの『穴』にねじ込む。
それで僕の勝ちだ。
ただ、それを実現させるのに解決すべき問題がいくつかある。
①今回は、クラス全員でやったことを僕一人でやらなきゃいけない。
投函にかかるであろう時間を考えると、最低でもあの一撃必殺級の三種の技を、バリア、掌底、手刀と冷却を挟まずに一巡はさせたい。
バリアと違って、掌底と手刀の対処法はかわすだけでは不完全。
かわしてもバギーの機動力を活かしてその場で一回転、遠心力を上乗せした状態で戻ってくる。
②ペットボトルを投函時、僕の動きは確実に止まる。
最近のコンビニは家庭ゴミの不当投棄対策がしっかりしている。
その場所で購入した物という確証がないとゴミ箱の投函口の蓋は開かない。
ペットボトルを翳してから開くまでかかる時間は約一秒。
たった一秒、されど一秒、それが命取りになる。
一撃でも喰らえば、続けて三大迎撃の残りをこの身にお見舞いされてしまうだろう。
「…………!」
最悪の末路が頭を過って、思わずブルッてしまった。
そんな僕を笑うクラスメイトたちのバカ面が脳裏に次々と浮かんでは消える。
「ちくせう。……この場に『弾除け』があればこんな苦戦は……」
つい、口を衝いて出た甘えた言葉を恥じる。
今ここにないものを強請っても仕方ないだろうが。
いい加減覚悟を決めろ、僕ッ!
「勝負だッ!! このゴミ野郎!!」
【……上等だ。来い、そのもずく頭でモップ掛けしてここら一帯へ地域貢献してくれるわッ!!】
もずく頭……。
こいつ、許し難い暴言を。
自ら飛びかかりたい気持ちをグッと堪え、今は握ったコイツに譲る。
僕はペットボトルを……ぶん投げた!!
【内角、低め……もらったぁ!!】
ゴミ箱ザウルスは尻尾で対応。
一度は大振りで空を斬るも、回転して上からの叩きつけで阻止してきた。
相手を侮りつつも失敗を恐れぬその二段構えが手強い。
ペットボトルが地面で跳ねた。
相手の意識が少し上に向くーーその瞬間を狙い、僕は仕掛ける!
「三大体現、『裁断双刃』ッ!!」
大地のあらゆる物質に優る超硬度。
大海を灼き尽くすほどの超高熱。
大空すら粉砕する超振動。
そんな三大奥義を無理矢理同時発現させた竜血の刃、それを右左で構える。
これが現時点で僕が切れる手札の中で斬撃系最強を誇る技だ。
なおこの刀身状態は僕に制御可能な域など余裕でぶっ超えている。
維持は十数秒が限界。
さっさと相手に押しつけないと、柄を握っている僕がやられる!
「喰らえぇッッ!!」
【哀れ、死に来たる者よ。辿り着くなかれ。触れるなかれ。万難の旅路半ばにてその膝を折って還るべし。だって、此れただの壁だから。ーー『天界門』ッ!!】
来た!
ゴミ箱は初手に自分の十八番、全方位バリアを展開することを選んだ。
アレは触れたが最後、あらゆる加速を消失させ、強烈な斥力まで付与してくる。
あのバリアには下から攻撃すること。
決して上から飛びかかってはいけない。
あの加速消失と斥力付与はともに抵抗できるようなものではない。
喰らう角度によっては大気圏外までブッ飛ばされてしまう。(経験済み)
絶対無敵な技だが、攻め側には三つ救いがある。
①一度放てば再度使用するのに冷却と溜めに相応の時間が要る。
②効果を発揮する時間は短く、あのバリアは時間差攻撃には対処ができない。
③あいつは同じ手を連続して使わない。
順番に違いはあっても必ず三つの技を一巡させる、そんな妙な拘りがある。
バリアに触れた途端、振った右の裁断双刃はあっさりと停止。
同時に、込めた竜血を解き放つ間もなく、斥力を付与されて弾かれてしまった。
刃を成していた竜血は弾かれていった先で岩山にぶつかり、そこで暴発。
岩山の腹部が吹き飛び、砲弾となって方々に撃ち込まれる。
綺麗に宙に残っていた山頂部分も崩れてきて、一部はこちらへもなだれてくる。
「……いった〜い」
右肩が痛い。
素早く柄を手放したつもりだったけど脱臼して捻った模様。
だけど、前回の戦いでは腕ごと持っていかれている。
今回はこの程度で済んだ。
「どおおおりゃああああああッ!!」
もう一方、左の裁断双刃を放つ。
刃は、なだれてきた残骸を横薙ぎに溶かしながらゴミ箱へ向かうがーー
ゴミ箱は掌底で応じてきた。
【要らぬ! 最早、佇むことすら赦さん。何処へなりとも去れ! ーー『地獄壊門』ッ!!】
ゴミ箱の右の掌底は、裁断双刃と僕を空間ごと払い除ける。
これも踏ん張りようがない攻撃。
僕と裁断双刃と空間を押し付けられた先、コンビニの発着場は、地の深く底まで潰れて割れて溶けて砕けたのち、空間の歪みを大爆発に換えて周囲にぶち撒けた。
「ああっ、アタシの愛車がッ!!」
「お嬢さま! 今飛び出したら危ない!! お外は灼熱地獄。見て、元凶のあの坊ちゃんだっているんですよ!」
「大丈夫ですよ、アタリヤ様。ワイらの愛車は一瞬で蒸発しましたが、ローンは今もちゃんと残ってます」
「それも消えてぇええ!! ……って、あの子、きたけど!? 本当に大丈夫なの!?」
「どさくさに紛れて防壁を破ろうとしてる!?」
「あの眼、殺されるぅッ!」
叩きつけられたガラス越しに店内の連中と目が合った。
これだけの爆発を受けてもなおコンビニの建物は無事なのか。
末端とはいえポルラボ社の系列店、人智を超えた存在が築いたモノ。
そこは驚きはしない。
しないけど、……それでも悔しいものは悔しい。
「チッ、さすがにこれ以上追撃している余裕はないな。ペットボトルは……そこか!」
裁断双刃を失い無手となっても、寄り道をしても、僕はまだ特攻の勢いを維持している。
火口の如く顎を開けた発着場跡地に周囲からなだれ込んだり降り注いだりする岩山の残骸。
上へ下へと飛び交う灼熱の残骸を蹴って進み、見つけたペットボトルを救出。
そのまま、ゴミ箱に向かう!
やつの三手目が来た。
【強欲なる者どもめ。ならばその望みを叶えよう。此処に公正なる調停者の御手は刃となり汝らの愛し子へと降される。その全てを汝らへと公平に分つために。ーー『一刀両断』ッ!!】
その手刀は無慈悲。
防御など不可、遮ることなどできない。
世界までも分つ一太刀が、竜血の防御をガン無視して僕の腕を通過していった。
未練たらしく追った僕の視界には、縦に一筋ズレた景色に舞うペットボトルとそれを握る僕の右腕。
「ぐっ……、いったぁ!!」
最後にして最大の難関を突破!!
僕は、激しい痛みと『おおっ、余の腕が』と言いたい気持ちをグッと耐え切ってみせた。
すかさず駆けていき、冷却行動に入り無防備を晒すやつの身体へと張りつく。
ここまで全てが僕の筋書き通り。
最後、ゴミ箱が掌底や手刀での迎撃を選択していたのなら結果は違っただろう。
やつは僕を払い退けることも、斬り捨てることもできたんだ。
だけど、己のバリアへの絶対的信頼がそれを許さなかった。
次の攻撃が容易に読めるクソ長い詠唱。
なにがなんでもバリア、掌底、手刀と順番に使いたいという妙な拘り。
それら全ての無駄な行動が、やつの仇となった。
この機を逃しはしない。
懲りもせず次の手にバリア展開を選択し対処に遅れるゴミ箱に対し、僕の次の行動は一瞬の僅差で先んじた。
今さっき斬り飛ばされた右腕へと竜血を伸ばし! 掴んで! 引き寄せる!
しかし、ここで想定外。
ゴミ箱本体にカラータイマーネタを理解してもらえずにずっと拗ねていたアイツが突然吠えた。
【ぱおおおぉおおおおおおん!!】
「な、なにぃーーー!?」
【な、なにぃーーー!?】
バギーだ。
身体にしがみついた僕を振り解かんと猛回転。
タイヤの踏ん張りが利かない溶岩の上でスラスターを全開に吹かしての悪あがき。
それがその場に巨大な竜巻を生む。
【ぱおおおおおおおおおおおおおおおおんッッッ……!!!】
「うぐぐぐ……!」
【ぐはぁああ、目が、目がぁ! 回るぅううう!!!】
焔が、溶岩が、暴風が、螺旋のドリルが噴煙の曇天を貫く。
強烈な熱量と吸引力と遠心力と酸欠に抗い、僕はペットボトルを引き寄せた腕ごと投函口へとねじ込んだ。
【アーーーーーーーーーッ!!!!!!】
ガコンッ!
「ヤッターーーーーッ!!」
僕の勝利だ。
【くっ! な、生ゴミは収集対象外ですよ! 回収を拒否します!!】
「僕の腕を生ゴミって言うな!」
【むむむむ………フンッ!!】
あっ! なんてことを。
それを捨てるなんてとんでもない。
まして、ケツからブリッと捻り出すとか、もうありえない。
こいつぅ! さらに轢くつもりか!?
「させるかぁ!!」
溶岩の上に捻り出された腕を、八輪タイヤで轢き潰される寸前に救出。
「ったく! お前、なんで逆さまに合体したんだよ?」
現在、ゴミ箱の投函口はザウルスの尻尾の下。
つまり、肛門に該当する位置にある。
それがここまで僕を苦戦させた一番の理由だ。
なかなか腕ごとケツにブチ込む決心がつかなかった。
「取り戻したのはいいけど、どうしようか、腕」
腕ならすでに新しいのが生えているし、なんか穢れた気もする。
いまさらいらないけど、このまま放置するわけにも……あ、そうだ!
コンビニのほうへ放る。
「「「ひいいいッ!!!」」」
斬り落とされて制御から離れた僕の腕に篭る竜血が、解き放たれて大爆発を起こす。
……う〜ん、やっぱり無傷か。
頑丈過ぎるってば、このコンビニ。
【ペットボトルの再投函を確認。映像記録は削除されました。今後は横着せずに手ずから投函しましょう。では、罰金/500PPをお支払いください。】
……はぁ?
負けたゴミ箱が変なことを口走った。
「罰金? 冗談じゃないよ。大体、お前が投函を邪魔しなきゃストライクだったんだぞ」
【ダウト! 記録データを証拠に断言いたします。本機が対処しなかった場合、投函部を外したペットボトルは本機の装甲を貫通し、超音速を維持したまま街の中心部にある倫理委員会本館へと向かっていったと思われます。】
「ははは! バカめ! 語るに落っこちたとはこのことだぞ。お前はたった今、自ら認めたんだ! ストライクだったとな!!」
【本機を撃墜してどうするんです。投函したペットボトルが本機内に留まらない以上、それを投函完了とは断固認めませんので。あのまま飛んでいくと倫理委員会本部理事長室のガラスを割ってそこにいる人の後頭部に直撃するコースでしたよ。あの暴投は本当に偶然でしょうか? この時刻、高天ヶ原があるこの巨大岩群は巨大な積乱雲に突っ込みます。連日の度重なる被害により出力不足に陥り、防護フィールドは範囲を縮小を余儀なくされている。そのため、保護範囲外となったここ外周部はその入出の際に足元を攫うほどの強い横風に曝されるように。かつてはあれほど緑豊かだったこの地区がこんな荒野に成り果てたのはそのせいです。ここへ頻繁に被害を齎しにきているキミが、恒例の突風が来るタイミングを読み間違えるものでしょうか?】
「……缶がいいだけのゴミ箱はこれだから嫌いだよ。マルチなゴミ箱を目指しなよ。入り切らず周囲にゴミが溢れるほどの人気者になれるよ。まずは好き嫌いしないでこの辺の大量の残骸をトン単位でたらふく呑み込むといい。ところで、スキューバーダイビングに興味ない? ゴミ箱の仕事って年中無休でしょ? 仕事のし過ぎはよくない。ゴミを全て収容次第すぐに長期休暇を取っておいたら? 海はいいよ。特にこの真下の海はオススメだ。どこまでも深くてすごくいい。いつまでも潜っていられるよ?」
【なるほど。そうですか。開き直りますか。ええ、別に構いませんよ。では、今回の無様なチャレンジ結果を投稿サイト経由で公開し、住民の皆さんのご意見を募るとしましょう。おや、どうしました? 頭髪が無秩序への愛を体現せしめし混沌の嬰児、天を貫く瓦礫の山があればそこが住処、ノーコン常習犯こと、高天ヶ原市叢雲町たんぽぽ団地在住、白猫教室所属、日向優君。】
「ぐぬぬ……! くっそう、払えばいいんだろ、払えば! てか、なんで個人特定までしているの? さっき記録は消したって言ったよね? 再投函はしたんだから、まず約束通り証拠…記録を抹消してくれる?」
【すでにサーバーからは削除済みですよ。ただし、削除されたデータは自動的にゴミ箱の中へと移動するもの。コレ、思春期を迎える青少年は覚えておきましょう。あとで大変なことになります。遺品整理する人のことも少しは考えてあげてください。】
「は?」
【罰金/550PPをお支払いください。】
「なんで増えたんだよ!?」
【納付猶予時間を超過したペナルティです。罰金/600PPをお支払いください。】
むむむ……冷静になれ、僕。
きっとこれは文句を言えば言うだけ損しちゃうやつ。
ここはさっさと払ってしまうことが賢い選択だ。
素直に腰から携帯端末を引き抜き、その銃口をゴミ箱にブチ当てて殺る。
「むぅ!? くそっ! マジで鬱陶しいバリアだな!!」
【只今、不当な攻撃を受けました。これより本機の損傷チェックを開始いたします。なお、作業中は納付の受付ができません。その旨ご了承を。では、しばらくお待ちください。】
「えええっ!? どこへいくんだよ!?」
僕の制止をガン無視してゴミ箱は妙に軽快なリズムでパオ♫パオ♫と唄い、コンビニの入口へと八輪駆動のタイヤを転がしていく。
「ぎゃああああ!!」
「熱い熱い熱いぃいいいッッ!!」
「お客さま、困りますよ。まだ装甲面が一億度を上回っておられるご様子。入口で冷却剤を浴びてきてくださいな。あ、そこの坊ちゃんもです!」
来客に雄叫びをあげるガタイのいい大男店員とレジのお姉さん。
レジに隠れて顔も出さずに注意してくるのはニンジン鼻眼鏡を掛けたヒョロい男店員。
この二人ってどこで遭遇してもお姉さんと一緒にいるんだよね。
よくはわからないけど、お嬢+お供二人のトリオは伝統の様式美だって。
「ト、トッキュウザ……ごほっ! げふんっ! いえ、知らない。知らないわよ。だってアタシ、永遠の二十九歳なんだから。いらっしゃいませ、お客さま。せっかくなので里子の申し込みはいかがですか?」
「結構です。おい、お前、いい加減にしろよ。地球外テクノロジーの産物が、チェック程度にいつまでかかっているのさ!」
【ーーチェック完了。結果を発表します。幸い、物理的外傷は確認できず。しかしながら、本機には目に見えぬ精神的な損傷が残った! 賠償として……880PPを請求します。罰金と合わせて1980PPをお支払いください。】
こいつ。
今、棚の高級潤滑油の値札を見て告げたぞ。
「お前が手にしているその商品の値札と請求金額がピッタリなのは偶然なの?」
【ああ、でしたら罰金ーー】
「ああもう! わかったよ、ほら、……喰らえ!」
ゴミ箱に向けて携帯端末を撃つ……が、またも不発。
普通に支払いが受理されてしまった。
どういうことなんだよ。
子供の敵撲滅砲が出ない。
こんなたかり屋のゴミ箱でさえ僕の敵ではないとでも?
ダメだ、これはもう初期不良で間違いない。
【罰金及び賠償金の納付受理を確認。今回徴収した罰金及び賠償金は慈善活動とかに使われます。】
「『とか』が気になるなぁ!」
どうもカモとみられたらしい。
ゴミ箱ザウルスは爪を食い込ませて僕の服の裾を掴んだまま離してくれない。
ここの立地は街の西の最果てだからね。
来客が少なくて構ってほしいというのはわからないでもない。
罰金で甘い汁を啜ろうと企むこいつには大ハズレの配置先なのだ。
しかし、ここで下手に同情して家までついて来られたら本当に困る。
お気に入りの服だが仕方ない。
掴まれている裾の上部分を斬って逃げよう。
「裁断双刃!」
「「「ぎゃああああああああっ!!!」」」
「あ、あれ?」
……チッ、強制転移か。
どうやら店の防犯装置に店内での戦闘行為と見做され、一瞬にして店外に放り出されてしまったらしい。
……まぁ、いいか。
結果としてあいつから逃れることに成功した。
「……んん?」
……あのゴミ箱野郎ぅう。
早速、高級潤滑油を荷台に載せてレジに並んでやがる……!
いや、ダメだぞ、僕。
ここで店内に戻ったら負けだぞ?
♫ピロリロリン♫
◇◆◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇◆◇
◇◇ 【題名/猫耳寄り情報。ただし、大人たちには御内密に】 ◇◇
◇◇ 【送信者/匿名希望の猫型宇宙人】 ◇◇
◇◆◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇◆◇
……むぅ、コンビニめ。
終いには剛鉄製の防災シャッターを下ろしやがって。
お得意様である僕の入店を拒絶しやがるとは……。
裁断双刃の熱に反応した消火のための散水で満たされたプールと化した店内。
中の店員さんたちは楽しそうにガラスを叩いていた。
僕も入ってみたかったけれど、一度あの絶対防御状態になってしまうともうお手上げだ。
以降、最低でも二十四時間は店に入るどころか出ることもできなくなる。
多分、今この瞬間に地球が爆発しても、あのシェルターと化した店と店員たちだけは生き残るだろう。
僕は後ろ髪をブチブチ引き千切られる思いでコンビニをあとにした。
◇◆◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇ーーーーーーーーーーー◇◆◇◆◇
つづく
◇スグルの技◇
【裁断双刃】
大地のいかなる物より硬く、超圧縮。
大海を全て蒸発させ得る、超光熱。
大気を粉砕するほどの、超励起。
大地をチョキン。大海をチョキン。大気をチョキン。
それらをチョキチョキチョキと斬ることができればこの世の全てだって斬ることができる。
そんな戯言を信じて頑張っちゃった結果がコレ。
一つで極意といえるモノを三つ同時に行使した竜血刃を両手に発現。
無茶をして生み出しているので維持できる時間は短い。
一度生み出したら、あとはもうブッ放つほかない。
【カンプーザウルス】バリアシステム搭載型遠投防止ゴミ収集箱の戦闘形態。
ゴミ箱(正式名・キャッチャーボックス)と強化パーツである独立八輪駆動のトカゲ型バギー(正式名・ランナーザウルス)からなる。
合体時には上半身を起こしゴジラに似た形態に。
合体前の両腕部はバギー形態の腹部に格納されている。
ゴミ箱が備えるバリア展開による弾きに加え、合体時には両腕による払い・迎撃が可能。
悪路をものともしない独立八輪駆動、尻尾による高い姿勢制御や機動・旋回力、推進器によるダウンフォースも相まって脅威的なゴミ回避性能を見せる。
己が必要とされた起源を根底から忘却し、高天ヶ原っ子が投げ込むペットボトルを容赦なく弾いては周囲に残留物をぶち撒ける存在。
投げる子を投手に見立てて、ゴミ箱は捕手。
なのに捕球もせず弾く。投手を煽る。
心を通わすどころか、投函者と見るや、一触即発、バチバチとやり合う辺り、両者の関係を指す『バッテリー』を誤認、『蓄電池』と解釈した可能性も。
今回、神回避の当たり屋に遭遇したスグルに非があるとするなら、見るからに怪しいゴミ箱に手を出したことくらい。
おそらく、製作者は投手と捕手の関係性を理解していない。
野球にあまり詳しくなく、サッカーのキーパーとも少し混同していると思われる。
決まり文句は『初手から完封! 逆転不要!! カンプーザウルスッ!!!』。
◇カンプーザウルスの技◇
【天界門】
門を偽称する鉄壁。
如何なるものの通行を許さず、縋るものを完膚なきまでに拒絶する。
その波動は触れたものの加速を消失させ、斥力まで加えて弾く。
【地獄壊門】
超高速の掌底は空間ごと邪魔者を払い除ける。
【一刀両断】
その手刀は空間そのものを分つ。
なお、一刀両断現象は対象個体のみに適用され、他の断面は即座に収束、修復されていく。
執行時、対象は夥しい数の見えざる手に掴まれて身動きできなくなる。
どうも元ネタが混在している模様。
どこぞの御奉行様が関わったとされる子供綱引きに三方一両損の逸話が混じっていたり、処刑対象のみが幻視するという使い手の背後に現れるスタン…執行官は死鬼…尽のパク…オマージュだったり。
処刑対象外の断面が修復するのはガガガと明滅がうるさい巨大ロボアニメの影響だとみられている。




